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大也、如月リノにナンパされてリムジンカーに乗る

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 大也が颯太にそれを言われたのは翌日の朝食の時であった。

「大也君、新しく服を買うようにね」

「これ、似合ってませんか? それともラフ過ぎます?」

「いや、昨日の大也君の『正義の味方』活動が気に入らなくて探してる連中が居るらしくてね」

「っ! 分かりました。政府機関・大鳥忍軍の一員として今日も悪党連中潰しに邁進しますね」

 大也がそう言い放ち、颯太は頭痛を覚えながら、

「違う。そういう事を言いたいんじゃない。総理が辞任をして与党の総裁選が始まったので大鳥忍軍もそちらに集中したくてね。『無用な騒動は歓迎しない』と言ってるんだよ」

「与党の総裁選? そんなのにまで大鳥忍軍は噛んでるんですか?」

「無論だよ。政府機関なんだから。敵対派閥だっている訳だし」

「具体的には?」

「小森、草薙、駿河」

「草薙は自衛隊内にある忍者部隊の名前ですよね? 小森と駿河って何ですか?」

「小森は内閣調査室と公安部合同の犯罪忍者対策室、駿河は経済連お抱えの傭兵忍者集団の事だよ」

「聞いた事ありませんが本当にあるんですか?」

 大也が懐疑的に質問する中、

「ああ、両方とも昨日の『正義の味方』探しにもう動いてる」

「? どうして探してるんです? ーーあっ、もしかして大鳥忍軍の所属と知らずにオレを表彰しようと探してる? 名乗り出た方がいいですかね、オレ?」

 大也がそう眼を輝かせたると、『どういう思考回路をしてるんだ、逆だよ、逆』と思いながら颯太は、

「いや、止した方がいいだろう。『正義の味方』の登場で自分の組織の無能さを見せつけられた恰好だからね。逆に縄張り荒らしの因縁を付けてくるだろうから」

「はあ? 何ですか、それ? もし喧嘩を吹っ掛けてきた時は撃退していいんですよね?」

 大也がそう好戦的に問う中、

「いや、総裁選の真っ只中だし、出来るだけ穏便に協力してくれ、大也君。くれぐれも潰さないように」

「ーー分かりました」

 などとの会話があり、





 大地は午前中の内に服の購入に出向いた。

 大鳥邸が保有する国産高級車で洋服店まで移動だ。

 これは今まで気軽に大鳥邸から徒歩で出歩いていた大地の扱いが良くなったからではない。

 逆だ。

 もはや大鳥家の人々からの大也の信用度は地に落ちており、移動も制限される事となった。

 車が出向いた先は大鳥コンツェルンが経営するカジュアルなアパレル店だ。

 服選びを女性従業員にお任せしていると、背後から、

「だ~れだ~?」

 両手で目隠しされて質問された。

 忍者の大也が背後を取られるなんてドジを踏む訳がない。当然、事前に分かっててやらせた訳だが、

(?)

 大也は誰か思い出せなかった。

「ごめん、誰か分からないーー誰?」

「それ、酷くない? リノよ」

 と目隠しを外して怒ったのは白ギャル系の如月きさらぎリノだった。

 17歳で158センチ。日本人ながら綺麗に染めた長い金髪はピンクと水色のメッシュ入りで、カラコンで瞳は青色。付け睫毛も凄い。

 8等身の凄い美人で、スレンダーボディーだった。服装も妙に決まっる。モデル雑誌でトップ人気を誇るカリスマギャルでもあった。

 だが、大也は水着グラビアにならない芸能人にはとんと疎くて、

「?」

「だからリノよ。去年、沖縄のホテルのスイートに連れ込まれた私をエロオヤジから助けてくれたでしょ?」

 リノはそう主張するが、大也は覚えてなかった。

 助けた覚えがないのではない。ホテルのスイートに連れ込まれた美女を助けるのが大也にとっては日常茶飯事過ぎて助けた相手の顔を覚えていなかったのだ。

 というか、大也は美女遭遇率が美少女ゲーム並みに高く(というのも大也は女しか助けない。そしてエロピンチになるような女は決まって美人だからだが)、東京から沖縄に遊びにきた白ギャルだけでも20人以上助けており、エッチなお礼がされてない相手の場合、大也の記憶には全く印象として残っていなかった。

 なので本当に助けたのか、かたりなのか本当に大也には判断が付かなかった。

「助けた時、エッチなお礼をしてくれてないよね?」

「する訳ないでしょ、如月リノが」

「へ~、そんな名前なんだ」

「えっ、リノの事、知らないの?」

「助けた時、乗ってくれたっけ? ーーあっ、そうだった。今思い出したよ。そうそう、あの時ね」

 空気が読める大也は嘘をついて話を合わせたが、

「そうじゃ無くてーーリノが何をやってるか知らないの?」

 リノの少し不機嫌なリアクションを見て、別の事に怒ってる事に気付いた。

「ゴメン。10秒待って」

 リノの眼の前で大也はスマホで『如月リノ』を検索し、

「嘘、芸能人?そ れも人気のカリスマモデル? インフルエンサー?」

「信じられない。リノの事を知らないなんて」

「ゴメンね、だって芸能人なんて高嶺の花だから」

「まあ、いいわ。今からリノとデートしない?」

「するする」

 大也はノーと言えない日本人なのでノータイムで返事して買い物を中断してホイホイとついていったのだった。





 さすがは芸能人サマだ。

 出迎えの車は運転手付きのリムジンカーだった。

 リムジンに乗ると大也の真横に座って密着するようにリノがしなだれてきた。

「ええっと?」

「リノに密着されて嬉しい?」

 大也の本音は『一人称が自分の名前の女はいくら美人でも馬鹿だから大嫌い』だったが、

「もちろんだよ。天にも昇る気持ちだよ」

 『もしかしたらヤレるかも』との下心から自分を偽って嘘をついた。

「そうだ、何か飲む? リムジンって凄いのよ?」

 リノが慣れた手付きでシャンパンの栓をポンッと開けた。

 細長いグラスに白のシャンパンが注がれる。

「えっと、シャンパンってお酒だったっけ?」

「大丈夫よ、これはノンアルだから」

 ノンアルとはノンアルコールの略だ。

「じゃあ、遠慮なく」

 グラスでチンッとリノと乾杯してから大也はシャンパンを一気に飲んだ。

 そして5秒後、

「はりゃ?」

 マヌケな声を出した後に熟睡したのだった。

 大也が熟睡したのはシャンパンに睡眠薬が盛られていたからで、それまで密着してたリノは邪険に大也を押してリムジンの座席に倒して、

「任務完了。これで花井財閥のCMゲットね」

 と笑ったのだった。
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