ニンジャマスター・ダイヤ

竹井ゴールド

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大鳥颯太、刹那忍軍との停戦協定を成立させる

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　ロシアの忍者キラー部隊は昼間に犯罪忍者対策室の本部ビルを襲撃して大敗した訳だが、その日の夜に速攻で報復に動くのも意外に不意が突けて作戦としてはありだと言えよう。

　だが、事前に翌日に大鳥忍軍と刹那忍軍のトップ会談情報をキャッチしていたら、その夜の襲撃は諦めて、その会談場所を狙うのは、これまた定石であった。

　大也に報復しないでどうして大鳥忍軍のトップを狙うのかと言えば、それは大也が強過ぎてもう手持ちの都内部隊では勝てないからだ。

　だが、何もしないで泣き寝入りも出来ない。

　２００億円の武器取引がパーにされてるのだ。

　『標的が強くて何も出来ませんでした』では暗部の世界では粛清モノだ。

　例え、勝てないと分かっていてもやるしかない。

　またはそれ以上の功績を上げるかだ。

　そこで大鳥颯太を狙ったというのが経緯だった。

　◇

　大鳥忍軍総帥の大鳥颯太。

　刹那忍軍頭目の黒天こくてん夜太郎。

　この２人が会うのにはそれ相応の準備が居る。

　元々敵対関係にあったが、この度、激突した。

　それも大鳥邸が刹那忍軍によって襲撃されて、刹那忍軍のナンバー２がアメリカのムーンリング機関に捕縛された際には大鳥忍軍の人間が絡んでる。

　このような状況下で相手の有利な場所での面会などまずは応じない。

　停戦協定の折衝の話自体が相手のトップを引きずり出す為の罠だったりしたら洒落にならないからだ。

　中立的な場所が必要だった。

　だが、第３勢力の忍者となると正直、信用が置けない。

　忍者は喰わせ者が多いからだ。

　他国の暗部も同様である。

　日本政府の施設も大鳥忍軍が政府機関の為、大鳥忍軍寄りと勘繰ってしまう。

　そんな訳で両者が会った場所は何の因果か一流ホテル、ニュー極楽園ホテルだった。

　その屋上では冷越我威が一昨日にアメリカに捕まっており、結構な皮肉が利いている訳だが。

　どうしてリモート技術が発達してるのに直接面会してるのかと言えば『わだかまりなどは一切ありませんよアピール』の為であった。

　そうしないと好戦的な部下が勝手に動く事もあるからだが。

　ニュー極楽園ホテルのレストランフロアで、両者が遭う中、忍者なら全員が思っただろう。

　『嘘臭え～。絶対に囮の影武者だろ、それ』と。

　実際に別の場所でも同時刻に、同じ人物達が会合をしていた。

　◇

　そのもう１つの会合場所は東京湾に面した倉庫内だった。

「今回は冷越が馬鹿な事をしてしまって」

「いえいえ、こちらも遠縁が飛び跳ねてしまって申し訳ない」

　倉庫内なので立ち話だ。

　黒天夜太郎は90代で禿げ頭に染み模様があるが小ざっぱりとした老人だった。背筋もピンとしている。平和な面談なのだからジャケットにループタイだった。

「こちらはつまらないものだが」

　夜太郎の土産は手錠とロープで拘束されて眠らされた冷越我子である。

　父親の我威の捕縛とアメリカ送還に大也が関与してたのだ。当然、大鳥忍軍との停戦協定にも反対だったが、副頭目ならともかくただの中忍に発言権はなく、それでも強硬に異議を唱えた為に土産になってしまっていた。

「それはそれは。良い物を。こちらは息子の緋色との縁組を」

「本当に利那忍軍の下忍の娘でいいのかね？」

「手切れになった時に始末する破目になるのでね」

「ふむ。まあ、こちらはする気はないが」

　その後も停戦協定は既定路線で続いた。

　その会合場所となった倉庫の外側ではロシアの忍者キラーが何とか大鳥颯太を仕留めようと頑張っていた。

　無論、ニュー極楽園ホテルのダミーに引っ掛かる事なく、倉庫の方に来ていた。

　何せ、護衛の主力がこちら側に来てるのだ。

　そりゃあバレバレだ。

　だが、倉庫まで到達出来ない。

　如何せん、彼我戦力差が違い過ぎた。

　ロシア側の忍者キラーの都内組はもう５人しかいないのだ。

　それも３人が第３級適合者で昨日ドーピング・オーガを使っている。つまりは薬が切れた後の激痛中で身動きが取れず、ロシアの襲撃側は第２級適合者が２人だった。

　対する倉庫の外周の警備は大鳥と刹那の忍者の精鋭が50人以上。

　勝負にもならなかった。

　例え、ラジコン操縦の爆薬を積んだトラックを突っ込ませようともあっさりと海に落とされ、マシンガン搭載のドローンも10機飛ばしたが簡単に風で落とされて。

　それでもロシアの忍者キラーは奮闘し、10人以上を撃破していた。

　死亡だけで10人。負傷者は10人以上居るはずだ。

　それでも倉庫までは届かず、

「グアアア」

「ギャアアア」

　と特攻したロシア側の忍者キラー２人は倒されたのだった。

　だが、死んだロシア側は知る由もない。

　まさか、ニュー極楽園ホテルの方の会合が本物で、倉庫側が大鳥忍軍と刹那忍軍の停戦協定を妨害する連中を釣り出す為の囮だった事を。

　ニュー極楽園ホテルのレストランで、本物の大鳥颯太と黒天夜太郎が、

「では」

「ええ、結婚式には出席しませんがどうぞよろしく」

　こうして大鳥忍軍と刹那忍軍の停戦協定はまとまったのだった。

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