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1561年、甲斐への使い
十四条、軽海の戦い
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【織田軍、墨俣に砦建築部隊を残し、3100人が十四条の地に進軍説、採用】
【十四条の地に再集結した斉藤軍、僅か800人説、採用】
【十四条の戦いは存在しなかった説、採用】
【斎藤軍、一戦も交える事なく、十四条から軽海に撤退説、採用】
【軽海に到着した後詰めの斎藤軍1300人説、採用】
【加藤弥三郎、1547年生まれ説、採用】
【軽海の戦い、陽が暮れても続いた説、採用】
【斎藤軍の別動隊200人が夜陰に紛れて織田本陣へ奇襲した説、採用】
【斎藤奇襲隊の大将、稲葉常通説、採用】
【稲葉常通、1505年生まれ説、採用】
【稲葉山城を織田軍で包囲するも織田信清の謀反で稲葉山城から撤退説、採用】
森部の戦いを終えた当日の事である。
十四条の地まで稲葉良通が率いる斎藤軍は兵を退いた訳だが、その数は800人前後まで少なくなっていた。
これは森部の戦いに参加した斎藤軍の残る2100人全員が討ち取られたという意味ではない。
負け戦ではどこの軍勢でも起こる現象、「脱走」が起こっただけの事だ。
誰だって死にたくはない。
弱い大将についていくのは馬鹿のする事だ。
つまり稲葉良通は味方に見限られた訳だが、そこに織田軍3100人が追撃してきた。
十四条の戦い、と一応は呼ばれるものの始まりである。
十四条の地にて、迫る織田軍を確認した斎藤軍稲葉隊の副将、斎藤利三が、
「まさか、全滅すると分かってて『迎え討つ』とか言いませんよね?」
「言う訳がなかろうが。全軍、稲葉山城へ転進だっ!」
稲葉良通はこの地では一戦もする事なく撤退を決めたのだった。
織田軍の先鋒隊を率いる森可成が、
「追え追え、一兵たりとも逃がすなっ!」
調子に乗って追撃したのだが、本日は森部の戦いも経験している。
その為、もう空は夕暮れとなっていた。
斎藤軍を追う織田軍の本陣では信長が、
(やはり手応えが無さ過ぎる)
そう真剣に考察していたのだが、横では恒興が呑気に、
「小腹が減ってきたな~。誰か握り飯とか持ってないのか?」
「信長様の酒饅頭ならありますよ」
信長の小姓の加藤弥三郎がそう教え、
「信長様、お毒見しても」
くれ、との催促である。
小姓時代からなので、もう当たり前のようになっており、
「ああ、1個だけだぞ」
信長も普通に許可を出していた。
それから恒興の言葉で自分も小腹が減っている事に気付いた信長が夕焼けにも気付き、
「追撃はここまでにして三左を退かせーー」
信長が撤退の命令を出す前に、
「斎藤軍の後詰めが到着しました。その数、1500人」
使い番が報告した。
「チッ、蹴散らすように三左に伝えよっ!」
「はっ」
こうして新たな戦いが始まる事となったのだった。
その地名が軽海といった事から、この戦いは「軽海の戦い」と命名される事となった。
軽海まで逃げていた斎藤軍800人の前に援軍が到着し、
「待たせたな、彦四郎」
斎藤軍の後詰めを引き連れてきた叔父の稲葉常通が良通に声を掛けた。
「だから子供扱いしないでくれと・・・救援かたじけない、叔父上」
「だが、数は1300だ。他の連中は信じられん事に日和見しよった」
「腰抜けどもが」
「どうする、彦四郎? 兵数も織田軍が上で、兵のやる気も正直言ってーー」
「我に秘策ありですよ。叔父上、やっていただきたい事があるのですが」
「ん? 何だ」
その後は叔父と甥の阿吽の呼吸ですぐに作戦は伝わり、
「分かった、ワシに任せよ」
ニヤリと笑った常通は西の山に沈む夕日を見つめたのだった。
◇
夜になった。
日本の戦国時代の軍用品の光源は松明と篝火である。
戦の途中で陽が沈むとどんどん視界が悪くなり、最後には何も見えなくなる。
普通はそうなる前に退くものだが斎藤軍が粘った為に織田軍も退けず、完全な夜となった。
そして夜の備えもしてる織田軍、斎藤軍が松明を雑兵に持たせて、更に戦ったのだが、例え援軍が加わろうと織田軍の勢いが上で、
「おらおら、さっさと白旗を上げちまいなっ!」
先鋒隊大将、森可成の指揮で織田軍が押しに押して、遂には、
「稲葉山城に撤退だっ!」
良通が退却を命令したのだが、
「逃がすかっ!」
先鋒隊大将の可成の命令で、織田の先鋒隊がその後を追撃したのだった。
本陣からその先鋒隊が持つ松明の突進を見た信長が、
「いかん、誘引だっ! 全軍に気を引き締めるように伝えぇっ! 敵が何かを仕掛けてくるぞっ!」
そう叫んだ時には、軽海の地に陣取る織田軍本隊の左翼から、
「うわあ、敵襲だぁぁっ!」
との声が響き渡った。
「奇襲部隊? 生意気な。桶狭間を真似たつもりか? 敵の数は?」
鼻で笑った信長が鋭く問う中、
「夜陰にて松明も持っておらず不明っ!」
すぐに返事が返ってきて、
「まあ、左翼は成政の佐々隊だから・・・あっ!」
呑気に呟こうとした恒興が気付いた。
信長も気付く。
「拙いぞ。今、内蔵の手勢は――」
佐々家は昨年の桶狭間の戦いで成政の兄の政次が戦死し、嫡男の死で気落ちしたのか、父親の成宗が佐々家の家督と比良城主の地位を成政に譲ったところなのだ。
指揮官が変わると雑兵達が動揺して、どうしても一時的に弱兵となるのが戦国の習わしなので、佐々隊も当然弱く、
「そこを狙われた? 斎藤には知恵者が居る訳ね」
恒興が敵の慧眼に敬服する中、信長が、
「勝、兵を率いて救援に向かえっ!」
「はっ! おまえら、ついて来い」
恒興が本陣の左に信長の親衛隊(馬廻り)の一部を率いて突撃した。
同じ頃、織田軍本隊の左翼では、夜の軽海で家督を継いだばかりの成政が槍を振るいながら、
「美濃の兵を押し返せっ!」
そう吠えていた。
佐々家の手勢は代替わりして一時的に弱体化しているのだが、それ以上に問題なのが夜だ。
敵が松明を持っていないので、敵の兵数が読めないのだ。当然、味方も不安になる。
そして佐々家は家督が嫡子以外に交替したところ。
悪い方向に転がっていた。
この斎藤軍の奇襲部隊も妙に勢いが見受けられる。
それもそのはず。
奇襲部隊を率いるのは稲葉良通の叔父にして老将の稲葉常通だった。
「この軽海が斎藤家の桶狭間よっ! 狙うは信長の首、ただ一つだっ!」
夜陰の中で指揮を取る常通に成政は不運にも遭遇してしまい、
「邪魔だっ!」
「ぐお、なんて強いジジイなんだっ!」
成政は致命傷こそ避けたものの、押し倒されて首筋に刃を押し付けられるのを両手で掴んで必死に阻止するのがやっとだった。
「誰か、オレを助けろっ!」
成政が命の危険を感じて吠え、味方に助勢を頼む。
だが、夜の所為もあって、
「どこですか、成政様っ?」
「こっちだっ! 声を辿れっ!」
「そう言われてもーー」
味方が成政の場所を発見出来ない。
「さあ、その首を寄越しな、わっぱっ!」
力が強く、徐々に刃が首に迫り、
「クっソぉっ!」
成政が死を覚悟したその時、
「成政、どこだっ! 死んでねえだろうな?」
信長の前から駆け付けた恒興を乗せた馬が走ってきて、夜陰の中、地面で揉み合ってる2人に気付かず、当たり前のように馬蹄で2人を踏み潰して通過していった。
「ぐえええ」
「ぐああ」
馬の重量は、まあ、重い。
鎧越しとはいえ、馬蹄に踏まれた2人は激痛で動きを止める程だった。
一方、2人を踏んだ馬の方もバランスを崩して倒れて、
「うわっ!」
恒興も一緒に転倒した。
もっとも落馬に慣れていた恒興は負傷しなかったが。
踏まれた2人の方は息が一瞬出来なくなっている。
先に覚醒したのは若い成政で、覆い被さる常通を払い除けて、どうにか起き上がったのだった。
「どうして馬が転んだんだ? ーーおっ、生きてたか、成政っ!」
「今、おまえの所為で死に掛けたわっ! だが助かったぞ、恒興っ! あいつがこの部隊の大将首だ。一緒に倒すぞ」
「わかったっ!」
闇夜の中で恒興と成政が合流し、その後、2人掛かりで襲ったのだが、
「クソ、強えっ! ってか、ジジイじゃねえか? 何でジジイがこんなに強えんだ?」
「稲葉又右衛門だ。その名を刻んで閻魔に会いにいけっ!」
「——嘘、稲葉一門? それに又右衛門って」
成政が驚き、
「稲葉山城と同じ稲葉? もしかして大物なのか?」
「えっ、知らないのか、恒興? 鬼の又右衛門。美濃の蝮の二の牙じゃねえか」
「ガハハ、懐かしい呼び名を知っているではないか、わっぱ」
自分の名前が知られていて又右衛門が気を良くする中、それを聞いて俄然やる気を出した恒興が、
「まだ生き残ってたのか、蝮の牙。なら、その首、このオレが貰ったっ!」
そう躍り出たが、「鬼の又右衛門」というだけあって爺さんの癖に本当に強い。
恒興と成政の2人がかりでも互角どころか押され気味で、ビギィンッとどうにか恒興の切れ味の鋭い刀が常通の刀をへし折って、
「何だと?」
隙が出来たところを、
「今だっ!」
成政が体当たりをして常通を押し倒すも転がって逆に身体を入れ替えられて、
「まだまだだな、わっぱっ!」
馬乗りになった常通に成政が折れた刀で首を斬られそうになるも、
「させるかっ!」
「覚えておけ、わっぱっ! これが誘いって奴だっ!」
背後から常通を襲った恒興の攻撃を立ち上がって避けた時、地面に寝転んでいた成政が常通の太股を突き刺して、
「ぐおっ!」
「喰らえ」
動きを止めたところを恒興が切り捨て、
「グアアア」
常通が断末魔を上げて倒れたのを見て、気を良くした恒興が、
「どうにか勝ったな、成政」
「馬鹿、油断するな。まだだ、生きてるぞっ!」
「へ? ーーおわ」
成政の警告のお陰で斬撃を何とか避けたが、避けた拍子に転んで、
「死ねい」
常通が恒興を追撃するがその背後から、
「しつこいんだよっ!」
成政が切り捨てて、闇夜の中、ようやく常通は絶命したのだった。
2人がかりで必死に戦ってようやくだ。
とても誇れる勝利ではなかったが、
「織田家黒母衣衆、佐々成政っ! 敵将、鬼の又右衛門こと稲葉又右衛門を討ち取ったりぃ~っ!」
そう手柄名乗りを上げると、松明も付けずに夜陰に紛れていた斎藤軍の奇襲部隊が、
「そんな、又右衛門様がーー」
「ヒィ、作戦は失敗だっ!」
「逃げろっ!」
夜陰の中、織田軍の本隊を急襲した斎藤の奇襲部隊は蜘蛛の子を散らすように撤退していき、恒興はと言えば逃げた敵の雑兵を追わずに成政に、
「それはないだろ、成政っ! 2人でこのジジイを仕留めたのに手柄を独り占めするなんてっ!」
「違う違う。今のは敵を退かせる為に叫んだだけだから」
「絶対だぞっ! 『倒した者勝ち』とか言って手柄を独り占めしたら、さすがに絶交だからな」
「分かってるって」
そう了承したのだった。
斎藤軍の奇襲部隊の退却の確定後、夜の軽海の織田軍本隊の信長の前で、
「内蔵、『蝮の二の牙』鬼の又右衛門の首級を取った事、実に見事であった」
「いえ、恒興の助太刀もあり、どうにか勝てましたので2人の手柄に」
「それは本当か、勝?」
と信長が愉快そうに聞く中、恒興は必死に、
「本当です、信長様。成政の窮地に駆け付けて馬で踏ん付けましたし、そのジジイの刀も折りましたし、一回斬り付けて倒していますんで」
「では、今回の稲葉又右衛門の首級は内蔵と勝の両名の手柄とする」
との信長の裁定のお陰でどうにか、後年の信長公記にその手柄が記載されたのであった。
篝火が焚かれた夜の稲葉山城の門前で叔父の奇襲が成功したか、その報告を待っていた稲葉良通の許に、
「奇襲は失敗し、叔父上が死んだだと? 本当なのか?」
「はっ!」
「誰だ、叔父上を倒したのは?」
「佐々成政と手柄名乗りを上げていました」
「クソっ! 今から出陣して叔父上を殺した奴をーー」
飛び出そうとする良通の耳に、
「200の手勢で突っ込ませておいて何を今更。こうなる事は最初から分かっていた癖に」
副将の斎藤利三がそう首を横にゆっくりと振りながらそう評した。
「何だと?」
「今から慌てて出撃せずとも、明日には織田軍の方からこの稲葉山城まで押し寄せてきますよ。城を落として我々を皆殺しにする為に」
「チッ、今夜はもういい。兵を休ませろ」
良通が理解を示した事で、その日の戦は軽海の戦いで終了したのだった。
◇
翌日、織田軍が兵をまとめて、連戦連勝の勢いそのままに美濃斎藤家の居城、稲葉山城まで攻め寄せたのだが、
その辺りからどうも風向きがおかしくなり始めた。
尾張の留守を任せていた佐久間信盛の早馬がやってきて、
「尾張犬山城の織田信清様が御謀反っ!」
との情報が信長に齎されたからだ。
尾張犬山城は尾張と美濃の県境にある。
もし信清が美濃と手を結んでいれば挟撃もあり得、信長が美濃に遠征してるこの状況での謀反なのだから水面下で同盟を結んでる事は容易に想像が付いた。
「姉婿だからと桶狭間での今川方との密約を無かった事にしてやった報いがこれかっ!」
激昂する信長に可威が、
「建造中の墨俣の砦にはオレが残りますので信長様は清州城へお戻り下さい」
「うむ、三左、任せたぞ」
織田軍は建造中の墨俣の砦に森可成の部隊を残して渋々と稲葉山城から撤退していったのだった。
そして信清の手勢が迫る前に木曽川を渡りきり、尾張領内に入れば、
「病床の斎藤義龍、既に死んでいた模様です」
ようやく義龍の死亡情報が織田軍にも齎されたのだった。
「なっ・・・ええいっ! あのまま攻めていたら、やり方次第では稲葉山城を落とせたという事ではないかっ! 信清め、間の悪い事をしよってっ!」
信長は不機嫌になりながら尾張に帰国した。
登場人物、1561年度
加藤弥三郎(14)・・・信長の小姓。その年代の出世頭。桶狭間の戦いの時は13歳。火縄銃の弾込めが早い。三河の竹千代が尾張人質時代に幽閉された熱田羽城の城主の次男。
能力値、早込めの弥三郎A、狂犬の世話係C、薬は自前でD、信長への忠誠A、信長からの信頼C、織田家臣団での待遇D
佐々成政(25)・・・信長の近習。近江源氏の佐々氏の庶流。織田信安の元部下。政務が有能。正室は村井貞勝の娘。比良城王の城主。稲葉常通を討ち取り、良通の怨みを買う。
能力値、まさかの文官肌A、不運の佐々S、豪傑への尊敬A、信長への絶対忠誠B、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇B
稲葉常通(56)・・・斎藤家の家臣。蝮の二の牙。鬼の又右衛門と恐れられる猛将。稲葉良通の叔父。老獪な猪武者。死んだふりの常通。
能力値、蝮の二の牙の常通A、鬼の又右衛門A、良通と阿吽の呼吸A、龍興への忠誠A、龍興からの信頼B、斎藤家臣団での待遇S
【十四条の地に再集結した斉藤軍、僅か800人説、採用】
【十四条の戦いは存在しなかった説、採用】
【斎藤軍、一戦も交える事なく、十四条から軽海に撤退説、採用】
【軽海に到着した後詰めの斎藤軍1300人説、採用】
【加藤弥三郎、1547年生まれ説、採用】
【軽海の戦い、陽が暮れても続いた説、採用】
【斎藤軍の別動隊200人が夜陰に紛れて織田本陣へ奇襲した説、採用】
【斎藤奇襲隊の大将、稲葉常通説、採用】
【稲葉常通、1505年生まれ説、採用】
【稲葉山城を織田軍で包囲するも織田信清の謀反で稲葉山城から撤退説、採用】
森部の戦いを終えた当日の事である。
十四条の地まで稲葉良通が率いる斎藤軍は兵を退いた訳だが、その数は800人前後まで少なくなっていた。
これは森部の戦いに参加した斎藤軍の残る2100人全員が討ち取られたという意味ではない。
負け戦ではどこの軍勢でも起こる現象、「脱走」が起こっただけの事だ。
誰だって死にたくはない。
弱い大将についていくのは馬鹿のする事だ。
つまり稲葉良通は味方に見限られた訳だが、そこに織田軍3100人が追撃してきた。
十四条の戦い、と一応は呼ばれるものの始まりである。
十四条の地にて、迫る織田軍を確認した斎藤軍稲葉隊の副将、斎藤利三が、
「まさか、全滅すると分かってて『迎え討つ』とか言いませんよね?」
「言う訳がなかろうが。全軍、稲葉山城へ転進だっ!」
稲葉良通はこの地では一戦もする事なく撤退を決めたのだった。
織田軍の先鋒隊を率いる森可成が、
「追え追え、一兵たりとも逃がすなっ!」
調子に乗って追撃したのだが、本日は森部の戦いも経験している。
その為、もう空は夕暮れとなっていた。
斎藤軍を追う織田軍の本陣では信長が、
(やはり手応えが無さ過ぎる)
そう真剣に考察していたのだが、横では恒興が呑気に、
「小腹が減ってきたな~。誰か握り飯とか持ってないのか?」
「信長様の酒饅頭ならありますよ」
信長の小姓の加藤弥三郎がそう教え、
「信長様、お毒見しても」
くれ、との催促である。
小姓時代からなので、もう当たり前のようになっており、
「ああ、1個だけだぞ」
信長も普通に許可を出していた。
それから恒興の言葉で自分も小腹が減っている事に気付いた信長が夕焼けにも気付き、
「追撃はここまでにして三左を退かせーー」
信長が撤退の命令を出す前に、
「斎藤軍の後詰めが到着しました。その数、1500人」
使い番が報告した。
「チッ、蹴散らすように三左に伝えよっ!」
「はっ」
こうして新たな戦いが始まる事となったのだった。
その地名が軽海といった事から、この戦いは「軽海の戦い」と命名される事となった。
軽海まで逃げていた斎藤軍800人の前に援軍が到着し、
「待たせたな、彦四郎」
斎藤軍の後詰めを引き連れてきた叔父の稲葉常通が良通に声を掛けた。
「だから子供扱いしないでくれと・・・救援かたじけない、叔父上」
「だが、数は1300だ。他の連中は信じられん事に日和見しよった」
「腰抜けどもが」
「どうする、彦四郎? 兵数も織田軍が上で、兵のやる気も正直言ってーー」
「我に秘策ありですよ。叔父上、やっていただきたい事があるのですが」
「ん? 何だ」
その後は叔父と甥の阿吽の呼吸ですぐに作戦は伝わり、
「分かった、ワシに任せよ」
ニヤリと笑った常通は西の山に沈む夕日を見つめたのだった。
◇
夜になった。
日本の戦国時代の軍用品の光源は松明と篝火である。
戦の途中で陽が沈むとどんどん視界が悪くなり、最後には何も見えなくなる。
普通はそうなる前に退くものだが斎藤軍が粘った為に織田軍も退けず、完全な夜となった。
そして夜の備えもしてる織田軍、斎藤軍が松明を雑兵に持たせて、更に戦ったのだが、例え援軍が加わろうと織田軍の勢いが上で、
「おらおら、さっさと白旗を上げちまいなっ!」
先鋒隊大将、森可成の指揮で織田軍が押しに押して、遂には、
「稲葉山城に撤退だっ!」
良通が退却を命令したのだが、
「逃がすかっ!」
先鋒隊大将の可成の命令で、織田の先鋒隊がその後を追撃したのだった。
本陣からその先鋒隊が持つ松明の突進を見た信長が、
「いかん、誘引だっ! 全軍に気を引き締めるように伝えぇっ! 敵が何かを仕掛けてくるぞっ!」
そう叫んだ時には、軽海の地に陣取る織田軍本隊の左翼から、
「うわあ、敵襲だぁぁっ!」
との声が響き渡った。
「奇襲部隊? 生意気な。桶狭間を真似たつもりか? 敵の数は?」
鼻で笑った信長が鋭く問う中、
「夜陰にて松明も持っておらず不明っ!」
すぐに返事が返ってきて、
「まあ、左翼は成政の佐々隊だから・・・あっ!」
呑気に呟こうとした恒興が気付いた。
信長も気付く。
「拙いぞ。今、内蔵の手勢は――」
佐々家は昨年の桶狭間の戦いで成政の兄の政次が戦死し、嫡男の死で気落ちしたのか、父親の成宗が佐々家の家督と比良城主の地位を成政に譲ったところなのだ。
指揮官が変わると雑兵達が動揺して、どうしても一時的に弱兵となるのが戦国の習わしなので、佐々隊も当然弱く、
「そこを狙われた? 斎藤には知恵者が居る訳ね」
恒興が敵の慧眼に敬服する中、信長が、
「勝、兵を率いて救援に向かえっ!」
「はっ! おまえら、ついて来い」
恒興が本陣の左に信長の親衛隊(馬廻り)の一部を率いて突撃した。
同じ頃、織田軍本隊の左翼では、夜の軽海で家督を継いだばかりの成政が槍を振るいながら、
「美濃の兵を押し返せっ!」
そう吠えていた。
佐々家の手勢は代替わりして一時的に弱体化しているのだが、それ以上に問題なのが夜だ。
敵が松明を持っていないので、敵の兵数が読めないのだ。当然、味方も不安になる。
そして佐々家は家督が嫡子以外に交替したところ。
悪い方向に転がっていた。
この斎藤軍の奇襲部隊も妙に勢いが見受けられる。
それもそのはず。
奇襲部隊を率いるのは稲葉良通の叔父にして老将の稲葉常通だった。
「この軽海が斎藤家の桶狭間よっ! 狙うは信長の首、ただ一つだっ!」
夜陰の中で指揮を取る常通に成政は不運にも遭遇してしまい、
「邪魔だっ!」
「ぐお、なんて強いジジイなんだっ!」
成政は致命傷こそ避けたものの、押し倒されて首筋に刃を押し付けられるのを両手で掴んで必死に阻止するのがやっとだった。
「誰か、オレを助けろっ!」
成政が命の危険を感じて吠え、味方に助勢を頼む。
だが、夜の所為もあって、
「どこですか、成政様っ?」
「こっちだっ! 声を辿れっ!」
「そう言われてもーー」
味方が成政の場所を発見出来ない。
「さあ、その首を寄越しな、わっぱっ!」
力が強く、徐々に刃が首に迫り、
「クっソぉっ!」
成政が死を覚悟したその時、
「成政、どこだっ! 死んでねえだろうな?」
信長の前から駆け付けた恒興を乗せた馬が走ってきて、夜陰の中、地面で揉み合ってる2人に気付かず、当たり前のように馬蹄で2人を踏み潰して通過していった。
「ぐえええ」
「ぐああ」
馬の重量は、まあ、重い。
鎧越しとはいえ、馬蹄に踏まれた2人は激痛で動きを止める程だった。
一方、2人を踏んだ馬の方もバランスを崩して倒れて、
「うわっ!」
恒興も一緒に転倒した。
もっとも落馬に慣れていた恒興は負傷しなかったが。
踏まれた2人の方は息が一瞬出来なくなっている。
先に覚醒したのは若い成政で、覆い被さる常通を払い除けて、どうにか起き上がったのだった。
「どうして馬が転んだんだ? ーーおっ、生きてたか、成政っ!」
「今、おまえの所為で死に掛けたわっ! だが助かったぞ、恒興っ! あいつがこの部隊の大将首だ。一緒に倒すぞ」
「わかったっ!」
闇夜の中で恒興と成政が合流し、その後、2人掛かりで襲ったのだが、
「クソ、強えっ! ってか、ジジイじゃねえか? 何でジジイがこんなに強えんだ?」
「稲葉又右衛門だ。その名を刻んで閻魔に会いにいけっ!」
「——嘘、稲葉一門? それに又右衛門って」
成政が驚き、
「稲葉山城と同じ稲葉? もしかして大物なのか?」
「えっ、知らないのか、恒興? 鬼の又右衛門。美濃の蝮の二の牙じゃねえか」
「ガハハ、懐かしい呼び名を知っているではないか、わっぱ」
自分の名前が知られていて又右衛門が気を良くする中、それを聞いて俄然やる気を出した恒興が、
「まだ生き残ってたのか、蝮の牙。なら、その首、このオレが貰ったっ!」
そう躍り出たが、「鬼の又右衛門」というだけあって爺さんの癖に本当に強い。
恒興と成政の2人がかりでも互角どころか押され気味で、ビギィンッとどうにか恒興の切れ味の鋭い刀が常通の刀をへし折って、
「何だと?」
隙が出来たところを、
「今だっ!」
成政が体当たりをして常通を押し倒すも転がって逆に身体を入れ替えられて、
「まだまだだな、わっぱっ!」
馬乗りになった常通に成政が折れた刀で首を斬られそうになるも、
「させるかっ!」
「覚えておけ、わっぱっ! これが誘いって奴だっ!」
背後から常通を襲った恒興の攻撃を立ち上がって避けた時、地面に寝転んでいた成政が常通の太股を突き刺して、
「ぐおっ!」
「喰らえ」
動きを止めたところを恒興が切り捨て、
「グアアア」
常通が断末魔を上げて倒れたのを見て、気を良くした恒興が、
「どうにか勝ったな、成政」
「馬鹿、油断するな。まだだ、生きてるぞっ!」
「へ? ーーおわ」
成政の警告のお陰で斬撃を何とか避けたが、避けた拍子に転んで、
「死ねい」
常通が恒興を追撃するがその背後から、
「しつこいんだよっ!」
成政が切り捨てて、闇夜の中、ようやく常通は絶命したのだった。
2人がかりで必死に戦ってようやくだ。
とても誇れる勝利ではなかったが、
「織田家黒母衣衆、佐々成政っ! 敵将、鬼の又右衛門こと稲葉又右衛門を討ち取ったりぃ~っ!」
そう手柄名乗りを上げると、松明も付けずに夜陰に紛れていた斎藤軍の奇襲部隊が、
「そんな、又右衛門様がーー」
「ヒィ、作戦は失敗だっ!」
「逃げろっ!」
夜陰の中、織田軍の本隊を急襲した斎藤の奇襲部隊は蜘蛛の子を散らすように撤退していき、恒興はと言えば逃げた敵の雑兵を追わずに成政に、
「それはないだろ、成政っ! 2人でこのジジイを仕留めたのに手柄を独り占めするなんてっ!」
「違う違う。今のは敵を退かせる為に叫んだだけだから」
「絶対だぞっ! 『倒した者勝ち』とか言って手柄を独り占めしたら、さすがに絶交だからな」
「分かってるって」
そう了承したのだった。
斎藤軍の奇襲部隊の退却の確定後、夜の軽海の織田軍本隊の信長の前で、
「内蔵、『蝮の二の牙』鬼の又右衛門の首級を取った事、実に見事であった」
「いえ、恒興の助太刀もあり、どうにか勝てましたので2人の手柄に」
「それは本当か、勝?」
と信長が愉快そうに聞く中、恒興は必死に、
「本当です、信長様。成政の窮地に駆け付けて馬で踏ん付けましたし、そのジジイの刀も折りましたし、一回斬り付けて倒していますんで」
「では、今回の稲葉又右衛門の首級は内蔵と勝の両名の手柄とする」
との信長の裁定のお陰でどうにか、後年の信長公記にその手柄が記載されたのであった。
篝火が焚かれた夜の稲葉山城の門前で叔父の奇襲が成功したか、その報告を待っていた稲葉良通の許に、
「奇襲は失敗し、叔父上が死んだだと? 本当なのか?」
「はっ!」
「誰だ、叔父上を倒したのは?」
「佐々成政と手柄名乗りを上げていました」
「クソっ! 今から出陣して叔父上を殺した奴をーー」
飛び出そうとする良通の耳に、
「200の手勢で突っ込ませておいて何を今更。こうなる事は最初から分かっていた癖に」
副将の斎藤利三がそう首を横にゆっくりと振りながらそう評した。
「何だと?」
「今から慌てて出撃せずとも、明日には織田軍の方からこの稲葉山城まで押し寄せてきますよ。城を落として我々を皆殺しにする為に」
「チッ、今夜はもういい。兵を休ませろ」
良通が理解を示した事で、その日の戦は軽海の戦いで終了したのだった。
◇
翌日、織田軍が兵をまとめて、連戦連勝の勢いそのままに美濃斎藤家の居城、稲葉山城まで攻め寄せたのだが、
その辺りからどうも風向きがおかしくなり始めた。
尾張の留守を任せていた佐久間信盛の早馬がやってきて、
「尾張犬山城の織田信清様が御謀反っ!」
との情報が信長に齎されたからだ。
尾張犬山城は尾張と美濃の県境にある。
もし信清が美濃と手を結んでいれば挟撃もあり得、信長が美濃に遠征してるこの状況での謀反なのだから水面下で同盟を結んでる事は容易に想像が付いた。
「姉婿だからと桶狭間での今川方との密約を無かった事にしてやった報いがこれかっ!」
激昂する信長に可威が、
「建造中の墨俣の砦にはオレが残りますので信長様は清州城へお戻り下さい」
「うむ、三左、任せたぞ」
織田軍は建造中の墨俣の砦に森可成の部隊を残して渋々と稲葉山城から撤退していったのだった。
そして信清の手勢が迫る前に木曽川を渡りきり、尾張領内に入れば、
「病床の斎藤義龍、既に死んでいた模様です」
ようやく義龍の死亡情報が織田軍にも齎されたのだった。
「なっ・・・ええいっ! あのまま攻めていたら、やり方次第では稲葉山城を落とせたという事ではないかっ! 信清め、間の悪い事をしよってっ!」
信長は不機嫌になりながら尾張に帰国した。
登場人物、1561年度
加藤弥三郎(14)・・・信長の小姓。その年代の出世頭。桶狭間の戦いの時は13歳。火縄銃の弾込めが早い。三河の竹千代が尾張人質時代に幽閉された熱田羽城の城主の次男。
能力値、早込めの弥三郎A、狂犬の世話係C、薬は自前でD、信長への忠誠A、信長からの信頼C、織田家臣団での待遇D
佐々成政(25)・・・信長の近習。近江源氏の佐々氏の庶流。織田信安の元部下。政務が有能。正室は村井貞勝の娘。比良城王の城主。稲葉常通を討ち取り、良通の怨みを買う。
能力値、まさかの文官肌A、不運の佐々S、豪傑への尊敬A、信長への絶対忠誠B、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇B
稲葉常通(56)・・・斎藤家の家臣。蝮の二の牙。鬼の又右衛門と恐れられる猛将。稲葉良通の叔父。老獪な猪武者。死んだふりの常通。
能力値、蝮の二の牙の常通A、鬼の又右衛門A、良通と阿吽の呼吸A、龍興への忠誠A、龍興からの信頼B、斎藤家臣団での待遇S
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