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1559年、室町幕府13代将軍、足利義輝謁見
織田家の「甲賀贔屓、伊賀嫌い」の発端
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【今川義元、室町幕府不要論者説、採用】
【竹内秀勝、1530年生まれ説、採用】
【植田光次、1532年生まれ説、採用】
【滝川一益の池田恒興親族説、不採用】
【滝川一益、甲賀出身説、採用】
【岩室重休、甲賀出身説、採用】
庭から玄関に回されて待っていた恒興の許に奥に行っていた進士藤延が戻ってきて、
「無名だが村正だ。受け取るように」
「ははっ!」
受け取った恒興が、どれどれ、と鞘から刀を抜こうとして、
「御座所で刀を抜こうとする奴があるか」
「あっ、それもそうですね。でも見てみたいし(チラッ)」
「特別だぞ。不穏な真似をしたらその場で斬り捨てるからな」
「ありがとうございます」
結局は鞘から抜いたのだった。
正直言って見惚れるくらいの凄い名刀だった。
「すげぇ刀。えっと、どこが刃毀れしてるんですか?」
「先の方の、そこだ」
言われないと分からないくらい、ちょこっとだけ欠けていた。
「こんなの刃毀れの内に入らないじゃないですか」
「室町幕府の将軍が使うとなると刃毀れの部類に入るのだよ」
「へ~。いいのを貰っちゃったな~」
恒興も武士なのでそう喜ぶ中、
「さっきは助かったぞ」
藤延がふいに礼を言った。
「何がですか?」
「『三好を殺す』と言っただろうが。義輝様もあれでようやく決心をされたようなのでな」
「?」
「こっちの話だ。おまえは知らんでいいーーそれよりも尾張出身なら東海道の駿河守護の今川だ」
「何かありましたか?」
「信じられぬ事だが『幕府を潰す』とか良からぬ事を企んでると聞くぞ」
「? 幕府を潰すってどうやってです? 京まで上れませんでしょ、駿河からなら?」
「それが大軍を率いて近々京へやってくるそうだ」
「えっ。なら尾張はーー」
「戦場になろうな」
「チッ、返り討ちにしてやるぜ」
「ああ、任せたぞ」
などと世間話をしたのだった。
謁見が終わって信長以下4人が玄関に現れた。
恒興が平伏して、
「申し訳ございませんでした」
謝罪したが、信長は無言で素通りして玄関を潜り、恒興も後を追ったが、門を出たら、いきなり肩を組まれて、
「何が『オレが心配で』だっ! 勝がそんなしおらしい玉かっ! どうして忍び込んだんだ? 怒らないから正直に言ってみろ」
笑いながら質問された。
常識人ならば「将軍の前で恥を掻かされた」と怒るところだが、奇抜さを好む信長は塀を越えた恒興の行動を好意的に受け取っていた。
「だって『せっかく京まで来たんだから将軍様の顔を見てみたい』じゃないですか」
「やはりそれが忍び込んだ理由か。1人でか? 違うな。サルを踏み台にして塀を越えたのか?」
「いえ、成政です」
「内蔵では勝は止められんか」
内蔵とは佐々成政の別名の内蔵助の内蔵である。
そう評した信長が、
「あの瓦が落ちる仕掛けは清州でも採用だな」
「いえ、あれは鳥や猫が乗っても落ちるから夜に瓦の音が五月蠅くて最悪らしいですよ」
「ふむ」
「それよりも御家来衆にさっき凄い事を聞かされましたよ。今川がヤバイらしいです」
「ああ、京にまで聞こえてるとは本当にやるつもりらしいな。返り討ちにしてやるよ」
遠くを見つめながら信長は宣言した。
「それでこそ信長様です」
「よし、さっさと尾張に帰るか」
「えっ、京見物は――」
「今の京に見物するところなんてないだろ?」
「いえ、色街が見たかったな~っていうか」
「ダメだな。帰るぞ、今から発つ」
この急ぎの出発は謁見中に将軍義輝から警告されたからである。
御座所の中に三好の内通者が居り、「三好を殺す」と言った恒興が狙われるであろうから早々に国元に帰るように、と。
だが、自分の命が狙われてると知る由もない恒興が、
「今からですか? 嘘ですよね? せめて出発は明日にーー」
「ダメだ」
即断即決の信長がそう決定し、本当にこの日の内に信長は京から尾張に向けて旅立ったのだった。
京から尾張に移動するに当たり、織田の上洛隊がどこを通って帰るかと言えば伊勢方面である。
斎藤家と敵対してるので美濃が通れないからだが。
その為、伊賀甲賀も通る事となった。
伊賀甲賀と言えば忍者の里である。
そして伊賀甲賀の忍者は傭兵集団でもあり、金さえ払えば何でもやった。
恒興が京の将軍の御座所で「三好を殺す」なんて舐めた事を言ったのだ。
その日の内にその発言は筒抜けとなり、その帰路となる伊賀に先回りしたのが三好長慶の腹心の松永久秀の筆頭家老、竹内秀勝である。
黄金の詰まった袋を積んだ馬で、大半が歩兵の織田上洛隊よりも早く伊賀に移動。
伊賀十二人衆の一人、植田光次と会見した。
「尾張の織田とかいう田舎者を始末して下され」
「天下人の三好様の御頼みとあらばやらねばなりませんな」
黄金を触りながら、そうあっさりと引き受けたのだった。
織田家の方でも忍者は雇ってる。
近習幹部の池田恒興の隊の滝川一益は甲賀者だった。
この時はまだ新参だったので34歳ながらも上洛隊の斥候をやっていた訳だが。
「池田様、伊賀が妙ですぞ。一部が戦闘態勢に入ってる」
「そうなのか、滝川?」
恒興が一益を見てから、
「信長様」
隣に居た信長を見ると、
「ああ、聞こえた。攻め落とすか」
涼しい顔で激昂していた。
あっ、拙い、と恒興も思う中、一番に出しゃばったのは傍に居た藤吉郎で、
「なりません、信長様。上洛して帰国する前に騒ぎなんかを起こせば、せっかく将軍様との謁見が上手くいったのに将軍様の顔に泥を塗って無駄に終わりますからっ!」
「オレに意見など賢しいぞ、サルがっ!」
信長が正論を言った藤吉郎を蹴り、
「うぎゃあああああ」
と悲鳴を上げる中、
(なるほど、将軍様の覚えが悪くなるのは拙いな)
恒興も考え、
「滝川、おまえも甲賀の忍者だったよな? 甲賀と伊賀ってどっちが強いんだ?」
「無論、甲賀ですよ」
出身者の一益が即答したので、信長が、
「よし、甲賀衆を丸ごと雇って抜け道を通り抜けるぞ。滝川、言い値で甲賀の連中を雇ってこい」
「はっ」
「長門、滝川と同行して、本当に滝川が甲賀出身か確認して来い」
「畏まりました」
信長に指名されて、そう返事をしたのは小姓筆頭で信長の寵臣、岩室重休だ。
こうして織田の上洛隊は尾張に帰国する為に甲賀衆を雇ったのだった。
周囲では甲賀衆と伊賀衆による激しい場外乱闘が行われて、
「身の程知らずの野盗崩れがっ! 返り討ちにしてくれるわ、かかれっ!」
森可成らは喜んで戦ったが、上洛隊の中心、信長の隣に居る池田恒興は一度も刀を抜く事なく楽に尾張に帰ったのだった。
登場人物、1559年度
竹内秀勝(29)・・・松永久秀の若き腹心。商人に化けてるが武士。買収が得意。
能力値、松永久秀の使いA、どこにでも出没A、ピンハネC、松永家臣団での待遇SS、三好家臣団での待遇A、上司の久秀嫌いD
植田光次(31)・・・伊賀十二人衆の一人。三好贔屓。
能力値、伊賀への忠義S、伊賀忍者集団での待遇A、京への憧れB、金払いのいい奴好きA、伊賀首領への野心SS、三好贔屓B
滝川一益(34)・・・織田家の家臣。甲賀二十一家の一つ、滝家出身。本小説では恒興の親族ではない。
能力値、甲賀忍者D、恒興の家来扱い嫌いA、火縄銃の一益S、信長への忠誠C、信長からの信頼E、織田家臣団での待遇D
岩室重休(23)・・・信長の寵臣の小姓。通称、長門守。文武、容姿共に優れている。甲賀五十三家の岩室氏の傍系。信秀の最後の側室、岩室殿とは無関係。
能力値、命知らずA、隠れなき才人A、信長の寵臣A、信長への絶対忠誠S、信長からの信頼A、織田家臣団での待遇A
【竹内秀勝、1530年生まれ説、採用】
【植田光次、1532年生まれ説、採用】
【滝川一益の池田恒興親族説、不採用】
【滝川一益、甲賀出身説、採用】
【岩室重休、甲賀出身説、採用】
庭から玄関に回されて待っていた恒興の許に奥に行っていた進士藤延が戻ってきて、
「無名だが村正だ。受け取るように」
「ははっ!」
受け取った恒興が、どれどれ、と鞘から刀を抜こうとして、
「御座所で刀を抜こうとする奴があるか」
「あっ、それもそうですね。でも見てみたいし(チラッ)」
「特別だぞ。不穏な真似をしたらその場で斬り捨てるからな」
「ありがとうございます」
結局は鞘から抜いたのだった。
正直言って見惚れるくらいの凄い名刀だった。
「すげぇ刀。えっと、どこが刃毀れしてるんですか?」
「先の方の、そこだ」
言われないと分からないくらい、ちょこっとだけ欠けていた。
「こんなの刃毀れの内に入らないじゃないですか」
「室町幕府の将軍が使うとなると刃毀れの部類に入るのだよ」
「へ~。いいのを貰っちゃったな~」
恒興も武士なのでそう喜ぶ中、
「さっきは助かったぞ」
藤延がふいに礼を言った。
「何がですか?」
「『三好を殺す』と言っただろうが。義輝様もあれでようやく決心をされたようなのでな」
「?」
「こっちの話だ。おまえは知らんでいいーーそれよりも尾張出身なら東海道の駿河守護の今川だ」
「何かありましたか?」
「信じられぬ事だが『幕府を潰す』とか良からぬ事を企んでると聞くぞ」
「? 幕府を潰すってどうやってです? 京まで上れませんでしょ、駿河からなら?」
「それが大軍を率いて近々京へやってくるそうだ」
「えっ。なら尾張はーー」
「戦場になろうな」
「チッ、返り討ちにしてやるぜ」
「ああ、任せたぞ」
などと世間話をしたのだった。
謁見が終わって信長以下4人が玄関に現れた。
恒興が平伏して、
「申し訳ございませんでした」
謝罪したが、信長は無言で素通りして玄関を潜り、恒興も後を追ったが、門を出たら、いきなり肩を組まれて、
「何が『オレが心配で』だっ! 勝がそんなしおらしい玉かっ! どうして忍び込んだんだ? 怒らないから正直に言ってみろ」
笑いながら質問された。
常識人ならば「将軍の前で恥を掻かされた」と怒るところだが、奇抜さを好む信長は塀を越えた恒興の行動を好意的に受け取っていた。
「だって『せっかく京まで来たんだから将軍様の顔を見てみたい』じゃないですか」
「やはりそれが忍び込んだ理由か。1人でか? 違うな。サルを踏み台にして塀を越えたのか?」
「いえ、成政です」
「内蔵では勝は止められんか」
内蔵とは佐々成政の別名の内蔵助の内蔵である。
そう評した信長が、
「あの瓦が落ちる仕掛けは清州でも採用だな」
「いえ、あれは鳥や猫が乗っても落ちるから夜に瓦の音が五月蠅くて最悪らしいですよ」
「ふむ」
「それよりも御家来衆にさっき凄い事を聞かされましたよ。今川がヤバイらしいです」
「ああ、京にまで聞こえてるとは本当にやるつもりらしいな。返り討ちにしてやるよ」
遠くを見つめながら信長は宣言した。
「それでこそ信長様です」
「よし、さっさと尾張に帰るか」
「えっ、京見物は――」
「今の京に見物するところなんてないだろ?」
「いえ、色街が見たかったな~っていうか」
「ダメだな。帰るぞ、今から発つ」
この急ぎの出発は謁見中に将軍義輝から警告されたからである。
御座所の中に三好の内通者が居り、「三好を殺す」と言った恒興が狙われるであろうから早々に国元に帰るように、と。
だが、自分の命が狙われてると知る由もない恒興が、
「今からですか? 嘘ですよね? せめて出発は明日にーー」
「ダメだ」
即断即決の信長がそう決定し、本当にこの日の内に信長は京から尾張に向けて旅立ったのだった。
京から尾張に移動するに当たり、織田の上洛隊がどこを通って帰るかと言えば伊勢方面である。
斎藤家と敵対してるので美濃が通れないからだが。
その為、伊賀甲賀も通る事となった。
伊賀甲賀と言えば忍者の里である。
そして伊賀甲賀の忍者は傭兵集団でもあり、金さえ払えば何でもやった。
恒興が京の将軍の御座所で「三好を殺す」なんて舐めた事を言ったのだ。
その日の内にその発言は筒抜けとなり、その帰路となる伊賀に先回りしたのが三好長慶の腹心の松永久秀の筆頭家老、竹内秀勝である。
黄金の詰まった袋を積んだ馬で、大半が歩兵の織田上洛隊よりも早く伊賀に移動。
伊賀十二人衆の一人、植田光次と会見した。
「尾張の織田とかいう田舎者を始末して下され」
「天下人の三好様の御頼みとあらばやらねばなりませんな」
黄金を触りながら、そうあっさりと引き受けたのだった。
織田家の方でも忍者は雇ってる。
近習幹部の池田恒興の隊の滝川一益は甲賀者だった。
この時はまだ新参だったので34歳ながらも上洛隊の斥候をやっていた訳だが。
「池田様、伊賀が妙ですぞ。一部が戦闘態勢に入ってる」
「そうなのか、滝川?」
恒興が一益を見てから、
「信長様」
隣に居た信長を見ると、
「ああ、聞こえた。攻め落とすか」
涼しい顔で激昂していた。
あっ、拙い、と恒興も思う中、一番に出しゃばったのは傍に居た藤吉郎で、
「なりません、信長様。上洛して帰国する前に騒ぎなんかを起こせば、せっかく将軍様との謁見が上手くいったのに将軍様の顔に泥を塗って無駄に終わりますからっ!」
「オレに意見など賢しいぞ、サルがっ!」
信長が正論を言った藤吉郎を蹴り、
「うぎゃあああああ」
と悲鳴を上げる中、
(なるほど、将軍様の覚えが悪くなるのは拙いな)
恒興も考え、
「滝川、おまえも甲賀の忍者だったよな? 甲賀と伊賀ってどっちが強いんだ?」
「無論、甲賀ですよ」
出身者の一益が即答したので、信長が、
「よし、甲賀衆を丸ごと雇って抜け道を通り抜けるぞ。滝川、言い値で甲賀の連中を雇ってこい」
「はっ」
「長門、滝川と同行して、本当に滝川が甲賀出身か確認して来い」
「畏まりました」
信長に指名されて、そう返事をしたのは小姓筆頭で信長の寵臣、岩室重休だ。
こうして織田の上洛隊は尾張に帰国する為に甲賀衆を雇ったのだった。
周囲では甲賀衆と伊賀衆による激しい場外乱闘が行われて、
「身の程知らずの野盗崩れがっ! 返り討ちにしてくれるわ、かかれっ!」
森可成らは喜んで戦ったが、上洛隊の中心、信長の隣に居る池田恒興は一度も刀を抜く事なく楽に尾張に帰ったのだった。
登場人物、1559年度
竹内秀勝(29)・・・松永久秀の若き腹心。商人に化けてるが武士。買収が得意。
能力値、松永久秀の使いA、どこにでも出没A、ピンハネC、松永家臣団での待遇SS、三好家臣団での待遇A、上司の久秀嫌いD
植田光次(31)・・・伊賀十二人衆の一人。三好贔屓。
能力値、伊賀への忠義S、伊賀忍者集団での待遇A、京への憧れB、金払いのいい奴好きA、伊賀首領への野心SS、三好贔屓B
滝川一益(34)・・・織田家の家臣。甲賀二十一家の一つ、滝家出身。本小説では恒興の親族ではない。
能力値、甲賀忍者D、恒興の家来扱い嫌いA、火縄銃の一益S、信長への忠誠C、信長からの信頼E、織田家臣団での待遇D
岩室重休(23)・・・信長の寵臣の小姓。通称、長門守。文武、容姿共に優れている。甲賀五十三家の岩室氏の傍系。信秀の最後の側室、岩室殿とは無関係。
能力値、命知らずA、隠れなき才人A、信長の寵臣A、信長への絶対忠誠S、信長からの信頼A、織田家臣団での待遇A
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