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1564年、犬山城落城
織田信清、逃亡
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【稲葉山城騒動の波及で犬山城の兵糧問題が逼迫してる説、採用】
【投降した犬山城の元家老、和田定利、結構粘って信長に協力しなかった説、採用】
【織田信清、脱出する為に兵を犠牲にした説、採用】
【織田信清、甲斐方面に逃げた説、採用】
竹中重治の稲葉山の占拠によって美濃の国衆は大いに動揺したが、一番動揺したのは犬山城主の織田信清であった。
「はあ? 二月に稲葉山城が落ちていた? 何をやっておるのだ、美濃の連中は?」
だが、そこまでなら問題はない。
問題が出始めたのは兵糧の運搬を担当する宇留間城の動きが怠慢になった事だ。
犬山城は第二の城門が突破された事で兵糧庫が抑えられて深刻な兵糧不足だというのに。
それなのにその命綱の兵糧の運搬が滞り始めた。
「犬山城の将兵に飢えろと言うつもりかっ!」
そして兵糧不足はそのまま犬山城の山頂に籠もる信清軍の兵の士気に直結し、
「もう駄目だな」
「ああ、攻め殺される前に逃げよう。川を下ればどうにかなるだろ」
夜に縄を伝って木曽川から脱走する兵が出始めた。
まだ数人程度だったが、これにより犬山城の落城は目前へと迫ったのだった。
◇
そして犬山城攻略のもう一つの重要な要素は、犬山城の元家老、和田定利の協力である。
尾張の黒田城などは、黒田城主で犬山城の家老だった和田定利が捕縛された状態で信長に降伏した直後の昨年に、佐久間信盛の、
「和田殿が居ないのならば黒田城の落城は間違いあるまい。攻め落ちた後だと城の者は皆殺しだぞ? 悪い事は言わん。開城するように指図されい」
との説得で、定利が認めた書状一枚で簡単に開城している。
だが、信長軍はそれだけでは満足せずに、その後も信盛が、
「犬山城の弱点も教えて欲しいのだが。家老の和田殿ならば知っていよう?」
「ありませんよ。犬山城は山頂部だけでも難攻不落ですから」
「本当かね?」
「ええ、木曽川からの兵糧を止めるしかないかと」
内心では信長に屈していない定利がなかなか犬山城の弱点を教えなかった。
だが、美濃稲葉山城の竹中重治の乗っ取りに加えて、
信長が京工作をしたついでに将軍義輝に仕える兄の和田惟政に書かせた、
「織田信長殿に協力するように」
との書面が届き、定利も遂には信長に完全に屈し、信盛が、
「御協力願えますな?」
「ええ」
「では、犬山城の弱点をお教え下さい」
「・・・今の犬山城の弱点は火攻めですよ」
定利がそう口を割った。
「ん? 犬山城には木曽川から無限に水が汲めるはずだが?」
「山頂部だけだと水の汲める場所が決まっているのですよ。桶の数も少ない上に水汲み場所も限られている。山頂なので木曽川から水を汲むにしても手間も掛かりますし、晴れが続いた日の後に火矢で物見櫓を燃やせば落城しますよ」
「山頂の物見櫓だけでいいのか? 本城は?」
「落城させた後に使うのであれば燃やす必要はないかと」
「ふむ。わかった。御助言感謝致す」
信盛が礼を言い、
聞き出した事をすぐに信長に報告すると、
「よし、五郎左にやらせてみい」
あっさりと許可された。
犬山城の最終城門の前まで兵を進めた丹羽隊が、
「放て」
丹羽長秀の合図で火矢を射ていく。
火矢を次々に物見櫓に命中させた。
守り手の織田信清は、
「何をやってるんだ、あいつらは?」
敵側の意図が読めなくて不思議がった。
当然だ。
犬山城には無限の水甕の木曽川がある。
「水で消せい」
そう命令して実行させるが、最初は水を掛けて火矢の火を消していたが、すぐに雑兵の水を掛ける作業が止まった。
「どうした、水をどんどん掛けろ。水なら無限に木曽川にあるだろうがっ!」
「それが、水汲みが追い付きません」
「何だと?」
部下の報告に驚いて水汲み現場の櫓に向かうと、雑兵が必死に遠い木曽川から水を汲んでる。
「縄を引けっ!」
「早く引き過ぎるなよ。桶が揺れて水が零れるから」
「よし、汲めた。さあ、いってこい」
「おう」
移し替えた桶の水を持って雑兵が走り出す。
全員真剣だ。
無駄な動きは一切ない。
それは信清が保証する。
だが、それでも水は間に合わず、
ゴオオオオッ。
遂には最終城門の横にある物見櫓は燃えたのだった。
それを間近で見る破目になった信清が、
(まさか、このような弱点が我が犬山城にあったとは・・・兵糧不足以前に、もし本城に火矢を射られたら犬山城は落ちるぞ)
そう絶句したのだった。
犬山城の山頂の物見櫓が燃えるのを無人の城下町で馬に乗った池田恒興が眺めていた。
「本当に家老の和田殿の言った通り、火を消し切れずに物見櫓は燃えた、か~。なるほど、水があると思いきや実は水がない。第二城門が開いた時点で、本当はとっくに落城してた訳ね、この犬山城は~」
堺から帰ってきて早々いい場面に出食わしたな、と恒興は運の良さを喜んだが、
「それに気付かずに、これまで長々と犬山城に手こずっていたオレ達はマヌケだった、という訳か」
信長のその呟きを見て、
(あっ、怒ってる)
恒興は気付いたが、素知らぬ顔で、
「信清殿は信長様の従兄弟ですが、長門の仇でもあります。今更許すとか言いませんよね?」
「当然だ。殺すに決まってるだろ。何を言ってるんだ、勝」
「いえ、信長様って甘いところがありますから」
「ふん。今回はあり得んな」
という会話を遠巻きに聞いていた和田定利は犬山城の家老としての最後の忠義として、
その夜、矢文を認めて犬山城の山頂に放ったのだった。
夜ながら、その和田定利の行動を一部始終見ていたのが、鉄砲奉行の滝川一益の配下の甲賀衆の一人だった。
眠りを妨げてまで報告するような内容でもないので、翌日を待って信長に報告し、それを聞いた信長は、
「そうか。昨日のオレと勝との軽口を聞いていたのか。和田は本当に忠義よのう」
不機嫌そうに眼を細め、
和田定利からの矢文を受け取った織田信清も覚悟を決めたのだった。
◇
そして数日後の運命のその日。
「全軍、犬山城の第一の城門まで奪還するぞ、進めっ!」
との信清の号令で、
「おおっ!」
鬨の声を上げた信清軍の兵達は全員が討ち死に覚悟で、山頂の開いた犬山城の最後の城門を出て、過去には油を撒かれた山中を突進していったのだった。
だが、信情はというと、
「精々、派手に暴れてくれよ、オレの為に」
信じられない事に、羽目板を外して縄梯子を使って木曽川を降りて、待っていた舟に乗って犬山城から脱出したのだった。
つまりは突進させた犬山城方の雑兵達を囮に使ったのである。
これも総ては忠誠の篤い家老、和田定利の、
『お逃げ下さい。殺されてしまいますぞ』
との矢文を受けての行動だった。
だが、城主の信清の逃亡の事実が露見したのは全員が討ち取られた後なので、
「何だ、こいつらは?」
「倒せ、倒せっ!」
丹羽隊が必死に信清軍を撃退し、そして、
突撃してきた全員を倒して、逆に開いたままの最後の城門から犬山城の山頂に乗り込んだ丹羽長秀が、
「犬山殿とお見受けしますが、そうでしょうか?」
「ええ、弟の部下よね? 御苦労様」
「信清殿はどちらの居られるのでしょうか?」
「あの人なら逃げたわよ」
「はあ?」
「だから、兵を突撃させた隙に縄梯子を伝って木曽川に迎えに来た舟で。行き先は甲斐ですって。私も誘われたけど、縄梯子なんて使いたくなかったからさすがに遠慮したわ」
他人事のように喋る犬山殿の話を聞いて、
「兵を死なせて自分だけ逃げただとっ! 何たる臆病者かっ!」
さすがの長秀も怒ったのだった。
小牧山城で信清逃亡の報告を聞いた恒興は、
「へ~、逃げるんだ~。そこは従兄弟とはいえ、信長様とは違う訳ね~」
「ん? どういう意味だ?」
信長が聞き咎めた。
「信長様なら、逃げずに戦うかと思って」
「いや、オレでも逃げるぞ」
「本当ですか?」
「当然だ。こんな無駄な戦いで死ねるか」
「なるほど」
などと喋りながら、
「逃げた先は甲斐か~。やっぱり犬山城の離反に噛んでたのか~」
恒興はそう不機嫌になったのだった。
◇
そして甲斐の躑躅ヶ崎館では武田信玄が、
「はあ? 尾張の犬山城主の織田信清が城から落ち延びてきただと?」
「はい、途中で拾いましたが、如何なさいましょうか?」
たまたま躑躅ヶ崎館に用があり、道中で拾った内藤昌豊が尋ねた。
「内々に保護しましたので、御不要とあらば」
殺せます、と匂わせるが、
「とりあえず匿ってやれ。それと新た名を名乗れとも言っておけ」
そう信玄は答えたのだった。
登場人物、1564年度
織田信清(31)・・・織田一門衆。犬山城主。織田信秀の弟、信康の子供。信長の従兄にして、信長の実姉、犬山殿と婚姻関係。信長に謀反を起こし、犬山城を捨てて逃亡する。
能力値、織田一門衆S、怜悧の信清B、勝算ありで謀反S、無能だと気付かずA、自分が得する大好きA、尾張を盗むE
和田定利(32)・・・織田家の家臣。織田信清の元家老。犬山城の枝城の黒田城主。兄に幕臣の和田惟雅が居る。遂に信長に協力して犬山城攻めに加わる。
能力値、犬山城の弱点熟知の定利B、信清への御恩B、兄が実は凄いC、信長への忠誠E、信長からの信頼E、織田家臣団での待遇D
佐久間信盛(36)・・・織田家の第三家老。別名、右衛門尉。織田家中随一の知将。しまり屋なのが玉に瑕。和田定利を説得。
能力値、織田家の家宰A、しまり屋の信盛A、退き佐久間A、信長への忠誠A、信長からの信頼A、織田家臣団での待遇SS
丹羽長秀(29)・・・織田家の家臣。信長の密命で美濃の調略に動く。利説きの長秀。星回りが悪い。文官が周囲に集まる。犬山城攻略の武功を立てる。
能力値、利説きの長秀A、米五郎左A、星回りの悪さD、信長への忠誠A、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇B
犬山殿(31)・・・織田家の姫。犬山城主の織田信清の正室。信広の妹、信長の姉。犬山城落城時に夫に付いていかず。
能力値、どっち付かずA、政治に口出しせずB、内助の功E、破滅への囁きA、実は裏で信長とA、着物よりも和菓子A
武田信玄(43)・・・甲斐の虎。甲斐源氏の嫡流。法名は徳栄軒信玄。今川贔屓の義信に今川への裏切りを伝えず。上杉対策で頭を悩ます。
能力値、甲斐の虎SS、風林火山陰雷SS、家臣の層の厚さS、金山枯らしS、出身国の運の悪さS、義信との不仲B
内藤昌豊(42)・・・武田家の家臣。副将格。武田二十四将の一人。深志城の城代。別名、工藤源左衛門。工藤虎豊の次男。内藤家の名跡を与えられる。信玄の指図通り動く。
能力値、指図通りの昌豊SS、風林山陰A、武田の副将B、信玄への忠誠A、信玄からの信頼A、武田家臣内での待遇S
【投降した犬山城の元家老、和田定利、結構粘って信長に協力しなかった説、採用】
【織田信清、脱出する為に兵を犠牲にした説、採用】
【織田信清、甲斐方面に逃げた説、採用】
竹中重治の稲葉山の占拠によって美濃の国衆は大いに動揺したが、一番動揺したのは犬山城主の織田信清であった。
「はあ? 二月に稲葉山城が落ちていた? 何をやっておるのだ、美濃の連中は?」
だが、そこまでなら問題はない。
問題が出始めたのは兵糧の運搬を担当する宇留間城の動きが怠慢になった事だ。
犬山城は第二の城門が突破された事で兵糧庫が抑えられて深刻な兵糧不足だというのに。
それなのにその命綱の兵糧の運搬が滞り始めた。
「犬山城の将兵に飢えろと言うつもりかっ!」
そして兵糧不足はそのまま犬山城の山頂に籠もる信清軍の兵の士気に直結し、
「もう駄目だな」
「ああ、攻め殺される前に逃げよう。川を下ればどうにかなるだろ」
夜に縄を伝って木曽川から脱走する兵が出始めた。
まだ数人程度だったが、これにより犬山城の落城は目前へと迫ったのだった。
◇
そして犬山城攻略のもう一つの重要な要素は、犬山城の元家老、和田定利の協力である。
尾張の黒田城などは、黒田城主で犬山城の家老だった和田定利が捕縛された状態で信長に降伏した直後の昨年に、佐久間信盛の、
「和田殿が居ないのならば黒田城の落城は間違いあるまい。攻め落ちた後だと城の者は皆殺しだぞ? 悪い事は言わん。開城するように指図されい」
との説得で、定利が認めた書状一枚で簡単に開城している。
だが、信長軍はそれだけでは満足せずに、その後も信盛が、
「犬山城の弱点も教えて欲しいのだが。家老の和田殿ならば知っていよう?」
「ありませんよ。犬山城は山頂部だけでも難攻不落ですから」
「本当かね?」
「ええ、木曽川からの兵糧を止めるしかないかと」
内心では信長に屈していない定利がなかなか犬山城の弱点を教えなかった。
だが、美濃稲葉山城の竹中重治の乗っ取りに加えて、
信長が京工作をしたついでに将軍義輝に仕える兄の和田惟政に書かせた、
「織田信長殿に協力するように」
との書面が届き、定利も遂には信長に完全に屈し、信盛が、
「御協力願えますな?」
「ええ」
「では、犬山城の弱点をお教え下さい」
「・・・今の犬山城の弱点は火攻めですよ」
定利がそう口を割った。
「ん? 犬山城には木曽川から無限に水が汲めるはずだが?」
「山頂部だけだと水の汲める場所が決まっているのですよ。桶の数も少ない上に水汲み場所も限られている。山頂なので木曽川から水を汲むにしても手間も掛かりますし、晴れが続いた日の後に火矢で物見櫓を燃やせば落城しますよ」
「山頂の物見櫓だけでいいのか? 本城は?」
「落城させた後に使うのであれば燃やす必要はないかと」
「ふむ。わかった。御助言感謝致す」
信盛が礼を言い、
聞き出した事をすぐに信長に報告すると、
「よし、五郎左にやらせてみい」
あっさりと許可された。
犬山城の最終城門の前まで兵を進めた丹羽隊が、
「放て」
丹羽長秀の合図で火矢を射ていく。
火矢を次々に物見櫓に命中させた。
守り手の織田信清は、
「何をやってるんだ、あいつらは?」
敵側の意図が読めなくて不思議がった。
当然だ。
犬山城には無限の水甕の木曽川がある。
「水で消せい」
そう命令して実行させるが、最初は水を掛けて火矢の火を消していたが、すぐに雑兵の水を掛ける作業が止まった。
「どうした、水をどんどん掛けろ。水なら無限に木曽川にあるだろうがっ!」
「それが、水汲みが追い付きません」
「何だと?」
部下の報告に驚いて水汲み現場の櫓に向かうと、雑兵が必死に遠い木曽川から水を汲んでる。
「縄を引けっ!」
「早く引き過ぎるなよ。桶が揺れて水が零れるから」
「よし、汲めた。さあ、いってこい」
「おう」
移し替えた桶の水を持って雑兵が走り出す。
全員真剣だ。
無駄な動きは一切ない。
それは信清が保証する。
だが、それでも水は間に合わず、
ゴオオオオッ。
遂には最終城門の横にある物見櫓は燃えたのだった。
それを間近で見る破目になった信清が、
(まさか、このような弱点が我が犬山城にあったとは・・・兵糧不足以前に、もし本城に火矢を射られたら犬山城は落ちるぞ)
そう絶句したのだった。
犬山城の山頂の物見櫓が燃えるのを無人の城下町で馬に乗った池田恒興が眺めていた。
「本当に家老の和田殿の言った通り、火を消し切れずに物見櫓は燃えた、か~。なるほど、水があると思いきや実は水がない。第二城門が開いた時点で、本当はとっくに落城してた訳ね、この犬山城は~」
堺から帰ってきて早々いい場面に出食わしたな、と恒興は運の良さを喜んだが、
「それに気付かずに、これまで長々と犬山城に手こずっていたオレ達はマヌケだった、という訳か」
信長のその呟きを見て、
(あっ、怒ってる)
恒興は気付いたが、素知らぬ顔で、
「信清殿は信長様の従兄弟ですが、長門の仇でもあります。今更許すとか言いませんよね?」
「当然だ。殺すに決まってるだろ。何を言ってるんだ、勝」
「いえ、信長様って甘いところがありますから」
「ふん。今回はあり得んな」
という会話を遠巻きに聞いていた和田定利は犬山城の家老としての最後の忠義として、
その夜、矢文を認めて犬山城の山頂に放ったのだった。
夜ながら、その和田定利の行動を一部始終見ていたのが、鉄砲奉行の滝川一益の配下の甲賀衆の一人だった。
眠りを妨げてまで報告するような内容でもないので、翌日を待って信長に報告し、それを聞いた信長は、
「そうか。昨日のオレと勝との軽口を聞いていたのか。和田は本当に忠義よのう」
不機嫌そうに眼を細め、
和田定利からの矢文を受け取った織田信清も覚悟を決めたのだった。
◇
そして数日後の運命のその日。
「全軍、犬山城の第一の城門まで奪還するぞ、進めっ!」
との信清の号令で、
「おおっ!」
鬨の声を上げた信清軍の兵達は全員が討ち死に覚悟で、山頂の開いた犬山城の最後の城門を出て、過去には油を撒かれた山中を突進していったのだった。
だが、信情はというと、
「精々、派手に暴れてくれよ、オレの為に」
信じられない事に、羽目板を外して縄梯子を使って木曽川を降りて、待っていた舟に乗って犬山城から脱出したのだった。
つまりは突進させた犬山城方の雑兵達を囮に使ったのである。
これも総ては忠誠の篤い家老、和田定利の、
『お逃げ下さい。殺されてしまいますぞ』
との矢文を受けての行動だった。
だが、城主の信清の逃亡の事実が露見したのは全員が討ち取られた後なので、
「何だ、こいつらは?」
「倒せ、倒せっ!」
丹羽隊が必死に信清軍を撃退し、そして、
突撃してきた全員を倒して、逆に開いたままの最後の城門から犬山城の山頂に乗り込んだ丹羽長秀が、
「犬山殿とお見受けしますが、そうでしょうか?」
「ええ、弟の部下よね? 御苦労様」
「信清殿はどちらの居られるのでしょうか?」
「あの人なら逃げたわよ」
「はあ?」
「だから、兵を突撃させた隙に縄梯子を伝って木曽川に迎えに来た舟で。行き先は甲斐ですって。私も誘われたけど、縄梯子なんて使いたくなかったからさすがに遠慮したわ」
他人事のように喋る犬山殿の話を聞いて、
「兵を死なせて自分だけ逃げただとっ! 何たる臆病者かっ!」
さすがの長秀も怒ったのだった。
小牧山城で信清逃亡の報告を聞いた恒興は、
「へ~、逃げるんだ~。そこは従兄弟とはいえ、信長様とは違う訳ね~」
「ん? どういう意味だ?」
信長が聞き咎めた。
「信長様なら、逃げずに戦うかと思って」
「いや、オレでも逃げるぞ」
「本当ですか?」
「当然だ。こんな無駄な戦いで死ねるか」
「なるほど」
などと喋りながら、
「逃げた先は甲斐か~。やっぱり犬山城の離反に噛んでたのか~」
恒興はそう不機嫌になったのだった。
◇
そして甲斐の躑躅ヶ崎館では武田信玄が、
「はあ? 尾張の犬山城主の織田信清が城から落ち延びてきただと?」
「はい、途中で拾いましたが、如何なさいましょうか?」
たまたま躑躅ヶ崎館に用があり、道中で拾った内藤昌豊が尋ねた。
「内々に保護しましたので、御不要とあらば」
殺せます、と匂わせるが、
「とりあえず匿ってやれ。それと新た名を名乗れとも言っておけ」
そう信玄は答えたのだった。
登場人物、1564年度
織田信清(31)・・・織田一門衆。犬山城主。織田信秀の弟、信康の子供。信長の従兄にして、信長の実姉、犬山殿と婚姻関係。信長に謀反を起こし、犬山城を捨てて逃亡する。
能力値、織田一門衆S、怜悧の信清B、勝算ありで謀反S、無能だと気付かずA、自分が得する大好きA、尾張を盗むE
和田定利(32)・・・織田家の家臣。織田信清の元家老。犬山城の枝城の黒田城主。兄に幕臣の和田惟雅が居る。遂に信長に協力して犬山城攻めに加わる。
能力値、犬山城の弱点熟知の定利B、信清への御恩B、兄が実は凄いC、信長への忠誠E、信長からの信頼E、織田家臣団での待遇D
佐久間信盛(36)・・・織田家の第三家老。別名、右衛門尉。織田家中随一の知将。しまり屋なのが玉に瑕。和田定利を説得。
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丹羽長秀(29)・・・織田家の家臣。信長の密命で美濃の調略に動く。利説きの長秀。星回りが悪い。文官が周囲に集まる。犬山城攻略の武功を立てる。
能力値、利説きの長秀A、米五郎左A、星回りの悪さD、信長への忠誠A、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇B
犬山殿(31)・・・織田家の姫。犬山城主の織田信清の正室。信広の妹、信長の姉。犬山城落城時に夫に付いていかず。
能力値、どっち付かずA、政治に口出しせずB、内助の功E、破滅への囁きA、実は裏で信長とA、着物よりも和菓子A
武田信玄(43)・・・甲斐の虎。甲斐源氏の嫡流。法名は徳栄軒信玄。今川贔屓の義信に今川への裏切りを伝えず。上杉対策で頭を悩ます。
能力値、甲斐の虎SS、風林火山陰雷SS、家臣の層の厚さS、金山枯らしS、出身国の運の悪さS、義信との不仲B
内藤昌豊(42)・・・武田家の家臣。副将格。武田二十四将の一人。深志城の城代。別名、工藤源左衛門。工藤虎豊の次男。内藤家の名跡を与えられる。信玄の指図通り動く。
能力値、指図通りの昌豊SS、風林山陰A、武田の副将B、信玄への忠誠A、信玄からの信頼A、武田家臣内での待遇S
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