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勇者行脚、マッチポンプとは微妙に違う

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 大陸の北西部で数カ国を縄張りとし、まるで王者のごとく君臨する『古代毒蜘蛛ギカノダー』。

 全長800メートル級。

 名前付きネームドなくらい地元住民に恐れられていた訳だが、それが討伐されて腹を見せて無様に引っくり返っていた。





 ◇





 無論、『古代毒蜘蛛ギガノダー』を討伐したのはこのオレだ。

 前回の衝撃の事実で、オレが元の世界に帰れない事が判明したからな。

 この世界で勇者になるべく、世の為、人の為、

 そして何より、オレの名声を高める為に慈善活動に従事していた。

 えっ?

 下心がある時点で慈善活動じゃないって?

 いやいや、言ってくれるな。

 民衆の支持は勇者には必須なんだからよ。

 ん?

 あれだけ大陸を壊してて勇者になれるのかって?

 おいおい、何を言ってるんだ?

 頭、大丈夫か?

 オレが金髪の素顔で暴れたのは国境を越えた時に薬で眠らされたあの時と、オズ帝国のオズブラック宮殿の時だけだろうが。

 後は全部、ピンクブロンドとか黒髪ロングとかなんだから。

 だから大丈夫なの。





 それにな。

 これは大地の女神ミーカルの指令オーダーでもあるからよ。

 全長800メートルの蜘蛛だぜ?

 明らかに異常だろ。

 身体を維持する為の餌はどうしてるんだって話だから。

 絶対に大地の女神ミーカルの祝福を横取りしてるに決まってる。

 なので、遠くから蜘蛛が見えた時に、

「あの蜘蛛を潰せと大地の女神ミーカル様からの神託なのだ」

 オウムのチャーリーが言って、

「待て、チャーリー。そんな偉そうな口調だったのか?」

「知らないのだ」

「ったく。御指名、うけたまわりました」

 チャーリー越しに神界で見てる大地の女神ミーカルにオレはキメ顔で了解し、

 そんな経緯で退治に出向いた。





 あのデカさだ。

 もしかしたら歪曲結界の装置も所有してたのかもな。

 もう歪曲結界は破壊されたから関係ないんだが。





 ◇





 巨大な蜘蛛の死骸を見上げて、アシュが、

「これを一撃ってご主人様ってやっぱり凄いんだな?」

「まあね」

「大地の女神ミーカル様もお悦びなのだ」

 オウムのチャーリーまでが称賛する。

 だが、討伐を目撃した騎士達の顔は青い。

「なんか、みんな引いてるぞ、ご主人様?」

「本当ね。どうしてかしら?」

 オレは気付いてたがそう白々しく不思議がったのだった。





 ◇





 巨大な蜘蛛が倒された土地の国名はエガシー王国。

 なので、王都のモイアルエガ宮殿の謁見の間での御褒美タイムで、

「『古代毒蜘蛛ギガノダー』の討伐には感謝するが、『古代毒蜘蛛ギガノダー』の死骸から流れた出た体液は毒でな。それが川に流れて、我が王国の領土の西部は毒に汚染されてしまっている。我が国が『古代毒蜘蛛ギガノダー』討伐に懸けてた懸賞はとてもではないが出せない状況なのだ。悪いな」

 国王が言葉を選びながらそう言ったので、

「えっ、あの魔物の体液は毒だったのですか? それは気付きませんでした。毒を浄化しましょう」

 気付いてた癖に知らんぷりをしたオレはそう善意で提案し、





 ◇





 再度、巨大な蜘蛛の死骸の前に戻ったオレは、





「【広域浄化】っ!」





 さらっと大地の女神ミーカルの力を使って毒を浄化して、

 同行した騎士や神官達が、

「おおっ!」

「凄いっ!」

 そうオレを尊敬の眼差しで見つめたのだった。

 ふふん(鼻高々)。




 えっ、何?

 マッチポンプだって?

 全然違うわ。

 ああ、因みに『マッチポンプ』ってのは『自分で火を付けて燃やした癖に、水を掛けて消して周囲に賞賛される事ね』。

 つまりは自作自演の事を言うのさ。





 なっ、この場合は自作自演とは微妙に違うだろ?

 オレは故意に毒で汚染させた訳じゃあないんだから。

 不可抗力だよ、不可抗力。

 なら、どうしてすぐに毒を【浄化】しなかったのかって?

 分かってないなぁ~。

 困ってからの方が【浄化】を有り難がるだろ?





 ◇





 再度、エガシー王国のモイアルエが宮殿の謁見の間で、国王が、

「よくぞ、毒を浄化してくれた。ロザリア・ローズレシアっ! 『古代毒蜘蛛ギカノダー』の討伐懸賞金は必ず払うのでな。待っていてくれ」

 そう興奮気味に約束した。

 因みに今のオレは勇者として顔を売ってるのだから金髪の素顔モードだ。

 暴走してる右眼の魔眼は、種族が四半神になった事で聖眼に昇華。

 暴走もなくなったので、もう眼帯もしていない。

 美女の姿だった。

 格好はシルバードラゴンのビキニ鎧だったが。

「いえいえ、総ては大地の女神ミーカル様の御心のままに行動しておりますので、お気持ちだけで」

「いやいや、必ず払う。というか、あの倒した『古代毒蜘蛛ギガノダー』の素材についてなのだが」

「これまで苦労されたのでしょう。この国でお使い下さい」

 オレはさらっと太っ腹なところをみせた。

 ってか、あんなデカイのオレ1人で解体なんて出来ないからな。

 押し付けた訳だが。

「では、任されても?」

 この国王。

 善人そうな髭面爺さんの外見の癖して、相当な食わせ者だな。

「ええ、構いませんよ」

「時に滞在はいつまで?」

「次の任務がありますので」

「任務とは?」

「大地の女神ミーカル様のお使いです」

「ええっと、最近は特にその言葉を聞くが」

 詐欺師を見るような視線を向けられたので、

「私は本物ですよ」

 オレは正統性を主張したが信じては貰えなかった。





 まあ、そんな訳で御褒美タイムとして黄金と白金のインゴットを結構な数貰ったのだった。

 それでも討伐報酬の額の20万分の1にも満たなかったがな。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。





 国王・・・カカオ・J・エガシー5世。エガシー王国の国王。当然、魔十教団とも裏で通じていた。






 国名。





 エガシー王国・・・大陸の北西部に位置する。





 地名。





 モイアルエガ宮殿・・・エガシー王国の国王の住まい。
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