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第三章~筆頭家老としての行動 関東編~
関東遠征8
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刹那は混乱している義重に近づき小刀を取り出すと義重を縛る縄を切り落とした。
「これでよしっ。」
この行為にはさすがの義堯も驚いた。
「刹那殿、危のうござるぞっ。義重はまだ降伏を受け入れたわけではないっ。」
「私は有能なものしか雇用しません。有能なものがこの状況で私に危害を加えることはありません。そうでしょ、義重殿?」
「あぁ。私がそのようなことをすれば家臣や兵を無駄死にさせることになる。そうさせるなら降伏などせぬ。」
「ということです。それで、返答は?」
刹那は義重の前に座りそう聞いた。
「一つ聞きたい。私が降伏したら佐竹はどうなる。」
「佐竹が徳川の傘下に入ります。」
刹那は一言そう言った。
義重は次に続くであろう言葉を待っていた。しかし一向にその言葉が出ることはなかった。
痺れを切らした義重が
「その先は。」
そう聞くと刹那は
「ん?以上ですが?」
そう頭を傾げながらそう返した。
「領地の召し上げは、人質は、首はっ。」
「ありませんね。」
「それではまるで戦う前に降伏した里見と同じではないかっ。」
「まぁ、ほぼ変わりませんね。」
「それはおかしかろう。」
「そうでしょうか?私は徳川の家臣として殿に敵対する者には容赦しません。しかし、味方には寛大であるべきだと考えております。義重殿が降伏されるのであればそれはもう徳川の味方だと言うこと。人質や召し上げは必要ないかと。」
「しかし、それでは裏切る者などが出てくるのではないか?」
「義重殿は降伏した後に裏切るおつもりでしたら殿がお許しになろうとも私は許しませんので、次は佐竹を徹底的に滅ぼします。」
義重はそう笑顔で言う刹那に恐怖した。
鬼義重と吟われる猛者が身震いするほどに。
「・・・・・・・こっ。降伏致します。どうか、我らを傘下にお加えいただきとうございます。」
義重はそう言って土下座の姿勢をとった。
「はい。義重殿、よろしくお願いします。」
義重はこれまでどの豪族や徳川に降った大名クラスの者が離反しない理由をこの時初めて理解した。
家康に逆らえないのではない、神威刹那という男に逆らえないのだと。
佐竹義重の降伏により仕置きが終わった刹那を労うために義堯は宴を催した。
そこには佐竹義重をはじめ新たに傘下に加わった佐竹一門や家臣も同席した。
「殿、ゆっくりしていてよろしいので?大殿が北条攻めを行っている最中だと言うのに。」
「大丈夫だよ左近、そのために昌幸とあの部隊を残してきたのだから。今頃は岩付城も落ちたんじゃないかな?」
刹那がそう左近に告げてから数十秒後に丹波の配下が現れ「岩付城落城」の知らせを持ってきた。
「ほらね。」
「ここまで計算しているとはさすがは殿。敵いませぬわ。」
本隊が岩付城を落としたことで宴は更に盛り上がりを増した。
刹那は義重の元に向かうとお酌をしながら話始めた。
「義重殿、これまで通りの領地を治めていただけるように私が殿にお願いしておきますのでご安心を。」
「ありがたき幸せにございます。これより神威殿のために身を粉にしてお仕え致します。」
「私は徳川の家臣ですから、家康様のためでお願いしますね。」
「神威殿のために動けばそれは徳川のためになると思いますが?」
義重はそう言いながら微笑んだ。
それを言われるとなんとも返せない刹那を見て少しやり返してやったと思う義重であった。
鬼義重もただでは転ばないと言うことだ。
「領地を任せるにあたって1つだけやってもらわねばならないことがあります。」
「なんでしょうか。」
「内政に関して、徳川の主導で行ってもらいます。もちろん、我らの技術を伝えますので、それを使って更に豊かにすることを約束しましょう。」
「そのようなこと、むしろ願ってもないことにございます。よろしくお願い致します。」
現代の技術、知識を駆使した徳川の内政レベルは世界一であるため、これを受け入れない理由は義重にはなかった 。
翌日、刹那は兵をまとめ岩付城へと向かい、義重は自領へと戻った。
義堯と義弘は下総にふたたび兵を送り、統治を始めることにした。
城の受け渡しがスムーズに進むように刹那と義重の署名が書いてある書状を持って。
その効果もあり、里見家は抵抗に合うこともなく下総をまとめることが出来た。
太田城に戻った義重は留守をしていた家臣達を説得しそのまま傘下に加えることを内外に伝えた。
時は戻り、刹那が義重討伐に向かった後、家康は岩付城へと軍を進めた。
近くには忠次、そして刹那が残していった真田昌幸を置いて。
「忠次、昌幸、岩付城をどのように攻める。策を申せ。」
「こたびは小田原城のように時をかけて籠城できるほどの備えはないでしょう。兵を無駄に損なわぬように総力戦を行う必要はないかと。」
「そうか。昌幸はどうだ。」
「わっ、私は殿が戻られる前に岩付城は落としておくべきだと思います。」
「それはなぜだ?」
「殿が私を残して行かれたのは岩付を落とせと言うことだと思うのです。そうでなければ私を残す必要はないのではないかと。」
「ふむ。確かに刹那ならあり得るな。」
「わざわざ昌幸殿を残して行かれましたからな。あれほどまでに推薦して。」
「これでよしっ。」
この行為にはさすがの義堯も驚いた。
「刹那殿、危のうござるぞっ。義重はまだ降伏を受け入れたわけではないっ。」
「私は有能なものしか雇用しません。有能なものがこの状況で私に危害を加えることはありません。そうでしょ、義重殿?」
「あぁ。私がそのようなことをすれば家臣や兵を無駄死にさせることになる。そうさせるなら降伏などせぬ。」
「ということです。それで、返答は?」
刹那は義重の前に座りそう聞いた。
「一つ聞きたい。私が降伏したら佐竹はどうなる。」
「佐竹が徳川の傘下に入ります。」
刹那は一言そう言った。
義重は次に続くであろう言葉を待っていた。しかし一向にその言葉が出ることはなかった。
痺れを切らした義重が
「その先は。」
そう聞くと刹那は
「ん?以上ですが?」
そう頭を傾げながらそう返した。
「領地の召し上げは、人質は、首はっ。」
「ありませんね。」
「それではまるで戦う前に降伏した里見と同じではないかっ。」
「まぁ、ほぼ変わりませんね。」
「それはおかしかろう。」
「そうでしょうか?私は徳川の家臣として殿に敵対する者には容赦しません。しかし、味方には寛大であるべきだと考えております。義重殿が降伏されるのであればそれはもう徳川の味方だと言うこと。人質や召し上げは必要ないかと。」
「しかし、それでは裏切る者などが出てくるのではないか?」
「義重殿は降伏した後に裏切るおつもりでしたら殿がお許しになろうとも私は許しませんので、次は佐竹を徹底的に滅ぼします。」
義重はそう笑顔で言う刹那に恐怖した。
鬼義重と吟われる猛者が身震いするほどに。
「・・・・・・・こっ。降伏致します。どうか、我らを傘下にお加えいただきとうございます。」
義重はそう言って土下座の姿勢をとった。
「はい。義重殿、よろしくお願いします。」
義重はこれまでどの豪族や徳川に降った大名クラスの者が離反しない理由をこの時初めて理解した。
家康に逆らえないのではない、神威刹那という男に逆らえないのだと。
佐竹義重の降伏により仕置きが終わった刹那を労うために義堯は宴を催した。
そこには佐竹義重をはじめ新たに傘下に加わった佐竹一門や家臣も同席した。
「殿、ゆっくりしていてよろしいので?大殿が北条攻めを行っている最中だと言うのに。」
「大丈夫だよ左近、そのために昌幸とあの部隊を残してきたのだから。今頃は岩付城も落ちたんじゃないかな?」
刹那がそう左近に告げてから数十秒後に丹波の配下が現れ「岩付城落城」の知らせを持ってきた。
「ほらね。」
「ここまで計算しているとはさすがは殿。敵いませぬわ。」
本隊が岩付城を落としたことで宴は更に盛り上がりを増した。
刹那は義重の元に向かうとお酌をしながら話始めた。
「義重殿、これまで通りの領地を治めていただけるように私が殿にお願いしておきますのでご安心を。」
「ありがたき幸せにございます。これより神威殿のために身を粉にしてお仕え致します。」
「私は徳川の家臣ですから、家康様のためでお願いしますね。」
「神威殿のために動けばそれは徳川のためになると思いますが?」
義重はそう言いながら微笑んだ。
それを言われるとなんとも返せない刹那を見て少しやり返してやったと思う義重であった。
鬼義重もただでは転ばないと言うことだ。
「領地を任せるにあたって1つだけやってもらわねばならないことがあります。」
「なんでしょうか。」
「内政に関して、徳川の主導で行ってもらいます。もちろん、我らの技術を伝えますので、それを使って更に豊かにすることを約束しましょう。」
「そのようなこと、むしろ願ってもないことにございます。よろしくお願い致します。」
現代の技術、知識を駆使した徳川の内政レベルは世界一であるため、これを受け入れない理由は義重にはなかった 。
翌日、刹那は兵をまとめ岩付城へと向かい、義重は自領へと戻った。
義堯と義弘は下総にふたたび兵を送り、統治を始めることにした。
城の受け渡しがスムーズに進むように刹那と義重の署名が書いてある書状を持って。
その効果もあり、里見家は抵抗に合うこともなく下総をまとめることが出来た。
太田城に戻った義重は留守をしていた家臣達を説得しそのまま傘下に加えることを内外に伝えた。
時は戻り、刹那が義重討伐に向かった後、家康は岩付城へと軍を進めた。
近くには忠次、そして刹那が残していった真田昌幸を置いて。
「忠次、昌幸、岩付城をどのように攻める。策を申せ。」
「こたびは小田原城のように時をかけて籠城できるほどの備えはないでしょう。兵を無駄に損なわぬように総力戦を行う必要はないかと。」
「そうか。昌幸はどうだ。」
「わっ、私は殿が戻られる前に岩付城は落としておくべきだと思います。」
「それはなぜだ?」
「殿が私を残して行かれたのは岩付を落とせと言うことだと思うのです。そうでなければ私を残す必要はないのではないかと。」
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