141 / 157
第十章~東北統一への道~
東北統一4
しおりを挟む
「神威刹那殿、米沢へよくおいで下さった。わしは伊達家当主伊達政宗の父、伊達輝宗と申す。」
「徳川家家臣、神威刹那です。あなたが前当主の伊達輝宗殿でしたか。」
「お帰りになる前にこちらへ足を運んでいただいて感謝致す。先ほど政宗と顔を合わされたと聞いた。あいつの事だ、良からぬ態度を取ったのではないかと思いましてな。」
「はい。己よりも大きな敵と遭遇した時の対応がどのようなものなのか、申し訳ありませんが試させていただきましたが、あわや抜刀をするところまで行きました。」
刹那の言葉に輝宗は頭を抱えた。
「はぁー、やはりやりおったか。神威殿、申し訳ない。」
輝宗はそう言うと頭を下げた。
「なぜに頭を下げられるのですか?」
「神威殿の期待を裏切ったのであろう?であれば親として頭を下げるのは当然よ。」
「私がどうして期待していたとお思いで?」
刹那がそう問うと輝宗は笑いながら
「期待までいかんでも、興味を示していなければ神威殿は今ここにはおらんさ。」
そう言った。
輝宗の言葉に刹那は小さく笑みを浮かべ
「さすがはあの若武者の才能を早くに見出だし活躍できるように家督をあっさりと譲られたお方だ。そこまでお見通しですか。」
「なにやら神威殿からは政宗と同じ匂いを感じてな。初めて会ったはずなのに同じ場所で育ったかのような匂いがな。」
刹那は輝宗のその言葉に驚きを隠すのに必死だった。
まさか自分が宮城の出身で政宗の作った街で育ったのを感じたと思えるほどの輝宗の適切な言葉に。
「政宗殿と同じ匂いですか。それは光栄な事ですな。輝宗殿が評価するご子息と同じようだと言ってもらえたのですから。」
「神威殿、わしが貴殿をお呼びしたのは政宗の事を頼みたかったからにほかならん。あやつは東北で納まるには惜しい才を持っていると思うのだ。神威殿から見てわしの言葉が間違っていないと感じたらで良い。あやつに広い世界を見せてやってはもらえぬだろうか。」
輝宗はそう言うと頭を畳に着けて願った。
刹那も輝宗のこの行動にはさすがに驚いた。
まさか前当主である輝宗が刹那に頭を下げて願いを伝えてくるとは。
「輝宗殿、頭を上げてください。私としても政宗殿がここで埋もれるのは惜しいと思っております。」
「誠か!」
輝宗は頭を上げると刹那の顔を見た。
「はい。ですが今のままでは彼はこれ以上伸びることは難しいとも思います。そこで輝宗殿に1つ協力を願いたいのです。」
それから刹那は政宗更正計画を伝えた。
それを聞いた輝宗は一通り驚いた後笑いながら
「承知した。」
そう答えを返した。
輝宗は席を立つとすぐに部屋を出た。
大広間にはイラついている政宗とそれをなだめている小十郎の姿があった。
「殿、あの暴れようは伊達家当主としてあるまじき所業にございます。神威殿は徳川家の筆頭家老であるお方。あの方の怒りをかえば徳川家、いえ、場合によっては日ノ本ほとんどが敵となりますぞっ!」
「うるさいっ!あそこまでこけにされて黙っていろと申すか!徳川がなんだ、元を正せば今川家の属国ではないかっ!」
「確かにそのような時期もありました。しかし、そこからここまでの大大名になった裏には神威殿の力があったと専らの噂にございます。」
「ならばその男をわしが倒してくれるわっ!」
「殿っ。」
二人が話していると大広間に輝宗と武装した兵達が現れた。
「父上っ!兵などを連れていかがなされたっ!どこぞが攻めてきましたかっ!」
「捕らえろ。」
輝宗はそう兵に指示すると兵達が一斉に政宗と小十郎を捕らえ始めた。
「離せっ!父上っ!どういうことじゃ!!」
政宗を捕らえた輝宗は兵に家臣達を呼ぶように伝えた。
5日後、急遽輝宗の名前で登城を命じられた伊達家家臣たちは困惑しながらも米沢城へ登城してきたのである。
大広間に通された家臣達が見たのは当主の座に座る輝宗と縄で拘束されている現当主である政宗の姿であった。
それを見て更に混乱を強める家臣達。
隠居を宣言してからこれまで評定の場に姿を現すことがなかった輝宗が出ているだけでなく当主である政宗を縄に縛り自らが当主の座に座っているなど長年伊達家に仕えてきた者達でも想像ができるはずもない出来事であった。
「おっ、大殿、これはどういうことでしょうか?なぜに殿が縛られているのですか?」
家臣を代表して亘理元宗が問いかけた。
「この政宗が伊達家を滅ぼそうとしたからである。」
輝宗のその発言に評定の場はざわつく。
「わしはそのようなことしておらんっ!」
「黙れ政宗っ!」
「大殿、殿が伊達家を滅ぼそうとしたとはどういうことでしょうか?」
今度は留守政景が輝宗に質問した。
「先日、徳川家より筆頭家老である神威刹那殿が米沢へ参られた。その神威殿にあわや抜刀をする勢いだった。小十郎が政宗を抑えたおかげで抜刀することにはならずに済んだが、徳川家を敵にする十分な仕出かしだっ。考えてもみよ、神威殿がここに来たと言うことは蘆名や相馬は既に徳川へ降ったと言うことに等しい。そうなれば我らは徳川の脅威に晒されている状態と言えよう。そんな最中にこのようなことが起こればどうなる。徳川家は大軍を持ってこの米沢へ攻めてくるぞっ!」
輝宗の話に皆が静かに聞き入る。
「故に、この責任を政宗には取ってもらい、当主から降ろし、わしがまた当主となる。そしてわしの名で徳川家へ恭順の意を示すっ!異を唱える者はあるか?」
「徳川家家臣、神威刹那です。あなたが前当主の伊達輝宗殿でしたか。」
「お帰りになる前にこちらへ足を運んでいただいて感謝致す。先ほど政宗と顔を合わされたと聞いた。あいつの事だ、良からぬ態度を取ったのではないかと思いましてな。」
「はい。己よりも大きな敵と遭遇した時の対応がどのようなものなのか、申し訳ありませんが試させていただきましたが、あわや抜刀をするところまで行きました。」
刹那の言葉に輝宗は頭を抱えた。
「はぁー、やはりやりおったか。神威殿、申し訳ない。」
輝宗はそう言うと頭を下げた。
「なぜに頭を下げられるのですか?」
「神威殿の期待を裏切ったのであろう?であれば親として頭を下げるのは当然よ。」
「私がどうして期待していたとお思いで?」
刹那がそう問うと輝宗は笑いながら
「期待までいかんでも、興味を示していなければ神威殿は今ここにはおらんさ。」
そう言った。
輝宗の言葉に刹那は小さく笑みを浮かべ
「さすがはあの若武者の才能を早くに見出だし活躍できるように家督をあっさりと譲られたお方だ。そこまでお見通しですか。」
「なにやら神威殿からは政宗と同じ匂いを感じてな。初めて会ったはずなのに同じ場所で育ったかのような匂いがな。」
刹那は輝宗のその言葉に驚きを隠すのに必死だった。
まさか自分が宮城の出身で政宗の作った街で育ったのを感じたと思えるほどの輝宗の適切な言葉に。
「政宗殿と同じ匂いですか。それは光栄な事ですな。輝宗殿が評価するご子息と同じようだと言ってもらえたのですから。」
「神威殿、わしが貴殿をお呼びしたのは政宗の事を頼みたかったからにほかならん。あやつは東北で納まるには惜しい才を持っていると思うのだ。神威殿から見てわしの言葉が間違っていないと感じたらで良い。あやつに広い世界を見せてやってはもらえぬだろうか。」
輝宗はそう言うと頭を畳に着けて願った。
刹那も輝宗のこの行動にはさすがに驚いた。
まさか前当主である輝宗が刹那に頭を下げて願いを伝えてくるとは。
「輝宗殿、頭を上げてください。私としても政宗殿がここで埋もれるのは惜しいと思っております。」
「誠か!」
輝宗は頭を上げると刹那の顔を見た。
「はい。ですが今のままでは彼はこれ以上伸びることは難しいとも思います。そこで輝宗殿に1つ協力を願いたいのです。」
それから刹那は政宗更正計画を伝えた。
それを聞いた輝宗は一通り驚いた後笑いながら
「承知した。」
そう答えを返した。
輝宗は席を立つとすぐに部屋を出た。
大広間にはイラついている政宗とそれをなだめている小十郎の姿があった。
「殿、あの暴れようは伊達家当主としてあるまじき所業にございます。神威殿は徳川家の筆頭家老であるお方。あの方の怒りをかえば徳川家、いえ、場合によっては日ノ本ほとんどが敵となりますぞっ!」
「うるさいっ!あそこまでこけにされて黙っていろと申すか!徳川がなんだ、元を正せば今川家の属国ではないかっ!」
「確かにそのような時期もありました。しかし、そこからここまでの大大名になった裏には神威殿の力があったと専らの噂にございます。」
「ならばその男をわしが倒してくれるわっ!」
「殿っ。」
二人が話していると大広間に輝宗と武装した兵達が現れた。
「父上っ!兵などを連れていかがなされたっ!どこぞが攻めてきましたかっ!」
「捕らえろ。」
輝宗はそう兵に指示すると兵達が一斉に政宗と小十郎を捕らえ始めた。
「離せっ!父上っ!どういうことじゃ!!」
政宗を捕らえた輝宗は兵に家臣達を呼ぶように伝えた。
5日後、急遽輝宗の名前で登城を命じられた伊達家家臣たちは困惑しながらも米沢城へ登城してきたのである。
大広間に通された家臣達が見たのは当主の座に座る輝宗と縄で拘束されている現当主である政宗の姿であった。
それを見て更に混乱を強める家臣達。
隠居を宣言してからこれまで評定の場に姿を現すことがなかった輝宗が出ているだけでなく当主である政宗を縄に縛り自らが当主の座に座っているなど長年伊達家に仕えてきた者達でも想像ができるはずもない出来事であった。
「おっ、大殿、これはどういうことでしょうか?なぜに殿が縛られているのですか?」
家臣を代表して亘理元宗が問いかけた。
「この政宗が伊達家を滅ぼそうとしたからである。」
輝宗のその発言に評定の場はざわつく。
「わしはそのようなことしておらんっ!」
「黙れ政宗っ!」
「大殿、殿が伊達家を滅ぼそうとしたとはどういうことでしょうか?」
今度は留守政景が輝宗に質問した。
「先日、徳川家より筆頭家老である神威刹那殿が米沢へ参られた。その神威殿にあわや抜刀をする勢いだった。小十郎が政宗を抑えたおかげで抜刀することにはならずに済んだが、徳川家を敵にする十分な仕出かしだっ。考えてもみよ、神威殿がここに来たと言うことは蘆名や相馬は既に徳川へ降ったと言うことに等しい。そうなれば我らは徳川の脅威に晒されている状態と言えよう。そんな最中にこのようなことが起こればどうなる。徳川家は大軍を持ってこの米沢へ攻めてくるぞっ!」
輝宗の話に皆が静かに聞き入る。
「故に、この責任を政宗には取ってもらい、当主から降ろし、わしがまた当主となる。そしてわしの名で徳川家へ恭順の意を示すっ!異を唱える者はあるか?」
0
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる