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ジオール王国脱出編

精霊獣の森とピピーとの契約

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 バニラさんの先導で進むと森が開けた場所に出た。

 そこにはヒヨコやオコジョ、子犬といった小動物100匹ほど居たが、色が違った。

「えっと?」

「全部、精霊獣よ」

「えっ、それって選ばれた者しか契約出来ないとかいう?」

「表向きはね。でも各地に精霊獣の森に通じる入口があってね。儀式通りにすると来れるのよ」

「もしかしてさっき歩いてきた森の道順が?」

「ええ、色々と手間取ったけどね。来て良かったでしょ、アランも?」

「それってオレも契約出来るの?」

「精霊獣に選ばれたらね」

 バニラさんの言葉でオレは周囲の精霊獣を見渡した。

 赤色のヒヨコ。

 水色のオコジョ。

 白色のオコジョ。

 緑色のフクロウ。

 紫色の子犬。

 青色の子熊。

 黄色のインコ。

 等々。

 100匹以上だ。

「誰かオレと契約してくれない?」

 しゃがんで目線を下げたオレがそう声を掛けるが誰も近付いて来ない。

 ガックシ。

 やっぱ無理か。

 と思ったら、

「アラン、頭の上に既に乗ってるわよ」

 バニラさんが教えてくれて。頭の上に居た精霊獣を両手で掴んだ。

 白色のヒヨコだった。

「オレと契約してくれる?」

 ピヨピヨ。

 元気良く答えてくれて、次の瞬間には左胸が一瞬熱を帯びた。

「何、今の?」

 左胸を押さえるオレに、

「契約終了ね。ステータスを確認して御覧なさい」

 赤色の子熊をゲットしたバニラさんが教えてくれる。

 ステータスを見ると、





 アラン・ザク。14歳。LV72。

 ジョブ:棒使い、new精霊獣使い

 スキル:【殺虫スプレー】(27)(29)(12)

 称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の卵】new【精霊獣の契約者】new【聖雛を連れて歩く者】





 隠し称号:【前世の記憶】(【算盤少年】【野球少年】【農夫パワー】【蜜柑博士】【蜜柑喰い】【出雲信徒】)





 称号に【精霊獣の契約者】と【聖雛を連れて歩く者】が追加されてあった。





 【精霊獣の契約者】聖フェニックスの雛(ピピー)を使役出来る。





 取得条件:伝説級精霊獣・聖フェニックスの雛(ピピー)と契約する。





 【聖雛を連れて歩く者】聖属性解禁、聖魔法解禁、聖魔法5倍、経験値1.2倍。





 取得条件:伝説級精霊獣・聖フェニックスの雛(ピピー)と契約する。





 おっと。

 てっきりヒヨコだとばかり思ってたけど。

 周囲に居る他のヒヨコ達もそうなのか?

 それともオレと契約したヒヨコだけが特別なのか?

 多分、オレのヒヨコだけが特別だよな、これって。

 もしかして凄いのを引いた?

「白なら治癒系かしら?」

 バニラさんに質問されて、

「もちろん内緒ですよ」

「ちょっと、アラン。ここまで連れてきてあげたんだから教えなさいよ」

「嫌ですよ。バニラさんだって教えてくれない癖に」

「中級の炎よ」

「下級の聖です」

 オレがそう言うとピピーが否定するようにピヨピヨと文句を言っていた。

 怒った姿も可愛い~。

 ピピーめ、オレのハートを一瞬で鷲掴みにするとはやるではないか。

「嘘よね? 精霊獣が怒ってるんだから?」

「まあね。餌は何を食べるんですか?」

「精霊獣なんだから餌なんて食べないわよ。しいてあげるなら契約者の魔力よ」

「へ~。それでいつまでここに?」

「稀に複数契約出来る術者が居るらしいけど、私達は無理っぽいわね。それじゃあ帰りましょうか」

「ええ」

 こうしてオレはピピーを連れて帰り始めた。

 その帰り道、

「ずっと出しておくんですか?」

 オレはそうバニラさんに質問した。

 っていうか、オレの頭の上が気に入ったのか乗ってるんだが。

「ええ、何か問題でもあるの?」

「はぐれて迷子になったら困るんですけど」

「それはないわ。離れ過ぎると実体化出来ずに消えて、また戻ってくるから」

「へ~」

 などと喋って森を進んで、精霊獣の森から普通の森に出たのだった。





 更に20分ほど歩くと、森の中で魔術師ローブを纏った5人組と遭遇した。

 代表者のオッサンが、

「バニラ、おまえ、精霊獣の森に行ったな?」

「何の事ですか?」 

 顔見知りなのかバニラさんがすっとぼけてるが、

「視えてるんだよ、おまえが連れてるその子熊と、そっちの子供の頭のヒヨコも」

「まあ、偶然ですけどね」

「ぬかせ、おまえ達を粛正する」

 オッサンがそう言って、オレが、

「はあ?」

 そう驚いた時には、マジで5人が攻撃魔法をぶっぱなしてきた。

「ちょ、どうしてオレまで?」

 走って避けながらオレが問うと、オッサンが、

「精霊獣の森へのルートをバニラに教えられた己が不運を呪えっ!」

 ムカチン。

 問答無用な訳ね。

「オレ、LV72ですけど、いいんですね? 殺しますよ?」

「世迷い事をーー」

 オレは森に転がってる石を掴んで、

「ピッチャー第1球級投げた~」

 右投げのオーバースローで投げた。

 ゴキンッと一番偉そうなオッサンの金玉に命中する。

「ぐおおおおっ!」

 身体をくの字にさせて、オッサンは悶絶した。

 技名【金玉ストライク】と命名しよう。

 2球目の落ちてる石を掴んで、

「ピッチャー第2球投げた~」

 ゴキンッと2人目の眼鏡男に金玉ストライクが命中して身体をくの字にする。

「ぐぐぐぐぐっ!」

 3球目の石を拾って、攻撃魔法を避けながら、

「ピッチャー第3球投げた~」

 アンダースローで投げた。

 お姉さんの顔面に命中する。

「あびしゅうっ!」

 お姉さんが鼻血を出しながら気絶した。

 技名【顔面ストライク】と命名しよう。

 オレが3人倒した頃にはバニラさんも、

「火炎球8連弾っ!」

 森を燃やす勢いで火炎球の雨霰あめあられであっさりと2人を撃破していた。

「アラン、本当にLV72なの?」

「ええ」

「石の投擲でジオール王国のエリート魔法騎士団の魔術師3人を撃破って滅茶苦茶ね」

「えっ、そうなんですか? なら、とどめは――」

「しない方がいいんじゃない?」

「でも所持品や装備の没収はしてもいいですよね? 迷惑料として?」

「それは当然ありね」

 そんな訳で露骨にやった。

 衣服も下着を残して全部剥く。

 お姉さんが2人も居たのでドキドキだ。

 ってか、オレが顔面に石を当てて鼻血を出してるお姉さん、黒の高級下着でガーターベルトだから。

 こうしてオレ達は森を無事に抜けたのだった。





 
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