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大也、風牙一族に貢献を押し付ける
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草薙部隊のアジトで一泊する事となった大也だったが、夜2時頃に支部長である顔見知りの40代の忍者よりも痩せたサラリーマンが似合う案山子大悟がやってきて大也を起こし、
「犯罪忍者対策室からの逃亡者なんて面倒事を持ち込みやがって。それも風牙の跳ねっ返りなんかを。小森に引き渡すでいいんだよな?」
「いやいや、まだエッチしてませんから。ダメに決まってるじゃないですか」
「犯罪忍者対策室にここに居る事が勘付かれたぞ」
「ーー意外に草薙部隊も情報が笊なんですね」
「はあ? おまえが草薙部隊を見張ってる情報屋の前をわざと通ったからだろうが。この写真を見ろ。視線が合ってるじゃねえか」
大吾がスマホを大地に見せてきた。
夜空を跳ぶ夜鶴をお姫様だっこしたカメラ目線の大地が映ってる。それだけではなくお姫様だっこした手がピースサインを作っていた。
「わざとなんて人聞きの悪い。視線が合ったのは認めますが」
「どうしてその時、口止めしなかった。連中は金さえ払えば黙ってるんだぞ」
「だって情報屋とは知りませんでしたし」
「ったく」
「でも草薙部隊なら追い返せますよね? 追い返して下さいね」
「あのな~。犯罪忍者対策室が足抜け自由の組織形態の気軽さもあって、腰掛けの風牙一族も居るんだから無理だよ。連中が引き下がる訳がないだろ」
「? ですが縄張り荒らしは問題でしょ」
「ん、もしかしてまだ聞いてないのか? 犯罪忍者対策室の室長が免職になったの?」
「室長が? 猿飛の御曹司の事ですよね?」
「ああ、小森の姫様を逃亡した犯罪者を使って暗殺しようとしたとかで佐渡送りだってさ」
『暗殺? ああ、新沼を使ってハメた訳ね、あのお姫様が。でも展開が早過ぎないか?』と理解しつつ思った大也が、
「猿飛の御曹司、それに素直に従ったんですか?」
「当然だろ」
「何だ、つまらないの。オレなら絶対に逃げてますよ。他国に亡命して」
「それはおまえが親兄弟が居なくて身軽だからだろうが。ともかく、あの女は引き渡すからな。風牙一族が故意に暴走してきそうだから。嫌なら自力でどうにかしろ」
「つまり、オレが自ら動いて手を汚せと? 悪くないかも、風牙一族を血祭りにするの」
「ふざけるな。どうしてそんな過激な発想になるんだ? 草薙部隊の敷地内で犯罪忍者対策室の連中を潰したら出禁だからな」
「ではどうしろと?」
「さっき他国に亡命するって自分で言ってただろ。国内が頼りにならないなら国外さ」
「ええ~。他国の連中なんかに借りを作ったら大変なんですよ、どこも?」
「そんなの知るか。ともかく猶予は1時間だ。それ以上は枯れんからな」
との通達を受けて大也は夜中に眠いのに動く破目になった。
◇
愛の逃避行や死亡偽装もチラッと考えたが、もっと面白い事を大也は思い付いた。
ずばり『貢献の押し付け』である。
どういう事かというと、風牙一族の敵対組織の幹部を風牙一族にデリバリーして回るのだ。
風牙一族と敵対してる最上川一族の邸宅を襲った大也は寝室に辿り付いていた。
「ーー貴様、大鳥忍軍の手塚だな? どうしてこんな事を――」
69歳の爺さん、最上川佐善が吠える。
寝室には20代の美女も居たが、そちらは忍者ではなかった。ただの一般人で戦闘力はない。
「いや~、風牙一族の女と付き合うのに誠意を見せろって言われてさ~。悪いけど、アンタを風牙一族に引き渡すな。ホント悪いね」
そう言って2人をサクッと気絶させると、大也は最上川佐善を布団に包んで縛り、その際にベッドで気絶中の美女のヌードが見え、その後、風牙一族の屋敷の前に佐善を運んだのだった。
この調子で、他にも、
「な、何の真似よ?」
ホストと一夜を共にしていた赤木一族の30代の赤木千恵子。
「こんな事をしてただで済むと思ってーー」
違法カジノのオーナー室で売上金を数えていた星砕一族の20代の星砕流星。
「・・・」
寝室で眠っていた城之内一族の40代の城之内ツクシ。
53分間に計4人をデリバリーして草薙部隊のアジトに戻ったのだった。
◇
堪らないのは風牙一族の方である。
深夜に風牙邸の前に敵対してた連中が4人も置かれたのだから。
やったのは手塚大也である。それは間違いない。
最上川佐善が置かれて大騒ぎとなり、とりあえず佐善を邸内に入れたら、今度は赤木千恵子が置かれて、その後、玄関前を見張ってたら手塚大也がコンマ1秒で着地して、星砕流星を置いて去っていったのだから。更には城之内ツクシまで。
配下の5人以上が目撃してる。手塚大也だった。
これで風牙一族はこの夜、敵対組織の4人の幹部の身柄を得た事になる。
だが、
「ありがとう、手塚大也。風牙夜鶴と付き合ってもいいからね」
となる訳もない。
4組織と否応なく全面戦争勃発なのだから。
人選も巧妙だった。敵対組織の首領ではなく幹部をデリバリーしたのだから。
つまり早期の戦争終結はあり得ない。
時期に至っては最悪である。
総理退陣による慣例の『次の総理が決まるまで不戦』を破っての不意討ちなのだから。
幹部4人を解放して『風牙一族はこの件には一切関係ない』と言っても誰も信じない。
そもそも幹部を解放したら風牙一族の末端が勝機を逃がした上層部を疑う。
このまま大也の御膳立てに乗るしかなかった。
「何をしてくれてんだ、アイツ」
風牙邸の当主である風牙小次郎、54歳が憤慨するように呟き、側近の風牙都斗が、
「出回った写真の件では?」
「反逆者の夜鶴か? ともかく大鳥に苦情の電話だ」
こうして大鳥に電話で苦情が入れられたのだった。
「犯罪忍者対策室からの逃亡者なんて面倒事を持ち込みやがって。それも風牙の跳ねっ返りなんかを。小森に引き渡すでいいんだよな?」
「いやいや、まだエッチしてませんから。ダメに決まってるじゃないですか」
「犯罪忍者対策室にここに居る事が勘付かれたぞ」
「ーー意外に草薙部隊も情報が笊なんですね」
「はあ? おまえが草薙部隊を見張ってる情報屋の前をわざと通ったからだろうが。この写真を見ろ。視線が合ってるじゃねえか」
大吾がスマホを大地に見せてきた。
夜空を跳ぶ夜鶴をお姫様だっこしたカメラ目線の大地が映ってる。それだけではなくお姫様だっこした手がピースサインを作っていた。
「わざとなんて人聞きの悪い。視線が合ったのは認めますが」
「どうしてその時、口止めしなかった。連中は金さえ払えば黙ってるんだぞ」
「だって情報屋とは知りませんでしたし」
「ったく」
「でも草薙部隊なら追い返せますよね? 追い返して下さいね」
「あのな~。犯罪忍者対策室が足抜け自由の組織形態の気軽さもあって、腰掛けの風牙一族も居るんだから無理だよ。連中が引き下がる訳がないだろ」
「? ですが縄張り荒らしは問題でしょ」
「ん、もしかしてまだ聞いてないのか? 犯罪忍者対策室の室長が免職になったの?」
「室長が? 猿飛の御曹司の事ですよね?」
「ああ、小森の姫様を逃亡した犯罪者を使って暗殺しようとしたとかで佐渡送りだってさ」
『暗殺? ああ、新沼を使ってハメた訳ね、あのお姫様が。でも展開が早過ぎないか?』と理解しつつ思った大也が、
「猿飛の御曹司、それに素直に従ったんですか?」
「当然だろ」
「何だ、つまらないの。オレなら絶対に逃げてますよ。他国に亡命して」
「それはおまえが親兄弟が居なくて身軽だからだろうが。ともかく、あの女は引き渡すからな。風牙一族が故意に暴走してきそうだから。嫌なら自力でどうにかしろ」
「つまり、オレが自ら動いて手を汚せと? 悪くないかも、風牙一族を血祭りにするの」
「ふざけるな。どうしてそんな過激な発想になるんだ? 草薙部隊の敷地内で犯罪忍者対策室の連中を潰したら出禁だからな」
「ではどうしろと?」
「さっき他国に亡命するって自分で言ってただろ。国内が頼りにならないなら国外さ」
「ええ~。他国の連中なんかに借りを作ったら大変なんですよ、どこも?」
「そんなの知るか。ともかく猶予は1時間だ。それ以上は枯れんからな」
との通達を受けて大也は夜中に眠いのに動く破目になった。
◇
愛の逃避行や死亡偽装もチラッと考えたが、もっと面白い事を大也は思い付いた。
ずばり『貢献の押し付け』である。
どういう事かというと、風牙一族の敵対組織の幹部を風牙一族にデリバリーして回るのだ。
風牙一族と敵対してる最上川一族の邸宅を襲った大也は寝室に辿り付いていた。
「ーー貴様、大鳥忍軍の手塚だな? どうしてこんな事を――」
69歳の爺さん、最上川佐善が吠える。
寝室には20代の美女も居たが、そちらは忍者ではなかった。ただの一般人で戦闘力はない。
「いや~、風牙一族の女と付き合うのに誠意を見せろって言われてさ~。悪いけど、アンタを風牙一族に引き渡すな。ホント悪いね」
そう言って2人をサクッと気絶させると、大也は最上川佐善を布団に包んで縛り、その際にベッドで気絶中の美女のヌードが見え、その後、風牙一族の屋敷の前に佐善を運んだのだった。
この調子で、他にも、
「な、何の真似よ?」
ホストと一夜を共にしていた赤木一族の30代の赤木千恵子。
「こんな事をしてただで済むと思ってーー」
違法カジノのオーナー室で売上金を数えていた星砕一族の20代の星砕流星。
「・・・」
寝室で眠っていた城之内一族の40代の城之内ツクシ。
53分間に計4人をデリバリーして草薙部隊のアジトに戻ったのだった。
◇
堪らないのは風牙一族の方である。
深夜に風牙邸の前に敵対してた連中が4人も置かれたのだから。
やったのは手塚大也である。それは間違いない。
最上川佐善が置かれて大騒ぎとなり、とりあえず佐善を邸内に入れたら、今度は赤木千恵子が置かれて、その後、玄関前を見張ってたら手塚大也がコンマ1秒で着地して、星砕流星を置いて去っていったのだから。更には城之内ツクシまで。
配下の5人以上が目撃してる。手塚大也だった。
これで風牙一族はこの夜、敵対組織の4人の幹部の身柄を得た事になる。
だが、
「ありがとう、手塚大也。風牙夜鶴と付き合ってもいいからね」
となる訳もない。
4組織と否応なく全面戦争勃発なのだから。
人選も巧妙だった。敵対組織の首領ではなく幹部をデリバリーしたのだから。
つまり早期の戦争終結はあり得ない。
時期に至っては最悪である。
総理退陣による慣例の『次の総理が決まるまで不戦』を破っての不意討ちなのだから。
幹部4人を解放して『風牙一族はこの件には一切関係ない』と言っても誰も信じない。
そもそも幹部を解放したら風牙一族の末端が勝機を逃がした上層部を疑う。
このまま大也の御膳立てに乗るしかなかった。
「何をしてくれてんだ、アイツ」
風牙邸の当主である風牙小次郎、54歳が憤慨するように呟き、側近の風牙都斗が、
「出回った写真の件では?」
「反逆者の夜鶴か? ともかく大鳥に苦情の電話だ」
こうして大鳥に電話で苦情が入れられたのだった。
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