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第六章~徳川の世への布石作り~

三好、朝倉、滅びるってよ

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信孝を伊勢へと連れてきてから一月ほど経ってから霧山御所に左近が戻ってきた。

「殿、島左近、直虎様の命により伝令として戻って参りました。」

「左近を寄越すということは何か大きな問題でもあったか?」

「いえ、ただ三好攻めが無事に終わりましたので御報告にございます。」

左近のその言葉に刹那は安堵の顔を見せた。
普段、徳川家筆頭家老として厳しい目を向けることの多い刹那も人の親である。
神威家の筆頭家老である島左近が伝令としてくるということに直虎の身になにかあったのではないかと気が気ではなかった。

安堵の顔も束の間、刹那は神威家当主としての顔に戻り、

「左近、直虎が大将とはいえ淡路を落とすのに時間がかかりすぎだぞ。」

と苦言をていした。

その刹那の言葉に今度は左近が

「それはしかたがありますまい。三好攻めで淡路、阿波、讃岐を落としたのですから。」

「なにっ!淡路ではなく、三好を降したと云うことかっ!」

「私は先程三好攻めが終わったと申しましたよ。」

左近はそう言いながらニヤリとした。

「ふっ、まさか淡路だけでなく三好自体を倒しきってしまうとは。左近、お前の入れ知恵か?」

「いいえ、直虎様、そして直政様二人がお決めになったことにございますよ。」

左近のその言葉に刹那も驚いた。
左近がこのまま四国へと乗り込んでしまおうと入れ知恵をした結果なら納得ができた。しかし、その案を出したのはまだ大将としての実力はそこまでないと思っていた息子の直虎と、その補佐である直政が決めたということに嬉しい意味で裏切られる結果となった。

「ふっ、そうか、あいつらがなぁ。」

「赤子だと思っておりましたが、戦場での姿は若かりし頃の殿のようにございましたよ。」

「左近と出会った頃か。」

「はい。あの若さで既に人の上に立つことの意味がお分かりで、私が生涯をかけて尽くしたいと思ったあの時の殿に。」

「では今はもう私に尽くしたいと思うほどの魅力はなくなったと言うことか?」

「そのようなことはございませんよ。むしろあの頃の殿よりも力を持っても領民のことを第一に考える今の殿素晴らしきお方と思っております。」

「私にはまだまだ左近の力が必要なんだ。これからも筆頭家老として頼むよ。」

「はい。お任せくださいませ。」

久々の左近とのゆったりした一時を楽しむ刹那であった。

刹那への報告を終えた左近はひとまず霧山御所へ留まることになり、刹那は信孝の指導を任せることにした。

左近が指導をすることを伝えられた信孝は刹那の側近中の側近である左近が自分の教育をしてくれると聞いて興奮している様子だった。

「殿、ビシビシ鍛えてよろしいのですかな?」

「あぁ、織田家の名は捨てさせた。この信孝は織田家の御子息ではない、私の元で学ぶ一人の若人だ。ほかの者同様厳しくしてかまわん。信孝もそれを望んでいるからな。」

「承知致しました。」

「信孝、左近は当家の中でも一番厳しい師匠だろう。覚悟して学びなさい。」

「はいっ!!努力致します。」

左近の元で学ぶ、このことが神威家でどれだけ期待されているかを表しているかは信孝はしらない。

刹那は左近が留まること知った後、すぐに長政ら旧浅井家家臣達を直虎の元へと向かわせた。

長政を派遣してから一月後、九鬼嘉隆と原昌胤、蒲生氏郷、大谷吉継を残して、直虎と直政らが霧山御所に戻ってきた。

「皆、よくぞやってくれた。三好攻め大義だった。」

帰ってきた家臣達に向かってそうねぎらいの言葉をかけた。

「「「「「「はっ!!」」」」」」」

「直虎っ。」

「はっ。」

「総大将としてよく一月の間に淡路、阿波、讃岐を落とした。」

「ありがたきお言葉!!」

「直政っ。」

「直虎をよく補佐してくれた。礼を申すぞ。」

「もったいなきお言葉にございます。」

刹那は主だった武将全員にそうねぎらいの言葉をかけてやった。

「三好領、及び三好の捕虜に関しては現在殿の沙汰を待っている状態だ。殿はまた切り取り自由と申したとおっしゃるだろうが、三好領に関しては譲渡しようと考えておる。その代わりに皆に私から望むものを与えることとする。それぞれ望むものがあるならば提出するように。」

その言葉を聞いた家臣達から喜びの声が上がった。

普通の家であれば自分達の力で勝ち取った領地をもらえないのは不満の声が出てもおかしくないが、刹那は領地をもらわずともいいと思えるほどの生活を家臣達に与えているために皆、望むものをもらえるということにむしろ喜んだのである。

その中でも家臣から望む声が大きかったのは宝米の皇室献上レベルのものや、お茶セットだった。
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