池田恒興

竹井ゴールド

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1567年、美濃制圧

古今無双の名将

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 【武田義信の死亡はこの年の11月説、採用】

 【武田義信の死は毒殺に見せた自殺説、採用】

 【狙いは武田家と跡継ぎの諏訪勝頼への楔説、採用】

 【武田信玄、義信の死を病死で処理した説、採用】

 【諏訪勝頼、義信毒殺の悪名を着せられた説、採用】

 【池田恒興、兼山湊奉行に任命された説、採用】

 【恒興ら重臣が森家の領地の政務処理に金山城に派遣された説、採用】

 【村井貞勝、1520年生まれ説、採用】

 【塙直政、1531年生まれ説、採用】

 【斎藤龍興、無事三好三人衆の元まで辿り着いた説、採用】

 【朝廷のはねじれ現象で将軍宣下が遅れてる説、採用】





 十一月。
 甲斐の武田家では躑躅ヶ崎館内に住む事を許された後継者候補の諏訪勝頼の許に、東光寺で幽閉中の武田義信から『会いたい』との書状が届いていた。

 遭いに行きたいのは山々だが、相手は幽閉中だ。

 勝頼が信玄に、

「兄よりこのような書状が。遭ってきてもいいんでしょうか?」

 そう伺いを立てると、信玄は表情一つ変えず、

「・・・四郎はどうしたい?」

「正直、子供の頃に喋って以来ですので話してみたいです」

「ふむ。まあ、良かろう。但し、付き添い人はこちらで付けるからな」

 と信玄が許可を出し、





 武田二十四将の馬場信春、山県昌景、武藤喜兵衛、小山田信茂が付き添うという厳戒態勢で会見に臨んだ。

 他にも200人もの兵が同行である。

 明らかに異常な布陣で東光寺に出向き、

「よく来たな、四郎。覚えているか、喋った事があるのだぞ」

 元気な姿の義信が勝頼を見て挨拶し、

「はっ、兄上様」

 その後も雑談や近況を喋っていたのだが話が弾み、幽閉先が寺なので茶坊主が茶を運んできた訳だが、それを何気なくのだが義信が一瞬動きを止めた後、

「げぶっ!」

 と吐血し、

「あ、兄上? 大丈夫ですか? 誰か来てくれっ!」

 心配した勝頼が義信に近寄って抱きかかえる中、義信は勝頼の襟首を掴んで、信じられない、といった顔で、

「・・・実の兄を殺してまで武田の家督が欲しかったのか、おまえは・・・」

「へっ? 違います、オレじゃありません」

「・・・なら、誰が・・・(バタッ)」

 その言葉を残して義信は倒れたのだった。





 騒ぎを聞き付けて廊下や襖が開いた隣室から勝頼の付添人が雪崩れ込んできて、その吐血現場を見たキレ者の馬場信春と武藤喜兵衛は、

(突然の呼び出しで何があるのかと思えば・・・殺されるくらいなら、その前に武田に仇なしてやれという訳か。そこまで御曹司は駿河遠征に反対だったとは)

(・・・義信様の最後の置き土産という訳か。これで家中はズタズタだな。四郎殿の評判が落ちるのと一緒に)

 そう思ったが、素直というか単純というか、そちら側に属す山県昌景と小山田信茂は、

「まさか、廃嫡されたとはいえ、実の兄を毒殺した?」

「えっ、今回の訪問は義信様の殺害が目的だったんですか?」

 と声に出して質問し、同じくそちらの部類に属する勝頼は、

「――なっ、違うわっ! おまえ達の仕業の癖にオレの所為にするつもりかっ!」

 そう激怒したが、状況はどう見ても勝頼がやったとしか見えず、





 躑躅ヶ崎館で東光寺からの報告を聞いた信玄は、

(最後までこれか、太郎の奴め。そして四郎はまんまと罠に嵌まったか、やはり武田の家督は 無理かものう)

 そう思いながらも、

「病死で処理するように伝えよ」

「10人以上が吐血した晴信様を見ておりますが?」

 影武者でもある信廉が信玄に問う中、

「構わん。どうせ自害説や陰謀説は流れようからな」

 そう信玄は処理したのだった。





 これが武田晴信の死の真相である。





 家中の騒ぎを嫌った信玄が病死で処理して、甲陽軍鑑にも自害と書かれたのだが、





 統制の厳しい武田領であっても人の口には戸は立てられず、義信の死は毒殺だと伝わった。

 信玄が殺した説と勝頼が殺した説で。

 信玄ならば自害命令を義信に出せたので勝頼が殺した説が優勢となり、勝頼の評判がガタ落ちしたのは言うまでもない。




 だが、それ以上の問題がこの時、発生していた。

 誰もが見逃していた勝頼の心の動きである。

 義信が命を賭した一手によって勝頼は完全に義信の術中に嵌まっていた。

 何せ、世間の風聞とは裏腹に毒を盛った犯人が勝頼でない事は勝頼自身が一番良く分かっているのだから。

 勝頼の中では(義信が毒で自害したと思っていないのだから)犯人は父、信玄以外にあり得なかった。

 とは言え、あの時、信玄は東光寺に居なかった。

 つまり、実行犯は信玄の密命を受けてあの場に居た馬場信春、山県昌景?武藤喜兵衛、小山田信茂となった。

 その結果、真っ直ぐ過ぎる勝頼の中では信玄とその四人に対して不信感が増大していったのだった。





 そして、その事に武田家中の者達は誰一人気付いていなかった。





 ◇





 美濃の岐阜城では、美濃の制圧に伴い、遂には京の朝廷の使者までがやってくる事となった。

 内容は「美濃の御料所(幕府の直轄領)の回復」と「誠仁親王の元服の費用の捻出」で、

 信長も柄にもなく固くなりながら、

「まずもって心得存じ候」

 事前に教えられた難しい文句を返したのだが、訳せば、

「考えておきます」

 だった。





 使者が帰ってから、書状を自慢げに見せて、

「ほら、勝。京の御上がこのオレを『古今無双の名将』と褒めてるぞ、ここだ」

 と御機嫌に喜んでいた。

 重臣の恒興も使者を迎える場の末席に居たので、

「おめでとうございます、信長様」

「まあな」

「それで『古今無双の名将』様は来年、南近江と伊勢、どっちを御取りになられるのですか?」

「伊勢が先だな。滝川が面白い事を尋ねてきたし」

「? どのような?」

「神戸家に織田家の人間を養子に送り込む事は可能かと。それで伊勢の有力国衆の家を乗っ取れるんだとさ。どう思う、勝は?」

「ーー本当にそんな事で伊勢の国衆が乗っ取れるんですか?」

「らしい」

「なら、かなりお得ですね。織田家は信秀様が頑張ったお陰で子沢山ですから」

「勝も賛成か。ならやってみるか」

 信長は終始御機嫌だったのだった。





 ◇





 浅井家との婚姻同盟で織田家が得をした事の一つは一々、北近江の国友村まで銭を運んで鉄砲を注文しなくてよくなった点だ。

 昨年は恒興が苦労して国友村まで銭を運んで鉄砲100挺を注文したが、その注文した鉄砲100挺は浅井家の家臣団が責任を持って国友村から岐阜城まで届けてくれた。

 そして信長が新たに七千貫の銭を出して更に鉄砲を注文だ。

 その銭も鉄砲100挺を運んできた浅井家の家臣団が運んで帰ってくれた。





 恒興の次なる仕事は軍務ではなく政務だった。

 それも、

「勝、兼山湊の奉行に任命するから東美濃を発展させるようにな」

 岐阜城で信長から言い渡されており、

「嫌ですよ、信長様。兼山湊は三左殿が貰った美濃の新領じゃないですか。文官を派遣して下さいよ」

「三左がその文官に勝を指名したんだから仕方がないだろ」

「いやいや、オレは忙しく・・・」

「やれ、勝。金山城は東美濃の防衛線なんだから」

 それは本当だ。

 そのすぐ東は遠山氏と土岐悪五郎の領地で油断ならないのだから。

 その奥には武田の領地が控えている。

 同盟を結んでいるとはいえ、油断する訳にはいかず、信長も、

「調略されても三左だと後手に回る可能性がある。そちらにも目を光らせよ、よいな」

「まあ、いいですが。数人使える文官を貸して下さいね」

「良かろう。正月までには帰ってこいよ」

「は~い」

 こうして信長命令で恒興は兼山湊まで出向く事となった。





 この東美濃への道連れとなったのは、

「鉄砲奉行で黒母衣衆のオレがどうして。それも・・・」

 佐々成政と、

「そう嘆くな、婿殿」

 織田家の奉行衆筆頭の村井貞勝だった。

 当然、重臣の中の重臣だ。

 恒興が子供の頃から貞勝は織田家に仕えている。

 なので恒興も当然、顔見知りだ。子供の頃の悪さを知られてるので頭が上がらない。

 成政に至っては室の父親なので、頭が上がらなかった。

「そうだぞ。光栄な事なんだから」

 そう言った最後の一人、塙直政も重臣だった。

(羽根を伸ばして遊べね~)

 恒興はそう思いながらも、

「お気に入りの家老が泣きつけば信長様はこれだけの重臣を派遣するって事か」

 苦笑した。

 この4人だけでは当然ない。

 重臣4人それぞれにお付きの家臣が居て金山城の城下を発展させる為に津島の商人も同行なので30人以上の団体での移動となった。





 冬の木曽川を数隻の舟で兼山湊まで登ると、

「おお、良く来てくれた。さっそくやってくれ」

 織田家の家老の森可成が出迎えてくれたが恒興はうんざりと、

「5日で終わらせてさっさ帰りますからね」

 そう宣言して政務に当たった。





 連れてきた尾張の津島商人と地元の東美濃の兼山商人、それに織田家の奉行の三者で、塩や海魚の干物、酒や米を定期的に河運での搬入や、売る材木の値段を決める。

 だが兼山湊で一番の銭の匂いがするのは材木ではない。

 この地に根付いてる蚕糸産業だ。

「あれ? 蚕糸の年間税収、三万貫を越えてないか? それに舟質や塩の専売権を加えたら・・・」

 恒興が算盤を弾いて計算すると、

「気付いたか、勝三郎。この地は山の中とは思えないくらい旨味のある領地なのだよ」

 貞勝が答えた。

「さすがは三左殿ですね。良い領地を貰ってる」

「本人は気付いてないから、奉行のワシラが噛まねば悪徳商人にいいようにボラれるがな」

「いやいや、当方は善良な商いをしておりますよ」

「我々、兼山も善良な商人あきんどですから」

 津島商人と兼山商人が弁明する中、

「利益を上げるのは程々にな。この地を治める可成は間違っておぬし達を殺しても信長様が笑って不問にするくらい信頼されてるのでな」

 貞勝が警告し、

(ったく。領主は領地経営が素人同然の三左殿で、銭に群がる海千山千の豪商達。そして領地は武田の最前線で、寄騎に蝮の牙まで居る、と。問題だらけだな。信長様が村井のオッサンを送り込む訳だぜ)

 恒興は呆れ果てたのだった。





 本当に五日で兼山湊と金山城下の政務を終えたのだが、

「以降は兼山湊奉行に聞かれるように」

 貞勝の言葉に恒興は、

「えっと、文官を派遣して貰えるんですよね?」

「勝三郎の仕事だと信長様からは聞いたが?」

「いやいや、やりませんって」

「ちょいちょい、遊びに来ていいぞ、勝三郎。息子達も喜ぶから」

 政務を丸投げの可成が堂々と言い、恒興は、

「信長様に聞いてみます」

 とだけ答えて、岐阜城に帰っていったのだった。





 岐阜城では信長が報告を聞き、

「御苦労だった。以後は奉行の勝が受け持つようにな」

「ええ~」

「三左の家族が金山城ごと武田に抱き込まれたら洒落にならんからな。眼を光らせておけよ」

「は~い」

 そう恒興は答える破目になった。





 恒興が帰った後、評議の間には貞勝が呼ばれて、

「勝はどうであった、貞勝?」

「文官としても使えますね。計算も正確ですし、仕事も我々よりも早いので」

「兼山湊奉行を務められると思うか?」

「そちらは余裕で」

「では津島奉行は?」

「仕事量が多いと無理かと。金山城でも仕事の息抜きに可成の子供達と木刀で遊んでましたから」

「それがなければのう」

 信長はそう呟き、恒興の配属先を考えたのだった。





 ◇





 流言というのは本当に厄介で、美濃を平定したその年の冬。

 久々利頼興が武田と通じてるだの。

 安藤守就が朝倉と通じてるだの。

 美濃の国衆が寝返るという流言が面白おかしく大量に流布された。





 誰がやったのかは調べるまでもない。

 取り逃がした斎藤龍興の一派の仕業だろう。

 流言を流された美濃の国衆達が書状や直接会って弁明し、信長も笑いながら、

「よいよい。そのような流言を一々相手にしていたらきりがないからな」

 そう答えたが、家臣達は大変だ。

 一応は調べる事になるのだから。

 その中の一つに、





 柴田勝家が伊勢でわざと斎藤龍興を逃がした。





 というのがあったので、恒興が直々に柴田勝家を取り調べる事となった。

「わざと逃がしたのか?」

「ないない」

 勝家はそう正直に答えた。

「だよな~。もし蝮の三代目と通じてたら悪知恵の柴田なら自分の担当の鹿垣じゃなくて、別の場所から逃がしてるし~」

「勝三郎、おまえな~。オレを何だと思ってるんだ?」

「それよりも聞いたか?」

「ああ、オレが甲斐で幽閉されてた武田の嫡子を毒殺したっていうあれか? そんな訳がないだろうが」

「違う、そっちじゃない。市姫を狙ってた柴田が嫁ぎ先の北近江の浅井を潰そうと暗躍してるって方だ」

「そんな訳あるか」

 勝家が呆れ、恒興もそう思う中、

「それら最近の流言の出所を知ってるか?」

「畿内の堺だろ」

「つまり、そこに斎藤龍興は居る訳だ。殺しに行くのか?」

「いや、長島から逃げた時点で信長様に止められた」

「それだけど、どうして逃がしたんだ? 柴田らしくもない」

「まだ疑ってるのか? 長島の願証寺は広いんだよ。一々、舟で移動しないと駄目だし」

「確かにな~」

 と恒興は苦笑したのだった。





 ◇





 河内飯盛山城には美濃、伊勢長島、堺を経由してやってきた斎藤龍興が三好三人衆の一人、三好長逸と近江から足を運んだ六角義治と謀議を重ねていた。

「まだ朝廷から将軍宣下は降りませんので?」

「ああ、朝廷の権力争いが絡んでて反対派が妨害してるらしい」

「一刻も早く、新しい将軍様に織田に美濃の返還命令を出して欲しいのですが」

「そんな命令で本当に返すと思っているのか?」

「まさか。拒否したのを引き金に美濃で暗躍するんですよ」

 そう笑った龍興を見て、長逸は「こやつ、年の割に使える」と思ったのだった。

 六角義治がさらりと、

「将軍宣下が出るように京の朝廷を兵で囲んで威圧すればいいのでは?」

「いや、それは駄目だな。それで兵が暴発して将軍を殺してるから」

「おや、その口ぶりですと?」

 龍興が興味を示すと、

「ああ、殺す気はなかったのだよ。お陰で悪名が付いて苦労しておる」

「では松永の仕業という事ですか?」

「そうだ」

「それよりも将軍宣下だが」

 義治が議題を戻して、その後も密議を重ねたのだった。





 ◇





 十二月。

 甲斐の躑躅ヶ崎館では諏訪勝頼に嫁いだ龍勝院が嫡子の武王丸を産んだ。

「よくやったぞ」

「・・・はい、勝頼様」

「休むと良い」

 弱々しい龍勝院を休ませ、信玄の方も孫の誕生に喜んだのだったが。





 一部で「義信を毒殺した」と思われてる勝頼の評判は最悪だった。

 「義信が自分で毒で自害をした」という説明では納得出来ない者達が勝頼毒殺説を支持した為だ。

 一番怒ってるのは三条夫人や武田の一門衆で、信玄の五男で仁科家の相続が決まっている五郎と第四次川中島で死んだ武田信繁の娘を娶らせて信玄の後を継がせる計画を企てており、信玄はその火消しという無駄な事に時間を費やす破目になっていた。

(織田は美濃を平らげたというのに。武田は駿河侵攻にまだ動けぬか。太郎め、最後まで祟りおるわ。だが毒の出所も気になる。北条や今川が渡してる可能性は多分にあるからな。つまりはやつらが黒幕な訳か。さすがに長尾や美濃の竹中ではないだろうからのう)

 信玄は義信の自害の毒の出所に注目したのだった。





 当然、幽閉中の義信に毒を渡したのは室である今川夫人だったが、





 そちらに気を取られた為に信玄以下誰もがまだ諏訪勝頼の心中を見逃していた。

 勝頼の中では「信玄による毒殺説」が更に肥大化し、

(兄を殺すなど信じられぬ。命じられて実行した馬場、山県、武藤、小山田の四人も)

 不信感を募らせていったのだった。





 ◇





 さて、この時期の京の朝廷内での最大の論争は、三好三人衆が推薦してきた足利義栄を次の征夷大将軍として認めるかどうか、である。

 当然、摂関家と呼ばれる公家の家格の頂点の近衛家、一条家、九条家、鷹司家、二条家の当主の間でも議論が交わされていた。





 応仁の乱以降、戦国時代を終わらせるべく、この時代の公家は有力武家との連携強化を図っており、





 近衛家は足利義晴、足利義輝の二代に渡って姫を出しており、

 二条家は周防の大内家と接触、

 一条家は土佐に下向して、土佐一条家を立ち上げてる。





 無論、戦国大名に近付くのは危険な行為でもあり、

 足利義輝の妻の近衛家の姫は永禄の変で命辛々脱出したが、母親の慶寿院の方は自害、

 二条伊房親子に至っては陶房による大内家乗っ取りが起こった「大寧寺の変」に巻き込まれて殺害、

 の憂き目に遭っている。





 だが、それらの接近は意外に重要な事で、





 越前に逃げた足利義秋は近衛派、

 三好三人衆が擁立する足利義栄は父の代で都落ちしており、摂家も交流していなかったが、それでも大内義興の娘を正室としてるので二条派、





 となっていた。





 だが、明確な住み分けをしていなかった事から、

 三好三人衆が畿内に連れ込んだ足利義栄に近衛前久が真っ先に近付いた為に、出遅れた二条晴良は越前に逃げた足利義秋支持に回るという「ねじれ現象」となっており、





 その面倒臭い状況の中で次の将軍選出を朝廷内で協議となれば、当然、足利義栄を横取りされた二条晴良が黙ってはおらず、

「いやいや、いくら足利一門とはいえ、先代の義輝殿を殺した者達が推薦する人物を武家の棟梁に推薦するのはいかがなものかと」

「しかし、征夷大将軍が空位では問題でしょうに」

 一刻も早く戦国時代を終わらせたい近衛前久がそう主張した。

「そこはそれ、越前に居る義輝殿の弟に期待を・・・」

「いつ来るので?」

「それは無論、近々」

 言質を取られるような馬鹿は公家の五摂家自体が朝廷に出仕させない。

 よって上手く逃げたが、この二人の対立のお陰で他の公家はどうする事も出来なかった。

 議題が征夷大将軍なだけに、間を取って両方に与える訳にもいかない。

 お陰で長々と朝廷内で協議だけが続き、征夷大将軍は空位となったのだった。





 登場人物、1567年度





 諏訪勝頼(21)・・・武田信玄の四男。諏訪姓を名乗る。母親は諏訪御寮人。義信事件後に後継者候補として躑躅ヶ崎館に移る。義信毒殺で信玄と重臣達に不信感を募らす。

 能力値、甲斐の虎の子C、義信の楔★、騎馬隊最高C、信玄への忠誠D、信玄からの信頼E、武田家臣団での待遇D

 武田義信(30)・・・武田の嫡子。信玄の息子。正室は今川義元の娘。物流の申し子。越後と駿河の交易路を開拓。中山道を整備。信玄追放計画が露見して二年幽閉後に自決。

 能力値、甲斐の虎の後継A、銭稼ぎの義信S、風林火山雷B、出身国の運の悪さS、武田家臣団での待遇SS、命を賭して武田家に諫言するSS

 馬場信春(52)・・・武田家の家臣。武田四天王の一人。官位、美濃守。不死身の鬼美濃。勘助の暗部組織と軍略書を継承。義信の自決現場に立ち会う。

 能力値、不死身の鬼美濃の信春A、風林火山陰S、道鬼斎流軍略を継承A、信玄への忠誠A、信玄からの信頼B、武田家臣団での待遇SS

 武藤喜兵衛(20)・・・武田家の家臣。甲斐源氏の武藤家の養子。真田幸綱の三男。義信の自害を見抜くが後の祭りだった。

 能力値、表裏比興の者E、風林火山陰C、信玄の右目B、信玄への忠誠S、信玄からの信頼B、武田家臣団での待遇C

 山県昌景(38)・・・武田家の家臣。譜代家老衆。武田四天王の一人。赤備えを率いる。旧名、飯富源四郎。武骨者で軍議は分かるが謀略は無理。義信殺害を勝頼だと決めつける。

 能力値、赤備えの山県S、一騎駆けの昌景S、風火雷B、信玄への忠誠S、信玄からの信頼A、武田家臣団での待遇A

 小山田信茂(22)・・・武田家の家臣。譜代家老衆。武田二十四将の一人。猪武者で裏の裏は読めず。勝頼が毒殺したと決めて掛かる。

 能力値、投石の信茂C、義信の思う壺A、勝頼を殺害犯と決めつけるS、信玄への忠誠A、信玄からの信頼C、武田家臣団での待遇B

 佐々成政(31)・・・信長の近習。近江源氏の佐々氏の庶流。織田信安の元部下。政務が有能。正室は村井貞勝の娘。柴田勝家の寄騎。鉄砲奉行。黒母衣衆。

 能力値、まさかの文官肌A、不運の佐々A、豪傑への尊敬A、信長への忠誠B、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇B

 村井貞勝(47)・・・織田家の重臣。奉行衆筆頭。村井閨閥を構成中。平手政秀の後を引き継いで金庫番となる。信長の信頼も厚い。外交、朝廷工作にも関わる。

 能力値、織田家の金庫番の貞勝A、織田家の家宰B、朝廷工作も担当B、織田二代への忠誠A、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇A

 塙直政(36)・・・織田家の重臣。赤母衣衆。信長の側近官僚。

 能力値、銭数えの直政A、赤母衣衆B、政務も出来るS、信長への忠誠A、信長からの信頼A、織田家臣団での待遇B

 六角義治(22)・・・六角16代当主。六角義賢の嫡子。母は畠山義総の娘。観音寺騒動を経て六角家式目に署名させられる。足利義秋が名指しした六悪人の一人。

 能力値、六悪人の義治A、若き六角当主E、父よりも劣るD、六角氏式目に署名B、突然、家臣達が総スカンA、六悪人同盟A

 龍勝院(14)・・・諏訪勝頼の正室。父は遠山直廉。母は織田信長の妹。織田信長の姪で養女。勝頼の嫡子、武王丸を産む。

 能力値、織田と遠山の姫A、勝頼と婚姻B、武王丸を産むA、難産で体調を崩すA、躑躅ヶ崎館で身動き取れずC、音信の手段なし★

 二条晴良(41)・・・二条家14代当主。父は関白、二条伊房。母は九条尚経の長女、経子。妻は貞敦親王の娘。賢臣。近衛を目の敵にしている。

 能力値、伏魔殿の晴良S、賢臣の二条B、朝廷の実力者A、近衛に勝ちたいC、総ては御上の為S、朝廷での待遇☆

 近衛前久(31)・・・近衛家17代当主。父は近衛植家。母は久我慶子。上杉輝虎は盟友。関東事情に詳しい。近衛家は公家の頂点。

 能力値、公家らしからぬ行動力の前久S、近衛家の異端児A、輝虎との血書の起請文A、戦国時代に終焉をS、総ては御上の為S、朝廷での待遇☆☆
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颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

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