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不動の戦後処理と波御世木の噂
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不動魔喪が戦死した事で、残る不動忍軍はその日の内に降伏を大鳥忍軍に伝えた。
元々、大鳥忍軍は政府機関と大所帯で、不動忍軍は民間の零細企業レベル。
最初から勝負にならなかったのだ。
大鳥家と運良く政略結婚出来た事で不動家は勘違いしてしまったのだろう。
結果、不動忍軍は大鳥忍軍の傘下に置かれる事となった。
会長室で、大鳥家の玄関ホールの防犯カメラの映像を見ながら、
「不動魔喪を一撃で? この時の大也の眼の色はどうなってる? 確認出来んのか?」
「こちらをご覧下さい」
次代の緋色が玄関ホールの階段の飾りの真鍮の反射映像を拡大する。
「黒のままか」
「はい。ですが、記録媒体では黒色なだけかも」
「ふむ。それにしても・・・僅か2時間で不動忍軍を傘下に収められるとはな。この際、蛍火と刹那も大也を使って・・・」
「御冗談を。内閣が夜に会長をお呼びと聞いてますが?」
「そうだった。面倒なだけだわい。何も知らない政治家連中の相手をするのは。緋色、代わりに・・・」
「『20代の若僧が出てきたぞ、馬鹿にされてる』と勘違いされたら大変ですから会長がどうぞ」
「やれやれだな。くれぐれも大也から眼を離させるなよ」
会長室でそんな会話が交わされたのだった。
◇
戦争があった日の大鳥邸の食堂には大鳥緋色、大鳥宗次、手塚大也の3人だけだった。
夕食はステーキだ。
昨夕と今朝に毒を盛られて、朝に『もう食べない』と言っておきながら、大也は警戒しつつも、執事が毒味をしたステーキを食べていた。
そして、その食事の話題はと言えば、
「どうやって不動魔喪を倒したんだい?」
「ですから、何度も言ってるように渡された忍具の風弾銃で撃ったら・・・って、本当にあの雑魚って強かったんですか?」
「兄上が渋々一族の娘を後妻に貰うくらいにね。攻撃が総てすり抜けて無敵の強さを誇ってたくらいだ」
「へぇ~、あれがねぇ~」
大也はそんな事を言いながら高級肉のステーキを食べ、余りに美味かったので200グラムお代わりした。
◇
同時刻、大鳥颯太は首相官邸に来ていた。
政治家と言えば高級料亭だが、高級料亭なんかで秘密が守られる訳がない。
本当にヤバイ会話の時は盗聴防止措置が施された首相官邸の一室と決まっていた。
呼び出したのは首相官邸の主の総理大臣ではない。
政府機関・大鳥忍軍の統括担当でもある官房長官の八幡原昭一だった。
70代の黒縁眼鏡と赤ネクタイがトレードマークの好々爺だが、50代の颯太に、
「何、戦争なんかしてくれてるんだよ~、颯太ちゃん?」
甘えるように言ってきた。
普段は威厳がある喋り方だが、裏での交渉時はこの喋り方だ。そしてこの喋り方で油断させて、交渉相手に無理難題を飲ませるのがこの男のやり方だった。
それが分かってるので颯太も素気なく、
「もう終結ですよ。身の程知らずの不動は傘下に収めましたから」
「そうじゃなくてさ~。不動は小銭で暗殺を請け負ってくれてるから意外に民間レベルで重宝してて、それが大鳥の傘下になったら民間が汚れ仕事を他に回して統制が取れなくなるじゃないか~」
「それらはちゃんと潰しますので」
「本当かい~」
「お約束します」
「そう言えばアメリカが渡せって言ってる小僧を沖縄県から都内に連れ込んだんだってね~」
「親を亡くした可哀想な子供ですので」
「・・・何をさせる気だい~?」
茶目っ気のある口調とは裏腹に昭一が眼鏡のレンズを冷たく反射させる。
「あえて言うなら大鳥忍軍の戦力強化ですね? 政府機関というぬるま湯に浸かってる為か、近年小粒しか育ってませんので、国内屈指の実力者を見せて」
「ええっと、忍者は予知とかは出来なかったよね~?」
「? 何か心配事でも?」
「・・・波御世木は全滅だよね~? 生き残りも1人もいない~」
「と聞いておりますが、それが?」
「いや、最近アメリカさんからチラッと妙な噂を聞いたのでね~」
「どのような?」
「韓国に1人逃げてて向こうで血を残したとか~。今の韓国政府をその末裔が裏から操ってるとか~」
「・・・すぐに確認させます」
「頼むね~。本当だったら洒落にならないから~」
その後も首相官邸の一室で最高機密の会話が官房長官と大鳥忍軍の総帥の間で交わされたのだった。
元々、大鳥忍軍は政府機関と大所帯で、不動忍軍は民間の零細企業レベル。
最初から勝負にならなかったのだ。
大鳥家と運良く政略結婚出来た事で不動家は勘違いしてしまったのだろう。
結果、不動忍軍は大鳥忍軍の傘下に置かれる事となった。
会長室で、大鳥家の玄関ホールの防犯カメラの映像を見ながら、
「不動魔喪を一撃で? この時の大也の眼の色はどうなってる? 確認出来んのか?」
「こちらをご覧下さい」
次代の緋色が玄関ホールの階段の飾りの真鍮の反射映像を拡大する。
「黒のままか」
「はい。ですが、記録媒体では黒色なだけかも」
「ふむ。それにしても・・・僅か2時間で不動忍軍を傘下に収められるとはな。この際、蛍火と刹那も大也を使って・・・」
「御冗談を。内閣が夜に会長をお呼びと聞いてますが?」
「そうだった。面倒なだけだわい。何も知らない政治家連中の相手をするのは。緋色、代わりに・・・」
「『20代の若僧が出てきたぞ、馬鹿にされてる』と勘違いされたら大変ですから会長がどうぞ」
「やれやれだな。くれぐれも大也から眼を離させるなよ」
会長室でそんな会話が交わされたのだった。
◇
戦争があった日の大鳥邸の食堂には大鳥緋色、大鳥宗次、手塚大也の3人だけだった。
夕食はステーキだ。
昨夕と今朝に毒を盛られて、朝に『もう食べない』と言っておきながら、大也は警戒しつつも、執事が毒味をしたステーキを食べていた。
そして、その食事の話題はと言えば、
「どうやって不動魔喪を倒したんだい?」
「ですから、何度も言ってるように渡された忍具の風弾銃で撃ったら・・・って、本当にあの雑魚って強かったんですか?」
「兄上が渋々一族の娘を後妻に貰うくらいにね。攻撃が総てすり抜けて無敵の強さを誇ってたくらいだ」
「へぇ~、あれがねぇ~」
大也はそんな事を言いながら高級肉のステーキを食べ、余りに美味かったので200グラムお代わりした。
◇
同時刻、大鳥颯太は首相官邸に来ていた。
政治家と言えば高級料亭だが、高級料亭なんかで秘密が守られる訳がない。
本当にヤバイ会話の時は盗聴防止措置が施された首相官邸の一室と決まっていた。
呼び出したのは首相官邸の主の総理大臣ではない。
政府機関・大鳥忍軍の統括担当でもある官房長官の八幡原昭一だった。
70代の黒縁眼鏡と赤ネクタイがトレードマークの好々爺だが、50代の颯太に、
「何、戦争なんかしてくれてるんだよ~、颯太ちゃん?」
甘えるように言ってきた。
普段は威厳がある喋り方だが、裏での交渉時はこの喋り方だ。そしてこの喋り方で油断させて、交渉相手に無理難題を飲ませるのがこの男のやり方だった。
それが分かってるので颯太も素気なく、
「もう終結ですよ。身の程知らずの不動は傘下に収めましたから」
「そうじゃなくてさ~。不動は小銭で暗殺を請け負ってくれてるから意外に民間レベルで重宝してて、それが大鳥の傘下になったら民間が汚れ仕事を他に回して統制が取れなくなるじゃないか~」
「それらはちゃんと潰しますので」
「本当かい~」
「お約束します」
「そう言えばアメリカが渡せって言ってる小僧を沖縄県から都内に連れ込んだんだってね~」
「親を亡くした可哀想な子供ですので」
「・・・何をさせる気だい~?」
茶目っ気のある口調とは裏腹に昭一が眼鏡のレンズを冷たく反射させる。
「あえて言うなら大鳥忍軍の戦力強化ですね? 政府機関というぬるま湯に浸かってる為か、近年小粒しか育ってませんので、国内屈指の実力者を見せて」
「ええっと、忍者は予知とかは出来なかったよね~?」
「? 何か心配事でも?」
「・・・波御世木は全滅だよね~? 生き残りも1人もいない~」
「と聞いておりますが、それが?」
「いや、最近アメリカさんからチラッと妙な噂を聞いたのでね~」
「どのような?」
「韓国に1人逃げてて向こうで血を残したとか~。今の韓国政府をその末裔が裏から操ってるとか~」
「・・・すぐに確認させます」
「頼むね~。本当だったら洒落にならないから~」
その後も首相官邸の一室で最高機密の会話が官房長官と大鳥忍軍の総帥の間で交わされたのだった。
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