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1560年、桶狭間の戦い
戦(いくさ)は戦う前からもう始まっている
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【林秀貞、今川内応疑惑説、採用】
【柴田勝家、1530年生まれ説、採用】
【柴田勝家、この時期、冷遇説、採用】
【柴田勝家、豪傑ではなく悪知恵の働く謀将説、採用】
【柴田勝家、今川への内応確定説、採用】
【愛智拾阿弥、嫌な奴だったけど池田恒興の前では猫を被ってた説、採用】
【愛智拾阿弥、今川への内応露見で信長の密命で前田利家が抹殺説、採用】
【前田利家、出仕停止は表向きで信長の密命で秘密裏に活動説、採用】
【武田信玄、桶狭間の戦いに介入説、採用】
1560年は新年から尾張内で「駿河守護の今川義元が大軍を率いて京に上洛する」との噂が流れていた訳だが、織田家中は織田家中で問題を抱えていた。
この時、織田信長は尾張を統一していたが、まだ統一して日が浅く、尾張内の武士の全員が信長に忠誠を誓ってる訳ではなかったのだ。
その為、織田家中で「今川に内応してるのでは」と疑われていたのが、
先代が死んだ後の信長と信勝(信行)の織田弾正忠家の家督争いの際、信長の一番家老だった癖に信勝に味方した現織田家の筆頭家老の林秀貞。
信勝の最古参な家臣の上、信勝擁立を主導した為に信長の怒りを買って家臣に加わる事は許されたが現在冷遇中の柴田勝家。
この2人だった。
信長は直接本人に聞ける性格だったので、清州城に呼び出して、
「2人ともどうなんだ? オレを裏切るのか?」
そう質問した。
裏切り者扱いされた方は堪ったものではなく、
「滅相もございません」
「疑われるなど甚だ不本意です」
断固否定するも信長の返事は、
「では裏切ってない事を確認する為に、本日より林のジイには久秀を、権六には勝を目付として付けるな」
「それで上様のお疑いが晴れるのでしたら」
堂々と秀貞が答えたのに対し、勝家の方は難色を示して、
「別の奴にして下さい。勝三郎は困ります」
「どうしてだ、権六?」
「絶対に騒動を起こすじゃないですか」
「まあ、起こすだろうが、おまえがオレを裏切らないのであれば問題なかろう」
「ですが」
「受けよ」
「はっ」
勝家はそう答えながら、
(拙いぞ。勝三郎は去年、犬千代が斬り捨てた愛智拾阿弥と仲が良く、暇さえあれば犬千代を探してると聞く。ワシが勧誘し、屋敷に出入りしてる犬千代を見かけたら絶対に斬り掛かるに決まってる。犬千代の方が腕はあるが、犬千代が勝三郎を返り討ちなんかにしたら上様が激怒してワシの首までが飛ぶぞ。今川軍が尾張に来る前にそれは困る)
そんな事を思う中、信長が、
「そんな訳で久秀は林のジイ、勝は権六を見張れ。よいな?」
「畏まりました」
「はっ」
こうして池田恒興は柴田勝家監視の目付をする事となり、
清州城下の柴田勝家の屋敷にて、
「権六殿、犬千代です」
早速新年の挨拶に来た出仕停止処分中の前田利家と、目付役で勝家の屋敷に来ていた池田恒興が対峙した。
恒興が刀を抜きながら、
「あれれ、前田の犬千代じゃねえか。拾阿弥を斬ったおまえの事を探してたんだぜ、オレはずっと? よくもあれだけいい奴を笄一つで斬りやがったな」
殺す気満々で吠えた。
「いい奴なのは信長様のお気に入りの池田殿の前だけだよっ! アイツは他の奴には最低の奴だったんだからなっ!」
そう言い訳したが、
(嘘、信長様から聞いてないのかよ、アンタ? 信長様の側近の癖して? あれは信長様の命令だったんだよっ! 織田家を裏切って清州城の情報を今川方に流してた張本人だったんだからっ! そう言いたいけど、監視対象の柴田が居るからダメなんだよな、それって? ああ、もう。ってか、もしかしてこの怒ってるのって演技か?)
こちらが利家が愛智拾阿弥を斬り捨てた真相である。
だが、そんな事実を知らない恒興からしたら利家は笄一つで拾阿弥を斬った極悪人だった。
と言うのも、恒興は織田一門衆と同格扱いな上に、信長の乳兄弟で、信長のお気に入り。
更には恒興の母親は信長の乳母。
そのような背景だったので信長の寵を良い事にやりたい放題やっていた愛智拾阿弥も恒興には気を使い、信長と同等に礼儀を払っていたのだ。
お陰で恒興から見たら本当にいい奴で、その誤解がこの騒動の元凶となっており、
「ともかく、おまえは手打ちだっ!」
「待て。勝三郎ーー」
勝家が止める前に恒興が斬り掛かり、
(嘘だろ、演技にしたって刀で斬り掛かるってーーなっ、この斬撃、演技じゃない?)
利家も慌てて腰の日本刀を抜いて、
「嫌に決まってーー」
恒興の斬撃を受けたが、一合交えただけで、利家の持ってた刀の刀身が折れたのだった。
それは恒興の刀が将軍拝領の名刀だったからだが。
「ーー嘘っ? 強かったの、池田殿って?」
「死ねっ!」
再び斬り掛かろうとする中、勝家が恒興を背後から羽交い絞めにする。
「おわ、柴田、何の真似だ?」
「犬千代、逃げろっ!」
「は、はい」
恒興が勝家の腕を引き剥がすのに手古摺る中、利家は逃げていった。
「あっ、待て、犬千代っ!」
「落ち付け、勝三郎。信長様の裁定は出仕停止だろうが」
「そんなの関係あるかっ! 捨阿弥の仇なんだからよっ!」
そう暴れたが腕力勝負なら勝家の方が上で、利家に逃げられたのだった。
恒興はすぐに清州城に呼び戻されて、
「犬を斬ろうとしたのか、勝?」
「はい、捨阿弥の仇ですから」
(オレが命じて犬に今川に内応していた拾阿弥を斬らせたと言っても内応自体、信じないだろうな、これは)
信長は内心で苦笑しながら、素知らぬ顔で、
「犬には今川との戦で重要な任務を与えてある。斬るなよ」
「ーーそうなので?」
「そうだ。だから斬るなよ」
「ええっと、柴田の内応疑惑ってのは?」
「それだ。犬に権六を探らせてる」
「なら、オレの方は命令された通りに?」
「ああ、探索は犬にやらせるから、勝は当初の予定通り『権六から兵を借りる』との名目で全部奪え」
「斬らないんですか、柴田を?」
「そんな事をしたら林のジイまで裏切るわ。あっちはまだ今川に寝返ってないのに」
「へえ、林の爺さん。今回はこっち側なのか」
(ん? 信勝への寝返りがオレの指示だって勝には教えてなかったっけ? 勝は顔に出るから隠してたが、まあ教えなくていいか。今回、林のジイは今川方に寝返りそうだから)
信長はそんな事を思いながら、
「だから勝、絶対に犬を斬るなよ。権六もだ」
「畏まりました」
信長に説明されて、そう返事した恒興だった。
◇
甲斐の躑躅ヶ崎館では、
「春日虎綱、参上致しました」
33歳ながら容姿の整った武士が礼儀正しく武田信玄の前に現れた。
「おお、源五郎、よく来てくれた。早速だが駿府の話は聞いているな?」
「はい、京に上落するとか?」
「京に上洛されたら武田は今川の臣下にならねばならん。そこで尾張の織田の旗を手に入れてきてくれ。数は500騎分くらいでいいかな?」
「・・・尾張で今川の御大(御大将の略)を殺しますので? 一応、今川は同盟相手ですよ?」
「やるのは織田軍であろうよ」
悪そうに信玄は笑ったが、虎綱は少し思案しながら、
「今川の跡目は麒麟児と公家被れという両極端の評判で少々不気味ですが本当によろしいので?」
「ん? 源五郎は直にあれを見た事がなかったか? あれはただの腰抜けよ。その不出来を隠す為に今川が吹聴してるに過ぎん」
「なるほど、公家被れの蹴鞠狂いを隠す為に麒麟児の噂をーーとなれば、駿河、遠江、三河はいただきですね」
「そうするには、まずは織田の旗だ」
「甲州金を使うにしても、尾張で甲州金が出回ればあっという間に商人達の間で噂となり今川方に露見しますからね」
「そこよ、思案のしどころは。旗は軍用品。入手は困難だろうし、下手な偽物を使って今川方に追求されるのはもっと拙い。何か良い策はないか?」
「室町幕府を仲介に頼られては? 今川の御大が『幕府を潰す』と吹聴してる話は京にも聞こえているでしょうから協力してくれるかと」
「ふむ、京の将軍とは名ばかりの若僧を使うか。悪くはないな。尾張の若僧が昨年、京にのぼったとも聞くし。よし、それでいくか。源五郎、今から京まで行ってきてくれ」
「この雪の中をですか?」
「そうだ。任せたからな」
「ったく、人使いの荒い御館様を持って嬉しい限りですよ」
そう皮肉を言いながらも虎綱は出発したのだった。
登場人物、1560年度
織田信長(26)・・・将来の天下人。天才肌。奇抜な事が好き。
能力値、天下人の才気SS、奇抜な事好きS、奇行B、冷酷S、新しい物好きSS、火縄銃SS
林秀貞(47)・・・織田家の筆頭家老。織田の跡目相続では後見役ながら信長を裏切って信勝を支持する。
能力値、織田家の家宰B、歳で槍働きはもう無理S、信勝への寝返りは信長の密命B、信長への忠誠B、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇SS
柴田勝家(30)・・・信勝の元家老。その為、現在冷遇中。豪傑の容姿とは裏腹に策士。
能力値、悪知恵の柴田A、見た目通りの剛力S、信勝(信行)の家老A、織田家への忠誠D、信長からの信頼E、織田家臣団での待遇C
平手久秀(34)・・・信長の近習筆頭。平手政秀の長男。頑固者。父親に顔が似てる。
能力値、死んだ父親の七光りSS、父親譲りの政務力A、信長への忠誠B、信長からの信頼A、信長家臣団での待遇S、信長に馬を譲らなかった逸話S
池田恒興(24)・・・主人公。信長の近習幹部。信長の乳兄弟。織田一門衆と同格扱い。ムードメーカー。信長の傍で数々の歴史の目撃者になる。
能力値、信長と養徳院の教えS、大物に気に入られ度S、ヤラカシ伝説A、信長への絶対忠誠SS、信長からの信頼SS、織田家臣団での待遇S
前田利家(22)・・・信長の小姓。赤母衣衆筆頭。愛智拾阿弥を斬って出仕停止中。
能力値、かぶき者A、愛妻まつS、そろばんC、信長への絶対忠誠S、信長からの信頼A、織田家臣団での待遇E(B)
武田信玄(39)・・・甲斐の虎。甲斐源氏の嫡流。法名は徳栄軒信玄。
能力値、甲斐の虎SS、風林火山SS、家臣の層の厚さS、出身国の運の悪さS、金山枯らしS、騎馬兵の強さS
春日虎綱(33)・・・武田の家臣。この時期、信濃高坂氏の家督を継承して高坂昌信とも名乗る。通称、源五郎。
能力値、風林火山A、信玄との阿吽の呼吸SS、戦術眼S、信玄への忠誠SS、信玄からの信頼SS、武田家臣団での待遇A
【柴田勝家、1530年生まれ説、採用】
【柴田勝家、この時期、冷遇説、採用】
【柴田勝家、豪傑ではなく悪知恵の働く謀将説、採用】
【柴田勝家、今川への内応確定説、採用】
【愛智拾阿弥、嫌な奴だったけど池田恒興の前では猫を被ってた説、採用】
【愛智拾阿弥、今川への内応露見で信長の密命で前田利家が抹殺説、採用】
【前田利家、出仕停止は表向きで信長の密命で秘密裏に活動説、採用】
【武田信玄、桶狭間の戦いに介入説、採用】
1560年は新年から尾張内で「駿河守護の今川義元が大軍を率いて京に上洛する」との噂が流れていた訳だが、織田家中は織田家中で問題を抱えていた。
この時、織田信長は尾張を統一していたが、まだ統一して日が浅く、尾張内の武士の全員が信長に忠誠を誓ってる訳ではなかったのだ。
その為、織田家中で「今川に内応してるのでは」と疑われていたのが、
先代が死んだ後の信長と信勝(信行)の織田弾正忠家の家督争いの際、信長の一番家老だった癖に信勝に味方した現織田家の筆頭家老の林秀貞。
信勝の最古参な家臣の上、信勝擁立を主導した為に信長の怒りを買って家臣に加わる事は許されたが現在冷遇中の柴田勝家。
この2人だった。
信長は直接本人に聞ける性格だったので、清州城に呼び出して、
「2人ともどうなんだ? オレを裏切るのか?」
そう質問した。
裏切り者扱いされた方は堪ったものではなく、
「滅相もございません」
「疑われるなど甚だ不本意です」
断固否定するも信長の返事は、
「では裏切ってない事を確認する為に、本日より林のジイには久秀を、権六には勝を目付として付けるな」
「それで上様のお疑いが晴れるのでしたら」
堂々と秀貞が答えたのに対し、勝家の方は難色を示して、
「別の奴にして下さい。勝三郎は困ります」
「どうしてだ、権六?」
「絶対に騒動を起こすじゃないですか」
「まあ、起こすだろうが、おまえがオレを裏切らないのであれば問題なかろう」
「ですが」
「受けよ」
「はっ」
勝家はそう答えながら、
(拙いぞ。勝三郎は去年、犬千代が斬り捨てた愛智拾阿弥と仲が良く、暇さえあれば犬千代を探してると聞く。ワシが勧誘し、屋敷に出入りしてる犬千代を見かけたら絶対に斬り掛かるに決まってる。犬千代の方が腕はあるが、犬千代が勝三郎を返り討ちなんかにしたら上様が激怒してワシの首までが飛ぶぞ。今川軍が尾張に来る前にそれは困る)
そんな事を思う中、信長が、
「そんな訳で久秀は林のジイ、勝は権六を見張れ。よいな?」
「畏まりました」
「はっ」
こうして池田恒興は柴田勝家監視の目付をする事となり、
清州城下の柴田勝家の屋敷にて、
「権六殿、犬千代です」
早速新年の挨拶に来た出仕停止処分中の前田利家と、目付役で勝家の屋敷に来ていた池田恒興が対峙した。
恒興が刀を抜きながら、
「あれれ、前田の犬千代じゃねえか。拾阿弥を斬ったおまえの事を探してたんだぜ、オレはずっと? よくもあれだけいい奴を笄一つで斬りやがったな」
殺す気満々で吠えた。
「いい奴なのは信長様のお気に入りの池田殿の前だけだよっ! アイツは他の奴には最低の奴だったんだからなっ!」
そう言い訳したが、
(嘘、信長様から聞いてないのかよ、アンタ? 信長様の側近の癖して? あれは信長様の命令だったんだよっ! 織田家を裏切って清州城の情報を今川方に流してた張本人だったんだからっ! そう言いたいけど、監視対象の柴田が居るからダメなんだよな、それって? ああ、もう。ってか、もしかしてこの怒ってるのって演技か?)
こちらが利家が愛智拾阿弥を斬り捨てた真相である。
だが、そんな事実を知らない恒興からしたら利家は笄一つで拾阿弥を斬った極悪人だった。
と言うのも、恒興は織田一門衆と同格扱いな上に、信長の乳兄弟で、信長のお気に入り。
更には恒興の母親は信長の乳母。
そのような背景だったので信長の寵を良い事にやりたい放題やっていた愛智拾阿弥も恒興には気を使い、信長と同等に礼儀を払っていたのだ。
お陰で恒興から見たら本当にいい奴で、その誤解がこの騒動の元凶となっており、
「ともかく、おまえは手打ちだっ!」
「待て。勝三郎ーー」
勝家が止める前に恒興が斬り掛かり、
(嘘だろ、演技にしたって刀で斬り掛かるってーーなっ、この斬撃、演技じゃない?)
利家も慌てて腰の日本刀を抜いて、
「嫌に決まってーー」
恒興の斬撃を受けたが、一合交えただけで、利家の持ってた刀の刀身が折れたのだった。
それは恒興の刀が将軍拝領の名刀だったからだが。
「ーー嘘っ? 強かったの、池田殿って?」
「死ねっ!」
再び斬り掛かろうとする中、勝家が恒興を背後から羽交い絞めにする。
「おわ、柴田、何の真似だ?」
「犬千代、逃げろっ!」
「は、はい」
恒興が勝家の腕を引き剥がすのに手古摺る中、利家は逃げていった。
「あっ、待て、犬千代っ!」
「落ち付け、勝三郎。信長様の裁定は出仕停止だろうが」
「そんなの関係あるかっ! 捨阿弥の仇なんだからよっ!」
そう暴れたが腕力勝負なら勝家の方が上で、利家に逃げられたのだった。
恒興はすぐに清州城に呼び戻されて、
「犬を斬ろうとしたのか、勝?」
「はい、捨阿弥の仇ですから」
(オレが命じて犬に今川に内応していた拾阿弥を斬らせたと言っても内応自体、信じないだろうな、これは)
信長は内心で苦笑しながら、素知らぬ顔で、
「犬には今川との戦で重要な任務を与えてある。斬るなよ」
「ーーそうなので?」
「そうだ。だから斬るなよ」
「ええっと、柴田の内応疑惑ってのは?」
「それだ。犬に権六を探らせてる」
「なら、オレの方は命令された通りに?」
「ああ、探索は犬にやらせるから、勝は当初の予定通り『権六から兵を借りる』との名目で全部奪え」
「斬らないんですか、柴田を?」
「そんな事をしたら林のジイまで裏切るわ。あっちはまだ今川に寝返ってないのに」
「へえ、林の爺さん。今回はこっち側なのか」
(ん? 信勝への寝返りがオレの指示だって勝には教えてなかったっけ? 勝は顔に出るから隠してたが、まあ教えなくていいか。今回、林のジイは今川方に寝返りそうだから)
信長はそんな事を思いながら、
「だから勝、絶対に犬を斬るなよ。権六もだ」
「畏まりました」
信長に説明されて、そう返事した恒興だった。
◇
甲斐の躑躅ヶ崎館では、
「春日虎綱、参上致しました」
33歳ながら容姿の整った武士が礼儀正しく武田信玄の前に現れた。
「おお、源五郎、よく来てくれた。早速だが駿府の話は聞いているな?」
「はい、京に上落するとか?」
「京に上洛されたら武田は今川の臣下にならねばならん。そこで尾張の織田の旗を手に入れてきてくれ。数は500騎分くらいでいいかな?」
「・・・尾張で今川の御大(御大将の略)を殺しますので? 一応、今川は同盟相手ですよ?」
「やるのは織田軍であろうよ」
悪そうに信玄は笑ったが、虎綱は少し思案しながら、
「今川の跡目は麒麟児と公家被れという両極端の評判で少々不気味ですが本当によろしいので?」
「ん? 源五郎は直にあれを見た事がなかったか? あれはただの腰抜けよ。その不出来を隠す為に今川が吹聴してるに過ぎん」
「なるほど、公家被れの蹴鞠狂いを隠す為に麒麟児の噂をーーとなれば、駿河、遠江、三河はいただきですね」
「そうするには、まずは織田の旗だ」
「甲州金を使うにしても、尾張で甲州金が出回ればあっという間に商人達の間で噂となり今川方に露見しますからね」
「そこよ、思案のしどころは。旗は軍用品。入手は困難だろうし、下手な偽物を使って今川方に追求されるのはもっと拙い。何か良い策はないか?」
「室町幕府を仲介に頼られては? 今川の御大が『幕府を潰す』と吹聴してる話は京にも聞こえているでしょうから協力してくれるかと」
「ふむ、京の将軍とは名ばかりの若僧を使うか。悪くはないな。尾張の若僧が昨年、京にのぼったとも聞くし。よし、それでいくか。源五郎、今から京まで行ってきてくれ」
「この雪の中をですか?」
「そうだ。任せたからな」
「ったく、人使いの荒い御館様を持って嬉しい限りですよ」
そう皮肉を言いながらも虎綱は出発したのだった。
登場人物、1560年度
織田信長(26)・・・将来の天下人。天才肌。奇抜な事が好き。
能力値、天下人の才気SS、奇抜な事好きS、奇行B、冷酷S、新しい物好きSS、火縄銃SS
林秀貞(47)・・・織田家の筆頭家老。織田の跡目相続では後見役ながら信長を裏切って信勝を支持する。
能力値、織田家の家宰B、歳で槍働きはもう無理S、信勝への寝返りは信長の密命B、信長への忠誠B、信長からの信頼B、織田家臣団での待遇SS
柴田勝家(30)・・・信勝の元家老。その為、現在冷遇中。豪傑の容姿とは裏腹に策士。
能力値、悪知恵の柴田A、見た目通りの剛力S、信勝(信行)の家老A、織田家への忠誠D、信長からの信頼E、織田家臣団での待遇C
平手久秀(34)・・・信長の近習筆頭。平手政秀の長男。頑固者。父親に顔が似てる。
能力値、死んだ父親の七光りSS、父親譲りの政務力A、信長への忠誠B、信長からの信頼A、信長家臣団での待遇S、信長に馬を譲らなかった逸話S
池田恒興(24)・・・主人公。信長の近習幹部。信長の乳兄弟。織田一門衆と同格扱い。ムードメーカー。信長の傍で数々の歴史の目撃者になる。
能力値、信長と養徳院の教えS、大物に気に入られ度S、ヤラカシ伝説A、信長への絶対忠誠SS、信長からの信頼SS、織田家臣団での待遇S
前田利家(22)・・・信長の小姓。赤母衣衆筆頭。愛智拾阿弥を斬って出仕停止中。
能力値、かぶき者A、愛妻まつS、そろばんC、信長への絶対忠誠S、信長からの信頼A、織田家臣団での待遇E(B)
武田信玄(39)・・・甲斐の虎。甲斐源氏の嫡流。法名は徳栄軒信玄。
能力値、甲斐の虎SS、風林火山SS、家臣の層の厚さS、出身国の運の悪さS、金山枯らしS、騎馬兵の強さS
春日虎綱(33)・・・武田の家臣。この時期、信濃高坂氏の家督を継承して高坂昌信とも名乗る。通称、源五郎。
能力値、風林火山A、信玄との阿吽の呼吸SS、戦術眼S、信玄への忠誠SS、信玄からの信頼SS、武田家臣団での待遇A
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