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勇者行脚は続く、ロスメ皇国で勇者認定式、聖剣がショボイ
しおりを挟む翌朝、オレが宿泊するロスメシーク宮殿では皇女アスリアの姿が見えないと騒いでた。
一国の皇女が消えたのだ。
そりゃ騒ぐ。
部外者ながらロスメシーク宮殿に宿泊中のオレに失踪の責任が飛び火しないだろうな、と思ってたが、大丈夫だった。
どうも宮殿を勝手に抜け出す常習犯だったらしい。
お陰で、
「心配ね、アスリア様の姿が見えないなんて」
と水を向けても、
「いえいえ、おそらく婚約者のところですから」
朝食の給仕をしてた侍女があっさりとそう答えたくらいだった。
「あら、結婚前から外泊? 仲がいいのね」
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「へぇ~」
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何だ、それ?
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ふむ、獣人なら強さ重視だからありか。
まあ、どうでもいいけど。
「そうだ。今日からリストのアジトを潰して回るから、そう陛下に伝えておいて」
とオレは朝食時に言った訳だが、
単独行動は許されず騎士が付いてくる事となった。
どうもロスメ皇国の貴族達の中に行方不明者が続出してるかららしい。
つまりは、昨夜のあの湖底神殿の集会の中にその行方不明になってる貴族達が参加していたのだろう。
一網打尽か。
いい言葉だぜ。
昨夜はオレ、いい仕事をしたって訳だ(ニヤリ)。
最小の労力で、最大の成果。
何か得した気分だぜ。
そんな訳で、もうロスメ皇国には魔十教団の勢力は居ないらしい。
出発前に部屋の窓際から見下ろす皇王に、
『魔十教団派の貴族達が姿を消しておるが、勇者殿、何かされたので?』
例の念話で質問されるくらいで、普段は功績を誇らぬオレだったが、
『集会中の湖底神殿に昨夜お邪魔しまして結界を破壊しておきました』
と正直に答えておいた。
コイツが魔十教団側だったら、それはそれで面白い事になる訳だが。
そう思っていたが、
『なるほど・・・では本物のリストの方を渡しておくな』
そう言われて、出発前に騎士に新たな魔十教団のリストを渡された事で、オレの皇王の評価は変わった。
無能じゃなくて魔十教団に見張られてて国を潰さない為にわざと無能を演じていた?
やれやれ。
国家元首ってのはどいつもこいつも癖があるぜ。
まあ、皇王の能力は置いておいて。
はあぁ~。
これから襲う魔十教団のアジトにあるお宝は独占出来ない訳ね。
やる気が失せるねぇ~。
まあ、それでも潰して回るんだけどな。
勇者行脚ってのはそういうものだから。
地道に雑魚を潰して、名声を得る。
それに・・・
多分だけど、湖底神殿にロスメ皇国にあるアジト全部の活動資金が収められてたっぽいから。
それくらいあったんだよなぁ~。
部屋一杯に積み上げられたお宝がさぁ~。
でも、どうして犯罪組織ってお宝を積み上げておくんだろうな?
アイテムボックスに入れてボスが持ち運べばいいのに。
家来どもに見せ付ける為か?
う~ん、分からん。
そんな訳で、ロスメ皇国の魔十教団の末端をプチプチと潰していたが、歯応え、いや、手応えは全然なかった。
どうも、昨夜の湖底神殿の集会に貴族の他にロスメ皇国の支部幹部が全員揃っていたらしい。
それを労せず倒してしまったので、昼間のアジト襲撃は本当に楽勝だった。
オレじゃなくても騎士団で楽勝だったんじゃないか?
それくらい楽勝だった。
何せ、戦闘力100以下ばかりだったからな。
後、再確認だが、
やはり魔十教団のアジトの金庫前の通路を通ったけど、付いてきた騎士団が居るから中に入れなかった。
まあ、昨夜得た金だけで我慢するか。
◇
あっという間に2日が過ぎて、勇者のお披露目式となった。
皇女アスリアや貴族達が行方不明なので中止になるかと思ったが、予定通りに催された。
ロスメ皇国への来訪の真の目的はこれだからな。
地道な宣伝活動って大切だし。
さもないと、名声だけの雑魚に勇者の座を奪われかねない。
ちゃんと民衆どもに顔を売らないとな。
「ここにロスメ皇国はロザリアを勇者として認める事とする」
「ははっ、世界の安寧の為に戦う事を誓います」
野外式典場にてオレは皇王に跪いてメダルを掛けて貰い、式典場に集まった民衆にアイドルスマイルを振り撒いたのだった。
さあ、民衆ども。
オレを崇めたたえよ。
はぁーっはっはっはっ。
ロスメ皇国の皇王は他の国家元首とは一味違い、屋敷をオレにくれた。
つまりはもうロスメシーク宮殿には宿泊させないって事だ。
そんなに嫌うかねぇ~?
それとも魔十教団の報復を恐れてる?
オズ帝国とメシコス王国で眼玉を倒したから、もう居ないと思うけど。
まあ、ともかく、オレから言える事は1つだけ。
2割も素材をくれてやったのにこんな待遇かよ、ロスメ皇国。
ワンチャンスで潰してやるから覚悟しておけ。
そんな事を思いながら、オレはさっさと次なる目的地へと旅立ったのだ
◇
さて問題。
聖剣の定義は何ですか?
答え。
聖属性や不思議な力を宿した剣の事。
◇
そんな訳で、聖剣を貰いにモンス戦士国にオレは来ていたのだが・・・
歓迎されなかった。
おっと、誤解するなよ。
オレが歓迎されなかったのは、オレが勇者になる事にこの国の住民が反感を持ってるって意味ではないからな。
今、モンス戦士国はオレの歓迎どころではなかったのだ。
つまりだ。
破壊の女神メアリーモカが自分の力を使われた事に怒って、消滅した首都バラッカス跡に右腕を出現させただろ?
その時、右腕が振り下ろされた訳だが。
その方角がタンテト連合の内陸側だったらしくてな。
地震の震源地は消滅した首都バラッカス跡で間違いないが、腕が振り下ろされた際の衝撃波(まあ、暴風だな)が向かった先はタンテト連合の内陸部で、タンテト連合は衝撃波を受けて崩壊。
モンス戦士国は元々、ナガン諸島連合とタンテト連合の戦争時に介入しようとしてたくらいタンテト連合とは仲が険悪だったので、モンス戦士国の方もその衝撃波で少しは被害を受けてたが、この災害に乗じてタンテト連合に侵攻していたのだ。
四国会議の時には、もう既に。
なので、モンス戦士国の首都であるモンガード山脈の地底都市バランモンゼの宮殿では、戦士達が廊下を走り、何やら忙しそうにしていた。
ってか、この国の首都は穴倉かよ。
理由は国家元首の戦士長がドワーフだからではないだろうな。
大方『古代毒蜘蛛ギガノダー』から逃れる為だ。
まあ、それはともかく謁見だ。
だが、場所は謁見の間ではなくて執務室だった。
この時点で、オレはもうイラッとした訳だが。
「ああ、よく来たな、ロザリア。そこにあるのが聖剣だ、持っていけ」
ドワーフの戦士長のオッサンがそう言って指差した。
部屋の壁に飾られてた剣を。
はん?
コレなの?
せめて岩に突き刺しておいてくれよ。
こんなところに飾ってあったら、聖剣の有難味がないだろうがよ。
ってか、この聖剣。
聖属性ではあるが、ショボイな。
聖なる力を使いきって枯渇してるのではなくて、最初から少量しか有していないっぽいぞ。
「これが聖剣なんですか?」
「ああ、聖属性を放ってるだろ?」
「まあ、ありがたく貰っていきますね」
オレが剣の柄を握った瞬間だった。
◇
白い世界にオレは居た。
精神世界だ。
案の定、オレだけではない。
オレと対峙するように人型を保てていない怨霊っぽいのが居て、
『その身体を貰い受けるぞ、女ぁぁぁっ!』
とか言って襲ってきたが、
「良く見ろ、雑魚が。こっちのオレは男だろうがっ!」
精神世界だとオレは足の長いイケメンなんだよっ!
マッパ(裸の事ね)だけどな。
「そんな訳で、竜かごキック」
オレはその怨霊をタコ殴りならぬタコ蹴りをして、
『グアアアアアアアアア』
と消滅させたのだった。
◇
そしてコンマ1秒でオレは意識を戻して、握った剣を抜いた。
あれ、聖属性が消えた。
もしかしてあの古代人の怨霊が聖属性の素だったのか?
消滅させたのは拙かったか?
戦士長もドワーフだけあり武器に精通してて気付き、
「ん? 聖属性が消えた? 普通の剣になり下がってないか?」
「本当に聖剣だったんですか、これ?」
「おまえさんが触る前までは聖属性を放っていただろうが」
「まあ、いいですけど」
オレは剣を貰い、
「国民を集めての勇者就任の式典はいつにするんですか?」
「今はそれどころではなくてな」
信じられない。
しないのかよ。
「そうですか。なら、お忙しそうなのでオレはこれで失礼しますね」
そんな訳で、オレは地底都市バランモンゼの宮殿からさっさと退散したのだった。
えっ?
そんなにムカついてないで、せっかくだから地底都市バランモンゼの見物でもすればよかったのに、だって?
いやいや、違うから。
オレ、まったくムカついてないし。
それどころかオレは喜びの余り、心の中では、エロイ恰好で陽気な音楽に合わせてリンボーダンスを踊ってハッチャけてたから。
ラッキー♪
まさか、こんな事になるだなんて。
ショボイ聖剣だとしか思ってたあの戦士長に感謝だな。
ククク。
はぁーっはっはっはっはっ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
地名。
地底都市バランモンゼ・・・モンス戦士王国の首都。名産は武具。モンガード山脈にある。
モンガード山脈・・・大陸北西部の山脈。
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