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従騎士期間
卒業式
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モルリント王国暦123年3月。
王都カモントの軍隊学校では卒業式が執り行われた。
この年の卒業生は94人。
2年前の入学時点では100人だったから6人が諸事情によって中退してる訳だが、他は無事卒業した。
レストもその卒業生の中に紛れていた。
レストの卒業時に訓練生序列は3位。
因みに首席は、裏切り者の辺境伯の縁戚訓練生が逮捕された時点では5位だった男爵の直系のイム・バーチだった。
権力で首席になったのではない。
それならばこの代では一番地位の高い侯爵の孫が首席になるのだから。
卒業式の現在、卒業生全員の仕官先が決まっていた。
レストもだ。
レストは本当に軍隊学校から従騎士推薦を貰えなかったが、それでも従騎士として騎士団に入団が決まっていた。
軍隊学校から推薦を貰えなかったのに従騎士になれた理由は無論、モルリント王国の騎士不足が原因だ。
昨年のロルメ公国軍の侵攻の際、王都決戦前にモルリント王国軍はアスレド平原で4万人が敗北してる。
全員が戦死した訳ではないが、それでも3万2000人は戦死していた。
騎士も当然、多数戦死しており、本当に騎士が不足しており、三日月十字勲章を持つレストは騎士団から従騎士推薦が下りていたのだった。
卒業式が終わって卒業生達が屯する中にレストも居た。
レストは問題行動を起こすがカリスマ性があったので波長の合う者達からは慕われていた。
「それじゃあな。全員、酒には気を付けろよ」
「レストが言うなよな」
「本当だぜ」
「レストって騎士団の第4大隊に配属なんだろ。大丈夫か? あそこって貴族だらけなのに?」
「大丈夫な訳ないに決まってるだろ。オレ、平民だぜ? 貴族の子弟だらけの第4大隊に配属なんて無理無理。どんな嫌がらせだよって話だから。せめて他の隊なら良かったんだが」
「やっぱりそれの所為だよな?」
生徒達の1人が、制服を纏ったレストが胸に付けてる三日月十字勲章を指差した。
「多分な。オレ、みんながやった騎士団合同入団試験、免除でやってないから」
そんな事をボヤく中、教官のベルデがやってきて、
「おまえら、卒業おめでとう。まさか、レストが卒業出来るとはな」
「ホントですよ」
「分かってるとは思うが貴族は殴るなよ、オレみたいに教官をやらされるぞ」
「殴りませんよ。ハメて殺すかもしれませんが」
「おまえなぁ~。マジで頼むぞ。おまえが何かやったら教官だったオレらにまで火の粉が掛かるかもしれないんだから」
「はい」
「ではな、おまえ達も」
そう言って、他の卒業生達にも挨拶をしにベルデは向こうへ歩いていった。
その間に卒業生達の間では、
「レストが4月中に貴族様を殴るのに銀貨2枚」
「オレは5月だと思うぜ」
「いやいや、3月は我慢するだろうから誕生日前後の7月だって」
何故かレストが貴族を殴る前提で賭けが始まった。
「殴らねえって。オレはもう大人なんだからさ」
その後も立ち話をして、それから卒業生達はそれぞれで任務地へと巣立っていったのだった。
王都カモントの軍隊学校では卒業式が執り行われた。
この年の卒業生は94人。
2年前の入学時点では100人だったから6人が諸事情によって中退してる訳だが、他は無事卒業した。
レストもその卒業生の中に紛れていた。
レストの卒業時に訓練生序列は3位。
因みに首席は、裏切り者の辺境伯の縁戚訓練生が逮捕された時点では5位だった男爵の直系のイム・バーチだった。
権力で首席になったのではない。
それならばこの代では一番地位の高い侯爵の孫が首席になるのだから。
卒業式の現在、卒業生全員の仕官先が決まっていた。
レストもだ。
レストは本当に軍隊学校から従騎士推薦を貰えなかったが、それでも従騎士として騎士団に入団が決まっていた。
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全員が戦死した訳ではないが、それでも3万2000人は戦死していた。
騎士も当然、多数戦死しており、本当に騎士が不足しており、三日月十字勲章を持つレストは騎士団から従騎士推薦が下りていたのだった。
卒業式が終わって卒業生達が屯する中にレストも居た。
レストは問題行動を起こすがカリスマ性があったので波長の合う者達からは慕われていた。
「それじゃあな。全員、酒には気を付けろよ」
「レストが言うなよな」
「本当だぜ」
「レストって騎士団の第4大隊に配属なんだろ。大丈夫か? あそこって貴族だらけなのに?」
「大丈夫な訳ないに決まってるだろ。オレ、平民だぜ? 貴族の子弟だらけの第4大隊に配属なんて無理無理。どんな嫌がらせだよって話だから。せめて他の隊なら良かったんだが」
「やっぱりそれの所為だよな?」
生徒達の1人が、制服を纏ったレストが胸に付けてる三日月十字勲章を指差した。
「多分な。オレ、みんながやった騎士団合同入団試験、免除でやってないから」
そんな事をボヤく中、教官のベルデがやってきて、
「おまえら、卒業おめでとう。まさか、レストが卒業出来るとはな」
「ホントですよ」
「分かってるとは思うが貴族は殴るなよ、オレみたいに教官をやらされるぞ」
「殴りませんよ。ハメて殺すかもしれませんが」
「おまえなぁ~。マジで頼むぞ。おまえが何かやったら教官だったオレらにまで火の粉が掛かるかもしれないんだから」
「はい」
「ではな、おまえ達も」
そう言って、他の卒業生達にも挨拶をしにベルデは向こうへ歩いていった。
その間に卒業生達の間では、
「レストが4月中に貴族様を殴るのに銀貨2枚」
「オレは5月だと思うぜ」
「いやいや、3月は我慢するだろうから誕生日前後の7月だって」
何故かレストが貴族を殴る前提で賭けが始まった。
「殴らねえって。オレはもう大人なんだからさ」
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