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猿飛聖、緊急御三家会合で犯罪忍者対策室の室長から一転佐渡送りとなる

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 美少女ゲーム並みの遭遇率を誇る大也だったが、大也は困ってる美女ではないものの、知り合いの女を都内のビルの屋上の給水タンクの陰で発見した。

「何やってるの?」

 背後から声を掛けられてビクッと背筋を正した土岐影ヒカリが振り返りざまに上段蹴りを喰らわせようとしたが、蹴りが当たる前に軸足を払われて、

「キャ」

 倒れそうになるところを軽々とお姫様だっこされた。

 相手の顔を見て、ギャングの服装姿の大也だと気付く。

「ーー手塚君? 何その恰好?」

「あれ、似合ってない?」

「全然。アメリカの禁酒法時代のギャングのコスプレか何かなの、それ?」

「そんな訳ないでしょ。このセンスが分からないとはまだまだだね、ヒカリさんも」

 そう言いながらお姫様だっこしながら忍者スーツの上から胸を揉んだ。

「ちょ、こら、止めなさいよ」

「蹴られそうになった詫び料って事で」

「ったく」

「何やってるの?」

「不知火学園の任務よ」

「その不知火学園だけど、酷い目にあってない?」

「あってるわよ。だからこんな雑用をやらされてるんだから」

「何をやらされてるの?」

「言う訳ないでしょ。不知火学園の任務は他言無用なのに」

「それはそうとヤラせてよ、ヒカリさん」

「何を?」

「エッチを」

「あのね~、手塚君。それでヤラせる女なんて居る訳ないでしょ」

「今夜も可愛いよ、ヒカリさん。だから、これからホテルで朝までーー」

「今更口説いてもダメよ。お願いだからあっち行って。この任務にしくじると拙いから」

「残念。また今度ね」

「ええ」

「最後に確認だけど、ヒカリさん、お姉さん居る? ヒナタって名前の?」

 立ち去る前に大也が念の為に質問すると、ヒカリがきょとんと、

「? 誰の事? いないわよ」

「ゴメンね、変な事聞いて。じゃあ」

 大也は『手塚流忍法かまいたち・大跳躍(高速)』を使って、夜の東京に消えていったのだった。





 ◇





 どうしてこうなったのか?

 猿飛聖は鎖で繋がれて下座の座布団なしの畳の上で正座させられてた。

 上座には急遽召集された犯罪忍者対策室の室長を受け持つ小森、猿飛、不破、通称『御三家』の代表が座っていた。

 猿飛家の代表は聖の祖父のしゅんである。

 そして議題は小森総領家の令嬢、奈子の負傷だった。

 それだけならば問題にはならない。問題なのは奈子を襲ったのが新沼琥珀だったからである。

 新沼琥珀は小森家を怨んでる忍者なのだが、問題はそこではない。

 『新沼琥珀は毒を盛られて死亡』と昨日の内に犯罪忍者対策室が発表した事が問題になっていた。





 ロシアの忍者キラー部隊の本部ビル襲撃。

 九門一党による軽トラでの本部ビル突入。





 近々のこの二つはそれほど問題ではない。

 だが、小森に怨みを持つ者を『死んだ』と発表して野放しにしたのは大問題だった。

 これは猿飛聖が室長として犯罪忍者対策室を掌握しきれていないでは済まされない。

 猿飛聖による小森惣領家への攻撃だった。

「誰の差し金だね? 当然、一族の総意で動いてるのだよね?」

 小森の後継者で御三家会議の代表を務める40代の小森八坂やさかが尋ねると、聖の祖父である70代の舜が、

「御冗談を。そのような事、猿飛がする訳がないではないですか」

「そう言えば、大鳥と犯罪忍者対策室が妙な密約を結んでつるんでると聞きましたが」

 不破家代表の50代の不破拓哉がそう指摘した。

「ほう、大鳥が。大鳥にそそのかされたでいいかね?」

 八坂の言葉に聖は顔を振りながら、

「いえ、今回の件は私の一存で」

「一存で小森を潰そうと暗躍したと?」

「違います。新沼に恩を売って別件で動いて貰おうと・・・」

「小森に反逆して逮捕された大罪人に恩をね~。言い訳としては幼稚過ぎるな。話にもならん」

 八坂の言葉に拓哉が、

「もういいでしょう。罷免にしましょう。よろしいですね、猿飛も?」

「はい。室長権限を50年間自粛させていただきます」

 深々と舜が頭を下げる中、八坂が、

「猿飛聖の処罰はどのようにお考えで?」

「無論、佐渡送り50年が妥当かと」

 聖は今27歳だ。つまりは出てくる時は77歳。

 『そんなのあんまりだ』と思った聖が、

「おっ、お待ち下さい。決して小森に反逆などは考えておらず・・・」

「それと猿飛からは勘当な。断種もしておこう。悪しき種を撒かれてはかなわんからな」

 舜は冷徹に孫に吐き捨て、聖は絶望した顔で畳に額を擦り付けたのだった。
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