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大也、USBメモリーを放置する

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 火葬場に出向いた隙に大也の訪問を受けた大鳥忍軍の幹部氏族の中でブチギレて徹底抗戦に舵を切ったのは叢雲と柳葉と横谷の3家と訪問を受けなかった長瀬のみだった。

 叢雲一族はもう後には引けないだけの損害を出しているので敗北して家名が無くなると分かっていながらの徹底抗戦の構えを見せていた。

 柳葉一族の方は老害という奴だ。死んだ息子や孫の敵討ちを耄碌した隠居老人が声高に叫び、破滅の道へと進んだ。

 横谷は叢雲一族に大恩があり、一緒に玉砕する事を決めた。

 長瀬に至っては襲撃がなかった事から『取引をして襲撃を免れた』との疑惑を払拭する為に襲撃するという馬鹿みたいな理由だった。





 決戦の舞台は当然、夜の大鳥邸である。

 だが、あり得ない事に大也は出陣しなかった。

 深夜なのだ。客間のベッドで就寝中である。

 代わりに出迎えたのは、昨今の情勢不安によって臨戦態勢の真っ只中の大鳥邸の警備部隊だった。

 その警備隊が、頭に血が上って突撃してきた叢雲、柳葉、横谷、長瀬の総勢31人と激突していた。

 叢雲、柳葉、横谷、長瀬は幹部氏族になれるだけの戦闘力の高い忍者が揃っていたが、それらは先の忍死の森で既に死んでいる。

 よって、襲撃部隊は、はっきり言って残りカス、または隠居組だった。

 対する大鳥邸の警備部隊は50人。全員が第一線級である。

 勝負にならず、次々と叢雲、柳葉、横谷、長瀬の連中が討たれていった。

「せめて、手塚の小僧に一太刀っ!」

「おまえら、邪魔をするでないっ!」

「退いてくれっ! せめてアイツのところまでっ!」

 襲撃者の心からの叫びである。

 警備部隊も内心で同情しつつも、

「黙れ、おまえ達がやってる事は総帥邸への攻撃、つまりは反逆行為だぞっ! 分かってるのかっ?」

「柳葉の御老人、さっさと諦めて降伏しろっ!」

「おまえらもだ、さっさと武器を捨てんかっ! 無駄死にになるぞっ!」

「長瀬は取引をしてるのにどうして襲ってくるんだ?」

 職務を全うした。

 だが、襲撃者達は誰一人降伏せず、

「頼む。せめて総帥に長年大鳥忍軍の為に尽力した叢雲一族の無念を伝えてくれっ! 手嫁なんぞにいいようにやられて消えていく・・・ゲフっ」

「アヤツを出してくれっ! このままでは死んでも死にきれん・・・グアアアっ!」

「絶対に許さんからな、柳葉一族総出で怨念となって呪ってやるっ!」

「取引などしていない。昼間のは長瀬を陥れる罠だ――グギャアアア」

 討ち入りした31人全員が戦死、または捕縛後に反逆者として処刑されて、叢雲、柳葉、横谷、長瀬の幹部氏族は後日、末端まで格下げとなり、その後、衰退していったのだった。





 ◇





 翌朝、清々しい朝を迎えた大也は食堂で、

「そう言えば土岐影ヒカリを不知火学園で誘拐したのって誰だったんです?」

「何故、そのような事を聞くのかね、大也君?」

 警戒しながら宗次が代表して確認すると、

「長い目で見ればソイツがそもそもの原因でしょ? 忍死の森で大鳥忍軍の幹部氏族が死んだのって。だからお礼参りをしようかと」

「よいよい。それは教師らしくてこちらでちゃんと処理したから」

 颯太が慌てて口を挟んだが、

「本当ですか、それ?」

「無論だ」

「人質になっていた土岐影ヒカリはお咎めなしですよね?」

「そのはずだが、それが?」

「いえ、風の噂でヒカリさんが酷い目にあってると聞いたもので。ヒカリさんの事、よく見ておいて下さいね。不知火学園なんて雑魚狩りで時間を無駄にしたくないので」

「そうしよう」

 などと会話して朝食を食べたのだった。





 ◇





 大也がこれでもかというくらい大鳥忍軍に損失を与えてるのに、大鳥颯太、緋色、宗次が大也を追い出さないのは大也がロシアが忍者キラー部隊を全滅させるくらいの強者だからである。

 同時に、無造作に客室のベッドのサイドテーブルの上に放置したUSBメモリーの効果もあった。

 前にクロプロの会長、黒崎譲一を潰した際に金庫から貰った土産である。

 ただの会員リストだと決め付けて興味を失った大也はUSBメモリーを無造作に客間のサイドテーブルに放置して昨日などは外出していた。

 当然、大鳥忍軍はUSBメモリーの中身を確認した訳だが、出てきたのは政財界の大物14人の盗撮映像だった。無論、妻以外の女とベッド風景だ。

 今回の総理選びには残念ながら効力は発揮しないが、これはこれで凄い映像で、政府機関・大鳥忍軍及び、大鳥コンツェルンの勢力拡大に大いに利用出来た。

 クロプロなど完全支配下に置ける代物でもあった。

「やはりUSBメモリーの譲渡を打診するべきだったか? 10億でも買えるぞ、これは?」

 USBメモリーを手に颯太が呟くと、

「いえ、兄上。価値があると分かった瞬間に惜しんで手放すのを止める可能性もありますから。迷惑料として貰っておきましょう」

「ふむ」

 大鳥コンツェルンに重役出勤する前に颯太、宗次はUSBメモリーの事を会話したのだった。
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