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大也、帰宅時に玄関ホールで神輿音美波に質問される
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大也の大鳥邸の帰還は16時前であった。
御機嫌で帰ってきた訳だが、玄関ホールには大鳥緋色の美人秘書、みこしね美波が待っていた。
美波は24歳。166センチで長い茶髪にインテリ眼鏡を掛けた色香を漂わせる美人である。赤のスーツ以上に黒ストッキングと赤ヒールが妙に似合っていた。
同時に緋色の側近に相応しく、忍法が使える忍者でもあった。
「遅かったですね、手塚様」
そう柔らかな微笑で大也を出迎えた。
「ええっと、朝に確か後継者様と一緒に居た?」
大也は17歳の健全な青少年だ。なので美人はちゃんと覚えている。
「はい、神輿音美波と申します。お見知りおきを」
「手塚です」
「柴楽総理の緊急辞任や花井財閥の御曹司の花嫁逃亡等々に追われており、こちらには来れませんので私が緋色様の名代として手塚様に会いに来ました」
「ええっと、後継者様とはエッチな関係なの?」
「そんなどうでもいい話よりも、私が出向いた用件ですが・・・」
「いやいや、かなり重要だけど、今の質問。後継者様の女だったら口説けないから、扱いも当然変わるし」
「・・・そう思われて下さって結構です」
美波が面倒臭そうに答えた瞬間、
「あっそ」
大也は一瞬で美波から興味を失った。
大也が黙り、ようやく話が進められると勘違いした美波は、
「4時間前、ムーンリングがニュー極楽園ホテルの屋上で冷越我威を捕縛しました。今頃はアメリカへの護送で太平洋の上空でしょう。4時間前、手塚様はどちらにおられました?」
「4時間前? 確かどこかのホテルだね。助けた女組長さんに連れて行かれてさ~」
大也がそうとぼけようとしたが、もう足取りは掴まれており、
「それがニュー極楽園ホテルです。ニュー極楽園ホテルは一流ホテルの関係で要人達も多数利用しますので、情報屋も複数見張っており、この通り、写真も望遠で撮影される訳です。例えフードで顔を隠してもこのアングルなら」
美波がスマホ画面を見せてきた。
スマホにはパーカーのフードを被った大也が写っていた。捕まった冷越我威やムーンリングの連中と一緒に。
「刹那忍軍とは2日後に停戦協定をするので『手を出すな』と緋色様が朝、忠告されたはずですが?」
「だから襲われて仕方なく迎撃したまでだよ」
「これのどこが『仕方なく』ですか? 明らかに罠にハメてるように見えますが? ムーンリングまで出動しているのですから」
「罠? それは誤解だって。オレは女子高生組長に連れられてホテルに出向いただけなんだから~。そしてた美人局よろしくホテルの室内に冷越威が待っていてさ」
「そもそもスマホはどうされたんですか?」
「あっ、何かを忘れてると思ったら」
大也はポケットをまさぐった。
ポケットから出した札束を手に幾つも持って、ポケットの奥からロッカーキーを出して、
「スマホの回収、お願いね」
大也が笑顔で鍵を渡すが、美波の興味は札束の方に移っており、
「そのお金、どうされたんですか?」
「親切なお爺さんがくれたよ」
「――どういう経緯で貰ったのか詳しくお聞かせて下さい」
「日本料亭で幹事長と呼ばれてる人が製薬会社の爺さんから『約束のお金です』って3000万貰ってるところに偶然出食わしちゃって忘れてくれるなら500万円くれるって」
「幹事長? 元ですか現ですか?」
美波の質問に、
「何、それ?」
大也が意味不明で不思議そうに美波を見たので、美波がスマホで検索して
「群青雄飛ですか?」
「いえ」
「田村京太郎?」
「違うよ」
「じゃあ、空志戸呑ですか?」
「違うけど。ってかソラシドドン? マジで、そんな名前なの?」
と見せて来て、4人目で、
「権藤イワシ?」
「その爺さんだよ。ってイワシって名前なの?」
権藤イワシを見せられて大也は頷いた。
「よりにもよって権藤イワシ、ですかーーこの男は政府機関・大鳥忍軍の政敵の政治家ですよ?」
「へ~、なのに500万円もくれるなんて太っ腹なんだね」
「他に何をされました?」
「別に。普通だよ」
と大也が答えたのは美波が『緋色の女だ』と認めた為だ。
幾ら美人でも口説けないのに長話しても仕方がなく、話を終わらせる為に適当に答えていた。
美波の方も大也が今日だけで『横浜の冷麺のアジト襲撃』『冷麺の捕縛協力』『権藤イワシと接触』と活動してるので、もうこれ以上の事は『やってないだろう』と勝手に決め付けてしまい、深くは追求せずに、
「では、私はこれで」
緋色に合流する為に玄関ホールを出ていったのだった。
御機嫌で帰ってきた訳だが、玄関ホールには大鳥緋色の美人秘書、みこしね美波が待っていた。
美波は24歳。166センチで長い茶髪にインテリ眼鏡を掛けた色香を漂わせる美人である。赤のスーツ以上に黒ストッキングと赤ヒールが妙に似合っていた。
同時に緋色の側近に相応しく、忍法が使える忍者でもあった。
「遅かったですね、手塚様」
そう柔らかな微笑で大也を出迎えた。
「ええっと、朝に確か後継者様と一緒に居た?」
大也は17歳の健全な青少年だ。なので美人はちゃんと覚えている。
「はい、神輿音美波と申します。お見知りおきを」
「手塚です」
「柴楽総理の緊急辞任や花井財閥の御曹司の花嫁逃亡等々に追われており、こちらには来れませんので私が緋色様の名代として手塚様に会いに来ました」
「ええっと、後継者様とはエッチな関係なの?」
「そんなどうでもいい話よりも、私が出向いた用件ですが・・・」
「いやいや、かなり重要だけど、今の質問。後継者様の女だったら口説けないから、扱いも当然変わるし」
「・・・そう思われて下さって結構です」
美波が面倒臭そうに答えた瞬間、
「あっそ」
大也は一瞬で美波から興味を失った。
大也が黙り、ようやく話が進められると勘違いした美波は、
「4時間前、ムーンリングがニュー極楽園ホテルの屋上で冷越我威を捕縛しました。今頃はアメリカへの護送で太平洋の上空でしょう。4時間前、手塚様はどちらにおられました?」
「4時間前? 確かどこかのホテルだね。助けた女組長さんに連れて行かれてさ~」
大也がそうとぼけようとしたが、もう足取りは掴まれており、
「それがニュー極楽園ホテルです。ニュー極楽園ホテルは一流ホテルの関係で要人達も多数利用しますので、情報屋も複数見張っており、この通り、写真も望遠で撮影される訳です。例えフードで顔を隠してもこのアングルなら」
美波がスマホ画面を見せてきた。
スマホにはパーカーのフードを被った大也が写っていた。捕まった冷越我威やムーンリングの連中と一緒に。
「刹那忍軍とは2日後に停戦協定をするので『手を出すな』と緋色様が朝、忠告されたはずですが?」
「だから襲われて仕方なく迎撃したまでだよ」
「これのどこが『仕方なく』ですか? 明らかに罠にハメてるように見えますが? ムーンリングまで出動しているのですから」
「罠? それは誤解だって。オレは女子高生組長に連れられてホテルに出向いただけなんだから~。そしてた美人局よろしくホテルの室内に冷越威が待っていてさ」
「そもそもスマホはどうされたんですか?」
「あっ、何かを忘れてると思ったら」
大也はポケットをまさぐった。
ポケットから出した札束を手に幾つも持って、ポケットの奥からロッカーキーを出して、
「スマホの回収、お願いね」
大也が笑顔で鍵を渡すが、美波の興味は札束の方に移っており、
「そのお金、どうされたんですか?」
「親切なお爺さんがくれたよ」
「――どういう経緯で貰ったのか詳しくお聞かせて下さい」
「日本料亭で幹事長と呼ばれてる人が製薬会社の爺さんから『約束のお金です』って3000万貰ってるところに偶然出食わしちゃって忘れてくれるなら500万円くれるって」
「幹事長? 元ですか現ですか?」
美波の質問に、
「何、それ?」
大也が意味不明で不思議そうに美波を見たので、美波がスマホで検索して
「群青雄飛ですか?」
「いえ」
「田村京太郎?」
「違うよ」
「じゃあ、空志戸呑ですか?」
「違うけど。ってかソラシドドン? マジで、そんな名前なの?」
と見せて来て、4人目で、
「権藤イワシ?」
「その爺さんだよ。ってイワシって名前なの?」
権藤イワシを見せられて大也は頷いた。
「よりにもよって権藤イワシ、ですかーーこの男は政府機関・大鳥忍軍の政敵の政治家ですよ?」
「へ~、なのに500万円もくれるなんて太っ腹なんだね」
「他に何をされました?」
「別に。普通だよ」
と大也が答えたのは美波が『緋色の女だ』と認めた為だ。
幾ら美人でも口説けないのに長話しても仕方がなく、話を終わらせる為に適当に答えていた。
美波の方も大也が今日だけで『横浜の冷麺のアジト襲撃』『冷麺の捕縛協力』『権藤イワシと接触』と活動してるので、もうこれ以上の事は『やってないだろう』と勝手に決め付けてしまい、深くは追求せずに、
「では、私はこれで」
緋色に合流する為に玄関ホールを出ていったのだった。
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