上 下
67 / 100

大也、今頃呼び出し事件の黒幕に興味を持ち始める

しおりを挟む
 直後に大地は新幹線のホームを歩きながらスマホで電話をした。

 相手は大鳥宗次だ。

『何かね、大地君?』

「数日前に不知火学園の女生徒にオレに近付くように命令を出したの誰か分かります?」

『いや、分からんね。不知火学園は内閣府直轄たから』

「そうですか。なら今から不知火学園に出向くんで協力するよう言っておいて下さい」

『待った。部外者は不知火学園は立入禁止だよ』

「? オレ、調査対象者なので部外者じゃないですよね」

「そんな理屈が通る訳がーーともかくダメだ。1時間くれ。ちゃんと調べるから』

「1時間も? まあ、いいですけど」

 大也はそんな事を電話で喋りながらエスカレーターに乗ったのだった。





 ◇





 電車で都内から西東京に出るなんてまどろっこしい事、大也はしない。

 風使いらしく音速で移動した。

 ぶっちゃけ都内から西東京まで5分である。

 忍者育成機関ーー不知火学園のある不知火駅前に出没した。

 もうはっきり言って脅迫行為だった。

 新幹線の駅のホームで電話を終えた13分後には宗次の方から電話で、

『今、どこに居るんだね、大君?』

「不知駅前ですが」

『何故だね?』

「もしかしたら不知火学園が大鳥忍軍に協力しないかもしれないでしょ? その時は正面から乗り込む為に待機を」

『そんな事にはならないからくれぐれも慎重でいてくれよ』

「無論ですよ。あっ、制服を着た男子に睨まれてるんですか殴っていいですか?」

『ダメに決まってるだろう。ダメだからね。頼むから暴れないでくれよ』

「は~い。殴りませんね」

『これからは? 待った。まさか、もう? 何人だね?』

「まだ8人かな? あっ、殴っただけで顔面と両手は潰してませんよ」

 大也が駅前のガレージで倒れてる不知火学園の男子8人を見ながら言った。

 本当に顔面と両手は潰していない。潰す前に電話が掛かってきたのだから。

『一度、不知火駅から離れてくれ、大也君。無論、駅前からではなく『別の駅に』という意味だよ』

「ええ~、せっかく来たのに」

『頼むから』

「わかりましたよ、宗次さんの顔を立てますね」

 そう大也は返事をしたのだった。





 ◇





 時系列を整理しよう。

 本日が大鳥忍軍と刹那忍軍の不戦協定。富士樹海の草薙部隊の訓練場で大也が修行。

 前日が犯罪忍者対策室の本部ビルをロシアの忍者キラー部隊が襲撃。

 前々日が『正義の味方』パーカー男の出没や総理辞任と色々あった訳だが、その早朝には忍死の森で大鳥忍軍の幹部氏族の遺体が回収されている。





 つまり本日は忍死の森で死んだ幹部氏族の葬式が行われる日でもあった。





 宗次も総帥の名代として各幹部氏族の葬式に出席しまくってる訳だが、そこに大也からの電話だ。

 電話を貰って『1時間後でいいか』と気軽に考えていたら、不知火学園のある不知火駅前で大也のスマホのGPS反応があるとの報告が上がってきて、大慌てで大也に電話で確認し、続いて総帥の颯太に連絡して、

『はあ? 刹那忍軍とようやく不戦協定を結んだっていうのに次から次へと。今は次の総理選びをせねばならんのに。そもそもどうしてそんな事に興味を示したんだ? あの日の朝、メモを見せた時は興味無さそうな顔をしていたぞ。今朝だって『修行する』と言ってそんな素振りは1つもなかったのに』

「暇だからでしょう?」

 それは違う。ヒナタと出会った事でヒナタ、ヒカリ姉妹に恩を売ってエロゲーのような姉妹制覇が現実味を帯びてきたのでやる気をみせてるだけた。

「どうしましょう、兄上。本当の事を知ったら幹部氏族が狩られますよ?」

『ふむ。ここは適当に敵対忍者の名を教えて潰させるか』

「それは悪手かと。バレたら二度と信用しなくなりますから」

『だが幹部氏族は潰させる訳にもいくまい?』

「働き手が全滅で最低20年は使い物にならない幹部氏族を守る事もないかと」

『待て。長年大鳥忍軍へ忠義を尽くした氏族だぞ? 叢雲は大鳥忍軍創設時からの盟友氏族ではないか』

「その結果が今回の増長ですよ。大鳥の総帥邸の客人への攻撃など通常ならあり得ない事なのですから。手塚大也が舐められるのは構いませんが総帥家が舐められるのは大問題かと。ここは大ナタを振るうべきです」

『ふむ』

「後36分で決めて下さいね、兄上」

『ん? どういう意味だ?』

「不知火学園を襲う素振りを見せてたので1時間だけ刻を稼ぎました。1時間以内に教えなければ不知火学園に突っ込みますよ、絶対」

『頭痛がしてきたな』

「私はとっくに頭痛です」

 大鳥忍軍の総帥と実弟はその後も真面目に生贄を誰にするのか悩んだのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小児科医、姪を引き取ることになりました。

sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。 慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

処理中です...