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王都カモント防衛戦
三日月十字勲章
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逃げたレストはと言えば、
脱出後、往路に使った空井戸まで逃げて、馬を逃がした後、抜け道を辿って王都カモントを目指したが、出口(王都カモント側)で兵士に、
「何だ、おまえは? どうしてこの道の存在を知っている?」
槍を向けられて詰問された。
「いやいや、ここを通って密使として送り出されましたから」
「そう言えば、おまえはあの時の・・・生きてたのか」
「生きてますよ、そりゃ」
無事に王都カモントに帰還していた。
レストの帰還が報告されたのか、またもや城壁の上の石製の櫓まで呼び出された。
任務達成の報告だろう。
「レストとやら良くやった。メスレ公爵がモンカル子爵に討たれたぞ」
ロスデン軍事総長が声を掛け、
「総ては軍事総長のお指図通りですね」
色街で金持ちのヨイショもしてきたレストは平然とヨイショした。
「調子の良い奴。どうやって寝返らせた?」
「公爵が陣に見舞いに来ると聞いたので帰参の土産にはちょうどいいですね的な事を。後は子爵の判断です」
「うむ。この戦争が終わったら褒美をやろう。受け取るようにな」
「ははっ」
こうしてレストは見習い兵士の列に戻ったのだった。
◇
王都カモント攻防戦の方は、
メスレ公爵がモンカル子爵の陣内で討たれた事は生き残りが逃げた事で露見し、その日の内にメスレ公爵の残存部隊が復讐戦を仕掛けてモンカル子爵軍を全滅させた。
メスレ公爵の死によって公爵家は参陣していた長男が継承したが、その長男に寝返り組の貴族を統率する求心力はない。
遂にはサンドルセン伯爵が再度寝返ってモルリント王国に味方し(発覚して討たれたが)事態を重く見たロルメ公国軍が大ナタを振るう事を決意する。
モンカル子爵に倣って、残る貴族達を本陣に招集して謀殺したのだ。
それによって貴族が率いてきた家来や民兵はロルメ公国軍に完全に吸収されたのだが。
貴族を慕ってたり、元々参加したくなかった民兵達がそれを機に夜な夜な脱走。
メスレ公爵が討たれて僅か4日で、ロルメ公国軍の兵は2万2000人にまで数を減らしていた。
その後も王都カモントを攻めるが、なかなか落ちない。
10日も粘られると、
「北部からバスレード侯爵が援軍3万を束ねてこちらに向かってるらしい」
「本軍が不在のロルメ公国本国に隣国のモモシア王国が兵を挙げて攻め込む準備をしてる」
との流言が流された事で兵が動揺。
ロルメ公国も遂には王都カモントを落とすのを諦めて兵を引き、決着が付かないまま王都カモント防衛戦は終結したのだった。
◇
そして7日後には軍隊学校は再開された訳だが。
ロスデン軍事総長が約束を守った事で、全校生徒の前でレストは軍幹部によって、
「訓練生レスト、この度の王都カモント防衛戦において密命を見事に果たした功績により、三日月十字勲章を授与する。励めよ」
「ははっ!」
全校生徒の前で表彰されたのだった。
神妙な顔で表彰されたレストは、
(それだけ? 軍隊学校の特別卒業とかはないのか?」
図々しくもそんな事を考えていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
登場人物。
レスト・・・機転が利き、腕っ節や弁舌も得意。やや反抗的。
モダ・・・農家出身。モルリント王国の屯田兵構想の関係で軍隊学校が採用。
ベンデ・・・軍隊学校の鬼教官。上官の貴族を殴り、軍隊学校でほとぼりを冷ましてる。
ロスデン・・・軍のトップの軍事総長。侯爵。
モンカル・・・子爵。現在16歳。14歳から子爵位を継ぐ。
メスレ・・・公爵。ロルメ公国軍をモルリント王国に引き入れた張本人。
脱出後、往路に使った空井戸まで逃げて、馬を逃がした後、抜け道を辿って王都カモントを目指したが、出口(王都カモント側)で兵士に、
「何だ、おまえは? どうしてこの道の存在を知っている?」
槍を向けられて詰問された。
「いやいや、ここを通って密使として送り出されましたから」
「そう言えば、おまえはあの時の・・・生きてたのか」
「生きてますよ、そりゃ」
無事に王都カモントに帰還していた。
レストの帰還が報告されたのか、またもや城壁の上の石製の櫓まで呼び出された。
任務達成の報告だろう。
「レストとやら良くやった。メスレ公爵がモンカル子爵に討たれたぞ」
ロスデン軍事総長が声を掛け、
「総ては軍事総長のお指図通りですね」
色街で金持ちのヨイショもしてきたレストは平然とヨイショした。
「調子の良い奴。どうやって寝返らせた?」
「公爵が陣に見舞いに来ると聞いたので帰参の土産にはちょうどいいですね的な事を。後は子爵の判断です」
「うむ。この戦争が終わったら褒美をやろう。受け取るようにな」
「ははっ」
こうしてレストは見習い兵士の列に戻ったのだった。
◇
王都カモント攻防戦の方は、
メスレ公爵がモンカル子爵の陣内で討たれた事は生き残りが逃げた事で露見し、その日の内にメスレ公爵の残存部隊が復讐戦を仕掛けてモンカル子爵軍を全滅させた。
メスレ公爵の死によって公爵家は参陣していた長男が継承したが、その長男に寝返り組の貴族を統率する求心力はない。
遂にはサンドルセン伯爵が再度寝返ってモルリント王国に味方し(発覚して討たれたが)事態を重く見たロルメ公国軍が大ナタを振るう事を決意する。
モンカル子爵に倣って、残る貴族達を本陣に招集して謀殺したのだ。
それによって貴族が率いてきた家来や民兵はロルメ公国軍に完全に吸収されたのだが。
貴族を慕ってたり、元々参加したくなかった民兵達がそれを機に夜な夜な脱走。
メスレ公爵が討たれて僅か4日で、ロルメ公国軍の兵は2万2000人にまで数を減らしていた。
その後も王都カモントを攻めるが、なかなか落ちない。
10日も粘られると、
「北部からバスレード侯爵が援軍3万を束ねてこちらに向かってるらしい」
「本軍が不在のロルメ公国本国に隣国のモモシア王国が兵を挙げて攻め込む準備をしてる」
との流言が流された事で兵が動揺。
ロルメ公国も遂には王都カモントを落とすのを諦めて兵を引き、決着が付かないまま王都カモント防衛戦は終結したのだった。
◇
そして7日後には軍隊学校は再開された訳だが。
ロスデン軍事総長が約束を守った事で、全校生徒の前でレストは軍幹部によって、
「訓練生レスト、この度の王都カモント防衛戦において密命を見事に果たした功績により、三日月十字勲章を授与する。励めよ」
「ははっ!」
全校生徒の前で表彰されたのだった。
神妙な顔で表彰されたレストは、
(それだけ? 軍隊学校の特別卒業とかはないのか?」
図々しくもそんな事を考えていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
登場人物。
レスト・・・機転が利き、腕っ節や弁舌も得意。やや反抗的。
モダ・・・農家出身。モルリント王国の屯田兵構想の関係で軍隊学校が採用。
ベンデ・・・軍隊学校の鬼教官。上官の貴族を殴り、軍隊学校でほとぼりを冷ましてる。
ロスデン・・・軍のトップの軍事総長。侯爵。
モンカル・・・子爵。現在16歳。14歳から子爵位を継ぐ。
メスレ・・・公爵。ロルメ公国軍をモルリント王国に引き入れた張本人。
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