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大也、名取トモコを救出する

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 まだその日の午前中である。

 都内の幹線道路を走行中のワゴン車の中では東国原会系の女子高生組長、名取トモコが抗争中のダブルドラゴンの中国人達に誘拐されて運ばれてるところだった。

「アナタ達、この私にこんな事をしてーー(バチッ)」

 啖呵を切ってる途中に中年の中国人に頬を張られて、制服姿のトモコは黙った。普通の女子高生じゃないので泣き叫ぶ事はない。殺気は出てたが。

 だが、ワゴン車が高速道路を時速80キロで走る中、突然、横ドアが開き、

「邪魔」

 ドア側に居た中国人1人をドアの外のアスファルトに捨ててパーカーのフードを被った大也が車内に入ってきた。

 拳銃を持ってる中国人が3人、銃を抜こうとしたが、大也が右手の人指指を指揮棒タクトのように振って、『手塚流忍法かまいたち・疾風(限定刃)』を使って拳銃を握る手を斬った。

 切断はしていないが、骨まで達する重傷である。

「貴様、顔を覚えたぞ」

 中国人が中国語で喚く中、大也も中国語で、

「だから?」

 馬鹿にするように笑い、ワゴン車の2列目の女子高生の手首を掴んで引き寄せ、

「私物は?」

「スマホをアナタが捨てた男に取られたわ」

「それだけ? 鞄とかは?」

「ないわ」

 との言葉と同時に、大也は(チンピラから巻き上げた)ジッポのライターを火を付けて投げて『手塚流忍法かまいたち・気流球』を使い、更に『手塚流忍法かまいたち・疾風(限定刃)』で車のガソリンタンクを車内側から斬って穴を開けて、同時に『手塚流忍法法かまいたち・大跳躍(高速)』で高速道路沿いのビルの屋上に逃げた。

「キャアアア」

 ジェットコースターよりも怖い空中高速移動でさすがの女子高生組長のトモコも年頃の悲鳴を上げた。





 ビルの屋上に着地した時には高速道路を走行中のワゴン車がボンッと爆発する。

 ガソリンにも引火して停車していた。

 都内の高速道路の事故だ。ニュースにもなるだろう。

 そしてワゴンの内蔵カメラもオジャン。いや、元々犯罪行為中だ。メモリーも抜かれてるか。

「大丈夫?」

「ありがと」

 と答えたトモコは赤メッシュ入りの黒髪ロングのポニーテールで大きなリボンをした眼鏡なしの色白ガリ勉タイプの美女だった。でも巨乳だ。

「アナタって忍者よね?」

「あれ、知ってるんだ? 意外に忍者って一般人は知らないんだけど」

「こう見えて東国原会系列の組長だから」

「へ~」

「私を助けたのは誰かが依頼したの?」

「いいや。今、人を殴りたい気分でさ。正義の味方ごっこをしてるだけだから」

 大也は当たり前のようにそう言って、トモコを見ながら、

「助けたお礼に後腐れなく抱かせて貰えたりはーー」

 図々しく質問したのだった。

「抱かせてもいいけど私、経験がないから後腐れは出来ると思うわよ」

 トモコのその言葉を大也は真剣に吟味ながら、

「具体的には? 結婚しろとか?」

「いいえ、私が惚れちゃって、ずっと思ってる重い女になるかもよ」

「ええっと、21億のマリファナ燃やしたのオレでも抱かせてくれる?」

 大也が取るに足らない天気の話でもするようにあっさりとダブルドラゴンとの抗争に至った秘密を暴露した。

 それを聞いたトモコのリアクションは、

「問題ないわ。ダブルドラゴンとの抗争で上座の年寄り連中が死んでくれた方が私にとっても都合がいいから」

 含み笑いだったので、

「じゃあ、お願いします」

「ーー因みに、アナタ、経験人数は何人くらいなの?」

「日本人はゼロ人。自力で口説いたのもゼロ人」

「ーーモテ自慢?」

「違う違う。任務で他国のハニートラップ要員が――」

「忍者だものね。名前は? 私は名取トモコ」

「オレは手塚大也」

「あれ、もしかして本名を名乗ってくれたの?」

「この場面で偽名なんて使わないでしょ、普通」

「――私が東国原会にアナタが麻薬を燃やした事を伝えたらどうするつもりなの? 日本中のヤクザに狙われるのに?」

「その時は日本国に貢献するかな。ヤクザを潰して回って」

「アナタ、相当悪いわね」

「ダメかな?」

「いえ、合格よ」

 トモコは大也にそう微笑み、大也はトモコのナンパに成功したのだった。





 ◇





 金馬リョウは途方に暮れていた。

 護衛兼監視対象の大也を完全に見失ったからだ。

 最初は逃げたのかと思ったが違った。

 後を追ったら駐車場で5人が白眼を剥いて倒れていて、脱がした女3人を撮影してた白ギャルに3万円を握らせて事情を聞くと、どうも悪人を殴る遊びを始めたらしい。

 他にも近隣で聞こえた悲鳴を拾って騒動に首を突っ込んでるようだ。

 お陰で完全に見失った。

 大也のスマホが駅前のコインロッカーの中に納められていたので、

「ただの勘だが・・・拙いぞ、これは」

 リョウは大也のスマホのGPSを追って、コインロッカーの前まで来てそう呟いたのだった。
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