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ジオール王国脱出編

客車内での出会いとスキルの検証

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 オレが乗った乗客車には当然、他の乗客も乗ってる訳だが、オレの注目を鳩めたのは巨乳のお姉さんだった。

 いや、別にエロイ意味はない。

 場違いって意味だ。

 何せ、魔術師ロープを纏っていたのだから。

 魔術師ローブは言わば軍服だ。

 前世の日本風に表現すれば、バスに軍服を着た美女で乗ってたら、そりゃあ、目立つだろ、って話だ。

「お姉さん、魔法が使えるんですか?」

 オレは子供の特権を最大限に活かして声を掛けた。

「そうだけど、それが?」

 年齢は20代後半。長い赤毛で、切れ長の目の美人。

 そしてやっぱり巨乳。

 真っ赤な魔術師ローブの前ボタンが全開なのでローブの下のセクシー系の黒色ドレスが見えてるから。

 ってか、胸の谷間とかヘソとかが見えてて。

 お色気たっぷりでお水系にしか見えない。

「ボクに魔法の才能があるか確認して貰えたりは出来ませんか?」

「魔法の才能ね~」

 チラッとお姉さんがオレを見て、

「魔力はあるようね、練習すれば使えるかもよ?」

 そりゃあ、LV71だからね。

 正直、もう雑魚モンスターなら素手でも倒せるから。

「属性ってのもあるんですよね?」

「まあね、それはここでは分からないわ。ちゃんと検査しないと」

「お金が掛かるんですよね?」

「そりゃね」

「ガックシ」

 とか喋りながら、

「ボク(よそゆきの喋り方)はアランです。よろしくね、お姉さん」

「私はバニラよ」

 バニラ?

 アイスの?

「綺麗な名前ですね」

 美味しそうな名前とは言えないのでそう褒めたが、

「ありがと」

 との素っ気ないリアクションが返ってきただけだった。

 やっぱ、14歳だもんな~。

 異性として相手にもされないか。

 ガックシ。

 かと言って14歳は混浴が許される年齢でもないし。

 微妙に使えない年頃なんだよね~。

「アランはどうしてこの客車に乗ってるの?」

「口減らしで家を出たので、心機一転、マチルダーズ連合で冒険者になろうかと思って」

「口減らしって」

「本当ですよ。うち、貧乏だから」

「ジオール王国ではダメなの?」

「地元をウロチョロしてたら実家に迷惑が掛かりますし」

 オレは利発な少年を演じてバニラさんと仲良くなった。





 ◇





 サイダールから東の国境までは蜥蜴客車で5日である。

 そして、街道ってのはモンスターが出る危険な場所だ。

 オレが乗る客車もモンスターに襲われた。

 雑魚中の雑魚モンスター、ゴブリン(推定LV3~15)5匹に。

 でも雑魚過ぎて、オレが客車の床に置いてた牙棒を拾った時には客車の馭者のオッサンが弓矢で、バニラさんが魔法で対処してゴブリン4匹が倒され、1匹は逃げていったのだった。

 モンスターのブルーウルフ(推定LV5~12)の群れ4匹も出た。

 以下同文でオレの出番はなかった。





 オレの出番が訪れたのはその次だった。

 無論、まだ出発した初日な訳だが。

 赤色の蝶がヒラヒラと街道を進む蜥蜴客車に近付いてきた。

 モンスターじゃない。

 蝶の形をした赤色の魔法だ。

「――なっ! 追い付かれたっ?」

 バニラさんがその魔法を見て驚いてる訳だが、オレはその蝶を見て、ふと自分のスキルの「実験がやりたい」との衝動に駆られた。

 つまり、スキル【殺虫スプレー】はモンスター以外にも通用するのか?

 例えば、この魔法とかにも。

 そんな訳でヒラヒラと近付いてきたところをスプレー缶を出してプシューッと吹きかけたら蝶の魔法は消えたのだった。

 あらら、虫系だったら魔法にも通用するんだ~。

 なら、使い魔にも?

 かなりのチートだな、この【殺虫スプレー】。

「――魔法を打ち消した? ど、どうやったの、アラン?」

 隣でバニラさんが驚く中、

「内緒って事で」

「ちょっと、勿体付けてないで教えなさいよ~」

 バニラさんはちゃんと世の中の仕組みが分かってる。

 無料ただで情報なんて得られない。

 オレにおっぱいを押し当てて情報を引き出そうとしてきた。

 ムニュンッ。

 悪くない。

 そんな訳で一気にバニラさんと仲良くなったのだった。





 詳しくは知らないが、バニラさんは逃亡者らしい。

 普通に街道を移動出来てるんだから、治安当局から追われてるのではなさそうだけど。

 まあ、オレには関係のない話だ。

 それでもバニラさんが、

「魔法を教えてあげるからさっき何をやったのか教えなさい。いいわね」

「本当ですね?」

「ええ」

「スキルですよ。詳しくは内緒ですが」

「どうして?」

「初対面のバニラさんに手の内を教える訳ないでしょ」

「ったく、しっかりしてるわね」

「じゃあ、教えて下さいね、魔法」

「いきなりは無理よ、基礎を教えるわね」

 以下の経緯で、魔法の基礎をバニラさんに習った。

 体内の魔力を意識的に全身に循環させるって奴だ。

 これが出来ないと魔法が使えないそうで、やってみたが、まあ、出来ない。

 1日やそこらで出来る訳もなく、オレは客車に揺られながら、ずっと魔法の基礎の練習をやったのだった。





 ◇





 東の国境まで蜥蜴客車で5日間の移動なのだが、その間の宿泊はどうなるのか?

 無論、野宿ではない。

 異世界ならありそうだが、ちゃんと小さな街や村や砦などがあり、そこで宿泊出来た。

 別途でホテル代を取られたが。

 だが、オレはお金持ちなのだ。

 何せ、コンダさんにギッシリ小銀貨が詰まった革袋を3つも貰ったから。





 初日の夜である。

 【出雲信徒】の効果なのか、食堂で夕飯を食べて、宿屋で寝ようとしてると部屋がノックされて、来訪者を確認するとバニラさんだった。

「どうしたんですか?」

「一緒に寝ない、アラン?」

「どうしてそうなるんですか?」

「夜に襲撃とかされたら嫌だから」

「オレはバニラさんの用心棒って訳ですね」

「そういう事」

「何をやって誰に追われてるですか?」

「別に何も。追ってる相手は貴族だけど」

「面倒臭~」

「そうだ、一緒に居てくれたら添い寝中、魔力の循環を手伝ってあげるわ。だからいいでしょ?」

「?」

「つまり循環を習得する裏ワザよ。魔術師家系はこれをやってるから子供も魔術師になれるって訳よ」

「なら、お願いします」

 魔法を覚えたいオレはバニラさんを部屋に招き入れたのだが。

 困ったぞ。

 1人部屋なのでベッドは1つだけ。

 そして、オレはお水系のお姉さんとしか経験がない。

 ってか、バニラさん、当たり前のように黒色セクシードレスでベッドの中に入った。

「その恰好で寝るんですか?」

「すぐに逃げれるようにね」

「誰から?」

「貴族」

「伯爵より上ですよね?」

「まあね。それよりも早くこっちに来なさい。循環をしてあげるから」

 こうしてオレはベッドに引き込まれてバニラさんのおっぱいに顔をうずめさせて貰いながら寝る事となったのだった。





 凄い。ラブコメの主人公みたいな事をされてるぞ、オレ。





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