モルリント王国戦記

竹井ゴールド

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従騎士期間

騎士公と家名ドム

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 4月の半年後は10月である。

 レストの半年間の従騎士生活も10月の頭で幕を閉じた。

 戦場に出てないので騎士らしい仕事は何一つしていなかったが。

 従騎士はその後、問題がなければ軍事総長から一代騎士の地位が与えられる。

 一代騎士とはその名称の通り、その人物だけが騎士になれる地位だ。

 子孫は騎士を継承出来ない。





 だが、何故か、レストは王宮の謁見式の会場に居た。

 上座には王冠を被ったモルリント王国の国王ハイル・モルリントまで居て、親衛隊長のジャン・ゴクートルが下座のレスト以下、他の4人を順に読んで騎士公の地位を授けてるのでレストも何が起こってるのか理解出来た。

 騎士公とは一代騎士とは違い、子孫も1人、騎士が継げる地位の事だ。

 当然、よっぽどの功績がなければ平民がなれる事はないのだが、

「従騎士レスト、前へっ!」

 何も知らされずに出向かされたが、既に2人が騎士公を国王から授与されてたので、

「昨年のロルメ公国軍の王都カモント侵攻の際、モンカル子爵を調略ちょうりゃくし、メスレ公爵を除いた事、見事である。よって既に与えた三日月十字勲章の他に、騎士公の地位とドムの家名も与える」

「はは、ありがたきしあわせ」

「では、陛下に剣を捧げよ」

 言われて渡された儀式用で刃のない剣を抜いたレストは国王の前に移動して跪くと、

「我が剣と命、陛下の為に捧げまする」

 前の2人にならって刃側を持って、持ち手である柄の方を国王に向けた。

「うむ。レスト・ドムの剣、確かにこのハイル、受け取ったぞ」

 剣を握った国王がそう言って、剣の腹でレストの肩を軽く叩き、

「ははっ! ありがたきしあわせ」

 それで終わりだ。

 部屋の下座の定位置に戻った。

 その後、最後の1人も儀式を終えて、レスト達は退室したのだった。





 退室した廊下で指導係のコルエーゼも待っており、

「家名はドムか。東部の旧公爵領の地名から取られたか」

 と感想を言っていたが、レストが咎めるように、

「陛下との謁見なんて聞いてませんが」

「当然だ。陛下のスケジュールが下っ端に漏れる訳がないだろ」

「そりゃそうだけど」

「これでおまえは今日から騎士公だ。恥じぬ行動をするようにな」

「はい」

「では、辞令だ、騎士公レスト・ドム。第4大隊より第27大隊への配属を命じる。赴任地のアイハール城に向かうように」

 騎士団の第27大隊は新設された旧ロルメ公国領駐屯部隊だ。

「はっ、これまでありがとうございました、コルエーゼ様」

「特別サービスで最後に助言してやるが、気を付けろよ。特に背中には?」

「はい?」

「赴任すれば分かるさ」

「はあ」

 こうしてレストの新たな任務地へと旅立ったのだった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。

 レスト・・・従騎士として第4大隊に配属。

 ベンデ・・・軍隊教官。その後、一代騎士として復帰。

 ネムルト・・・第4大隊副隊長。伯爵家後継。

 コルエーゼ・・・第4大隊幹部。軍中枢の幹部だったが政争に負けて左遷中。

 エル・・・娼館『百合の花』の店番のオババ。

 エマ・・・娼館『百合の花』の娼婦。レストの母親の妹分。

 グラカツ・・・親衛隊。男爵。

 グロバー・・・親衛隊副隊長。伯爵。

 ゴクートル・・・国王親衛隊長。子爵。

 ハイル・・・モルリント王国第5代国王。
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