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大也、結局はお預けを喰らう

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 陽炎家に仕える浜屋三船からの電話を大也は不機嫌そうに切った。

 不機嫌なのは草薙部隊の医務室で目覚めた風牙夜鶴を口説いてる最中だったからだ。

 というか、大也はベッドで夜鶴を押し倒しており、スマホを持ってきた支部長の案山子大吾に、

「ほら、もういいでしょ、出て行って下さいよ、大吾さん」

「医務室でそういう事をされるのは支部長して黙認出来ないんだが」

「大目に見るって事で」

「はいはい」

 ようやく大吾を追い払うと、大也は、

「さてと続きね、ヨヅさん」

「待って、大也君。昼間の医務室のベッドってやっぱりムードがーー」

「犯罪忍者対策室がここにヨヅさんが居るって嗅ぎ付けたからダ~メ」

「? 嗅ぎ付けたのにどうして乗り込んでこないの?」

「さ~、どうしてだろうね」

 素朴な夜鶴の疑問に大也は下手なとぼけ顔をしたので、

「何をやったの、大也君?」

「ちょっと風牙一族が喜ぶような事をしただけだよ」

「喜ばせなくていいのに。私、一族の上役を殺して捕まったのよ?」

「まあ、そこは置いておいて。続きを」

「もう」

 既にベッドに押し倒してる夜鶴とチュッチュした大也が患者服の下に手を伸ばして胸を揉んでいると、また医務室のドアがノックされた。

「嘘だよな? ーー何?」

 さすがに大也もキレ気味にドア側に声を掛けると、ドアが開いて大吾が、

「今度は小森の惣領家から電話だ。どうなってるんだ、今日は。さっきは陽炎で今度は小森って。ってか、初めて掛かってきたぞ。小森の惣領家から」

 嫌な予感しかしない。

「エッチ中だから出られないって言って」

「無理だって。小森の惣領家からなんだからよ。ってか、早く出てくれ。取次役のオレが怒られるから」

 舌打ちしながら仕方なくスマホを受け取った大也が、

「お電話お変わりしました。手塚大也です」

 そう名乗ると、

『私よ。どうも佐渡に入った猿飛聖が影武者っぽいの。本物を狩り出して。一々身柄を捕獲しなくてもいいわ。始末してちょうだい』

 『負傷した』との噂の小森奈子が当たり前のように命令してきた。

「嘘だよね、お姫様? オレ、今からエッチしようとしてるまさにその前段階なんだけど?」

『そういう嘘はいいから』

「本当だって。昨夜に口説いてラブホテルに入ってシャワーに浴びてたら毒でぶっ倒れて草薙部隊の医務室に運んだら朝10時までダメだって医者に言われて、今からようやくーー」

『そっちの都合は分かったわ。でも、こっちも急ぎだから、さっさと抹殺してきて』

「なら、せめて風牙夜鶴を保護して貰いたいんだけど、惣領家そっちで? 別行動をした瞬間に死にそうでさ。離れられないから」

『風牙夜鶴? 聞いた事あるわね? 確か風牙の同族殺しよね?』

「そう、それ」

『甲賀の同族殺しを匿うんだから高いわよ?』

「はあ? そっちが無理難題を言ってるはずですが。オレは無視してもいいんですけど」

『分かったわ。草薙のアジトの敷地の前に使いが居るから、それに渡して』

「誰? 強さはどのくらい?」

『猪熊だからそんな心配しなくていいわよ』

「ああ、あの怖い人ね。なら安心だ。了解。すぐに動くね」

 それで電話は切れた。

 スマホを大吾に渡しながら、夜鶴に、

「ゴメンね、ヨヅさん。今から仕事だから。後、ヨヅさんは小森の惣領家預かりになるから」

「えっ? 伊賀のトップの? 絶対に嫌なんだけど」

「我儘はダメだよ、ヨヅさん。草薙部隊ここの連中なんて信用出来ないんだから」

「支部長のオレの前で良くそんな言葉が吐けるな、手塚?」

 大吾が呆れるが、大也も引かず、

「エッチしようとしてるところに2回も電話を取り次がれたからね。そう思うのも当然でしょ」

「仕方ないだろ。陽炎と小森だぞ? 両方、伊賀の上忍三家じゃねえか。断れるか。ってか、どうしてオレのスマホにそんなエライサンから掛かってくるんだよ。全部、おまえの所為だろ、手塚」

 堅局はエッチは出来ずに大也は渋々夜鶴と離れ離れになる事を甘受したのだった。





 ◇





 防衛省自衛隊の草薙部隊の基地から1台の車が出てきた。

 草薙部隊のアジトの外周には犯罪忍者対策室の職員4名が待機しており、車の後部席に風牙夜鶴が堂々と乗っていた事から、慌てて、

「そこの車、止まれ」

 停車させたが、運転席から出てきた男は190センチのプロレスラーのような男だった。

 40代で総髪。ライオンを思わす風貌だがサングラスを掛けてる。服装は黒服だった。

「何だ、おまえら?」

「そこの女は犯罪者だ。引き渡して貰うぞ」

「おまえら、オレが誰か分からないのか?」

「知るか、オレ達は犯罪忍者対策室だよ」

「オレも犯罪忍者対策室の所属なんだが?」

「嘘つけ、おまえなんて見た事もないぞ」

「だろうな。もういいや」

 サングラスを外した猪熊次元はそう言うと、

「内臓破裂の半殺しで許してやる」

 言うと同時に蹴った。

 ただの前蹴りだが『猪能流忍法鬼熊・部分獣化(右足)』を使ってるので、ドゴッである。

 そして蹴られた人間は嘘のようだが20メートルもノーバンで(一度もバウンドせずに)吹き飛び、そこからアスファルトでバウンドしながら更に20メートルは吹っ飛んだのだった。

 その時には2人目も吹き飛んでた。女が1人居たがお構いなしだ。4人ともを蹴り飛ばした。それから次元は運転席に座り、車を走らせたのだった。

 後部席に座って一部始終を見ていた夜鶴は、

(ーーコワァ~。小森の惣領家に運ばれるなんて。この後、私、どうなるのよ?)

 心底そう思ったのだった。
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