新生ロザリアは勇者か破壊魔か

竹井ゴールド

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エガシー王国へ、勇者のお披露目式、四元首会議のチップ上乗せ大会

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 メシコス王国の俗物王は外見通り見事なまでの俗物で、

 イエロ将国に攻め込まれてる時は、オレをどうにか戦争に利用しようと、滞在するように引き止めていた癖に、

 イエロ将国が首都バラッカス消滅と大地震でズタボロになって国内から兵を退き、オレなしで勝てると分かると、

「では、私はエガシー王国に向かいますので」

「ああ、シューをよろしくな」

 あっさりとオレのエガシー王国行きを認めたのだった。

 まあ、魔十教団のアジト襲撃の際にガッポリとお宝をゲットしてたので今更『褒美を寄越せ』とは言わないがな。

 それでも、もっとこうあるだろ、なあ?

 嘘でも一度は引き止めるとかさ。

 この俗物王だけは。

 そこがいいところと言えばいいところだが。

「ええ、一生大切にします」

 オレはこうしてさっさとメスコス王国を出て、





 ◇





 エガシー王国に入国した。

 エガシー王国の現在の名物はオレが討伐した『古代毒蜘蛛ギガノダー』だ。

 全長800メートル級。

 足が短い系の蜘蛛なので胴体がデカイ。

 当然、素材の解体作業はまだ終わっておらず、素材が腐らないように解体作業をしてない箇所は氷漬けにされていた。

 それが果樹園に鎮座してるのだ。

 そりゃあ、名物にもなるって訳さ。

「うわ、何度見ても凄いな、これ」

 飛竜ワイバーンを駆り、上空から見たアシュがそう呟き、

「そうね」

 とオレは答えておいた。

 このデカさ。

 どれだけ大地の女神ミーカルの祝福を横取りしてたんだか。





 そしてモイアルエガ宮殿にて、喰わせ者の国王が、

「よくぞ招きに応じてくれた、勇者よ」

 と挨拶した。

 明記がなかったのでここで詳しく描写するが、この国王は種族は人間で、30代だった。

 爬虫類系の、釣り目と頬が張った顔付きで、その外見だけでも警戒が必要なのに、性格も見た目通りの喰わせ者ときてる。

 よって一言で言えば『超嫌い』だった。

 権力者でなければ付き合わない部類の人種だ。

 えっ?

 どこが嫌いかって?

 そんなの決まってるだろ。





 ケチ。

 このオレをその辺の雑魚を見る眼で見てくる。





 この2点だな。

 まあ、エロイ眼で見られなかった分には助かったが。

 因みにオレがエロイ眼で見られなかったのは美女をはべらせてるからだ。

 人間で、20代後半の銀髪美女を。

 露出度過多のビキニ衣裳の割には小さな王冠を被ってる。

 王妃っぽいかも。

 でも王妃にビキニを着せるか?

 う~ん。

 話を戻そう。

「? 失礼? この国では勇者認定されてなかったと思いましたが?」

 オレが質問すると、

「遅ればせながら認定させて貰う事とあいなった」

 と国王が言ったのでオレはピンときた。

 なるほど。

 何か困ってる事があってオレを利用したい訳ね。

 勇者認定はオレに頼み事をする前段階の褒美って奴だ。

 まあ、今は勇者行脚の最中だからな、オレは。

 貰えるのなら貰っておこう。

「そうですか。ではありがたく」

「それと褒賞金の一部がようやく集められた、受け取るように」

 そんな訳で白金のインゴットを100個貰った。

 ちゃんと指輪のアイテムボックスに入れて、

「ありがたく。では、我々はこれで」

「待った。それでは素っ気なかろう。ちゃんと勇者のお披露目式も予定してある。出席するように」

「はあ」

 今更かよ。

 『古代毒蜘蛛ギガノダー』を倒した時にしなかった癖に。

 マジでここの国王は喰わせ者だな。

 そもそもどんな困り事があるんだ?

 他に、

「そうそう、オーダーメイドの古代毒蜘蛛ギガノダーの素材の武具も進呈しよう。後で宮廷鍛冶師を向かわせるのでゆるりと宮殿に滞在するとよい」

 とか言われて、

 そんな訳で、オレはモイアルエガ宮殿に滞在する事となった。





 そして宮廷鍛冶師のドワーフの爺さんに裸で採寸をされてる時にリラの口から、

「四国協定で揉めてるそうですよ」

 と事情を教えられた。

「四国協定?」

「『古代毒蜘蛛ギガノダー』の被害で苦しむ4国が何百年も前に結んだたい『古代毒蜘蛛ギガノダー』用の軍事協定の事です。まあ、『古代毒蜘蛛ギガノダー』があの強さですのでロザリア様が倒すまでは殆ど意味をなしてませんでしたが。その条文の1つに『古代毒蜘蛛ギガノダー』の討伐時の素材配分の項目がありまして」

「他の3カ国が古い証文を持ち出してきて『素材を寄越せて』って言ってきてる訳ね」

「はい。それで討伐者のロザリア様を抱きこもうとしているらしく。エガシー王国に協力して下さいますよね、ロザリア様?」

 リラの質問に、

「協力も何も素材なんて他国にくれてやる義理なんてないじゃないの? そんなの無視して総取りよ、総取り」

「『約束した事を履行しない』では国家として体面と信用に関わりますので」

「やれやれね。配分はどうなってるの?」

「討伐軍が6割を貢献によって分配、残る4割を協定4国が1割ずつ」

 と答えた時、採寸をしていたドワーフの爺さんが、

「もういいですよ」

 と言われたので、裸のオレはビキニ鎧を着始めたのだった。

「形状はどのような物にしましょうか?」

 とのドワーフの爺さんの質問に、

「硬質なの?」

「いえ、皮ですね」

「強度は?」

「ドラゴン並みです」

 だろうな。

 大地の女神ミーカルの祝福を喰らって成長したんだから。

 その辺の蜘蛛と同じ訳がない。

「なら、踊り子のドレス風で、前掛けはロングで。蹴りがしやすいタイプのを。ブーツとグローブもロングで。サンダルのも貰おうかしら。フード付きのロングコートもお願い。そうだ、衣裳に似合う帽子もよろしくね」

「畏まりました。武器も作れと言われましたが、どのようにしますか?」

「剣と斧槍を。前に剣を無くした事があるから、剣は予備に同系のをもう1本」

「ではそのようにしますね」

 注文を聞いてドワーフの爺さんは出て行ったのだった。





 ◇





 まずはお披露目式だ。

 モイアルエガ宮殿に滞在3日目でお披露目式が行われた。

 城門前広場で国王が長々と功績を語り、

「では紹介しよう。勇者ロザリアだ」

 オレは城門の上部の城壁から顔を出して手を振って応えたのだった。

 民衆達から熱狂の歓声が上がる。

 やっぱり勇者として民衆どもにあがめたてまつられるのっていいよなぁ~。

 民衆って言うなって?

 いやいや、こいつらは情報操作で簡単にてのひらを返すからな。

 オレは余り信用してないんだよ、こいつらの事。

 まあ、人気を取る分には問題なかろう。

「陛下より紹介に預かりました、ロザリアです。世の為、人の為、皆さんの平和の為に勇者として頑張る所存です」

 とか心にもない事を言っておいた。

 いや、心にもない事とは違うな。

 『オレが崇めたてまつられる為』が抜けているだけで。

 はぁーっはっはっはっはっ。

 さあ、民衆ども。

 オレを崇めるがよい。

 はぁーっはっはっはっはっ。

 などという内心は億尾おくびにも出さずに、

「ありがとね、みんなぁ~」

 オレは柔らかなアイドルスマイルで民衆どもに手を振ったのだった。





 ◇





 さてと。

 オレのモイアルエガ宮殿滞在中、リラがオレから離れる事はなかった。

「ずっと一緒って。そんなに私と居たいの?」

 と水を向ければ、

「いえ、ロザリア様が王妃クラウディア様に手を出さないように見張れとの処置です」

「ああ、あのビキニの?」

「コホン、ロザリア様、せめて王家の伝統の正装と言って下さい」

「だったわね、ごめんなさい。で、その王妃様がどうしたの?」

「王妃様は女性もイケるクチなので、ロザリア様に口説き落とされたら堪りませんので」

 やれやれだな。

 オレを何だと思ってるんだ?

 オレは別に人妻は趣味じゃないんだけどな。

 それに口説く相手もちゃんとわきまえてる。

 面倒な女との火遊びは御免なんだよ。

「なら、ちゃんとリラが私を満足させないとね」

 とか言ってイチャイチャしてた訳だが、





 この令嬢からだは運だけは飛び抜けていい訳で。





 王妃クラウディアとは一切エロイ関係にならなかったが、

 凄いオイシイ思いをする事となった。





 というのも、





 ◇





 滞在5日目にモイアルエガ宮殿滞在のメインの目的である素材分配に関するつまらない会議があり、3国の代表、





 モンス戦士国の戦士長。

 ロスメ皇国の皇王。

 ウメミス王国の国王。





 それにエガシー王国の国王とオレが出席して会議が行われ、

「そこの女が『古代毒蜘蛛ギガノダー』を倒せたのは我々が長年『古代毒蜘蛛ギガノダー』に傷を負わせ消耗させたからだ」

 との訳の分からない論理をドワーフの戦士長が言い出して、

「はあ? それはないでしょう? 私が倒す直前までピンピンしてましたが?」

 さすがにそんな突拍子もない言いがかりはオレも看過出来ずに反論する破目になった。

 オレの戦功にケチを付けられたんだ。

 当然だろ、この反論は?

 だが、ここは国家間の外交の席だ。

 汚い事や裏交渉も何でもありな訳で、

 会議の席上で、探知不能系の【念話】で、会議中にロスメ皇国の皇王の補佐役として皇王の背後に控えてる兎人の皇女の巨乳ちゃんが、

『本当に女性が好きなんですか?』

『そうだけど、内緒よ。それがどうかしたの?』

『私の身を捧げますからアナタが持つ『古代毒蜘蛛ギガノダー』の素材の所有権を2割、ロスメ皇国に譲ると今、この会議で発言して下さい』

『ええっと、ずっと恋人としてヤラしてくれるって事?』

『はい』

『婚約者とかはいないの?』

『・・・おりますが、国の利益が優先ですから』

『あっそ』

 とか裏交渉があり、

「あのう。ロメス皇国に私が所有する素材の0・5割をお譲りしたいのですが」

 とオレが言い出すと、エガシー王国の国王が、

「ちょっと待った。それはないでしょうが、勇者殿。どういうおつもりですか?」

「だって、そっちの皇女様がなかなか話せて。本当は2割の打診だったけど、口約束で2割はちょっとねえ?」

 なんて念話相手にウインクしたら、もう何が起こったのか全員が悟って、





 その後は買収合戦になり、

「分かった。ワシもおまえさんに支払おう。いくらだ。それとも女か?」

「確か魔十教団と揉めてたな。我が国が知る情報を総てくれてやろう」

 などとなって、





 昼食を挟んだ事で、

 昼食を食ってオレが別室で寛いでたら警備とアシュ達を全員眠らせて、ロスメ皇国の皇女の巨乳ちゃんが堂々とドアから入室してきた。

 兎人族で、年齢は18歳。

 白髪白耳白肌で、容姿は美しく円らな赤眼で、元々着飾っておらず、ビキニタイプの正装だったが。

 巨乳ちゃんがその服を脱ぎ出して、

「ちゃんと支払いますので2割でお願いしますね、勇者様」

「さすがは分かってらっしゃる」

 オレがニヤリとする中、

「こら、何を考えているなのだ? ヨソでするなのだ」

 睡眠魔法で眠らなったチャーリーの苦情に、

「庭を飛んできていいわよ」

 窓を開けてチャーリーを逃がした後、オレはオイシク巨乳ちゃんをいただき、





 そのまま午後の会議に突入したら匂いに気付いた同席中の獣人達が耳打ちして、

「汚いぞ、ロスメ皇国っ! 女好きの勇者を皇女で釣るとか?」

「はあ? 言いがかりは止して貰おう」

 この後もどんどんオレの値は釣り上がり、





 オレはとんでもなくオイシイ思いをする事となったのだった。





 具体的には、





 エガシー王国は代金。魔十教団の情報提供。王家秘蔵の『アマタの首飾り』『スマリアの腕輪』『エトレトの魔宝石剣』『エトレトのサークレット』の授与。リラの生涯貸出。

 モンス戦士国は勇者認定。勇者専用の『聖剣』の授与。魔十教団の情報提供。宮廷鍛冶師への武具の永久発注の権利。ナガン諸島連合との友好的外交。

 ロスメ皇国は勇者認定。魔十教団の情報提供。ロスメ皇国在住時の皇女アスリアとの交遊。皇家秘蔵の『エミアの月齢』『コレレの腕輪』の授与。

 フメミス王国は勇者認定。魔十教団の情報提供。王家秘蔵の『エンセレの炎槍』の授与。





 だった。





 これのどこが凄いのかって?

 これはな。

 実物を見てないので、宝具の効果とかは別に余り関係ない。





 『国家がオレを勇者と認めて、国家秘蔵の品を勇者のオレに譲った』





 その事実が凄いんだよ。

 これでオレはこの4国から勇者と認められた訳だ。

 更にはナガン諸島連合とメシコス王国からも。

 つまりは6国から勇者として認められた訳だ。

 地道に勇者行脚をしただけの事はあるぜ。

 いいね。

 のってるね。

 はぁーっはっはっはっはっ。






 ああ。

 因みにオレが持つ『古代毒蜘蛛ギガノダー』の6割の所有権は、





 エガシー王国が3割

 ロスメ皇国が2割。

 モンス戦士国が0・8割

 フメミス王国が0・2割。





 これで収まったのだった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。





 ドワーフの爺さん・・・ゾンド。エガシー王国の宮廷鍛冶師。腕はそこそこ。

 戦士長・・・テレビス・モージ。モンス戦士国の元首。ドワーフ。

 皇女の巨乳ちゃん・・・アスリア・バト・ロスメ。ロスメ皇国の第1皇女。兎人。

 皇王・・・フィリップ・バト・ロスメ。ロスメ皇国の現皇王。兎人。

 国王・・・ロイ・フメミス三世。フメミス王国の現国王。人間。





 国名。





 ロスメ皇国・・・エガシー王国と北隣接国。農耕国。

 フメミス王国・・・ロスメ皇国の南西隣接国。エガシー王国とは隣接していない。魔法国。
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