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大也、大鳥颯太からアルバイト許可の言質を貰う
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大鳥邸恒例の夕食会で、もはや頭痛を覚えながら颯太が、
「大也君、今日は何をやったんだい?」
嫌味の意味合いも込めて質問した。
不知火学園の生徒32人を潰した事を詰問する為の前置きの言葉なのだから。
因みに今夜は緋色と宗次は不在である。
大也には『仕事』と言ってあるが、その仕事の内容は『大也のやらかしの後始末に出向いているから』だった。
何せ、今日だけで『中国人S級暗殺者タオ・チェン14の捕縛』『井森桃花の依頼』『不知火学園の上位生徒32人の再起不能』と色々ある。
「ヒールが折れてて困ってる女子アナさんを助けましたよ」
本日の夕食は中華だ。
とは言っても本格中華ではなく、春巻きとか肉団子とかシュウマイとかのお手軽中華だった。フカヒレは出たが。
「へぇ~、他には?」
「いやいや、女子アナの名前を聞いて下さいよ、当主」
「興味が無いからね」
颯太がそう答える中、大也が愉快そうに、
「酒鬼という氏でもですか?」
「ーー酒鬼だと?」
酒鬼一族は戦後の経済発展路線に反対して力を失った忍者一族だ。
実はかなりの危険思想の連中で、個々がその辺の忍者よりも強い。
「ええ。父親の名前を聞いたら酒鬼ミルオの娘さんでした。でも27歳で10歳年上なんですよねぇ~。オレが30歳の時は向こうは40歳。結婚はさすがに現実的じゃなくて」
「待て待て。酒鬼なんかと結婚する気か?」
「だって滅茶美人だったんですもん。強い子供を産めそうでしたし」
大也がそう眼を輝かせ、颯太は内心で『役立たずどもが』と大也の監視員を交代させる事を決めた
「男が40歳の時に女は50歳なんて止めておいた方が良いと思うぞ」
颯太はやんわりと止めた。
50代ながら『年の甲』という奴だ。頭ごなしに止めたら態度を硬化させる場合があるから。
それが功を奏したのか、大也も、
「ですよね~」
「他には何をしてたんだい?」
話を早く『不知火学園の件』に持っていきたかったので颯太はそう尋ねたが、これは悪手だった。まだ『酒鬼ミサともう会わない』との確約を貰ってないのだから。
「美人局に遭いそうになりましたよ」
「またか? 相手は誰だね?」
義務的に質問したが、
「黒髪でしたが白人でした」
またもや聞き捨てならない言葉が返ってきた。
「アメリカ? それともロシア?」
「さあ、そこまでは。絡まれてるのを助けただけで今回はお茶に誘われましたけど断りましたから」
「それが懸命だな。他には何かあったかな?」
「ラブホ窃盗犯を捕まえましたよ」
「何だね、それは?」
「スポーツカーで事故った女の人を助けたら『追われてる』とかで『ラブホテルに隠れましょう』ってなって『先にシャワーを浴びて来てね』って浴びてたら、その隙に風弾銃とスマホと財布を奪われて」
「待った。回収したんだろうね、風弾銃?」
「ええ、ちゃんと。マジでムカつきましたから」
「やはり女をこちらで見繕おうか、大也君?」
「いいですってば。自力で恋人を見つけますから」
「本当かね」
などと喋り、その後の話題も『ハンバーガーチェーン店の全メニュー制覇まで後少し』やら『バイクの免許を取っていいか』とか、どうでも良い話題になり、遂には我慢出来なくなって颯太の方から、
「『不知火学園の生徒を30人ほど潰した』と報告を受けたが?」
「ああ、ありましたね。何か竜崎とかいう連中の仇とか訳の分からない因縁を付けてきたのが」
何事もなかったかのように大也は感想を言ってから、
「そんな事よりもフラフラするのも何ですからそろそろバイトでも始めようかと思うんですが?」
「いいんではないか、働くのは」
と返答してから颯太が、
「不知火学園の件を軽く流さないでくれ。32人の顔と両手が潰されて再起不能と報告が上がってきているのだが、それも大也君がやったのかね?」
「ええ。2度と変な因縁を付けれないようにちゃんと念入りに潰しておきましたが、それが?」
「あのね~。あれは大鳥忍軍の次代を担う・・・」
「あれが? オレ1人を30人で囲んで潰そうとするようなのが? あり得ないんですが?」
「いや、確かにそうだが」
「それに弱過ぎですし。後、人の話も聞きませんし。大丈夫なんですか、大鳥忍軍? ちゃんと次代育ってます?」
大也が逆に心配してきて、
「それがあんまりでね」
『だから大也を呼んだんだが、失敗だったかな』と颯太はしみじみと思う破目になったのだった。
「大也君、今日は何をやったんだい?」
嫌味の意味合いも込めて質問した。
不知火学園の生徒32人を潰した事を詰問する為の前置きの言葉なのだから。
因みに今夜は緋色と宗次は不在である。
大也には『仕事』と言ってあるが、その仕事の内容は『大也のやらかしの後始末に出向いているから』だった。
何せ、今日だけで『中国人S級暗殺者タオ・チェン14の捕縛』『井森桃花の依頼』『不知火学園の上位生徒32人の再起不能』と色々ある。
「ヒールが折れてて困ってる女子アナさんを助けましたよ」
本日の夕食は中華だ。
とは言っても本格中華ではなく、春巻きとか肉団子とかシュウマイとかのお手軽中華だった。フカヒレは出たが。
「へぇ~、他には?」
「いやいや、女子アナの名前を聞いて下さいよ、当主」
「興味が無いからね」
颯太がそう答える中、大也が愉快そうに、
「酒鬼という氏でもですか?」
「ーー酒鬼だと?」
酒鬼一族は戦後の経済発展路線に反対して力を失った忍者一族だ。
実はかなりの危険思想の連中で、個々がその辺の忍者よりも強い。
「ええ。父親の名前を聞いたら酒鬼ミルオの娘さんでした。でも27歳で10歳年上なんですよねぇ~。オレが30歳の時は向こうは40歳。結婚はさすがに現実的じゃなくて」
「待て待て。酒鬼なんかと結婚する気か?」
「だって滅茶美人だったんですもん。強い子供を産めそうでしたし」
大也がそう眼を輝かせ、颯太は内心で『役立たずどもが』と大也の監視員を交代させる事を決めた
「男が40歳の時に女は50歳なんて止めておいた方が良いと思うぞ」
颯太はやんわりと止めた。
50代ながら『年の甲』という奴だ。頭ごなしに止めたら態度を硬化させる場合があるから。
それが功を奏したのか、大也も、
「ですよね~」
「他には何をしてたんだい?」
話を早く『不知火学園の件』に持っていきたかったので颯太はそう尋ねたが、これは悪手だった。まだ『酒鬼ミサともう会わない』との確約を貰ってないのだから。
「美人局に遭いそうになりましたよ」
「またか? 相手は誰だね?」
義務的に質問したが、
「黒髪でしたが白人でした」
またもや聞き捨てならない言葉が返ってきた。
「アメリカ? それともロシア?」
「さあ、そこまでは。絡まれてるのを助けただけで今回はお茶に誘われましたけど断りましたから」
「それが懸命だな。他には何かあったかな?」
「ラブホ窃盗犯を捕まえましたよ」
「何だね、それは?」
「スポーツカーで事故った女の人を助けたら『追われてる』とかで『ラブホテルに隠れましょう』ってなって『先にシャワーを浴びて来てね』って浴びてたら、その隙に風弾銃とスマホと財布を奪われて」
「待った。回収したんだろうね、風弾銃?」
「ええ、ちゃんと。マジでムカつきましたから」
「やはり女をこちらで見繕おうか、大也君?」
「いいですってば。自力で恋人を見つけますから」
「本当かね」
などと喋り、その後の話題も『ハンバーガーチェーン店の全メニュー制覇まで後少し』やら『バイクの免許を取っていいか』とか、どうでも良い話題になり、遂には我慢出来なくなって颯太の方から、
「『不知火学園の生徒を30人ほど潰した』と報告を受けたが?」
「ああ、ありましたね。何か竜崎とかいう連中の仇とか訳の分からない因縁を付けてきたのが」
何事もなかったかのように大也は感想を言ってから、
「そんな事よりもフラフラするのも何ですからそろそろバイトでも始めようかと思うんですが?」
「いいんではないか、働くのは」
と返答してから颯太が、
「不知火学園の件を軽く流さないでくれ。32人の顔と両手が潰されて再起不能と報告が上がってきているのだが、それも大也君がやったのかね?」
「ええ。2度と変な因縁を付けれないようにちゃんと念入りに潰しておきましたが、それが?」
「あのね~。あれは大鳥忍軍の次代を担う・・・」
「あれが? オレ1人を30人で囲んで潰そうとするようなのが? あり得ないんですが?」
「いや、確かにそうだが」
「それに弱過ぎですし。後、人の話も聞きませんし。大丈夫なんですか、大鳥忍軍? ちゃんと次代育ってます?」
大也が逆に心配してきて、
「それがあんまりでね」
『だから大也を呼んだんだが、失敗だったかな』と颯太はしみじみと思う破目になったのだった。
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