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大也、花井財閥と不戦協定を結ぶ
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草薙部隊のアジトに大也が戻ってくると、花井財閥の花井北太郎が来ていた。
30代で黒髪のスパダリ風の御曹司だった。花井一族の直系でもある。同時に昨日結婚式で花嫁に逃げられたマヌケな花婿の一番上の兄だった。
「花井財閥の海外事業部の部長の花井北太郎だ、よろしく」
「手塚大也です」
「キミが昨日花嫁を逃がしたフードの男か。お陰で花婿の弟は笑いものだよ」
「良かったじゃないですか、花井財閥の次々代の後継者レースから1人脱落したんですから」
「違うと言えば嘘になるかな、ハハハ」
そう笑った北太郎だったが、大也の表情を見て、
「? 何やら不機嫌な様子だがーーまさか、財閥会長ではなく私が代理で来た事で『馬鹿にされてる』や『軽く見られた』とか思ってないよね?」
本心を言い当てられて『やる~』と思いながら大也は、
「少しだけ思ってます」
「ならその分、交渉の際には考慮しよう。花井財閥の要求はキミ個人と花井財閥の不戦協定だ。キミが草薙部隊としてるようにね」
「内容は?」
「年間10億払うから花井財閥を攻撃しないでくれ。厳密には花井財閥の施設や社章を付けてる社員だが」
「・・・待って下さい。花井財閥ってグループ系列の会社全部って意味ですよね?」
「無論だ」
「例えば、花井鉄道や花井ドームでも暴れるな、と?」
「そういう事だ。ダメかね?」
系列会社、子会社、孫会社、曾孫会社を合わせたら100社では利かない。それが花井財閥だ。
中でも困るのが社用車と船舶だ。戦闘中に一々考慮なんて出来ないし、あれらは簡単に爆発したり海に沈んだりする。
そして沖縄県では船舶の方が問題だが、東京都だと当然、車が問題だった。花井財閥のエンブレムの運送トラックやタクシー、バスなんて都内の幹線道路に嫌というほど走ってる。
確かコンビニ『フラワー』も花井財閥系列のはずだ。ガソリンスタンドも見た気がする。
(全部を除外? 10億だと安過ぎるだろ?)
内心で警戒しながら大也は、
「出来るだけという内容にして下さい。正直、頭に血が上ったらそんなのお構いなしで暴れる事がありますから。電車の線路やタンカー、コンテナ車のエンブレムなんて一々確認出来ませんし」
「ふむ。まあ、良かろう。では契約書にサインを頼む」
「嫌ですよ。口約束にしましょう」
「分かった。じゃあ、それで。振込口座を教えてくれ」
「では、こちらの口座に」
大也はスマホでスイスの隠し口座の番号を教えた。
花井財閥の御曹司らしく本当に即金で5億円が振り込まれた。
「まずは半年分、それでいいね?」
「ええ、自動更新なんですよね?」
「無論だ。一々呼び出したりなどはしないさ」
と確約した北太郎が、さらっと、
「さて、次に個人的な頼みなんだが」
「?」
「私個人と仲良くしてくれ」
「えっ?」
大也が嫌そうな顔をしたのはBLだと勘違いしたからだ。
「何か失礼な事を考えてる顔をしてるね? 花井財閥内でも『私の考えを優先してくれ』と言ったつもりだったのだが」
「・・・ああ、そっちね。当然ですよ、窓口は北太郎さんなんですから」
「だよね」
「眼の前に居る北太郎さんを優先しますね」
「?」
「つまり『眼の前に居るのが影武者だったら大変だぞ』って意味です」
「本人だから安心してくれたまえ」
「ですよね~。言ってみただけです」
室内の壁際に並ぶ連中をチラ見して大也は苦笑した。
室内の端に花井財閥側の秘書や護衛やらが8人も整列している。これで本物じゃなかったらなかなかの演出という事になった。
忍者も2人。なかなかに強い。花井財閥は忍者集団は子飼いに出来ない決まりだと聞いたが傭兵として飼ってるのだろうか。
「で、ハイマッチ?」
「?」
「北太郎さん個人はオレの優先を勝ち得る為にいくら支払っていただけるので?」
「ったく、がめつい奴め」
そう呆れながらも『金を要求された方が口先だけの安請け合いよりも信用出来る』との考えで好意的に北太郎は1億円を大也のスイスの隠し口座に追加で振り込んだ。
大地のスマホに銀行から入金の連絡が来て、
「毎度あり~。時にさっき花井財閥の使いのモデルの如月リノに睡眠薬を盛られたんですが、それは花井財閥の誰の差し金だったんですか?」
「ーー父、花井暮次郎だ」
「なるほど。暮次郎さんね。覚えておきましょう」
「待った。もう不戦なんだよね? その為の年間10億円契約なんだし。そして花井財閥の中でも、1億円払った私に便宜を図る。その条件下で話すがーー正直、父が失脚すると困るんだ。叔父が後継者として花井財閥の会長になったら、私がその次の後継者の本命じゃなくなるから」
「・・・分かりました。父君のオイタは今回は見過ごしますね。ですが、また喧嘩を吹っ掛けてきた時はどうすればいいので?」
「こちらに報告してくれ。私のスマホに直通だ。それか花井財閥の本社秘書室」
北太郎が名刺に番号を書き記して渡してきた。
「了解」
「では、私はこれで。良い商談が出来て良かったよ」
「こちらこそ」
大也は北太郎と握手を交わして花井財閥との不戦協定と北太郎との個人契約を締結させて6億円をせしめたのだった。
30代で黒髪のスパダリ風の御曹司だった。花井一族の直系でもある。同時に昨日結婚式で花嫁に逃げられたマヌケな花婿の一番上の兄だった。
「花井財閥の海外事業部の部長の花井北太郎だ、よろしく」
「手塚大也です」
「キミが昨日花嫁を逃がしたフードの男か。お陰で花婿の弟は笑いものだよ」
「良かったじゃないですか、花井財閥の次々代の後継者レースから1人脱落したんですから」
「違うと言えば嘘になるかな、ハハハ」
そう笑った北太郎だったが、大也の表情を見て、
「? 何やら不機嫌な様子だがーーまさか、財閥会長ではなく私が代理で来た事で『馬鹿にされてる』や『軽く見られた』とか思ってないよね?」
本心を言い当てられて『やる~』と思いながら大也は、
「少しだけ思ってます」
「ならその分、交渉の際には考慮しよう。花井財閥の要求はキミ個人と花井財閥の不戦協定だ。キミが草薙部隊としてるようにね」
「内容は?」
「年間10億払うから花井財閥を攻撃しないでくれ。厳密には花井財閥の施設や社章を付けてる社員だが」
「・・・待って下さい。花井財閥ってグループ系列の会社全部って意味ですよね?」
「無論だ」
「例えば、花井鉄道や花井ドームでも暴れるな、と?」
「そういう事だ。ダメかね?」
系列会社、子会社、孫会社、曾孫会社を合わせたら100社では利かない。それが花井財閥だ。
中でも困るのが社用車と船舶だ。戦闘中に一々考慮なんて出来ないし、あれらは簡単に爆発したり海に沈んだりする。
そして沖縄県では船舶の方が問題だが、東京都だと当然、車が問題だった。花井財閥のエンブレムの運送トラックやタクシー、バスなんて都内の幹線道路に嫌というほど走ってる。
確かコンビニ『フラワー』も花井財閥系列のはずだ。ガソリンスタンドも見た気がする。
(全部を除外? 10億だと安過ぎるだろ?)
内心で警戒しながら大也は、
「出来るだけという内容にして下さい。正直、頭に血が上ったらそんなのお構いなしで暴れる事がありますから。電車の線路やタンカー、コンテナ車のエンブレムなんて一々確認出来ませんし」
「ふむ。まあ、良かろう。では契約書にサインを頼む」
「嫌ですよ。口約束にしましょう」
「分かった。じゃあ、それで。振込口座を教えてくれ」
「では、こちらの口座に」
大也はスマホでスイスの隠し口座の番号を教えた。
花井財閥の御曹司らしく本当に即金で5億円が振り込まれた。
「まずは半年分、それでいいね?」
「ええ、自動更新なんですよね?」
「無論だ。一々呼び出したりなどはしないさ」
と確約した北太郎が、さらっと、
「さて、次に個人的な頼みなんだが」
「?」
「私個人と仲良くしてくれ」
「えっ?」
大也が嫌そうな顔をしたのはBLだと勘違いしたからだ。
「何か失礼な事を考えてる顔をしてるね? 花井財閥内でも『私の考えを優先してくれ』と言ったつもりだったのだが」
「・・・ああ、そっちね。当然ですよ、窓口は北太郎さんなんですから」
「だよね」
「眼の前に居る北太郎さんを優先しますね」
「?」
「つまり『眼の前に居るのが影武者だったら大変だぞ』って意味です」
「本人だから安心してくれたまえ」
「ですよね~。言ってみただけです」
室内の壁際に並ぶ連中をチラ見して大也は苦笑した。
室内の端に花井財閥側の秘書や護衛やらが8人も整列している。これで本物じゃなかったらなかなかの演出という事になった。
忍者も2人。なかなかに強い。花井財閥は忍者集団は子飼いに出来ない決まりだと聞いたが傭兵として飼ってるのだろうか。
「で、ハイマッチ?」
「?」
「北太郎さん個人はオレの優先を勝ち得る為にいくら支払っていただけるので?」
「ったく、がめつい奴め」
そう呆れながらも『金を要求された方が口先だけの安請け合いよりも信用出来る』との考えで好意的に北太郎は1億円を大也のスイスの隠し口座に追加で振り込んだ。
大地のスマホに銀行から入金の連絡が来て、
「毎度あり~。時にさっき花井財閥の使いのモデルの如月リノに睡眠薬を盛られたんですが、それは花井財閥の誰の差し金だったんですか?」
「ーー父、花井暮次郎だ」
「なるほど。暮次郎さんね。覚えておきましょう」
「待った。もう不戦なんだよね? その為の年間10億円契約なんだし。そして花井財閥の中でも、1億円払った私に便宜を図る。その条件下で話すがーー正直、父が失脚すると困るんだ。叔父が後継者として花井財閥の会長になったら、私がその次の後継者の本命じゃなくなるから」
「・・・分かりました。父君のオイタは今回は見過ごしますね。ですが、また喧嘩を吹っ掛けてきた時はどうすればいいので?」
「こちらに報告してくれ。私のスマホに直通だ。それか花井財閥の本社秘書室」
北太郎が名刺に番号を書き記して渡してきた。
「了解」
「では、私はこれで。良い商談が出来て良かったよ」
「こちらこそ」
大也は北太郎と握手を交わして花井財閥との不戦協定と北太郎との個人契約を締結させて6億円をせしめたのだった。
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