76 / 100
大也、無駄な抵抗を試みる
しおりを挟む
日本の忍者のトップ2と言えば、
三重県の伊賀。
滋賀県の甲賀。
この二つだ。
この二大忍者集団が近畿、中部だけではなく、日本全国でデカイ顔をしていた。
それは当然の事だ。
大鳥忍軍も伊賀の流れを汲んでいるし、アメリカのムーンリング機関は甲賀の流れなのだから。
この二大忍者集団は明治維新や敗戦後に廃れる事なく生き残ったので本当に偉そうにやっていた。
それに比べれば、真田忍軍や軒猿、歩き巫女等々の末裔や分派は本当に慎ましく細々とやっていた。
◇
対して日本政府の忍者集団と言えば、
内閣調査室と公安の合同組織の犯罪忍者対策室。
防衛省自衛隊の草薙部隊。
政府機関・大鳥忍軍。
この三つである。
日本政府内での序列もこの順だった。
犯罪忍者対策室は調査権限の他に刑務所権限も持ってる。
草薙部隊は国防で他国勢力と戦う権限を。
大鳥忍軍は両組織の要請を受けて出動する立場にあるが下請けとは少し違う。
何せ、一番強い組織が伊賀の流れを汲む大鳥忍軍だったのだから。
◇
その日は富士の樹海で6時間訓練をした。
往路と復路、1時間ずつの新幹線移動を加えると計8時間である。
朝8時に大鳥邸から出発すると夕方4時30分頃に品川駅に到着した。
実は大也はこの時間帯に外出してるのは稀な事である。
この時間帯にはとっくに大鳥邸に帰還してるのだから。
つまり大也の中で新たな発見があった。
この時間帯には同年代の女子高生がやたらといる。
(この時間帯の方が出会いがあるのでは?)
そう真剣に熟慮した大也が駅のエスカレーター付近で凄い綺麗な女子高生とすれ違い、声を掛けようと振り返ろうとした時、
「手塚大也、 少しいいか?」
そう声を掛けられた。
相手は見た事もない20代後半のスパダリ風の男だったので、
「ないわ~。どうして男を寄越すかね~。美女を寄越してよ~」
大也はそう正直に嘆いたのだった。
「オレを知らないのか? 小森の室長、猿飛聖だぞ」
「どうせ偽物でしょ?」
「失礼な。本物だ」
「もしかしてあの時のロシア撃退の褒賞ですか?」
「その前日の行動総てを免責にしてやっただろうが」
「なら今更何の用です?」
「少し力を貸せ、緊急だ」
「嫌ですよ。馬鹿馬鹿しい」
「逮捕してもいいんだぞ?」
聖がそう脅すと、
「じゃあ、逮捕で」
大也はそう言ってわざとらしく両手首を出した。
「しないと思ってるな?」
「いいえ、『絶対に言う事を聞かないぞ』と思ってます」
「・・・何が気に入らない?」
「全部」
大也は聖の顔を見ながらきっぱりと言い切った。
それには聖の方が渋い顔をする。
「もう行っても? それとも逮捕します?」
「もういい。行け」
「では失礼します」
大也はそのままエレベーターに乗って降りていった。
◇
犯罪忍者対策室は内閣調査室と公安の合同組織だ。
その室長の申し出を断れる訳もなく、車で大鳥邸に向かってる最中に大也のスマホが鳴った。相手は大鳥颯太だ。
『私だ。大也君、少し小森の仕事をして欲しいんだが』
「嫌ですよ。どうせ・・・」
『百瀬喜多郎って知ってるか?』
「いえ、全然」
車内に金馬リョウと運転手が居たので大也は本当に知らないふりをした。
『少し厄介な忍者だ。そいつが犯罪忍者刑務所『佐渡島』から脱獄した。何処かの組織が逃がしたのだろう。総裁選の真っ只中なので不測の事態だけは避けたい。小森に協力してくれ』
「・・・仕方ないですね。どちらに向けえばいいんですか?」
『小森に向かってくれ』
「は~い」
結局は大也は犯罪忍者対策室関連の仕事をする破目になったのだった。
三重県の伊賀。
滋賀県の甲賀。
この二つだ。
この二大忍者集団が近畿、中部だけではなく、日本全国でデカイ顔をしていた。
それは当然の事だ。
大鳥忍軍も伊賀の流れを汲んでいるし、アメリカのムーンリング機関は甲賀の流れなのだから。
この二大忍者集団は明治維新や敗戦後に廃れる事なく生き残ったので本当に偉そうにやっていた。
それに比べれば、真田忍軍や軒猿、歩き巫女等々の末裔や分派は本当に慎ましく細々とやっていた。
◇
対して日本政府の忍者集団と言えば、
内閣調査室と公安の合同組織の犯罪忍者対策室。
防衛省自衛隊の草薙部隊。
政府機関・大鳥忍軍。
この三つである。
日本政府内での序列もこの順だった。
犯罪忍者対策室は調査権限の他に刑務所権限も持ってる。
草薙部隊は国防で他国勢力と戦う権限を。
大鳥忍軍は両組織の要請を受けて出動する立場にあるが下請けとは少し違う。
何せ、一番強い組織が伊賀の流れを汲む大鳥忍軍だったのだから。
◇
その日は富士の樹海で6時間訓練をした。
往路と復路、1時間ずつの新幹線移動を加えると計8時間である。
朝8時に大鳥邸から出発すると夕方4時30分頃に品川駅に到着した。
実は大也はこの時間帯に外出してるのは稀な事である。
この時間帯にはとっくに大鳥邸に帰還してるのだから。
つまり大也の中で新たな発見があった。
この時間帯には同年代の女子高生がやたらといる。
(この時間帯の方が出会いがあるのでは?)
そう真剣に熟慮した大也が駅のエスカレーター付近で凄い綺麗な女子高生とすれ違い、声を掛けようと振り返ろうとした時、
「手塚大也、 少しいいか?」
そう声を掛けられた。
相手は見た事もない20代後半のスパダリ風の男だったので、
「ないわ~。どうして男を寄越すかね~。美女を寄越してよ~」
大也はそう正直に嘆いたのだった。
「オレを知らないのか? 小森の室長、猿飛聖だぞ」
「どうせ偽物でしょ?」
「失礼な。本物だ」
「もしかしてあの時のロシア撃退の褒賞ですか?」
「その前日の行動総てを免責にしてやっただろうが」
「なら今更何の用です?」
「少し力を貸せ、緊急だ」
「嫌ですよ。馬鹿馬鹿しい」
「逮捕してもいいんだぞ?」
聖がそう脅すと、
「じゃあ、逮捕で」
大也はそう言ってわざとらしく両手首を出した。
「しないと思ってるな?」
「いいえ、『絶対に言う事を聞かないぞ』と思ってます」
「・・・何が気に入らない?」
「全部」
大也は聖の顔を見ながらきっぱりと言い切った。
それには聖の方が渋い顔をする。
「もう行っても? それとも逮捕します?」
「もういい。行け」
「では失礼します」
大也はそのままエレベーターに乗って降りていった。
◇
犯罪忍者対策室は内閣調査室と公安の合同組織だ。
その室長の申し出を断れる訳もなく、車で大鳥邸に向かってる最中に大也のスマホが鳴った。相手は大鳥颯太だ。
『私だ。大也君、少し小森の仕事をして欲しいんだが』
「嫌ですよ。どうせ・・・」
『百瀬喜多郎って知ってるか?』
「いえ、全然」
車内に金馬リョウと運転手が居たので大也は本当に知らないふりをした。
『少し厄介な忍者だ。そいつが犯罪忍者刑務所『佐渡島』から脱獄した。何処かの組織が逃がしたのだろう。総裁選の真っ只中なので不測の事態だけは避けたい。小森に協力してくれ』
「・・・仕方ないですね。どちらに向けえばいいんですか?」
『小森に向かってくれ』
「は~い」
結局は大也は犯罪忍者対策室関連の仕事をする破目になったのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
夢の中でもう一人のオレに丸投げされたがそこは宇宙生物の撃退に刀が重宝されている平行世界だった
竹井ゴールド
キャラ文芸
オレこと柊(ひいらぎ)誠(まこと)は夢の中でもう一人のオレに泣き付かれて、余りの泣き言にうんざりして同意するとーー
平行世界のオレと入れ替わってしまった。
平行世界は宇宙より外敵宇宙生物、通称、コスモアネモニー(宇宙イソギンチャク)が跋扈する世界で、その対策として日本刀が重宝されており、剣道の実力、今(いま)総司のオレにとってはかなり楽しい世界だった。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
仲町通りのアトリエ書房 -水彩絵師と白うさぎ付き-
橘花やよい
キャラ文芸
スランプ中の絵描き・絵莉が引っ越してきたのは、喋る白うさぎのいる長野の書店「兎ノ書房」。
心を癒し、夢と向き合い、人と繋がる、じんわりする物語。
pixivで連載していた小説を改稿して更新しています。
「第7回ほっこり・じんわり大賞」大賞をいただきました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
パーフェクトアンドロイド
ことは
キャラ文芸
アンドロイドが通うレアリティ学園。この学園の生徒たちは、インフィニティブレイン社の実験的試みによって開発されたアンドロイドだ。
だが俺、伏木真人(ふしぎまひと)は、この学園のアンドロイドたちとは決定的に違う。
俺はインフィニティブレイン社との契約で、モニターとしてこの学園に入学した。他の生徒たちを観察し、定期的に校長に報告することになっている。
レアリティ学園の新入生は100名。
そのうちアンドロイドは99名。
つまり俺は、生身の人間だ。
▶︎credit
表紙イラスト おーい
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
あやかし民宿『うらおもて』 ~怪奇現象おもてなし~
木川のん気
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞応募中です。
ブックマーク・投票をよろしくお願いします!
【あらすじ】
大学生・みちるの周りでは頻繁に物がなくなる。
心配した彼氏・凛介によって紹介されたのは、凛介のバイト先である『うらおもて』という小さな民宿だった。気は進まないながらも相談に向かうと、店の女主人はみちるにこう言った。
「それは〝あやかし〟の仕業だよ」
怪奇現象を鎮めるためにおもてなしをしてもらったみちるは、その対価として店でアルバイトをすることになる。けれど店に訪れる客はごく稀に……というにはいささか多すぎる頻度で怪奇現象を引き起こすのだった――?
イノリβ
山橋雪
ファンタジー
これは一体……確実に僕は死んだはずなのに――。
友人のセリナに巻き込まれる形でビルから転落した主人公コウタは、自身が不死になっていることに気付く。
自らの不死の謎を解き日常に戻るため、コウタはセリナの知人が営む霊障コンサル事務所に転がり込むが、妖しく暗い欲望渦巻くイノリの世界に飲み込まれていく。
陰鬱陰惨、じめじめと。けれど最後はそれらを吹き飛ばす怒涛の展開。
オカルトテイストなファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる