池田恒興

竹井ゴールド

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1560年、桶狭間の戦い

柴田勝家の寝返り阻止任務

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 【中村文荷斎、1535年生まれ説、採用】

 【中村文荷斎、柴田勝家の知恵竄、採用】

 【三浦義就、1528年生まれ説、採用】

 【三浦義就、今川義元の寵臣説、採用】

 【今川かたの尾張切り崩しの責任者は三浦義就説、採用】

 【織田信清、1533年生まれ説、採用】

 【三好も今川が京に上洛すると困るので桶狭間の戦いで織田家支援説、採用】





 清州城下の柴田屋敷に恒興が入り浸って2月が過ぎた。

 もう柴田勝家の家来衆ともすっかり顔見知りである。

 今も勝家の家来の中村文荷斎と将棋を指している。

「ですから、池田様。どうしてうちの殿が冷遇されなければならないんですか? 信長様に逆らった信勝様に仕えたのは先代の信秀様の御指示であって、うちの殿が決めた事じゃないんですよ」

「はあ? ウソウソ、林の爺さんをあの時、信長様から信勝様に鞍替えさせたのは尾張一の策士の柴田だって事はもう露見してるんだから諦めろって」

「いや、あれは確かにそうですが。あるじに尽くしてどうして文句を言われないといけないんですか」

「信勝様成敗後に信長様の為に活躍してないんだから文句を言われるのは当然さ。今川とのいくさでは活躍して貰うからな」

「えっ、それってうちの殿も出陣出来るんですか?」

「いいや、柴田の家来衆のおまえ達だけだ。オレの指揮で働いて貰うぞ。信長様を裏切った信勝様の重臣の柴田は引き続きお留守番」

「冗談も程々に――はい、王手」

「あっ、汚いぞ、文荷斎」

 2人が将棋をしてるのを横目で見ながら勝家はと言えば、

(クソ、今日が津島までやってきた今川方の武将の滞在最終日だったのに・・・毎日のように無駄に入り浸りやがって。夜も生まれたばかりの赤子が五月蠅いとか言って当たり前のように泊まって行きやがるし、勝三郎の奴。いくさが始まるんだから城で仕事をしろよな)

「なら、この盤面からオレが勝ったら今回の今川とのいくさではオレの下に付けよ」

「ええ、構いませんよ」

 と言った瞬間、恒興の打ち手が変わった。

 恒興は元々将棋が強いのだ。

 正確には信長が強過ぎて、相手をさせられてる内に強くなっただが。

 それでも信長には勝てないのだが、その辺の名も無き策士気取りの家来には余裕で勝てたのだった。

「ウソーー本当は強かったんですか、将棋?」

「当然だ」

 そう恒興が勝ち誇った頃、





 尾張の商業区の津島の旅館には今川義元の寵臣、三浦義就が既に何日も極秘で滞在していた。

 滞在の理由は当然、いくさが始まる前の織田家の家臣団の切り崩しである。

 津島は尾張にあるのだから織田贔屓なのが当たり前だが、津島の街の豪商達も上洛の噂のある今川の武将の滞在に便宜を図っており、この滞在は公然の秘密となっていた。

 まあ、信長が裏切り者の炙り出しの為に認めていたのだが。

 その津島の高級料亭にて、

(クソ、オレがわざわざ尾張に来てるのに、一宮推薦の柴田って奴も現れないではないか。もしや裏切ると確約した書状は虚偽か? 今川が騙されてる? 織田の勝ち目はゼロなんだからさっさと降伏しろよな)

 そう柴田勝家の寝返りの確約を疑った義就だったが、女中の案内で客人が来ると、満面の笑顔となり、

「よくぞ来て下さいました、信清様」

 客人の若者を出迎えたのだった。

 その様子を屋根裏の穴から眺めていたのは前田利家である。

 利家は最初、来訪者が誰か分からなかったが、

「しかし本当に今川に内応されますので? 一門衆様でしょう?」

「今川と当たっては一溜まりもないからな。織田の名を残す為の苦肉の策さ」

 などとの会話から、

(嘘だろ。織田の一門衆なのか? 信清、信清ーーまさか、犬山城の城主のか? 信長様の従弟じゃねえか? それが今川に内応って)

 さすがに驚いたのだった。





 清洲城下の柴田屋敷にて、

(何てこった。よりにもよって勝三郎に見られるなんて)

 と勝家が絶句したのは落ちた箱が書状を隠す二重箱で、その仕掛けの中から今川方から発行された所領約束の書状が偶然出て来て、今まさに恒興が眼を通してるのを目撃したからだったが。

(勝三郎を殺して尾張から出奔するか? ダメだ。籠城した清州城の城門を開けないと今川に寝返っても手柄にならない。手柄がないと体の良い使いっ走りになる。どうする?)

「これは何なのかな、柴田~」

 意地悪く尋ねた恒興が悪戯が成功したとばかりにニヤリとして、

「な~んてね。無理矢理送り付けられてきたのは分かってるって。オレも送られてきたから」

「送られてきたって何を?」

「これだよ」

 懐から無造作に恒興が書状を出して勝家に見せた。

 一字一句同じ文面で、与える領地までが勝家の書状と完全に被ってる池田恒興宛ての今川からの書状に勝家が驚く。

「えっ、勝三郎、おまえ、今川に内応してるのか?」

「そんな訳ないでしょ。勝手に送られてきただけだよ。他の連中にもばら撒かれてるらしいし、この書状」

 と言った恒興の言葉は嘘である。

 実は勝家の家臣の密告によって前に発見しており、当然、信長に報告。

 勝家の所領約束の書状を真似て、恒興用の偽書を作ってこの度、見せて、勝家を疑心暗鬼にさせる「離間の計」だったのだが、見事に引っ掛かって、それを聞かされた勝家は、

(与える領地が同じってーーまさか、今川方に騙されたのか、オレ? 内応しても書状に書かれた約束の所領は貰えない? だよな、あんな大国ならそれくらいの事はやるか)

 そう勝手に疑心暗鬼になり、

「信長様に提出しておいてやろうか?」

「ああ、頼む。勝三郎」

 こうして勝家の今川への寝返りは阻止されたのだった。





 清州城では密使との繋ぎ役の家臣が預かってきた書状を読んで燃やした信長が、

「随分と面白い事になってきたな」

「何がでございましょうか、信長様」

 そう返事したのは藤吉郎だった。

 藤吉郎が密使との繋ぎ役だったのだ。

織田うちの旗を欲しがってる奴が居るんだとさ」

「それはきっと・・・今川に勝たれては困る甲斐の武田でしょう」

 そう藤吉郎が言い当てたが、信長も機嫌が良かったので心底を見透かした事は不問に伏して、

「他に何か面白い話はないか、サル?」

「昨年、京からの帰路を伊賀衆に襲わせた京の三好も困るらしいですよ。尾張で今川が勝つと今川に京に上落されて」

「? つまり?」

「三好からも矢銭が引っ張れるという事です」

「やってみろ、サル」

「使い道は米と味噌と言ってもよろしいでしょうか?」

 『籠城する』と吹聴してもいいのか、と藤吉郎は聞いた訳だが、

「チッ、おまえはサルの癖に少し知恵が回り過ぎて可愛げがないな」

「申し訳ございません」

 そう言いながらも藤吉郎と信長はニヤリとしたのだった。





 そして本当に藤吉郎は尾張の津島に船で来ていた摂津屋を名乗る商人に扮する竹内秀勝に、

「矢銭を出して欲しいのですが」

「何故、私が出すのでしょうか?」

「困るでしょ、今川が勝つと摂津屋さんも? 矢銭があったら織田が勝てるのですがね~」

「因みに何に矢銭をお使いになるのでしょうか?」

「無論、米や味噌、火縄銃の弾薬ですかね」

「籠城をされますので?」

「東海三国と尾張とでは兵力差があり過ぎますからね」

「なるほど。多少は御用意させていただけるかと」

 こうしてまんまと藤吉郎は矢銭という名の軍資金を三好陣営から出させたのだった。





 登場人物、1560年度

 中村文荷斎(25)・・・勝家の家臣幹部。勝家の子飼。勝家の知恵袋。正室は柴田勝家の養女。

 能力値、勝家への忠誠SS、知恵袋の文荷斎B、槍働きC、他人が馬鹿に見えるA、信勝が勝てば良かったと思ってるS、頓馬の文荷斎E

 三浦義就(32)・・・今川家の家臣。義元の寵臣。源平合戦から続く名門三浦一族。尾張笠寺砦の守将。

 能力値、名門一族A、義元の寵臣A、文武両道A、今川家への忠誠B、義元からの信頼A、織田家臣団での待遇B

 織田信清(27)・・・織田一門衆。犬山城主。織田信秀の弟、信康の子供。信長の従兄弟にして、信長の実姉、犬山殿と婚姻関係。

 能力値、織田一門衆S、怜悧の信清B、生き残ってやるSS、家来が無能A、信長からの信頼度D、自分が得する話大好きA

 木下藤吉郎(23)・・・将来の天下人。百姓出身。出しゃばり。信長の傍に良く出没。台所奉行、普請奉行と順調に出世中。槍働きよりも知恵者で信長に貢献。

 能力値、天下人の才気S、人誑しの藤吉郎SS、図々しさS、信長への忠誠B、信長からの信頼C、織田家臣団での待遇E

 竹内秀勝(30)・・・松永久秀の若き腹心。商人にも扮せるが武士。買収が得意。

 能力値、松永久秀の使いA、どこにでも出没A、ピンハネC、松永家臣団での待遇SS、三好家臣団での待遇A、上司の久秀嫌いD
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