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第六章~徳川の世への布石作り~

三好、朝倉、滅びるってよ2

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一月後、家康からの三好の捕虜の沙汰を伝える使者が訪れた。

「刹那殿、お久しぶりにございます。」

「これはこれは正信殿。息災のようでなによりにございます。こたびは使者の役目ご苦労に存じます。」

「これも皆、私の心を変えてくださった刹那殿のおかげでございます。ふたたび殿のために活躍できるとは思いもしませんでしたわ。」

「では、捕らえた三好の捕虜はこちらにおりますので、よろしくお願い申します。」

「かしこまりました。」

刹那はそう正信と会話を済ませると捕虜として捉えられている三好義継の元へと案内した。

「三好義継、表をあげよ。これより、我が殿、徳川家康より沙汰を申し渡す。」

その後、本多正信が家康からの沙汰を義継に伝えた。

三好義継は今回の戦の責任を取り自害。
三好領であった淡路は元々織田家の領地であるため、織田家に返上。
四国の阿波、讃岐に関しては刹那の予想通り、切り取り自由としてある刹那に任せるとされていたが、刹那は正信にそれを断りほかの武将に任せるようにと願い出を託した。

正信がそのことを家康に知らせ、その後に正式に出た沙汰は関東の発展に貢献している佐竹義重を阿波と讃岐の国主に取り立てた。

これにより空いた常陸は徳川家の直轄領として引き続き忠勝らが管理することになった。

新たに阿波と讃岐を治めることになった義重は領地に向かう途中、霧山御所に立ち寄り刹那に挨拶をしにきた。

「これはこれは義重殿、こたびの阿波、讃岐の国主就任おめでとうございます。」

「刹那殿、祝いの言葉ありがたき幸せ。これも刹那殿が三好を倒してくれた故にございます。」

「いえ、義重殿が常陸を立派に発展させられたから当然の褒美でしょう。次はまだまだ長宗我部の脅威がある四国での領地経営となります。頑張ってくだされ。」

「忝ない。これからはより一層、刹那殿のお力をお借りしたいと考えておりますので何卒良しなに。」

「私にできることであれば助力は惜しみませぬ。今も長政が義重殿が国に入られるまで統治をしています。ご安心を。」

「それならば安心ですな。安心故に本日はこちらへ泊めていただけますかな?」

「なるほど、それを狙っていましたか。さすがは義重殿、油断ならぬお方だ。」

「こうすれば刹那殿は泊めてくださると思いましたので。」

「わかりました。今部屋を用意させましょう。」

刹那はそう言うと侍女に声をかけて義重が泊まるための支度を頼んだ。
普段から来客を想定して客間は用意してあるので、支度はすぐにできた。

その素早い対応に義重はただただ驚くばかりであった。

「さすがは神威家の者。何から何まで驚かされます。」

「ええ、優秀な者が多くて助かっています。」

その後、義重は刹那と夕餉を共にして一日を過ごした。
夕餉の席でどのように阿波と讃岐を統治したらいいかの相談も抜かりなくそこで行われた。

結局義重は霧山御所に1週間ほど泊まり、そこで統治についての方針をまとめてから四国へと向かった。

「あなた、お疲れ様でございました。」

「ありがとう。これで義重殿は問題なく阿波と讃岐を統治しながら長宗我部を牽制できるだろうよ。」

「そうなれば、殿が私たちの元にいてくださる時も増えますかしら。」

おとわはそう言うと刹那に寄りかかった。

「あぁ、できるだけ、おとわたちのそばにいたいからね。そのためにも直虎にはがんばってもらおう。」

「ま、それでは直虎は大変ですわね。」

義重が霧山御所を出立してから一月後、四国に残っていた長政達が霧山御所へと戻ってきた。

「長政、阿波、讃岐の守護ご苦労だった。義重殿へは無事に引き継げたようだね。」

「ありがたきお言葉。義重殿が殿と相談して統治の方法などを考えてくださっておりましたので、問題なく変わることができました。今ごろは領地の視察を行っていることでしょう。」

そう、刹那が義重にアドバイスしたことはまず、領地の状況を自分の目で見ることであった。
自分の支配地である場所がどのような状況なのか、そこに住んでいる領民の生活はどのくらい潤い、どこで困っているのかを知ることが領民の心を繋げる最大の武器になると知っていたからこその助言であった。

普通の大名は自らの足で領地を回ることなどない。しかし、刹那は現代の世界で選挙を行ってきて、どれだけ自分の足で選挙区、つまりは領地を回ってそこの人に良い印象をもってもらうことがどれだけ大事なのかを理解していたため、最優先で領地視察を行うことを義重に強く推したのである。
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