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マリンピーチの小間使い
ごめんなさい【マリンピーチside】
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ドレスを纏ってると、既にミリアリリー女学園を卒業したお姉さまが到着してる、と使用人に告げられ、お姉さまが待つ応接室に出向けば、お姉さまばかりかパリナさまも居た。
応接室にはこの2人だけだ。
「お2人して、どうされたんですか? って言うか、エニスさんが私の屋敷のメイドをしてたんですが、それってパリナさまの差し金ですか?」
私が問うも、2人は普段とは違う空気を醸し出していた。
パリナさまは私の質問には答えず、お姉さまを見て、
「ほら、ムーンローズさん」
その促しで、
「ごめんなさい、マリン」
お姉さまが私に頭を下げた。
それも、不服そうや嫌々や視線を逸らしながらではなく、真面目に私の顔を見て。
えっ? 何?
あの高慢ちきなお姉さまが私に頭を下げた?
お姉さまのキャラがキャラだけに、正直『気持ち悪いモノを見た』と思ったわ。
ああ、因みに、マリンは私の愛称よ。近い人はそう呼ぶの。
お風呂場ではエニスさんに身体を洗われたりして、変な事ばかりが起こってるので、私は少し警戒しながら、
「ええっと、何がでしょうか?」
「怒らないで聞いて上げてね、マリンピーチ。多分、怒るけど」
とパリナさんが言葉を添える中、お姉さまも私に頭を下げてるくらいだから正直に、
「去年の冬に、まあ、厳密には今年だけど、私の屋敷がヴァンパイアに襲撃された話を前にしたでしょ?」
「ええ、御両親が亡くなられてお姉さまも噛まれる寸前だったところを騎士団に助けて貰ったと。それが?」
「エニスなの、私を助けてくれたの。認めたくなくてマリンには言えなかったけど」
「そうだったんですか? では、エニスさんには私からもお礼を言わないと」
「それでね」
お姉さまが言いにくそうに、
「屋敷が襲われたの1月だったでしょ?」
「と伺ってます」
「そして、翌月にはリリーデーがあった訳で・・・お礼の意味も込めて、軽い気持ちで、購入したお菓子をエニスに贈ったのよ」
お姉さまがそうすまなそうに言って、私はじっくりと言葉を吟味してから・・・
5秒後には冷淡な視線を向けて、
「待って下さい。いつですか、贈ったの?」
私がお姉さまを見ると、お姉さまが、
「リリーデー当日」
視線を逸らしながらボソッと小さい声で白状した。
表情が冷たくなってるのを自分でも理解する中、
「私はあの日、厳戒態勢が解除になった後、先触れを出して、それからお姉さまの屋敷を訪ねて、購入品ですが自分でちゃんと選んだホワイトチョコでコーティングされた百合の模様のクッキーをお姉さまにプレゼントしました。ですが、私はお姉さまから何も貰ってません」
「軽いお礼の気持ちだったのよっ! まさか、パリナさんが今頃ブチキレるなんて思わなくて」
とお姉さまが言う中、隣のパリナさまが、
「怒るに決まってるでしょうがっ! どうして妹のマリンピーチにお菓子を贈らないでエニスに白百合のお菓子を贈ったのよっ! それもリリーデーにっ! 別の日にムーンローズさんがエニスにお礼を渡せばこんな馬鹿な事にはならず、丸く収まったのに、わざわざリリーデーに白百合のお菓子を贈ってっ! 下手したら痴話喧嘩で刃傷沙汰よっ! これはっ!」
そう激昂する中、
「じゃあ、さっきのエニスさんのお風呂のメイドも・・・・・・」
「ええ、私がエニスに罰としてやらせたわっ!」
パリナさまが認めて、
「マリンピーチ、アナタが気が済むまでエニスにやらせるからっ! 好きにコキ使ってくれていいわよっ!」
あら、そうなの?
私の表情が少し緩む中、それでもお姉さまの事は許さずにネチネチと、
「私、エニスさんの事、好きだったんですよ、結構? でもお姉さまが嫌ってるからお姉さまに義理立てしてリリーデーでは贈らなかったのに。お姉さまが妹を裏切って贈ってるだなんて・・・」
「だから違うんだって、マリン。そんな気持ちは微塵もなかったんだからっ!」
「だとしても無神経過ぎます、リリーデーに白百合のお菓子を贈るなんて」
「だって、シーズンでどこも百合の形のお菓子しか売ってなくて」
「お姉さまとは当分、口を聞きませんっ!」
「ええぇ~、許してよぉ~、マリン」
お姉さまが私にすがったけど、パリナさまが、
「そんな簡単に許しちゃダメよ、マリンピーチっ! ムーンローズさんに自分が何をやったのか反省させる為にも・・・・・・」
と喋ってると着替えを終えたエニスさんが入室してきて、軽い口調で、
「話は済みましたか?」
そう言ったけど、パリナさまが、
「済む訳ないでしょっ! エニス、アナタ、自分が何をやったのか理解しなさいっ! マリンピーチのお姉さまにちょっかいを出したのよっ!」
「ええぇ~、ムーンローズさまが助けたお礼をくれただけで・・・」
「リリーデーに白百合のお菓子を貰ったアナタの脇の甘さが招いた罰よっ! お詫びとして当分、この屋敷でメイドをやりなさいっ! いいわねっ!」
「ええぇ~。校則違反でもないのにぃ~」
「校則違反以前の信義の問題よ。それに『ええぇ~』じゃないっ! 『はい』よっ!」
「はぁ~い」
エニスさんが了承して、こうしてエニスさんはレコリーズ伯爵家に泊まる事となった。
少しラッキーかも。
と思ったけど・・・・・・
お姉さまとパリナさまの滞在中に応接室でエニスさんに、
「エニスさんは因みに、いつ、お姉さまにお菓子を貰ったの?」
「最後よ。・・・夜の8時を回った頃だったかしら? 夕食後に下宿先に訪ねて来られて」
「夜に訪問されたの? 私、夜にお姉さまに屋敷に訪問された事、まだないけど」
私がお姉さまを見ると、
「いやいや、普通はしないでしょ、そんな時間に訪問なんて。非常識なんだから」
お姉さまは常識人ぶってましたけど『エニスさんの下宿先には訪問した癖に』と私は思いながら、
「つまり、エニスさんにお菓子を贈るかどうか悶々として・・・そんな時間になってしまい、結局ははにかみながらエニスさんに白百合のお菓子をプレゼントしたと?」
「はにかんでないから。それはマリンの中での想像だから」
「それでその時のエニスさんの対応は?」
「もちろん、『ありがとうございます』ってこんな感じで」
エニスさんが私を抱き締めたのだった。
エニスさんの隠れファンの私もこの時ばかりはドキンッとはならなかったわ。
ピキッ。
こめかみに青筋が浮かべてたから。
「へぇ~、そうなの」
「この、おバカ。・・・違うのよ。すぐに払い除けたんだから」
とお姉さまがハグした事実だけは認めてたけど、
「ウソウソ、面喰ってて固まってた癖に。10秒後に嫌がったけど私が『あぁ~ら、助けられたお礼に来たのに嫌がるの?』とか『寒い中、申し訳ありません』とか粘って更に10秒。私が口を滑らせて『それにしてもリリーデーにお詫びだなんて、ちゃんとムーンローズさまのお気持ちは受け取らせていただきますね』とか言ってしまって、さすがに怒らせて払い除けられたけどね」
エニスさんが私に抱き付いたまま、そう教えてくれて、
「えっ、ムーンローズさん・・・アナタ、本当にエニスの事が?」
パリナさまが私同様驚いてお姉さまを見て、
「いやいや、エニスの方から抱き付いてきただけで・・・・・・」
「でも、いつものムーンローズさんなら即座に払い除けるのに・・・ねえ?」
パリナさまが私に同意を求めたので、私もそう思ったので頷くと、
「だから、あれは一時の迷いというか・・・色々重なって」
「ええぇ~、一時の迷いだったんですか? 私は嬉しかったのに」
エニスが私を抱き付いたまま茶化して、
「アナタは黙ってなさい、もうっ!」
お姉さまはエニスさんを睨んだのだった。
お姉さまはその後も凄く居心地が悪そうだったわ。
応接室にはこの2人だけだ。
「お2人して、どうされたんですか? って言うか、エニスさんが私の屋敷のメイドをしてたんですが、それってパリナさまの差し金ですか?」
私が問うも、2人は普段とは違う空気を醸し出していた。
パリナさまは私の質問には答えず、お姉さまを見て、
「ほら、ムーンローズさん」
その促しで、
「ごめんなさい、マリン」
お姉さまが私に頭を下げた。
それも、不服そうや嫌々や視線を逸らしながらではなく、真面目に私の顔を見て。
えっ? 何?
あの高慢ちきなお姉さまが私に頭を下げた?
お姉さまのキャラがキャラだけに、正直『気持ち悪いモノを見た』と思ったわ。
ああ、因みに、マリンは私の愛称よ。近い人はそう呼ぶの。
お風呂場ではエニスさんに身体を洗われたりして、変な事ばかりが起こってるので、私は少し警戒しながら、
「ええっと、何がでしょうか?」
「怒らないで聞いて上げてね、マリンピーチ。多分、怒るけど」
とパリナさんが言葉を添える中、お姉さまも私に頭を下げてるくらいだから正直に、
「去年の冬に、まあ、厳密には今年だけど、私の屋敷がヴァンパイアに襲撃された話を前にしたでしょ?」
「ええ、御両親が亡くなられてお姉さまも噛まれる寸前だったところを騎士団に助けて貰ったと。それが?」
「エニスなの、私を助けてくれたの。認めたくなくてマリンには言えなかったけど」
「そうだったんですか? では、エニスさんには私からもお礼を言わないと」
「それでね」
お姉さまが言いにくそうに、
「屋敷が襲われたの1月だったでしょ?」
「と伺ってます」
「そして、翌月にはリリーデーがあった訳で・・・お礼の意味も込めて、軽い気持ちで、購入したお菓子をエニスに贈ったのよ」
お姉さまがそうすまなそうに言って、私はじっくりと言葉を吟味してから・・・
5秒後には冷淡な視線を向けて、
「待って下さい。いつですか、贈ったの?」
私がお姉さまを見ると、お姉さまが、
「リリーデー当日」
視線を逸らしながらボソッと小さい声で白状した。
表情が冷たくなってるのを自分でも理解する中、
「私はあの日、厳戒態勢が解除になった後、先触れを出して、それからお姉さまの屋敷を訪ねて、購入品ですが自分でちゃんと選んだホワイトチョコでコーティングされた百合の模様のクッキーをお姉さまにプレゼントしました。ですが、私はお姉さまから何も貰ってません」
「軽いお礼の気持ちだったのよっ! まさか、パリナさんが今頃ブチキレるなんて思わなくて」
とお姉さまが言う中、隣のパリナさまが、
「怒るに決まってるでしょうがっ! どうして妹のマリンピーチにお菓子を贈らないでエニスに白百合のお菓子を贈ったのよっ! それもリリーデーにっ! 別の日にムーンローズさんがエニスにお礼を渡せばこんな馬鹿な事にはならず、丸く収まったのに、わざわざリリーデーに白百合のお菓子を贈ってっ! 下手したら痴話喧嘩で刃傷沙汰よっ! これはっ!」
そう激昂する中、
「じゃあ、さっきのエニスさんのお風呂のメイドも・・・・・・」
「ええ、私がエニスに罰としてやらせたわっ!」
パリナさまが認めて、
「マリンピーチ、アナタが気が済むまでエニスにやらせるからっ! 好きにコキ使ってくれていいわよっ!」
あら、そうなの?
私の表情が少し緩む中、それでもお姉さまの事は許さずにネチネチと、
「私、エニスさんの事、好きだったんですよ、結構? でもお姉さまが嫌ってるからお姉さまに義理立てしてリリーデーでは贈らなかったのに。お姉さまが妹を裏切って贈ってるだなんて・・・」
「だから違うんだって、マリン。そんな気持ちは微塵もなかったんだからっ!」
「だとしても無神経過ぎます、リリーデーに白百合のお菓子を贈るなんて」
「だって、シーズンでどこも百合の形のお菓子しか売ってなくて」
「お姉さまとは当分、口を聞きませんっ!」
「ええぇ~、許してよぉ~、マリン」
お姉さまが私にすがったけど、パリナさまが、
「そんな簡単に許しちゃダメよ、マリンピーチっ! ムーンローズさんに自分が何をやったのか反省させる為にも・・・・・・」
と喋ってると着替えを終えたエニスさんが入室してきて、軽い口調で、
「話は済みましたか?」
そう言ったけど、パリナさまが、
「済む訳ないでしょっ! エニス、アナタ、自分が何をやったのか理解しなさいっ! マリンピーチのお姉さまにちょっかいを出したのよっ!」
「ええぇ~、ムーンローズさまが助けたお礼をくれただけで・・・」
「リリーデーに白百合のお菓子を貰ったアナタの脇の甘さが招いた罰よっ! お詫びとして当分、この屋敷でメイドをやりなさいっ! いいわねっ!」
「ええぇ~。校則違反でもないのにぃ~」
「校則違反以前の信義の問題よ。それに『ええぇ~』じゃないっ! 『はい』よっ!」
「はぁ~い」
エニスさんが了承して、こうしてエニスさんはレコリーズ伯爵家に泊まる事となった。
少しラッキーかも。
と思ったけど・・・・・・
お姉さまとパリナさまの滞在中に応接室でエニスさんに、
「エニスさんは因みに、いつ、お姉さまにお菓子を貰ったの?」
「最後よ。・・・夜の8時を回った頃だったかしら? 夕食後に下宿先に訪ねて来られて」
「夜に訪問されたの? 私、夜にお姉さまに屋敷に訪問された事、まだないけど」
私がお姉さまを見ると、
「いやいや、普通はしないでしょ、そんな時間に訪問なんて。非常識なんだから」
お姉さまは常識人ぶってましたけど『エニスさんの下宿先には訪問した癖に』と私は思いながら、
「つまり、エニスさんにお菓子を贈るかどうか悶々として・・・そんな時間になってしまい、結局ははにかみながらエニスさんに白百合のお菓子をプレゼントしたと?」
「はにかんでないから。それはマリンの中での想像だから」
「それでその時のエニスさんの対応は?」
「もちろん、『ありがとうございます』ってこんな感じで」
エニスさんが私を抱き締めたのだった。
エニスさんの隠れファンの私もこの時ばかりはドキンッとはならなかったわ。
ピキッ。
こめかみに青筋が浮かべてたから。
「へぇ~、そうなの」
「この、おバカ。・・・違うのよ。すぐに払い除けたんだから」
とお姉さまがハグした事実だけは認めてたけど、
「ウソウソ、面喰ってて固まってた癖に。10秒後に嫌がったけど私が『あぁ~ら、助けられたお礼に来たのに嫌がるの?』とか『寒い中、申し訳ありません』とか粘って更に10秒。私が口を滑らせて『それにしてもリリーデーにお詫びだなんて、ちゃんとムーンローズさまのお気持ちは受け取らせていただきますね』とか言ってしまって、さすがに怒らせて払い除けられたけどね」
エニスさんが私に抱き付いたまま、そう教えてくれて、
「えっ、ムーンローズさん・・・アナタ、本当にエニスの事が?」
パリナさまが私同様驚いてお姉さまを見て、
「いやいや、エニスの方から抱き付いてきただけで・・・・・・」
「でも、いつものムーンローズさんなら即座に払い除けるのに・・・ねえ?」
パリナさまが私に同意を求めたので、私もそう思ったので頷くと、
「だから、あれは一時の迷いというか・・・色々重なって」
「ええぇ~、一時の迷いだったんですか? 私は嬉しかったのに」
エニスが私を抱き付いたまま茶化して、
「アナタは黙ってなさい、もうっ!」
お姉さまはエニスさんを睨んだのだった。
お姉さまはその後も凄く居心地が悪そうだったわ。
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