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大也、雑魚潰しにも余念がない

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 大也がハンバーガーチェーン店を出ると、男7人、女2人の制服集団が待っていた。

 生徒会長でもある黒髪眼鏡の長瀬虎太郎が代表して、

「手塚大也だな? ついて来い」

 ナメた言葉使いで大地に指図してくる。

 大地がチラッと金魚のフンである護衛兼監視の車両に視線を向けると別働隊の制服6人に制圧されていた。運転手や二階堂真名武が眠らされてる。

 大也の視線に気付いたリーゼントにゴールドチェーンのチンピラ学生、黒岩くろいわ文怒もんどが馬鹿にしたように、

「誰も助けは来ないぜ?」

「別に来なくてもいいけど、おまえら、不知火学園の生徒だよな? 何の用だ」

 そう大也が言い当てたのは全員が不知火学園の制服を着ていたからではない。

 次点の火室火晶の次に大也がチェックしていた黒髪ロングの風使いのクナイ女子が居たからだ。

「竜崎達の仇だ」

「誰だよ、それ?」

「半殺しにしただろうが?」

「知らないけど?」

 大也のこのリアクションはマジである。よっぽど印象に残ってない限り、大也は一々殴った相手の事を覚えてはいない。

「・・・ともかく、ついてくればいいんだよ」

 ここで『従わない』『戦闘をこの場で始める』との選択肢もあったが、大也はしおらしく従った。

 無論、『大人数に囲まれて渋々従った』のでも、『表通りで戦闘して周囲に迷惑を掛けたくなかった』との配慮からでもない。

 『向かった先にはもっと人数が居るんだろ? 全員殴ってやるよ』と好戦的な考えからの服従だったが、そんな事を大也が考えてるとは誰も思わなかった。





 5分ほど歩いて大也が連れて来られたのはフェンスで覆われた工事現場内だった。

 重機も入ってるが、工事の作業員は1人も居ない。

 そして大也が思ってるよりも少なかった。

 たったの30人ちょっとだ。

 実力はこの前の美人局連中よりも断然弱い。

 『出向いて損した』と大也は思い始めていた。

「悪いが潰させて貰うぞ」

 虎太郎が何か言ってるが、大也が、

「それじゃあ、開始って事で」

 と気軽に言った瞬間、『手塚流忍法かまいたち・疾風かまいたち(風の刃&音速衝撃波)』を使ってコンマ1秒ですれ違い、1秒後に遅れて発生した風の刃入りの衝撃波で全員を吹き飛ばしてKOしたのだった。

「さてと、二度とこんな事がないように念入りにヤキを入れておくか」

 大也はそう悪そうに吹き飛んだ拍子に半裸になってる30余人に振り返ったのだった。





 ◇





 その現場に最初に駆け付けたのは不知火学園の教師陣だった。

 不知火学園の上から30人の生徒が昼の授業をボイコットしたのだ。当然、『何かあった』と感づく。通常の高校では教師と生徒の間には隔たりがあるが、不知火学園は完全な上下社会の延長だ。教師の質問に屈する生徒も出る訳で、5限目の授業の中盤には教師数人が『竜崎兄妹の仇を取りに生徒達が出向いた』と把握して、慌てて授業を自習にして職員室で情報を共有して、捜索してようやく工事現場で生徒達を発見した時には、32人の全員の顔と両拳が潰されていた。男女問わずだ。顔を潰した拍子に歯も折られてる。鼻も曲がっていた。砕かれた拳の骨は粉々だ。素人目にも完治は不可能っぽかった。

 全員生きてるが、逆に殺さなかった方がこの場合、悪意に満ちていた。

 ここまでやったのは当然、大地であったが。

 教師陣は慌てて回収班に連絡したのだった。
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