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レッサーデーモン騒動

幹部生徒の権限を使う訳ね【マリンピーチside】

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 夕番の私は他の風紀委員達と一緒に夜の校舎の廊下を巡回していた訳だが・・・

 私の横にはエニスさんも居た。

 ヒラヒラのスカート姿で。

「エニスさん、どうしてここに居るのかしら?」

「もちろん、幹部生徒として風紀委員会に協力しようと・・・」

 やはりエニスさんは頭が良い。

「幹部生徒の権限を使う訳ね?」

「ええ、一般生徒の下校時間後の許可のない校舎滞在は校則違反だけど、幹部生徒だと校則違反じゃないでしょ? マリンピーチさんと一緒に居る為に幹部生徒の権限を使うなんて健気よね、私って」

 エニスさんがウィンクしてきた。

「私以外の風紀委員も居るんだから節度を守ってね?」

「来期の副委員長のシュガーナと、ダンスホールの崩落の魔力汚染の能力覚醒組で【雷鬼】を開眼したセレンでしょ?」

 エニスさんがちゃんと2人の風紀委員を言い当てた。

 紫メッシュに黒髪ミディアムで褐色肌の方がシュガーナ。副委員長のソフトナさんの妹だ。

 ピンク髪のロングで白ヘアバンド、小麦色肌の方がセレン。姉はグギーゲルさんだった。

 光源はセレナが持ってる魔石ランタンだけだ。

 その為、暗闇の中の廊下は死角だらけで、動く度に影が踊り、意外と緊張した。

 それがエニスさんには新鮮らしい。面白がってる。

 前委員長のパリナさまは一度もエニスさんに風紀委員会の仕事に噛ませなかったから。

「シュガーナの方もダンスホールの崩落の魔力汚染の能力覚醒組よね、【黒猫変身】だったっけ?」

「役に立たない能力ですけどね」

 シュガーナは自虐的に笑ったが、エニスさんは、

「あら、私が下宿してる騎士団長の屋敷の塀から6回も夜中に私の部屋を覗けるくらいは使える能力だと思うけど」

 何それ?

 私がエニスさんとシュガーナを見ると、シュガーナが眼を泳がせながら、

「え、え、ええっと・・・猫違いでは?」

 それだとバレバレよ、シュガーナ。

「この私が見分けられないと本気で思ってるの? リリーデーにお菓子をくれてなかったら半殺しにしてるところだからね、シュガーナ。ってか、アナタの能力は【黒猫】の時、【影渡り】が使えたわよね? 絶対に部屋には入って来ないでよ。驚いて反射的に攻撃しちゃったら笑えないから」

 とシュガーナに注意してから、エニスさんがわざとらしく私をチラ見して、

「おっと、リリーデーの話題は今のマリンピーチさんには禁句だったわね。失礼」

 そう笑った。

 本当に謝ってる訳ではなく、面白がってからかってただけだけど。

 私も苦笑を返した。

 元々、エニスさんに悪感情なんてないし。

 お姉さまには少しあるけど。

「あの、本当なんですか、委員長? ムーンローズさまがリリーデーに委員長に贈らず、エニスさまに贈ったって話?」

 新聞部が記事にしてないけど、もうミリアリリー女学園中が知ってるので、シュガーナがそう私に質問し、私も、

「ええ」

「・・・・・・最低」

 と呟いたのは魔石ランタンを持ってるセレンだった。

 エニスさんが、

「私が? それともムーンローズさまが?」

「妹にないがしろにした方です」

「よね。まさか、マリンピーチさんに贈ってないなんて」

 と言ったエニスさんが、私の腕を気軽に組んできて、

「ごめんね、マリンピーチさん」

「はいはい」

 と私はそのままエニスさんと腕を組みながら廊下を歩いた訳だけど、

「それはそうと、風紀委員の夜の巡回って意味があるの? 下校後は生徒も居ないのに?」

「それが時々居るのよ、生徒が」

「こんな時間に? 何してるの? 勉強?」

 それがエニスさんの想像の限界らしい。

 だが、現実はもっと大変で、

「一番多いのは待ち伏せでの告白ね」

「? はい?」

「ミリアリリー女学園は女子校だからズボンを穿いてる風紀委員は人気があるから。だからお目当ての風紀委員の巡回時間を知ってる生徒が待ち伏せたりしてね。情熱的な子だと・・・まあ、名誉の為に言わないけど」

「真っ裸や下着姿で迫る事もあります」

 シュガーナが口を滑らせた。

「シュガーナ。職務で知り得た情報の口外は禁止よ」

「すみません、委員長」

「ええっと、意外と大変なのね、風紀委員って」

「他にも変質者が侵入するってのもあります」

 リリーデーにお菓子を贈っただけあってシュガーナはエニスさんのファンな訳ね。エニスさんに積極的に喋ってる。

「校舎に? 人の居る寮じゃなくて?」

「良く分からない世界ね」

「はい」

「目撃情報の確認なんてのも風紀委員会の仕事よ」

 私も会話に加わった。

「寮から校舎を見たら、何かが見えたとかね」

「そうなの? そう言えば・・・このメンツは巡回にしては風紀委員会の中でも上位で占められてるわよね? もしかして何か出るの?」

「あれ、聞いてない? レッサーデーモンよ」

「レッサーデーモン? なら、校舎じゃなくて闘技場でしょ」

 エニスさんがさらりと言ったので、私が眼をパチクリして、

「闘技場って?」

「今居るわよ、レッサーデーモンが闘技場の試合場に」

 そのエニスさんの言葉で私達は顔を見合せてから、直後に闘技場に向かって廊下を疾走したのだった。
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