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第七章~織田家崩壊~

清洲会議3

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「何を申されるか。この羽柴秀吉、大殿から多大な御恩を受けております。そのわしがその子である信雄様を利用するなどそのような不義理をわしがするわけがありますまいっ!」

「丹羽様、その言い方は秀吉が可哀想ですぞ。」

「利家、おまえは秀吉と仲が良いからそのように庇い立てするのであろうが、こいつは野心の塊だ。」

長秀は更に言葉を続けた。

「大殿が亡くなったとの知らせが届いてからの秀吉の動きはあまりにも動きが早すぎた。もしや光秀が謀反をすることを知っていたわけではあるまいな?」

「ふっ、そのようなことがあるわけがございませぬ。それを知っていればその前にわしが光秀を討っておりますわっ!」

秀吉と長秀の目線が交じりあう。

「よさぬかっ。」

勝家が一喝すると二人は発言を控えた。

「神威殿、お見苦しいところをお見せして申し訳ない。」

勝家はそう言って刹那に頭を下げた。

「いえ、どちらも信長殿、織田家のことを思ってのことでございましょう。私のことは気になさらずとも大丈夫にございますよ。」

「忝ない。猿、お前は本当に信雄様を当主にして今の織田家が保てると思っているのか?」

「無理でしょうな。」

「はっ。羽柴殿、それではなぜに信雄様を当主にと進められたっ!」

秀吉の言葉にここまで沈黙していた恒興が声をあげた。

「池田殿、私が無理と申したのは大殿や信忠様のように織田家をまとめるのは無理と言うことを申したのでございます。」

「どうゆうことだ。」

「大殿、信忠様は自ら物事を決め、それを導く力がお有りになった。しかし、信雄様には行動する力はあれど、物事を正しく判断し、導く力は今はまだありませぬ。これはどなたが見ても思われることでしょう。」

「だからこそ当主にするには心もとないのではないか!!」

「ならばっ、ならばでござる。我ら織田家重臣が信雄様をお支えし、道を示してあげれば良いではありませぬか。」

秀吉の熱弁に織田家重臣は沈黙で応えた。

「我らが歪み合っていてはまとまるものもまとまりませぬ。それはどなたが当主になられても言えることだとわしは思いますぞ。」

秀吉はここぞとばかりに当主は信雄にすべしと進めるのであった。

「確かに、我らがひとつとなり御当主となられる方をお支えするのは猿の申す通りだ。」

「かっ、勝家殿っ。」

勝家の思わぬ同意に滝川一益が声を出した。

「そうでございましょう。いやー、さすがは織田家筆頭家老の柴田様。よくお分かりで。」

秀吉は内心勝ちを確信した。
これで自分が織田家を自由にできると 。

「さすがは秀吉殿。織田家のことをよくお考えですな。」

そこに更に刹那が秀吉を称賛する声をあげる。

「いえ、織田家家臣として当たり前のことをわしは申したまでにございますよ。」

「では、織田家を皆々様がお支え致すのであれば私は信雄殿よりも当主に相応しい方を存じておりますが、お連れしてもよろしいですかな?」

「信雄様よりも当主に相応しいお方っ?」

刹那はそういうとその場から立ち部屋を出て行った。

そしてしばらくして刹那が戻ってくるとその後ろには信孝の姿があった。

「信孝様がご当主にふさわしいお方だと神威殿はおっしゃりたいのですかな?それは次男である信雄様がおられる以上、筋目が通らないはずですぞ。」

秀吉がやれやれと言った表情でそう声をかけた。

「猿よ、勘違いするな。私ではない。この子が織田家当主にふさわしいと師匠が連れてきた子だ。」

そう言う信孝の手の中には一人の子供がいた。

「その子がにございますか?」

「はい。そうですよ秀吉殿。この子こそが織田家次期当主に一番ふさわしい子です。」

「まっ、まさか。」

「そのまさかです。織田家前当主の織田信忠殿の嫡男にして織田信長殿の嫡孫である織田三法師殿です。」

「確かに三法師様は筋目からしたら相応しいかもしれぬが、まだ子供ではないですか!!」

「そうですね。なので私も始めはどなたか相応しいお方をと考えました。しかし、先ほど秀吉殿がもうされたではありませんか。織田家重臣で当主を盛り立てれば問題ないと。ならば信雄殿よりも筋目として通る三法師殿が織田家次期当主で問題はないはずにございますな?子供であれど織田家重臣である皆々様がお支えすればなんの問題もありません。」

「確かに神威殿の申される通りだ。わしは織田三法師様を次期当主とすることを推す。」

勝家が刹那の意見に賛同するとほかの沈黙していた重臣達も次々に三法師を主とすることを賛同を示し始めたのである。

これにより織田家の次期当主は織田三法師と決まり、その後見人には一門衆から織田有楽斎が、家臣団からは織田家筆頭家老の柴田勝家が務めることと決まった。

その後の会議は織田家の領地配分の話へと進み、現在家臣達が保有している領地以外の信長と信忠が持っていた領地は三法師がそのまま受け継ぐこととなり、ほかの領地への変動は特になかったが、後見人である有楽斎と勝家が領地経営にも大きく影響力を有するのは言うまでもなかった。

会議終了後、刹那は三法師を連れて勝家の城下屋敷へと赴いていた。

「神威殿、此度はご助力感謝致す。神威殿のおかげで猿の思うようにならずに済んだ。」

「いえいえ、勝家殿の影響力があれば私などいなくとも問題はなかったでしょう。」

「いや、わしでは皆をあそこまで納得させることは出来なかったであろう。神威殿の説得力のなせる技だ。重ねて感謝する。」

「ここまでは上手く行きましたが、後は勝家殿と有楽斎殿がどれだけ三法師殿を上手く支えるかでございます。気を抜かぬように。」

「うむ。心して挑もう。」

刹那が抱っこしていた三法師を降ろして部屋を後にしようとすると三法師は抱きついている手を離さなかった。

「おやおや、大分気に入られたご様子ですな。」

勝家が笑いながらそう声をかけた。

「三法師殿、私はそろそろ帰らねばなりません。」

「もう、かえるのですか?さんぼうしはさびしゅうございます。」

「また、遊びに来ますからご安心を。」

刹那はそう言いながら三法師の頭を優しく撫でた。
「はい。また、きてくださいね。」

三法師はそう言って漸く刹那から離れた。

「では、失礼します。」

「信孝様のこと、よろしくお願い致す。」
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