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想音作クトゥルフ
慟哭は曇天を穿つ
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推奨技能 隠れる、聞き耳、目星
準推奨 オカルト
シナリオクリア条件
・迷宮からの脱出(アリアドネの糸)1d6
・元凶を突き止める(アイホートの名称を確定させる、ミノタウロスに入る幼体のイベント)SAN1d6
・迷宮の無力化(ダイダロスの斧、ペルディックスのコンパス、テセウスの短剣)1d10
~シナリオ オープニング~
その日、ある地方紙の地域欄に「遊園地閉園」のお知らせが躍った。
対して人も入らなかった小さな遊園地だ。
開園当初から行方不明者や事故が多発しており、何かといわく付きだったのだ。
その日の朝のニュースでもそんな話をやっていた気がする。
あなた方はそんなマイナーなニュースには特に気にも留めず、
ある人は家を出て、ある人は職場に入ろうとして、、、、
気が付けば、そこは迷宮だった。
~プロローグ~
85%。
この数字が何を表わしているか、ご存じだろうか?
現在の天気予報の的中率である。
おおよそ「6回に5回」の割合で的中するというのだから、大したものである。
しかし、自然とは、驚異とは、一筋縄ではいかないものだ。
「雨が降る」といって、「町が飲み込まれる」などとだれが思うだろうか。
「明日は晴れる」といって、「何週間も雨が降らない」などとだれが考えようか。
もう一度言う。
自然とは、神意とは、人の意思程度では到底及びもしないものなのだと。
「おい、~~~~~が急激に力をつけているぞ!どういうことだ!」
「・・・わからない。ただ、このままでは我々も危険だ。」
「悠長なことを言っている場合か!さっさと計画を中断しろ!!」
「大変です!!#####がこちらの区画にも侵入している模様です!」
「バカな・・・。制御は完璧だったのではないのか!?」
「予想以上に侵入速度が速い・・・。」
「一刻も早く、人員の退避を『ガタガタッ!!』」
ただ、一方で。
おおむねこのような「及びもしないこと」には、
「人の打算や見縊り」がつきものなのである。
クトゥルフ神話TRPG「慟哭は曇天を穿つ」、始めさせていただきます。
~スタート~
あなた方はその日、なんの代わり映えもしない日常を過ごしていた。
ニュースでは今日も行方不明者だとか、そんな「遠くの出来事」が騒いでいる。
どれくらい過ごしただろう、ふとあなたは別の部屋、あるいは外にでようとして、「家のドア」に手をかける。
その時。
『あなたがドアノブに手をかけた瞬間、「急激なめまい」を感じる。耳の奥で、「キィキィ」と金切り声のような、
本能的に人を不快にする音が流れている。平衡感覚を失わせる強烈なめまいに、思わずドアノブを握りしめ、ゆっくりともたれかかる。
自身の重みによってドアはゆっくりと開き、何もない空間にあなたは体を倒してしまう。
そして、あなたの意識は一度途切れた。
成功で0/失敗で1d3のSANチェック』
~導入① 迷宮の入り口~
どれくらいの時間が経っただろうか。
プレイヤー(以下 探索者)たちは目を覚ます。
そこは三方が白い壁に囲まれた袋小路。
あなた方と同じように、周りには目を覚ましたのであろう、不思議な顔をしてきょろきょろとあたりを見回している。
そして、目の前には壁に囲まれた通路が伸びている。
アイデア「この場所をしっているか?」
成功で「閉園することになった遊園地に迷路があった気がする。そして、訪れたことのあるあなたはなんとなくその壁に似ているなーと思う」
遊園地の遊具は見当たらない。
周辺の探索宣言
「幸運」か「目星」どちらか選択
・「目星」の場合
⇒小さなクモがひび割れた壁の隙間に入っていったのを見る。
・「幸運」の場合
⇒日焼けした地図のようなもの
※ここで全員に迷路の見取り図を共有する
~探索~
全員が手番確認後に「聞き耳」
成功すると「鳴き声」が聞こえる。
獣感の強い声。
『迷路の先、というかその奥、または向こう側から聞こえる鳴き声は、鳥類や小動物のようなものではなく、
もっと野太い、野生の獣の声に近いものにかんじた。
この恐ろしい状況と、姿の見えない声に、本能的に恐怖を抱いてしまうだろう。
成功で0、失敗で1のSANチェック』
※「野獣先輩」発言した人は代わりに「成功で1、失敗で1d4のSAN値チェックとする」
~左の道~
何かをひきづったような跡を追いながら、左の道に進む。
すぐに曲がり角、また進むとすぐに曲がり角、そしてその直後に曲がり角。
その先には、「何もいない」。
「目星」宣言で成功すると、「斧」が落ちている。
手に取って「斧を調べる」宣言で「目星」行使可能。
ところどころさび付いているようにみえる、ぼろっちい短剣。
短剣としての機能は失われているように見える。
オカルト-20でさらに判定
=「テセウスの短剣」取得
~右の道(手前)~
~右の道(奥)~
少し進むと脇道に入ることができる。
「脇道」の確認宣言⇒脇道には扉が6つあることがわかる。
各部屋は「教団職員の私室」
1→テーブルと椅子がおいてある以外は何もない。
2→「聞き耳」成功で一瞬カサカサと何かが這いまわるごく小さい音が聞こえた気がした。
テーブルと椅子がおいてある以外は何もない。
「目星」成功で小さなクモが壁の隙間に消えていった。
その先はさっきより大きなヒビがある。
「ヒビをのぞき込む」
『(ライト有り)
探索者はライトを穴に当てて中を覗き込む。そこは暗闇の支配する空間だった。古びた壁の破片を尻目に、古臭いカビの匂いを感じながらヒビの中に光をあてる。すると中から何か照り返しがあるのを確認できる。1つ、2つ、3つ……何かを探すようにして光を左右に振れば、それは暗闇の中にいくつも確認できるだろう。光に助けを借り、更に暗闇に目が慣れてくるようになると、探索者はその反射する光の正体を理解してしまった。無機質な照り返し、規則的に並んだいくつもの楕円型。これは虫の単眼である。白く丸っこい体に細い4対の足。横に2列、全部で8つの楕円。これは蜘蛛の顔だ。探索者の顔の間近で光を反射していたそれは、暗闇からこちらを伺う無数の蜘蛛の眼球だったのである。身じろぎもせずこちらを伺う白い蜘蛛の大群と目を合わせてしまった探索者は今までに味わったことのない嫌悪感を覚えるだろう。』
成功1/失敗1d3
3→テーブル以下略。
「目星」成功でテーブルの陰に「手のひらサイズのコンパス」
針はいくら向きを変えても動かない
「オカルト-20」で「テセウスのコンパス」に名称変更
4→テーブル以下略。
「目星」成功で壁に取り込まれたおてて。
『 探索者は壁に何かがあるのを見つける。何かが引っかかっているとも言えない、壁が崩れているわけでもない。強いて言うなら『何かが突き出ている』とでも表現すべきだろう。柱にしては歪、装飾にしては不恰好だ。よく見てみると、先端は五本の細い分岐になっている。それぞれバラバラの方角に突き出たそれは、探索者にとってもよく見覚えのあるもの……人間の手だった。まるで壁の中に飲み込まれ、最後に助けを求めるようにして虚空に伸ばされたようなその手は、見ているだけで泣き叫ぶような断末魔を想起させるのに十分な姿をしていた。壁が人を飲み込んでいる。いかなる理由であれその異様な光景は、目にした者の心に確かな恐怖を植え付けた。』
成功で1/失敗1d6
過半数の部屋を探索終了で「聞き耳」判定
「6の部屋」から何かがぶつかるような音。動いている。
聞き耳成功で正規判定、聞き耳失敗した人は判定地-15で「隠れる」
『大きな破砕音と共にドアが弾け飛ぶ。何かを引きずるような音を伴い、音の主がゆっくりとその姿を現わす。大柄な体格をしたそれは間違いなく人の形をしていた。手足は2本ずつ、体格も巨躯と言って間違いないほどのものだが、確かに二本足で立ち手で拳を作り、力強く斧を握り締めている。しかしその頭部にあたるものは、およそ人のものではなかった。鋭く天に向かって伸びる2本の角、体に不釣り合いなほど大きく面長な顔。これは牛の頭だ。しかしその頭部からは肉の一切が削げ落ち、頭蓋骨だけがその姿を見せている。白い頭蓋と錆びついた斧は赤のまだら模様に染められ、目玉を無くした空洞からは何の表情も伺い知ることはできない。半死半生、半人半獣とでも言うべきそれはまるでどこかの神話から抜け出てきた怪物のような、見るに耐えぬ忌わしく恐ろしい異形の姿を成していた。』
成功で0、失敗で1d10
5→テーブル以下略
探索宣言後「目星」
成功で「手記②」
『我々の行いを讃えられておられるのだろう。最近のかの御方の状態は極めて良好だ。着々と雛たちが増え、ついにこの施設も日々拡大していくようになった。まったく素晴らしいことだ。しかし一方で、我々の崇高なる考えに賛同しない輩が増えているのも事実のようだ。ここまできて行方をくらますなどあってはならない。そのような暇はないというのに。』
6→ミノタウロスのいた部屋は大いに荒らされ、規則的に配置されていたテーブルとイスは見るも無残なかたちとなっている。
「目星」に成功で「先ほどよりも大きい、タランチュラくらいのサイズのクモ」を見かける。
成功で0、失敗で1のSAN値チェック
部屋のある通路を抜けたさきは左右に分かれ道。
左は行き止まり。
左で「目星」で「金色の細長い糸」を見つける
オカルト-10で「アリアドネの糸」に名称変更
廊下をまっすぐ進むと「聞き耳判定」
成功で「曲がり角で大きな音が聞こえた気がする」(何かを叩き壊すような音)
下の小部屋
崩れかけの本棚と、椅子にもたれかかっている黒いローブの人影
人影を調べる
『探索者が黒いローブの下をうかがい見ると、そこには乾ききった人間の体があった。落ち窪んだ虚ろな目、むき出しになった歯、木片のようになった手足。ここで力尽きたかのようにも思えるそれだが、探索者はこのミイラのような体を見てもそうとは思えないだろう。この死体の腹が大きく抉れているのを見てしまったからだ。しかもその傷は外側に向かって皮膚が破れたように見える。それは腹の中に潜んでいた何かが血肉を貪り皮膚を食い破って出て行ったようにも見えるだろう。通常では考えられない傷を持ったミイラのようなおぞましい死体を見たことにより、探索者は自然と鼓動が早くなるのを感じるだろう。』SAN判定0/1D3
本棚を調べると「目星」
成功すると「手記①」
『使われなくなった商業施設は、我々の隠れ蓑としては上出来だった。隠ぺいの術を無数に張り巡らせることで、迷い込むものも追い払うことができる。このまま研究がうまくすすめば、かの御方は必ず我々を素晴らしき世界へと導いてくださるのだ。』
中央の通路
開けた部屋で「隠れる+10」判定
失敗で「ミイラのような風貌の異形」に追われる
『探索者が身を隠そうとしていると、何者かの足音が聞こえてくる。音のした方に顔を向けると、通路の向こう側からこちらに向かってきているような不規則な足音の主はすぐにその姿をあらわす。腐りかかったミイラのような様相に、今にも倒れそうなふらふらとした足取り。人間としての形は止めているものの、もはや人間とは呼び難い姿となっていた。一歩進む毎にもぞもぞと揺れる体に知能を感じさせない足取りのそれを見た探索者は悪夢でも見ているような気分の悪さを感じることだろう。』SAN判定0/1D3
ミイラを見てアクションを起こそうとした場合(複数人いる場合はDEXの低い者1人)
『探索者が行動を起こそうとした次の瞬間、異形と成り果てたミイラのようなそれは探索者に向かって倒れこんできた。避けきれず巻き込まれるようにして探索者は尻餅をついてしまう。急いで起き上がろうとする探索者の眼前で、倒れこんできた異形の体は崩れていく。縋るようにして伸ばされた悪臭のする手足が朽ちた枝をへし折るような音と共に落ちていき、その体は動きを止める。どうやら助かったようだ。探索者が安心したのもつかの間、今度はどこからか音が聞こえてくる。何かを引きちぎり、削るような音。それも1つではなく複数である。音はどこか近くから、それも次第に大きくなっている……音がしているのは、この死体だ。探索者がそれに気づくのとほぼ同時に、死骸の腹から何かが飛び出してくる。それは白い蜘蛛だった。手のひらよりやや小さいくらいの蜘蛛の群れが、死骸の腹を食い破ってできたのである。あるものは腹に開けた穴から、あるものはもはや窪みとなった眼窩から、至る所から同じようにして這い出てくる。内部にわずかに残っていたのであろう体液に塗れた蜘蛛たちは悪臭を撒き散らしながら一斉に壁の裂け目へと逃げていき、最後に残されたのは探索者と穴だらけになった死骸のみである。人だったであろうものの腹を食い破って出てくる蜘蛛の群れを間近で見てしまった探索者は、言い知れぬ恐怖と嫌悪感がせり上がってくるのを感じる。』SAN判定0/1D4
部屋周辺の探索宣言で「目星」判定
成功で「手記③」
『我々は大きな過ちを犯した。かの御方にはこのような環境は狭すぎたのだ。偉大なる神に何たる不敬をはたらいてしまったのだろう。あぁ、今日もまた一人いなくなってしまった。最近は夜な夜な異形の生物がこの施設内を歩き回っているようだ。迷宮の神たるものが眷属としてアレを遣わすのはお誂え向きだ。あぁ、ダレか私を助けてくれ・・・。』
一番右の通路の小部屋
中に入るとひどく荒らされた形跡。
原型をとどめない調度品。
そして「部屋の中央に横たわる大きな黒い塊」
『 扉を開け部屋に入ると、内部はひどく荒れていた。部屋に並べられていたであろう調度品の数々も見る影もなく粉砕されており、まるで何者かが暴れ回ったように見える。改めて部屋の内部に目を向けると、部屋の中心に黒い何かが鎮座している。探索者はその薄汚れた袋のようにも見えるそれに目が行くだろう。袋は部屋の中心に投げ出されるようにして置いてあり、その上には何かが置かれている。元は目が嵌っていたであろう2つの穴、天に向かって生える二本の角。これは牛の頭蓋骨だ。下の袋のようなものに目をやると、何か違和感を覚える。光沢はなく薄汚れた素材、無造作に伸びるいくつかの膨らみ。おおよそ袋としては奇妙な形である。だが、これが元々袋でなかったとしたらどうだろう。無造作に伸びた膨らみは左右対称に上下で4つ。これが元々中身の入った立体だったと考えれば、これは体になる。その体を覆うもの……皮膚であるのではないだろうか。牛の頭蓋を頭部とし、薄く血に汚れ赤いまだら模様のついたその体は、まさに神話から抜け出てきた怪物のような様相であったことだろう。すでに動かぬ体となった怪物を目の当たりにした探索者は、自らの想像力によってたどり着いた答えに恐怖を抱くことだろう。』SAN判定1/1D3
目星成功で「斧」が落ちている
オカルト-20成功で「ダイダロスの斧」
複数人成功で「手記④」
『ついにかの御方は、外界より贄を呼ぶことになさったようだ。なんと愚かなことをしてしまったのだろうか。どうかこれは「喰われる」ことのないこと願いつつ、いずれやってくる者に託そう。迷宮の神は、無数に人を呼び寄せる。どうかこの迷宮、いや、施設を止めてくれ。3つの迷宮を壊す器をかざせば、神への供物は止められる。・・・足音が近づいている。これ以上かの神、アイホート』
ここで手記は終わっている。この先は書きなぐられたような判読できない文字と、赤黒いしみが浮き出ている。
※手記を読んだことにより、「アイホート」という「迷宮の神」がいることがわかりました。探索者は「クトゥルフ神話技能」を「3パーセント」お渡しいたします
いちばん広い部屋=コントロールルーム
部屋の壁には「大きな星型のエンブレム」が書いた布が飾られている。
布の前には3つの台座
何かを置くことができそうだ
壁一面には本棚がおかれている。
部屋全体を調べる宣言で「目星」
布の飾られた壁の反対側、本棚の一つが動かせるようになっている。
動かすことで「緊急脱出通路」へ
緊急脱出通路
ちょうど人が3~4人入れそうなスペース
通路の中央には細い穴が空いている
「アリアドネの糸」を入れることで脱出成功、エンディングへ
※部屋に入っていない人間は脱出不可
エピローグ
君たちが次に目を開けると、目の前には床が広がっていた。
そうだ、部屋を出ようとして急にめまいを起こしたんだった。
あなたは体を起こし、とりあえず全身の異常を確かめる。
・・・よし、どこも痛くない。
気を取り直して体についた床の埃をはらう。
そろそろ部屋の掃除もしないとな・・・。
どこでついたのか分からない、体についた「金色の糸くず」には気にも留めず、床に払い落とす。
掃除機をかけて部屋を掃除していたら、「家具の隙間で蜘蛛が巣を張っていた」。
やっぱりこまめに掃除しないとダメだな。
あなたはそれをクモごと払い落とす。
さて、そろそろでかけよう。
あいにく天気は曇り空。
荷物を持って、テレビにふと目を遣る。
①
「遊園地は取り壊され、今度新しく商業施設ができるそうだ」
気が向いたら、少し中を覗いてみるか・・・。
テレビを消し、あなたは家を出た。
(トゥルーエンド)
②
「遊園地の取り壊し作業は行方不明者や事故が断続的に起こり、安全性を疑問視する声から取り壊しが進んでいないらしい。」
あなたは「そりゃそうだ」と思い、ふと訝しむ。
「なんでほとんど行ったことのない遊園地の話をしっているんだ?」
「自分は何に納得したんだ?」
考え込みそうになるが、時計を見て慌ててテレビをけして、玄関へ急ぐ。
払い落としたはずのクモが、じっとあなたを見ていたことにも気付かずに・・・。
時刻は夕方。
遠くで、野犬だろうか。
「野太い獣の鳴き声」が聞こえた。
(ノーマルエンド)
エピローグ バッドエンドルート
逃げる。逃げる。逃げる。
どうしてこうなった?
なんで私は逃げ隠れ続けている??
一緒にきたはずの人は、気が付いたらみんないなくなってた。
息が上がる。心臓が跳ねる。
後ろを振り返ってはいけない。
今も聞こえる。
「地面に斧を引きずりながら、追ってくる牛頭の化け物」が見える。
耳の奥で「カサカサ」とそこかしこを這いまわる音が聞こえる。
「あの不気味な単眼」が、じっと私を見据えている。
ここでは私は「ちょうどいい獲物」、「よく動く玩具」に等しい。
走り続けて、行き止まりにぶつかる。
崩れかけの本棚に体をねじ込み、息を殺してやりすごす。
斧を引きずる音が目の前で止まり、しばらくしてから離れてく。
・・・まずは撒いたようだ。
息を整え、本棚から体を出そうとして、止まった。
体が、動かない。
周りを意識しすぎて、失念していた。
何も「動くものだけが敵ではない」のだ。
ここには今、もうだれもいない。
嗚咽が自然と漏れ、見えぬ天を仰ぐ。
目が、合う。
無数の、単眼。
そう、さいしょからどこにも逃げ場なんてなかったんだ。
そうして折れた心に、ダレかのこえガひびク。
あぁ、これを受ケ入れさエすれば・・・。
私の慟哭に呼応するように、無数の蜘蛛がゆっくりと・・・・。
この慟哭は、曇天に吸われ、そして届くことはないのだろう。
使用画像
青、スタート位置
準推奨 オカルト
シナリオクリア条件
・迷宮からの脱出(アリアドネの糸)1d6
・元凶を突き止める(アイホートの名称を確定させる、ミノタウロスに入る幼体のイベント)SAN1d6
・迷宮の無力化(ダイダロスの斧、ペルディックスのコンパス、テセウスの短剣)1d10
~シナリオ オープニング~
その日、ある地方紙の地域欄に「遊園地閉園」のお知らせが躍った。
対して人も入らなかった小さな遊園地だ。
開園当初から行方不明者や事故が多発しており、何かといわく付きだったのだ。
その日の朝のニュースでもそんな話をやっていた気がする。
あなた方はそんなマイナーなニュースには特に気にも留めず、
ある人は家を出て、ある人は職場に入ろうとして、、、、
気が付けば、そこは迷宮だった。
~プロローグ~
85%。
この数字が何を表わしているか、ご存じだろうか?
現在の天気予報の的中率である。
おおよそ「6回に5回」の割合で的中するというのだから、大したものである。
しかし、自然とは、驚異とは、一筋縄ではいかないものだ。
「雨が降る」といって、「町が飲み込まれる」などとだれが思うだろうか。
「明日は晴れる」といって、「何週間も雨が降らない」などとだれが考えようか。
もう一度言う。
自然とは、神意とは、人の意思程度では到底及びもしないものなのだと。
「おい、~~~~~が急激に力をつけているぞ!どういうことだ!」
「・・・わからない。ただ、このままでは我々も危険だ。」
「悠長なことを言っている場合か!さっさと計画を中断しろ!!」
「大変です!!#####がこちらの区画にも侵入している模様です!」
「バカな・・・。制御は完璧だったのではないのか!?」
「予想以上に侵入速度が速い・・・。」
「一刻も早く、人員の退避を『ガタガタッ!!』」
ただ、一方で。
おおむねこのような「及びもしないこと」には、
「人の打算や見縊り」がつきものなのである。
クトゥルフ神話TRPG「慟哭は曇天を穿つ」、始めさせていただきます。
~スタート~
あなた方はその日、なんの代わり映えもしない日常を過ごしていた。
ニュースでは今日も行方不明者だとか、そんな「遠くの出来事」が騒いでいる。
どれくらい過ごしただろう、ふとあなたは別の部屋、あるいは外にでようとして、「家のドア」に手をかける。
その時。
『あなたがドアノブに手をかけた瞬間、「急激なめまい」を感じる。耳の奥で、「キィキィ」と金切り声のような、
本能的に人を不快にする音が流れている。平衡感覚を失わせる強烈なめまいに、思わずドアノブを握りしめ、ゆっくりともたれかかる。
自身の重みによってドアはゆっくりと開き、何もない空間にあなたは体を倒してしまう。
そして、あなたの意識は一度途切れた。
成功で0/失敗で1d3のSANチェック』
~導入① 迷宮の入り口~
どれくらいの時間が経っただろうか。
プレイヤー(以下 探索者)たちは目を覚ます。
そこは三方が白い壁に囲まれた袋小路。
あなた方と同じように、周りには目を覚ましたのであろう、不思議な顔をしてきょろきょろとあたりを見回している。
そして、目の前には壁に囲まれた通路が伸びている。
アイデア「この場所をしっているか?」
成功で「閉園することになった遊園地に迷路があった気がする。そして、訪れたことのあるあなたはなんとなくその壁に似ているなーと思う」
遊園地の遊具は見当たらない。
周辺の探索宣言
「幸運」か「目星」どちらか選択
・「目星」の場合
⇒小さなクモがひび割れた壁の隙間に入っていったのを見る。
・「幸運」の場合
⇒日焼けした地図のようなもの
※ここで全員に迷路の見取り図を共有する
~探索~
全員が手番確認後に「聞き耳」
成功すると「鳴き声」が聞こえる。
獣感の強い声。
『迷路の先、というかその奥、または向こう側から聞こえる鳴き声は、鳥類や小動物のようなものではなく、
もっと野太い、野生の獣の声に近いものにかんじた。
この恐ろしい状況と、姿の見えない声に、本能的に恐怖を抱いてしまうだろう。
成功で0、失敗で1のSANチェック』
※「野獣先輩」発言した人は代わりに「成功で1、失敗で1d4のSAN値チェックとする」
~左の道~
何かをひきづったような跡を追いながら、左の道に進む。
すぐに曲がり角、また進むとすぐに曲がり角、そしてその直後に曲がり角。
その先には、「何もいない」。
「目星」宣言で成功すると、「斧」が落ちている。
手に取って「斧を調べる」宣言で「目星」行使可能。
ところどころさび付いているようにみえる、ぼろっちい短剣。
短剣としての機能は失われているように見える。
オカルト-20でさらに判定
=「テセウスの短剣」取得
~右の道(手前)~
~右の道(奥)~
少し進むと脇道に入ることができる。
「脇道」の確認宣言⇒脇道には扉が6つあることがわかる。
各部屋は「教団職員の私室」
1→テーブルと椅子がおいてある以外は何もない。
2→「聞き耳」成功で一瞬カサカサと何かが這いまわるごく小さい音が聞こえた気がした。
テーブルと椅子がおいてある以外は何もない。
「目星」成功で小さなクモが壁の隙間に消えていった。
その先はさっきより大きなヒビがある。
「ヒビをのぞき込む」
『(ライト有り)
探索者はライトを穴に当てて中を覗き込む。そこは暗闇の支配する空間だった。古びた壁の破片を尻目に、古臭いカビの匂いを感じながらヒビの中に光をあてる。すると中から何か照り返しがあるのを確認できる。1つ、2つ、3つ……何かを探すようにして光を左右に振れば、それは暗闇の中にいくつも確認できるだろう。光に助けを借り、更に暗闇に目が慣れてくるようになると、探索者はその反射する光の正体を理解してしまった。無機質な照り返し、規則的に並んだいくつもの楕円型。これは虫の単眼である。白く丸っこい体に細い4対の足。横に2列、全部で8つの楕円。これは蜘蛛の顔だ。探索者の顔の間近で光を反射していたそれは、暗闇からこちらを伺う無数の蜘蛛の眼球だったのである。身じろぎもせずこちらを伺う白い蜘蛛の大群と目を合わせてしまった探索者は今までに味わったことのない嫌悪感を覚えるだろう。』
成功1/失敗1d3
3→テーブル以下略。
「目星」成功でテーブルの陰に「手のひらサイズのコンパス」
針はいくら向きを変えても動かない
「オカルト-20」で「テセウスのコンパス」に名称変更
4→テーブル以下略。
「目星」成功で壁に取り込まれたおてて。
『 探索者は壁に何かがあるのを見つける。何かが引っかかっているとも言えない、壁が崩れているわけでもない。強いて言うなら『何かが突き出ている』とでも表現すべきだろう。柱にしては歪、装飾にしては不恰好だ。よく見てみると、先端は五本の細い分岐になっている。それぞれバラバラの方角に突き出たそれは、探索者にとってもよく見覚えのあるもの……人間の手だった。まるで壁の中に飲み込まれ、最後に助けを求めるようにして虚空に伸ばされたようなその手は、見ているだけで泣き叫ぶような断末魔を想起させるのに十分な姿をしていた。壁が人を飲み込んでいる。いかなる理由であれその異様な光景は、目にした者の心に確かな恐怖を植え付けた。』
成功で1/失敗1d6
過半数の部屋を探索終了で「聞き耳」判定
「6の部屋」から何かがぶつかるような音。動いている。
聞き耳成功で正規判定、聞き耳失敗した人は判定地-15で「隠れる」
『大きな破砕音と共にドアが弾け飛ぶ。何かを引きずるような音を伴い、音の主がゆっくりとその姿を現わす。大柄な体格をしたそれは間違いなく人の形をしていた。手足は2本ずつ、体格も巨躯と言って間違いないほどのものだが、確かに二本足で立ち手で拳を作り、力強く斧を握り締めている。しかしその頭部にあたるものは、およそ人のものではなかった。鋭く天に向かって伸びる2本の角、体に不釣り合いなほど大きく面長な顔。これは牛の頭だ。しかしその頭部からは肉の一切が削げ落ち、頭蓋骨だけがその姿を見せている。白い頭蓋と錆びついた斧は赤のまだら模様に染められ、目玉を無くした空洞からは何の表情も伺い知ることはできない。半死半生、半人半獣とでも言うべきそれはまるでどこかの神話から抜け出てきた怪物のような、見るに耐えぬ忌わしく恐ろしい異形の姿を成していた。』
成功で0、失敗で1d10
5→テーブル以下略
探索宣言後「目星」
成功で「手記②」
『我々の行いを讃えられておられるのだろう。最近のかの御方の状態は極めて良好だ。着々と雛たちが増え、ついにこの施設も日々拡大していくようになった。まったく素晴らしいことだ。しかし一方で、我々の崇高なる考えに賛同しない輩が増えているのも事実のようだ。ここまできて行方をくらますなどあってはならない。そのような暇はないというのに。』
6→ミノタウロスのいた部屋は大いに荒らされ、規則的に配置されていたテーブルとイスは見るも無残なかたちとなっている。
「目星」に成功で「先ほどよりも大きい、タランチュラくらいのサイズのクモ」を見かける。
成功で0、失敗で1のSAN値チェック
部屋のある通路を抜けたさきは左右に分かれ道。
左は行き止まり。
左で「目星」で「金色の細長い糸」を見つける
オカルト-10で「アリアドネの糸」に名称変更
廊下をまっすぐ進むと「聞き耳判定」
成功で「曲がり角で大きな音が聞こえた気がする」(何かを叩き壊すような音)
下の小部屋
崩れかけの本棚と、椅子にもたれかかっている黒いローブの人影
人影を調べる
『探索者が黒いローブの下をうかがい見ると、そこには乾ききった人間の体があった。落ち窪んだ虚ろな目、むき出しになった歯、木片のようになった手足。ここで力尽きたかのようにも思えるそれだが、探索者はこのミイラのような体を見てもそうとは思えないだろう。この死体の腹が大きく抉れているのを見てしまったからだ。しかもその傷は外側に向かって皮膚が破れたように見える。それは腹の中に潜んでいた何かが血肉を貪り皮膚を食い破って出て行ったようにも見えるだろう。通常では考えられない傷を持ったミイラのようなおぞましい死体を見たことにより、探索者は自然と鼓動が早くなるのを感じるだろう。』SAN判定0/1D3
本棚を調べると「目星」
成功すると「手記①」
『使われなくなった商業施設は、我々の隠れ蓑としては上出来だった。隠ぺいの術を無数に張り巡らせることで、迷い込むものも追い払うことができる。このまま研究がうまくすすめば、かの御方は必ず我々を素晴らしき世界へと導いてくださるのだ。』
中央の通路
開けた部屋で「隠れる+10」判定
失敗で「ミイラのような風貌の異形」に追われる
『探索者が身を隠そうとしていると、何者かの足音が聞こえてくる。音のした方に顔を向けると、通路の向こう側からこちらに向かってきているような不規則な足音の主はすぐにその姿をあらわす。腐りかかったミイラのような様相に、今にも倒れそうなふらふらとした足取り。人間としての形は止めているものの、もはや人間とは呼び難い姿となっていた。一歩進む毎にもぞもぞと揺れる体に知能を感じさせない足取りのそれを見た探索者は悪夢でも見ているような気分の悪さを感じることだろう。』SAN判定0/1D3
ミイラを見てアクションを起こそうとした場合(複数人いる場合はDEXの低い者1人)
『探索者が行動を起こそうとした次の瞬間、異形と成り果てたミイラのようなそれは探索者に向かって倒れこんできた。避けきれず巻き込まれるようにして探索者は尻餅をついてしまう。急いで起き上がろうとする探索者の眼前で、倒れこんできた異形の体は崩れていく。縋るようにして伸ばされた悪臭のする手足が朽ちた枝をへし折るような音と共に落ちていき、その体は動きを止める。どうやら助かったようだ。探索者が安心したのもつかの間、今度はどこからか音が聞こえてくる。何かを引きちぎり、削るような音。それも1つではなく複数である。音はどこか近くから、それも次第に大きくなっている……音がしているのは、この死体だ。探索者がそれに気づくのとほぼ同時に、死骸の腹から何かが飛び出してくる。それは白い蜘蛛だった。手のひらよりやや小さいくらいの蜘蛛の群れが、死骸の腹を食い破ってできたのである。あるものは腹に開けた穴から、あるものはもはや窪みとなった眼窩から、至る所から同じようにして這い出てくる。内部にわずかに残っていたのであろう体液に塗れた蜘蛛たちは悪臭を撒き散らしながら一斉に壁の裂け目へと逃げていき、最後に残されたのは探索者と穴だらけになった死骸のみである。人だったであろうものの腹を食い破って出てくる蜘蛛の群れを間近で見てしまった探索者は、言い知れぬ恐怖と嫌悪感がせり上がってくるのを感じる。』SAN判定0/1D4
部屋周辺の探索宣言で「目星」判定
成功で「手記③」
『我々は大きな過ちを犯した。かの御方にはこのような環境は狭すぎたのだ。偉大なる神に何たる不敬をはたらいてしまったのだろう。あぁ、今日もまた一人いなくなってしまった。最近は夜な夜な異形の生物がこの施設内を歩き回っているようだ。迷宮の神たるものが眷属としてアレを遣わすのはお誂え向きだ。あぁ、ダレか私を助けてくれ・・・。』
一番右の通路の小部屋
中に入るとひどく荒らされた形跡。
原型をとどめない調度品。
そして「部屋の中央に横たわる大きな黒い塊」
『 扉を開け部屋に入ると、内部はひどく荒れていた。部屋に並べられていたであろう調度品の数々も見る影もなく粉砕されており、まるで何者かが暴れ回ったように見える。改めて部屋の内部に目を向けると、部屋の中心に黒い何かが鎮座している。探索者はその薄汚れた袋のようにも見えるそれに目が行くだろう。袋は部屋の中心に投げ出されるようにして置いてあり、その上には何かが置かれている。元は目が嵌っていたであろう2つの穴、天に向かって生える二本の角。これは牛の頭蓋骨だ。下の袋のようなものに目をやると、何か違和感を覚える。光沢はなく薄汚れた素材、無造作に伸びるいくつかの膨らみ。おおよそ袋としては奇妙な形である。だが、これが元々袋でなかったとしたらどうだろう。無造作に伸びた膨らみは左右対称に上下で4つ。これが元々中身の入った立体だったと考えれば、これは体になる。その体を覆うもの……皮膚であるのではないだろうか。牛の頭蓋を頭部とし、薄く血に汚れ赤いまだら模様のついたその体は、まさに神話から抜け出てきた怪物のような様相であったことだろう。すでに動かぬ体となった怪物を目の当たりにした探索者は、自らの想像力によってたどり着いた答えに恐怖を抱くことだろう。』SAN判定1/1D3
目星成功で「斧」が落ちている
オカルト-20成功で「ダイダロスの斧」
複数人成功で「手記④」
『ついにかの御方は、外界より贄を呼ぶことになさったようだ。なんと愚かなことをしてしまったのだろうか。どうかこれは「喰われる」ことのないこと願いつつ、いずれやってくる者に託そう。迷宮の神は、無数に人を呼び寄せる。どうかこの迷宮、いや、施設を止めてくれ。3つの迷宮を壊す器をかざせば、神への供物は止められる。・・・足音が近づいている。これ以上かの神、アイホート』
ここで手記は終わっている。この先は書きなぐられたような判読できない文字と、赤黒いしみが浮き出ている。
※手記を読んだことにより、「アイホート」という「迷宮の神」がいることがわかりました。探索者は「クトゥルフ神話技能」を「3パーセント」お渡しいたします
いちばん広い部屋=コントロールルーム
部屋の壁には「大きな星型のエンブレム」が書いた布が飾られている。
布の前には3つの台座
何かを置くことができそうだ
壁一面には本棚がおかれている。
部屋全体を調べる宣言で「目星」
布の飾られた壁の反対側、本棚の一つが動かせるようになっている。
動かすことで「緊急脱出通路」へ
緊急脱出通路
ちょうど人が3~4人入れそうなスペース
通路の中央には細い穴が空いている
「アリアドネの糸」を入れることで脱出成功、エンディングへ
※部屋に入っていない人間は脱出不可
エピローグ
君たちが次に目を開けると、目の前には床が広がっていた。
そうだ、部屋を出ようとして急にめまいを起こしたんだった。
あなたは体を起こし、とりあえず全身の異常を確かめる。
・・・よし、どこも痛くない。
気を取り直して体についた床の埃をはらう。
そろそろ部屋の掃除もしないとな・・・。
どこでついたのか分からない、体についた「金色の糸くず」には気にも留めず、床に払い落とす。
掃除機をかけて部屋を掃除していたら、「家具の隙間で蜘蛛が巣を張っていた」。
やっぱりこまめに掃除しないとダメだな。
あなたはそれをクモごと払い落とす。
さて、そろそろでかけよう。
あいにく天気は曇り空。
荷物を持って、テレビにふと目を遣る。
①
「遊園地は取り壊され、今度新しく商業施設ができるそうだ」
気が向いたら、少し中を覗いてみるか・・・。
テレビを消し、あなたは家を出た。
(トゥルーエンド)
②
「遊園地の取り壊し作業は行方不明者や事故が断続的に起こり、安全性を疑問視する声から取り壊しが進んでいないらしい。」
あなたは「そりゃそうだ」と思い、ふと訝しむ。
「なんでほとんど行ったことのない遊園地の話をしっているんだ?」
「自分は何に納得したんだ?」
考え込みそうになるが、時計を見て慌ててテレビをけして、玄関へ急ぐ。
払い落としたはずのクモが、じっとあなたを見ていたことにも気付かずに・・・。
時刻は夕方。
遠くで、野犬だろうか。
「野太い獣の鳴き声」が聞こえた。
(ノーマルエンド)
エピローグ バッドエンドルート
逃げる。逃げる。逃げる。
どうしてこうなった?
なんで私は逃げ隠れ続けている??
一緒にきたはずの人は、気が付いたらみんないなくなってた。
息が上がる。心臓が跳ねる。
後ろを振り返ってはいけない。
今も聞こえる。
「地面に斧を引きずりながら、追ってくる牛頭の化け物」が見える。
耳の奥で「カサカサ」とそこかしこを這いまわる音が聞こえる。
「あの不気味な単眼」が、じっと私を見据えている。
ここでは私は「ちょうどいい獲物」、「よく動く玩具」に等しい。
走り続けて、行き止まりにぶつかる。
崩れかけの本棚に体をねじ込み、息を殺してやりすごす。
斧を引きずる音が目の前で止まり、しばらくしてから離れてく。
・・・まずは撒いたようだ。
息を整え、本棚から体を出そうとして、止まった。
体が、動かない。
周りを意識しすぎて、失念していた。
何も「動くものだけが敵ではない」のだ。
ここには今、もうだれもいない。
嗚咽が自然と漏れ、見えぬ天を仰ぐ。
目が、合う。
無数の、単眼。
そう、さいしょからどこにも逃げ場なんてなかったんだ。
そうして折れた心に、ダレかのこえガひびク。
あぁ、これを受ケ入れさエすれば・・・。
私の慟哭に呼応するように、無数の蜘蛛がゆっくりと・・・・。
この慟哭は、曇天に吸われ、そして届くことはないのだろう。
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