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キンラス国王、墜つ

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 オルクロリア城に落雷が落ち、城内の謁見の間に居たキンラス国王が、

「な、何だ、今の落雷は?」

「雷魔法と言えはガルタイルですな。どうやら自我を失って暴れ始めたらしいのう」

 エリオスのその呟きに全員がハッとなった。

「皆の者、直ちに出陣だっ! リッチごときにこれ以上の狼藉を許すなっ!」

 キンラス国王が吠える中、謁見の間に入ってきた騎士が、

「報告、野外訓練場に居る骸骨が魔法を使い、訓練場に居た騎士団を全滅させました」

「それでその骸骨はどうしている?」

 ブロッケン騎士団長の問いに、その報告をした騎士は震えた声で、

「野外訓練場の外に出て本城を目指しております」

 本城とはオルクロリア城内の本丸、現在キンラス国王達が居る城を指した。

 直後に、2回目の落雷がピッシャーンッと落ちる。

「ブロッケン、我がクロベーテ王国に伝わる国宝の魔法の剣を貸し与える。あの骸骨を始末して来いっ!」

「ははっ! この命に代えましても」

「やれやれ、ワシも行きますかな」

 こうして謁見の間に居た幹部達が一斉に動き出したのだった。





 リッチとなったガルタイルはカイルの命令通りにオルクロリア城内に居る全員の抹殺を始めていた。

 雷魔法には薄い電磁波を放って敵の位置を特定する探知魔法が存在する。お陰で、

「雷の精霊よ、周囲の様子を我に教えよーー素敵波」

 城内に居る敵の位置を特定して、

「雷の精霊よ、20の矢となって我が敵を射倒したまえ。願うなら一撃で射倒したまえ。願うなら遮蔽物の中に潜む敵も射倒したまえーー雷陰の矢」

 無駄に上級の攻撃魔法を駆使して野外から城内の厨房に居た料理人や廊下のメイド達を倒した。

 流れるような魔法の数々で1秒も無駄にせずにオルクロリア城内に居る敵を抹殺してるガルタイルだったが、心の中では、

(もう止めてくれっ! さっきの訓練場だけでも500人も殺してるのに、更に殺戮を繰り返すなんてっ! それも非戦闘員をこんなにっ!
止まれ、オレの身体っ! こんなに殺したらいい訳なんて出来ないぞっ! 頼むから止まってくれっ!)

 泣き喚いていた。

 31歳で宮廷魔術師になったエリート魔術師とは言っても常識人だったので、こんな物だ。

 だが、命令を出したカイルはとっくの昔にアジトに戻ってるので、ガルタイルは命令されっ放しで、

「雷よ、20の矢となって我が敵を射倒したまえーー雷の矢」

 ワラワラと出てきた騎士達に雷の矢20本を放って攻撃したのだった。

「ガルタイル、もう自我がないのか?」

 騎士達の後に出てきたエリオスの問い掛けに、

(老師、何とかしてくれっ! 身体が勝手に・・・)

 と内心で泣き喚くが、そのガルタイルの口は、

「雷の精霊よ、雷の御子たる我が声に応えよ。愚かなる敵を倒す矢となり我が敵を射倒したまえ。願うなら邪な竜をも倒せる雷の一撃で射倒したまえーー竜殺しの雷矢」

 攻撃魔法を詠唱して放った。

 エリオスの方は、

「風の王よ、雷を曲げる盾となれーー雷防ぎの風の盾」

 防御魔法を詠唱して、雷の矢を受け流した。

 魔法放出後硬直中のガルタイルに向かって、

「喰らえっ! うおおおおっ!」

 ブロッケン騎士団長が突進する。手にはクロベーテ王国に伝わる国宝の魔法の剣を握る。そのまま間合いを詰めてガルタイルを斬るが、次の瞬間、ガルタイルの姿が雷に変わった。

「雷分身だと? 魔法を使い、本物と見分けが付かないほどのか」

 ブロッケン騎士団長が驚いた時にはその雷の塊が周囲に放電した。眼の前に居るブロッケン騎士団長が、

「ぐおおおっ!」

 雷撃を浴びてダメージを受ける。

 周囲を見渡せばリッチのガルタイルが6人も居た。

「これは少し骨が折れそうだわい」

 エリオスはそう苦笑しながら呪文の詠唱を始めたのだった。





 ◇





 同時刻、隠れアジトにカイルは戻ってきた。

 隠れアジトなどと言ってるが元は精肉店の前に店をやってた薬草屋が薬草の保管の為に作った小さな石畳の地下倉庫だ。

 その薬草屋が別の場所に店を構える事となり、精肉店が空き物件に入った時には地下倉庫の存在が忘れ去られており(かなり不自然でテイジーが何かした可能性は高いが)その後はテイジーが無断で使用してるという経緯だった。

 隠れアジトの出入口は狭く、その上、ハシゴじゃなければ地上に出入り出来ない。よってベッドが入る訳もなかったが、ゼリー状のスライムベッドを持ち込んでおり、テイジーは快適に過ごしていた。

「リクエストされたパン屋のパンとテイクアウトのコーヒーと屋台のシチュー、買ってきたぞ、テイジー」

「そこに置いておいて」

 セクシーランジェリーを纏ったテイジーはスライムベッドに寝転がって夢中で日記を読み、視線をカイルに向ける事なく言い放った。

「ったく、オレを使いっぱしりにしてその態度とは」

 カイルがぼやくのも無理はない。

 パンとコーヒーとシチューを売ってる店が3軒とも違うのだから。

 視線をカイルに向ける事もなくテイジーが、

「何よ、アジトを提供してるんだからそれくらいしてもバチは当たらないでしょ」

「まあね」

 それでもこの日のカイルもご機嫌で、

「おっ、美味うまっ!」

 テーブルに並べたシチューを食べてそう感想を言ったのだった。





 ◇





 クロベーテ王国の国王キンラス・クロベーテは王都オルクロリアの民衆からすこぶる人気がある。

 当然だ。いいカッコしいの性格が災いして、私腹を肥やす悪徳貴族を先頭に立って定期的に成敗し、その活躍を新聞に書かせて人気を得ているのだから。

 劇場型政治が功を奏し、王都オルクロリアの民衆からは本当に人気が高かった。

 だが、成敗するには勿体無いくらいの優秀な貴族も断罪された為にオルクロリア王城内の臣下の評価は微妙だった。

 そして私腹を肥やしていたが、家臣や領民には優しい貴族も中には居た訳で、国王に成敗された主の仇を討つ為にオルクロリア城に潜り込んだ復讐者も居た。

 末端兵士のイーレンもその1人である。

 茶髪の若武者で、年齢は18歳。一昨年に国外追放を受けたクローバース伯爵家に拾われた孤児という経歴だ。

 飢饉で飢え、道端で野垂れ死にしそうになった子供の頃に拾われたのだ。

 その恩に報いる為に勉学に励み、武芸を鍛え、兵士として仕官して伯爵領に出る魔物を倒して、さあこれから恩返しをするぞ、というところでクローバース伯爵家は断絶。領民には慈悲深かった為、国外追放されるクローバース伯爵一家が乗せられた獣車を見送る時には、多数の領民達が道の両端に立って伯爵一家の追放を悲しんだものだ。

 その時にイーレンは、絶対に心優しい旦那様一家に変わって、こんな酷い事をした国王に復讐してやる、と心に誓い、オルクロリア城に仕官していた。

 士官は拍子抜けするくらい順調だった。クローバース伯爵領の出身だったのだが、国王陛下を褒めに褒めたら仕官出来たのだから。

 そのイーレンからしてみればこのリッチ騒動は千載一遇の好機だった。

 イーレンは末端も末端なので裏門の守衛勤務だ。まだオルクロリア城の建造物の巡回すらさせて貰えない階級である。それが功を奏して朝からのオルクロリア城の騒動に駆り出される事は一切なかった。

 それでもオルクロリア城内に居る為に情報は回ってくる。

「宮廷魔術師の誰かが骸骨兵になったんだってさ。それで朝から大騒ぎでさぁ~」

 お喋りメイドがわざわざ裏門まで来て兵士達に教えてくれるのだから。

「マジでか?」

「オレ達は向かわなくていいですか?」

 イーレンの問いに、長年裏門勤務の中年の班長が、

「下っ端はそんな事、気にしなくていいんだよ。騎士のお偉いさんが片付けるだろ、骸骨兵くらい」

「ですが」

「裏門の守衛も立派な仕事だぞ、イーレン。この騒ぎに乗じて門にやってくる変な連中をオルクロリア城に入れないのも立派な仕事だ。真面目に仕事をしろ」

「・・・わかりました」

 と当初はイーレンも渋々守衛勤務を務め、情報を仕入れたお喋りメイドが定期的に、

「わかったわよ、骸骨の正体。宮廷魔術師の第6席のガルタイルって人だって」

「今は野外訓練場に居るらしいわよ、その骸骨」

 教えてくれた。

 それには中年の班長も興味を示し、

「ん? まだ討伐出来てないのか、その骸骨兵?」

「刃が通らないくらい硬いんだって」

「あれ、そうなのか? 変だな。骸骨兵ならオレも倒した事があるのに」

「喋れるらしいわ。上位種って騎士様達が騒いでたもの」

「上位種か、それは戦った事がないな」

 なんて呑気に喋っていたが、遂にはピッシャーンッと2回落雷が落ちて、その後は、チュドン、バリバリバリ、との魔法の炸裂音が遠方から聞こえ始めた。

「おいおい、マジかよ」

 中年の守衛が驚きながら炸裂音が聞こえる西側に視線を送る中、遂には裏門に黒髪の青年騎士が駆けてきて、

「裏門からメイド達や文官達を逃がす。出入りの所属と名前と所持品の確認は特例で免除だ」

「ですが、規則では如何なる場合も・・・」

 班長が食い下がるが、黒髪の青年騎士が、

「構わん。緊急事態だ。だが、さすがに壺とか絵画とか花瓶とか剣とか持ってる奴は通すなよ」

「はっ」

「それと裏門には4人を残して他は私に付いて来い」

「騎士様。オレ、腕っ節には自信があります」

 イーレンが自ら売り込み、

「よし、付いてこい」

 イーレンは裏門を離れて、青年騎士の後に付いて行ったら、オルクロリアの本城の玄関から出てきたキンラス国王の一団と鉢合わせた。

 まさかの遭遇だ。

 国王と遭遇する機会などイーレンの身分からしたら一生に一度あるかないかで、それが今この時だった。

 クローバース伯爵の恨みを晴らす好機だが、キンラス国王の周囲にはそれでも30人は人が居る。イーレンは5重の輪の外側で、これ以上はさすがに近寄れない。

 そしてキンラス国王は周囲に移動を止められていた。

「陛下、お止め下さい。危険過ぎます」

「黙れ。余が戦わずして誰が戦う」

「ブロッケン殿とエリオス殿に任せましょう」

 その会話を遠巻きに聞いて、イーレンは何が起こってるのかピンときた。

 同時に即座に妙案を思い付き、輪の一番外側からキンラス国王にも聞こえる大きな声で、

「へっ? 国王様って強いんですよね? どうして止めてるんですか、皆さん?」

「五月蠅い。黙ってろ」

 青年騎士が慌ててイーレンを叱咤し、キンラス国王の周囲に居た者達も、余計な事を言いおって、と視線を向けたが、いいカッコしいのキンラス国王が、

「邪魔をするな。余はこれより屋外闘技場に向かう」

「それでこそオレ達が憧れる国王様だっ!」

 そう合い手を入れたのもイーレンである。

 調子付いたキンラス国王はそのまま西側の屋外訓練場へと歩き出し、

「お待ち下さい。陛下、お願いですから」

「本当にダメです。エリオス様に言われてるんですからっ!」

 取り巻き達が慌てて止めるもキンラン国王は西の屋外訓練場に進み、イーレンはと言えば青年騎士に、

「この馬鹿が。陛下は出陣してはダメなんだよっ!」

「どうしてですか?」

 マヌケな兵士のフリをしたイーレンに、青年騎士が嘆くように、

「ああ、もういい。おまえは裏門に戻ってろ」

「はあ」

 こうして内心で舌を出しながらイーレンは裏門へと戻ったのだった。





 ◇





 30分の戦闘の後、オルクロリアの本城前から押し込まれて再び屋外訓練場に吹き飛ばされたリッチのガルタイルは片膝を地面に付いていた。

 骸骨だが右肩箇所が欠損する重傷である。腕の骨には複数の切傷もあった。

 ガルタイルが押されてるのも当然だ。

 場所はクロベーテ王国の王都の中枢、オルクロリア城なのだ。

 国内最強の人材が揃っている。

 それだけではない。

 オルクロリア城に魔物が出たのだ。クロベーテ王国は威信を賭けており、宝物庫を開放して、これまで溜めに溜めた魔宝具を出し惜しみなく騎士や魔術師に持たせている。

 これでリッチ1匹に負けたら、クロベーテ王国は最初から国家として存在する資格がなかったという事になるのだから。

(良かったぁ~。これ以上の大罪を犯す前に死ねて)

 片膝を付くガルタイルがそう思った時だった。

「何だ、勝ってるではないか?」

 との言葉と共にキンラス国王が取り巻きを連れて屋外訓練場に登場した。

 命懸けで死闘をしている全員の言葉を代弁するなら『はあ? 何で?』である。

 キンラス国王の登場という余りのあり得ない出来事に宮廷魔術師のエリオスでさえ、

「何をしておるんじゃ、貴様らっ! さっさと陛下を連れていかんかっ!」

 とガルタイルから視線を外して一喝した。

 その隙を敵殲滅モードのガルタイルが見逃す訳がなく、

「雷こ精霊よ、雷の御子たる我が声に応えよ。愚かなる敵を倒す矢となり我が敵を射倒したまえ。願うなら邪な竜をもーー」

 呪文の詠唱を始めた。

(待て待て待て。嘘だろ、その魔法だけは止めてくれっ! ってか、誰を狙う気だ? 陛下じゃないよ、さすがに? そんな事をしたら私が大罪人に・・・)

 ガルタイルは必死に身体を止めようとするが、命令系の服従9は伊達ではない。

 自分の身体(骸骨)なのに止める事は敵わず、

「倒せる雷の一撃で射倒したまえーー竜殺しの雷矢」

 詠唱が完成して攻撃魔法を放った。

 悪い予感というのは当たるもので、魔法の標的は、最悪な事にキンラス国王だった。

 特別な雷の矢が放たれる。

「いかんっ! 陛下をお守りしろっ!」

 エリオスが命令するまでもない。

 忠臣の親衛隊の1人が、

「陛下をやらせてなるものかっ!」

 身体で盾になろうと、キンラス国王に迫る雷の矢に飛び出し、そのまま、

「ギャアアアア」

 と身体で雷矢を受けた。

 だが、この魔法は竜殺しの雷矢だ。人間1人くらいあっさりと貫通して、勢いそのままにキンラス国王に直撃し、

「グアアアアアアア」

 バリバリバリッとキンラス国王は感電して倒れたのだった。

 屋外訓練場でリッチと死闘を演じていた者達。

 キンラス国王と一緒に登場した者達。

 その場に居る全員が呆然である。

 リッチのガルタイルも、

(えっ? えっ? えっ? 死んでないよな、さすがに? 魂魄の階位は20台と低いがクロベーテ王国の国王なんだから防御系の魔道具を山ほど装備してるはずだし)

 安否を気遣うが、その口は次なる魔法の詠唱を口ずさみ、

「雷の精霊達よ、雷の御子たる我が声に応えよ。千の敵を雷で倒さん。晴天に雷鳴が轟き、落雷を降らすーー」

 誰もがそれに気付かず、いち早く我に返ったエリオスが、

「何を呆けておる。早く治療せんかっ!」

「はっ、はいっ! 直ちに」

「どうだ。陛下の様子は?」

「ヒッ、心臓が止まってるっ!」

「精霊達に告げん、我は雷の御子。雷鳴と共に恐怖を刻めての敵を討ち倒せーー」

「応急処置じゃ。霊薬を口移しで飲ませよ」

「はっ!」

「ガルタイル、貴様ぁぁぁっ!」

 エルオスが怒り任せにガルタイルを睨んだ時には、

「精霊達に告げん、我は雷の御子。雷鳴と共に悲鳴を上げろ。落雷の裁きが大地を覆い、雷の波動が総てを薙ぐーー大落雷波」

 呪文の詠唱を終えて魔法が完成していた。

「はあ? その魔法はいかんっ! 全員、耐雷魔法じゃっ! 来るぞ、回避不可能な戦略級魔法がっ! 大地の王よ、我らを守り、雷を大地へと逃がせーー耐雷の壁」

 エリオスが慌てて耐雷の魔法を完成させた。

 そしてガルタイルの魔法完成から20秒後、青空から巨大な落雷が屋外訓練場に落ちて、その後、落雷は雷の波動となって周囲の大地に波紋のように広がってその場に居る全員を薙ぎ払ったのだった。





 キンラス国王の登場から更に死闘を続ける事、20分。

 エリオスの隕石魔法が炸裂して、ガルタイルがボロボロとなりながらも、

「雷よ、20の矢となって我が敵を射倒したまえーー」

 それでも口で魔法の詠唱を始め、

「させるかっ! とどめだっ!」

 戦死したブロッケン騎士団長の魔法の剣を握る赤髪で鼻に横一線の傷のある騎士のアスレーズがガルタイルを斬り捨てたのだった。

 首の骨が切断されて、頭部が地面に落ちる。

 髑髏が魔法の詠唱を止めた。

 ようやく最後の時が来たようだ。

 最後の最後で身体の支配権を取り戻したガルタイルが、

「ありがとうございます、老師。私を止めていただき。本当に感謝しています」

 死を迎える中、そう感傷に浸っていたが、額から血を流したエリオスの方は忌々しそうに唾をペッとガルタイルの骸骨の顔に吐きながら、

「この国王殺しかっ! 何を今更言っておるっ! さっさと滅びよっ!」

 ブチギレてて、死者を労る事なく地面に落ちた髑髏を踏み潰して、バキッと砕いたのだった。

 とどめを刺して留飲を下げたエリオスが城内の敷地にある屋外訓練場を見渡す。

 隕石魔法の衝撃でクレーターが4つも出来ており、幾多の魔法で柵は倒壊。

 そして生き残ってるのは僅か8人。

 700人以上が倒れており、その倒れてる中にはキンラス国王も居る

 キンラス国王以下多数の重臣が戦死。

 リッチになったガルタイル1匹によって。

 とても勝利したとは言えない惨状だった。

「それでも生き残った者は前を向いて歩まねばならんか」

 宮廷魔術師第4席のエリオスはそう哀愁を漂わせて呟いたのだった。





 この日、キンラス国王の死がクロベーテ王国中に発表されて、王都オルクロリアでは人気があっただけに王都の民衆の殆どがその死を悲しんだのだった。





 中にはイーレンのように、

(遂に国王が死にましたよ、クローバース伯爵様)

 悲願を達成して嬉しさの余り、

「うおおお・・・」

 男泣きした者も居たが。

 隣でキンラス国王崩御の発表を一緒に聞いた中年の班長はイーレンが悲しんでると思い、

「泣くな。陛下が命を懸けてこのクロベーテ王国を守ったのだから。ぐすっ」

 そう貰い泣きしたが、大半がその死を悲しんだのだった。
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