新生ロザリアは勇者か破壊魔か

竹井ゴールド

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シルバードラゴンの装備、『ミーカルの木』が倒れた

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 どの世界に1本はある世界樹。

 この世界にも大地の女神ミーカルの祝福を不正に集めてすくすくと育ち、世界を長きに渡って守っていた神木しんぼく『ミーカルの木』がある。

 その神木『ミーカルの木』が倒れていた。





 オーケイ。

 何も言うな。

 読者諸君の考えてる事なんてオレにはお見通しだ。

 どうせ『またおまえの所為だろ』ってオレにドヤ顔で言うつもりなんだろ?

 やれやれだぜ。

 人を破壊魔みたいに。

 これは大地の女神ミーカルの神託オーダーなんだから。

 オレだってやりたくてやってる訳じゃないんだよ。

 本当だぜ?

 オレは勇者なんだから。





「ええっと、ご主人様の仕業じゃないんだよな、これ?」

「もちろんよ、アシュ。オリハルコンの斧でも傷が付かない木に触れてもいないのに倒せる訳がないじゃないの」

 オレはさらりと返事しながら、いつもの回想に入ったのだった。





 ◇





 作っちゃった♪

 新しい装備一式♬





 これが今回の冒頭だった。





 オレはモールメー海諸国連合から内陸側へ2国隣のドワーフ族の洞窟都市ビレスコの表通りに店を抱える店内でオーダーメイドの装備を纏っていた。





 シルバードラゴンの兜。

 シルバードラゴンのブラ鎧。

 シルバードラゴンのパンツ鎧。

 シルバードラゴンのグローブ。

 シルバードラゴンのブーツ。

 シルバードラゴンのフード付きコート。

 シルバードラゴンの右眼眼帯。





 それに、





 シルバードラゴンの剣。

 シルバードラゴンの盾。

 シルバードラゴンの斧槍。





 因みに、姿は金髪の本人モードだ。

 ただでさえ気難しいドワーフの職人に変身魔法を看破されてヘソを曲られて断られたじゃ、オレが困るからな。

「どうだい、お嬢ちゃん?」

 そう質問したのはこの店の責任者の年寄りのドワーフだ。

 年寄りとの判断は髭の白さだけなので何とも言えないが。

「完璧よ、サイズもぴったり」

 オレはそう賞賛した。

 一応言っておくが、別にオシャレで作り直したんじゃないからな。

 実はこの令嬢からだの胸がまだ成長しててさ。

 サイズが合わなくなって作ったって次第だ。

 素材として近隣に居た珍しいシルバードラゴンを狩ってな。





「私までドラゴン素材の装備を作って貰って良かったのか、ご主人様?」

 と尋ねたのはアシュで、アシュもシルバードラゴンの装備になっていた。

「ええ、これで私とお揃いね」

「人前ではダメだぞ、ご主人様」

「はいはい。大好きよ、可愛い私のアシュ」

 そう愛を囁きながらオレはアシュの腰を抱き寄せてハグしながらお尻を揉んでやるとブンブンと尻尾を振って喜んだ訳だが、

「そうだ、お爺さん。ミーカルの木だっけ? あの巨大な樹っていつから生えてるの?」

 オレは何気なく質問した。

「創世期かららしいぞ。ドワーフ族の言い伝えでは」

「大き過ぎない? 大地の栄養を吸い過ぎよね、周辺の土地は枯れてるの?」

「いや、緑があったはずだが? 大地の女神ミーカル様の祝福だろうな」

「確か切断どころか傷付きもしないって聞いたけど、それも祝福なの?」

「オリハルコンの斧でも斧の方が欠けたって伝説があるからな。そうだろうさ」

 ふむ。

 歪曲結界の装置がありそうだな。

 調べさせるか、アルに。

『断固拒否するだピョン』

 影からアルが念話をしてきた。

『今、オレの思考を読んだのか?』

『使い魔なら当然だピョン』

『あのなぁ~』

 力を与え過ぎたか?

 オレは脱力しながら、お礼を言って店から出たのだった。





 ◇





 近々きんきんのオレの課題は食事問題だ。

 食事の度に人里なんかに移動してたら、はっきり言ってかなりの頻度で面倒事に遭遇する。

 洞窟都市ビレスコでも面倒事が向こうからやってきた。





 レストランで食事をしてると、

「ふざけるなよ、あのドワーフっ! せっかくこっちがこんな辺鄙な場所まで依頼にきてやったのに断るなんてっ!」

 と遠くのテーブルに昼から酒を飲んで喚いてた戦闘力30のバカ男がいたのだが、ついに、

「おい、そこの女ども、こっちに来て酌をしろっ!」

 何故か離れた席からオレ達に声を掛けてきた。

 いく訳ないだろ。

 馬鹿なんじゃないのか?

 と思ってると、馬鹿のお付きの馬鹿どもが、

「若様が来いと言ってるんだ、聞こえなかったのか、馬鹿女ども?」

「さっさとくるんだよ」

 と言ってる分にはまだ忍耐の許容範囲内だったが、眼鏡がオレの肩(おニューのコート)を掴んだので、

 ピキッ。

 ピンクブロンドに変身中のオレはニッコリと笑顔を返した瞬間、裏拳でエリート文官っぽい戦闘力10の眼鏡男の鼻面を殴った。

「へぶしゃるああっ!」

 変な悲鳴を上げながら、オレが殴った眼鏡はボールのように吹っ飛び、

 離れた席に居る戦闘力30に直撃した。

「ひぎゃああああ」

 戦闘力30も悲鳴を上げてた。

「女、貴様っ!」

 戦闘力290がオレに睨んだ時には、オレは立ちあがってドロップキックをしていた。

「へぶう」

 戦闘力290も悲鳴を上げながら弾け跳び、馬鹿と眼鏡の2人に直撃した。

「出るわよ、アシュ」

「ええ? まだ半分肉が残ってるのに」

 そう言って肉を摘まんで口に放り込んだアシュを連れて、オレ達は店を出た。





 ◇





 グリフォンに乗って空を飛んでた訳だが、

 オレ達は飛獣部隊に追われる事になった。

 あの戦闘力30がどっかの権力者のバカ息子だった訳だ。

 まあ、実は洞窟都市ビレスコの表通りですれ違った際の兵士を引き連れての大名行列だったのをオレは見ていた訳だが。

 知ってて殴ったのかって?

 いやいや、あの馬鹿はこの手で殴ってないだろ?

 マヌケな2人の側近を突っ込ませただけで。

 それなのに追っ手を放つなんて大人げない連中だぜ。

「ご主人様、どうするんだ?」

 グリフォンを操縦してるアシュが質問する。

 アシュは尻尾があるので、グリフォンの操縦席に座る際は前屈みのレーサー乗りだ。

 後部席だとお尻を突き出して、それはそれでエロイ。

「ついでだから、このまま巨大樹を見学しましょう」

「いいのか、ご主人様? アイツラ、巨大樹教の兵士達だぞ?」

 樹を模った聖印シンボルだったからな。

「ええ、問題ないわ」

 そんな訳で追われながら神木『ミーカルの木』に近付き、魔力感知をすると、根元の奥深くに神聖力が集まってる場所があった。

 さて、穴を掘るのが得意な動物の中に兎も居るのを知ってるかな?

 そしてオレの使い魔のアルは兎だ。

 そんな訳で、

『アル、よろしくな』

『絶対に嫌だピョン』

『ブツクサ言ってないで、さっさと行け』

 オレは影からアルを掴んで、そのまま地面に投げたのだった。

「ほら、逃げるわよ、アシュ」

「了解」

 その後も追いかけっこが更に20分程続き、

 巨大樹からは大分離れたが、それでもデカイ『ミーカルの木』が見えており、

 それが、





 ズズズズズッ・・・





 という音と共に倒れ始めて、オレ達を追ってた飛獣部隊は、

「嘘だろ? あれを見てみろ」

「大変だ」

「戻れっ!」

「こんな事、嘘だぁぁぁぁっ!」

 全員がオレ達の追跡任務を中断して、泡を食って戻っていった。





 そして、





 ドッシャアアアアアアアアアアアアアアンっ!





 と盛大に倒木したのだった。





 それを見終わった直後の最初のアシュの台詞が、





「ええっと、ご主人様の仕業じゃないんだよな、これ?」

「もちろんよ、アシュ。オリハルコンの斧でも傷が付かない木に触れてもいないのに倒せる訳がないじゃないの」





 ◇





 ふう、今回は後味が少し悪いぜ。

 どうしてかって?

 ほら、『ミーカルの木』って何千メートルと高さがあるだろう。

 その上、強度はオリハルコンの斧以上。

 その枝の広がった広範囲の『ミーカルの木』が上から倒れてきて、都市や町村が何個も下敷きになって壊滅したからさぁ~。

 例え、大地の女神ミーカルの神託オーダーでも、勇者として少しは心を痛めるってね。

 まあ、死者に黙祷を捧げたのは1秒間だけで、





「さぁ~て、次はどこに行こうかしら」





 オレ達はその後、アルの帰還を待たずにグリフォンで飛び去っていったのだった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 年寄りのドワーフ・・・ビル・ビカー。洞窟都市ビレスコのナンバー3の鍛冶師。民間では実質トップ。

 馬鹿・・・カミル・エスレシード。巨大樹教の大僧正の末子。戦闘力30。ただのおバカ。

 眼鏡・・・カミルの側近1。戦闘力10。虎の威を狩る狐。

 戦闘力290・・・カミルの側近2。騎士団長の息子。護衛隊長きどりだがただの騎士。

 追跡者1・・・敬虔な巨大樹教の聖堂騎士。カミルの護衛隊長。

 追跡者2・・・敬虔な巨大樹教の聖堂騎士。カミルの護衛副隊長。

 追跡者3・・・敬虔な巨大樹教の聖堂騎士。

 追跡者4・・・敬虔な巨大樹教の聖堂騎士。





 地名。





 洞窟都市ビレスコ・・・ドワーフ族の都市国家。元首は将軍。
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