ニンジャマスター・ダイヤ

竹井ゴールド

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大也、大金星を譲る

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 僅か2分間の戦闘で風牙一族の忍者は猿飛聖と由利蟹鎌の2人に10人以上が倒された。

 由利蟹鎌は14歳で聖の側近に抜擢されるだけあり強かった。

 妖怪憑きは『蟹坊主』。

 蟹は甲羅が堅い。それに脱皮が出来て、腕くらいなら生やせる。

 動きはそこそこでも忍法が強くて風牙一族を圧倒した。

「おい、手塚、おまえも戦えっ!」

「そんな旨い事言って背後から襲うつもりだろうがっ! 騙されないぞっ! 昨夜あれだけ貢献したのに襲いやがってっ!」

「あれはおまえが勝手にやった事だろうがっ!」

「下心があってね。そうじゃなきゃ、このオレが風牙一族に媚びるような真似なんかする訳ないだろうが」

 なんて喋ってると大也が忍法で音声を垂れ流してただけあって増援が来た。

 信じられない事に一番乗りは、

「――うお、猿飛しゅん?」

 雷我の驚いた声を受けて、

「あれが猿飛のトップ? でもトップが単騎で出陣ってあるのか?」

 大也は乱入した初対面の老人が誰か知った。

「げっ、祖父じい様っ!」

「本当に聖、おまえだったか。愁傷に佐渡送りの指図に従ったから感心していたが、まさか影武者を送って都内に潜伏してたとはな」

「佐渡に50年なんて嫌に決まってるでしょうが」

「それだけの罪を犯したんだよっ! まあいい、猿飛の恥は雪がねばならん、死ねいっ!」

 舜も300センチ級に身体を獣化させて、

「はたして祖父様に出来るかなっ!」

 2人は戦い始めたのだった。

 重量級の同士の戦いだ。それでいてスピードもある。

 他は邪魔なだけだ。猿飛の獣化には風牙の風忍法が効かないのだから。

 それは半数以上倒された風牙一族が証明している。

「おまえ、終わったら絶対に風牙屋敷にきて貰うぞ」

 風牙雷我が大也が居る電柱のてっぺんの横に風で浮遊してそう告げてきた。

「冗談でしょ。犯罪忍者対策室から紅月真が逃げてる非常時なのに」

「そうなのか?」

「ええ、それも大鳥忍軍が一回保護してたとかで陽炎家がお冠。大騒ぎらしいですよ」

「そう言えば、大鳥のトップが呼ばれてたな。ってか、おまえ、どうして昨晩ーー」

 雷我が尋ねようとした瞬間、大也が身を乗り出して、

「おっ、何かをするっぽい。何をする気だ?」

 と注目した瞬間、舜が聖の身体に抱き付いて捕まえ、

「冥途の土産に覚えておけ、聖っ! これが裏奥義、獣化共鳴解除じゃっ!」

 そう言うと、本当に2人の身体の獣化が解けて普通サイズに萎んだ。

「おまえ達、遠慮は要らん。ワシごと聖を貫けっ! 首はいかんぞ、まだ固いっ! 胸だっ!」

 舜が大也と雷我を名指しして叫ぶ。

 それには大也も雷我も驚いたが、2人とも忍者だ。

 速攻で動いた。

「させるかっ!」

 由利蟹鎌が主の聖を守るように防御に入る。

「あの子供はオレが。大将首を風牙一族にプレゼントってね」

 大也がそう言って突っ込み、蟹鎌を蹴って弾いた。

 道を作る。

 雷我が呆れながら、

「よく言うぜ。汚れ役を押し付けやがって」

 一直線に突進して忍者刀を抜いて、

「御老人の覚悟、しかと受け取ったっ! 御免っ!」

 2人の身体を貫いた。

 あろう事か舜側から。

「馬鹿、浅いっ! 忍者刀の長さじゃあーー」

 大也が驚いて叫ぶ中、雷我が、

「そんな訳あるか。『風牙の刃は風刃なり』だろうが」

 そう苦笑しつつも勝ち誇った。

 雷我の言葉通り、忍者刀から伸びた風の刃が聖の心臓も貫いている。

「ぐほっーー見事だ、風牙」

「グアアアアアアア、オレがこんなところで・・・」

 舜と聖の両方がド派手に吐血して死んだのだった。

「うわ、聖様ぁぁぁっ!」

 主君が死んで蟹鎌が絶叫する中、

「あれ、まだ居たの、おまえ?」

 大也はそう言って風の刃で無防備な蟹鎌を背後から切り刻み、戦闘は終了したのだった。
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