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ジオール王国脱出編

技名【金○バット】

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 2日目の朝。

 客車に乗って揺られてる訳だが、バニラさんがマジマジとオレの顔を見てきた。

「何です?」

「循環、もう出来てるわよ」

「そうなんですか?」

「ええ。どうして1日で出来るようになってるのよ? スキルの影響?」

「いえ、称号でしょう」

「何を持ってるの?」

「言う訳ないでしょ」

 そう言いながらオレはステータスを確認した。





 アラン・ザク。14歳。LV71。

 ジョブ:new棒使い

 スキル:【殺虫スプレー】(30)(30)(11)

 称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の卵】





 隠し称号:【前世の記憶】(【算盤少年】【野球少年】【農夫パワー】【蜜柑博士】【蜜柑喰い】【出雲信徒】)





 別に魔法系の新しい称号は得ていない。

 ってか、ジョブが棒使いになってる。

 何かカッコ悪いな、棒使いって名称。

 雑用係から変化した原理も分からないし。

「ったく、どんな魔法を覚えたいの?」

「治癒魔法と風魔法ですね」

「治癒魔法は無理よ。白魔術師の師匠を見つけて習ってちょうだい」

「では、風魔法を」

 風魔法があれば【殺虫スプレー】とのコンボで汎用性が広がるからな。

「じゃあ、風ね」

 その後も教わったが、半日やそこらで習得出来る訳もない。

 そして街道を進めば、今日もゴブリンが2回、ブルーウルフが1回。

 更に新顔の人間の子供サイズに自走する葉っぱつきのニンニクのモンスター、ガーリックトレント(推定LV7~15)が3匹、襲ってきたが、オレの出番はなかった。

 楽っちゃ~、楽だが。

 経験値が。

 いや、こんな雑魚連中じゃあ、もうLVは上がらないか。

 何せ、LV71だもんな。

 もしかしてイージーモード?

 それと、この蜥蜴客車はモンスターを剥きもしない。

 そのまま街道を通過だ。

 そりゃあ、蜥蜴車を停めてる間にまたモンスターが寄ってきたら面倒だから、停まらないのも分からんでもないが剥ぎをやりたかったな~。





 そんな訳で、あっという間に2日目の昼間は過ぎたのだった。





 ◇





 今回の宿泊場所は街道沿いにあるジオール王国が管理してる監視塔だった。

 そこの1階を旅行者に解放してる訳で、広間で雑魚寝だった。

 床に毛布で寝ろって事だ。

 寝れるかっ!

 オレは繊細な日本人だぞ。

 というか、もうバニラさんも遠慮しない。

 オレにベッタリだった。

 無論、LOVEな訳ではない。

 オレはバニラさんの盾代わりなのだから。

 因みにバニラさんの自称LVは40台。

 それでも凄いらしい。

 もちろんオレも答えておいたぞ。

「4だよ。モンスターと戦った事もないのに凄いでしょ」

 ってね。

 71なんて言ったら引かれそうだったから。

 オレは空気が読める男なのだ。





 ◇





 そして夜である。

 バニラさんに抱き枕にされて、服越しにおっぱいを押し付けられて一緒にオレは寝てた訳だが、1階の広間のドアが開いた音でオレは目を覚ました。

 ほら、オレって繊細だから。

 ってか、雰囲気が変だったから。

 酔っ払いの千鳥足っていうか、意志がないっていうか。

 つーか、抜き身の剣を持ってたから。

 そんな訳で近付いた瞬間にオレは握った牙棒の先端でドゴッと突いてやった。

 股間を。

 技名【金玉バット】と命名しよう。

 直撃した3秒後、悲鳴も上げれずに口から泡を吹いて男は気絶した。

「ありがとね」

「あれ、起きてたの、バニラさん?」

「ええ、魔法を感知したから」

「魔法?」

「操られてただけよ、コイツ」

「へ~」

「ってか、LV本当に4なの?」

「まさか、嘘ですよ」

「・・・どうして嘘なんかを?」

「バニラさんの40台も嘘ですよね?」

「どうしてそう思うんの?」

「田舎に良く嘘をつく女の人が居たので」

 お水系のお姉さんとしか付き合った事がないからだよっ!

 お水系のお姉さんは嘘ばかりだ。

 ってか、客の財布から金を抜こうとうする奴もいたからっ!

「ふ~ん、私は嘘なんてアランにつかないわよ」

「それが嘘じゃないですか。それよりも寝ましょうよ」

「その前にコイツを捨てましょ」

 そう言ってバニラさんが悶絶してる男を操って塔の外まで移動させたのだった。





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