上 下
73 / 157
第五章~近畿大波乱~

崩壊、そしてゼロからのスタート6

しおりを挟む
「忠勝、さすがの刹那でも倍以上の兵が篭る城を落とすのはそう簡単なことではないはずだ。援軍として3000の兵を率いて刹那の援護をせよ。」

「はっ!!必ずや吉報をお持ち致しましょう。」

それから少しして刹那の元に忠勝がやってきた。

「失礼致します。本多忠勝殿がお見えにございます。」

「通してくれ。」

「師匠、失礼致します。殿の命により、本多忠勝援軍に参りました。」

「忠勝、ありがたい。まずは座ってくれ。」

「はっ。して今はどのような状況なのですか?」

「今は海玄、幸隆、長政が2000の兵を率いて城の様子を小競り合いを行いながら調べてもらっている。」

「敵方がどのように兵を配置しているのか確認しているということですな。」

「そうゆうことだ。堅城である小谷城を落とすためには敵の兵の配置を知ることが普段の城攻めよりも大切になってくる。味方の死傷者をできるだけ出さずに勝つためには敵の急所を狙い撃つことが肝心だ。長政がいる分城の作りなどは理解できているが、それは敵も承知のこと。本来の急所にはより兵を多く配置するはずだ。ならばその兵の配置によって手薄になっているのはどこなのか。それを探るのが今必要なことさ。」

刹那の話を聞きながら忠勝は改めて自分の師の偉大さを実感するのである。

それと同時に刹那も自分のやろうとしていることを瞬時に理解した忠勝の成長に嬉しさを覚えるのだった。

忠勝が刹那の元に来てから数時間後、小競り合いを行っていた三人が戻ってきた。

「これは本多殿、いらしていたのですな。」

「はい。殿の命により師匠の援軍に参りました。」

「それはそれはこの戦、これで勝ちは決まりましたぞ、殿。」

海玄のその言葉を聞いた刹那は、

「見つかりましたか?手薄な箇所が。」

刹那はそう問いかけると長政が、

「本丸と小丸の間にある京極丸が一番の手薄になっています。普段であれば京極丸は本丸と小丸とつなぐ場所として兵を多めに配置しているのですが、今回は本丸に多く兵を配置しているようです。」

「小丸のほうはどのような状況ですか?」

「小丸に篭る兵は1500といったところでしょうか。それに比べ京極丸は300程度しかいないように感じられました。」

「ほう、京極丸に300の兵ですか。」

「忠勝、あなたならどうしますか?」

「無論、京極丸を強襲します。しかし、京極丸は両側を山に斜面に沿わせており攻めるのが難しいのが難点でございますればその隙に反撃を食らうのは必定かと。」

「そうですね、そのために小丸に神威家の兵1000と忠勝が率いてきてくれた殿からの援軍3000、計4000で攻めます。」

その刹那の説明を聞いた幸隆が

「ほう、その隙に残りの兵1300は京極丸の側面を進行し攻めいると言うことですな。」

「その通りです。小丸が戦っている時に京極丸に控える兵は必ずや油断が生じます。その油断を我らは攻める。」

「それで、人選はどのように。」

「まず、小丸を攻める4000を忠勝を大将にし、海玄、幸隆が補佐。京極丸には私と長政で行きます。」

「承りました。海玄殿、幸隆殿、何卒よろしくお願い致します。」

「長政、こちらも危険がおおいに生じます。心してかかりますよ。」

「はっ。」

こうして刹那は手勢をふたてに分けて小谷城攻めを開始したのである。

「伝令、徳川勢が小丸に攻めて参りましたっ。その数4000。」

「しかけて来おったか。本丸への攻撃は。」

「今のところございませぬ。攻撃は小丸にのみ集中しております。」

「そうか。小丸に伝令を出せ。何としても小丸を死守せよ。」

「はっ。」

「ふっ。小谷城の守りは鉄壁。4000ごときの兵で落とせるものか。長政、父を二度も裏切りしこと後悔させてくれるっ。」

徳川軍の攻撃が小丸に集中しているとの知らせを受けた久政はすぐに小丸へ増援を派遣。
本丸を死守すれば朝倉軍が援軍として来てくれるという目算があっての布陣でこの篭城戦に当たっていた。

久政からの伝令を受けた兵はすぐにその指示を伝えると自身はその姿を小谷城から消した。
そしてその姿は小谷城の京極丸を攻めるために移動している刹那の元へと現れた。

「殿、ただいま戻りました。」

「首尾はどうなった。」

「はっ、予想通り久政は小丸へ1500の増援を送りました。今頃は本丸から京極丸を通り小丸へと向かっていると思われます。」

「そうか、ご苦労様だったね。長い間小谷への潜伏感謝するよ。龍雲丸。」

「滅相もございません。戦のない世のためにこの身を活かせるならこのようなこと、いつでもお申し付けください。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

神々に育てられた人の子は最強です

Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

異日本戦国転生記

越路遼介
ファンタジー
五十五歳の消防士、冨沢秀雄は火災指令が入り、出場の準備をしていたところ心不全でこの世を去ることに。しかし目覚めてみれば、戦国時代の武蔵の国に少年に若返って転生していた。でも、この戦国時代は何かおかしい。闘気と法力が存在する和風ファンタジーの世界だった。秀雄にはこの世界に心当たりがあった。生前プレイしていた『異日本戦国転生記』というゲームアプリの世界だと。しかもシナリオは史実に沿ったものではなく『戦国武将、夢の共演』で大祝鶴姫と伊達政宗が同じ時代にいる世界。作太郎と名を改めた秀雄は戦国三英傑、第十三代将軍足利義輝とも出会い、可愛い嫁たちと戦国乱世を生きていく! ※ この小説は『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...