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第三章~筆頭家老としての行動 関東編~
関東遠征4
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降伏勧告を出した翌日、綱成から返書が届き、降伏勧告は拒否された。
「半蔵、城内の様子はどうでしたか。落とせそうな人物は。」
「はっ。綱成の元統制が取れており、城内でのいざこざを起こすことはまず無理かと存じます。」
それを聞いた刹那は心の中で微笑んだ。
「そうですか。引き続き城内の様子を知らせてください。」
刹那はそう言うと玉縄城の方をぼーっと見た。
「この状況で城兵を乱れることなく統率できる能力を持っているとはやはり地黄八幡の名で知られる北条綱成だ。」
「殿、左近殿が海津城付近に現れた上杉軍を追い払いこちらに向かっているとの知らせが参りました。」
「そうか。半蔵、城内にわざと情報を流してほしい。上野を平らげた武田が忍城方面へと軍を進めたと。」
「承知致しました。」
それから数日後、玉縄城は空城となっていた。
もぬけの殻という言葉がピッタリ当てはまるように。
「よし、皆、玉縄城に入るぞっ。」
三崎城の攻略が一足先に終わり援軍として出されていた忠勝はその光景に驚いていた。
「師匠。これはどうゆうことでございますかっ。北条の兵が誰もおりませぬ。」
「それはな、敵が北条綱成だったからだよ。」
刹那の答えに要領を得なかった忠勝は首をかしげた。
「北条綱成は本来北条家の一門に入れる家名ではないんだよ。元は今川家の家臣の福島氏だった。しかし、その武勇や忠義を認められて北条氏綱の娘を嫁にもらい一門になると同時に北条姓をもらっているんだ。」
「それと今回の策になんの関係が。」
「北条綱成は北条家への恩義を強く感じている義に厚い武将だ。その武将がお家の一大事である状況を見逃せると思うか?」
「いえ、思いませぬ。私も殿に何かあれば直ちに向かいます。」
「そう。その綱成が北から武田が岩付や忍城に迫っていると知ったらどうだろうかっ。」
そこまで刹那が説明すると忠勝も気付いたようで納得した表情を浮かべた。
「ここで我らを抑えることも大切ですがそれよりもまず自らが氏康の元に向かうことを優先させたと。」
「そのために撤退した夜だけ包囲に隙を与えた。この日を逃すわけにはいかないと思わせるためにね。」
「さすがは師匠、兵を失うことなく城を取るとは。しかし、これでは北条の兵は減りません。後々厄介なことにならないでしょう?」
「それももちろん計算に入れているよ。」
それから刹那の元には左近達と家康の本隊が集まり全軍で江戸城と国府台城を陥落させ大きな拠点は岩付城と忍城だけとなった。
江戸城で兵に休息を与えていた家康の元に1つの伝令が届いた。
【佐竹義重、下総に現る。】
この知らせを聞いた刹那は急いで丹波を呼び寄せた。
「殿、いかがなされたかな。」
「丹波、至急里見義堯を保護しろ。里見家の家臣達も全てだ。良いなっ。残ろうとした場合は私と殿の名前を出して必ず久留里城へと引かせよ。そして手に入れた領地よりも安房の防衛を優先させよ。」
「承知。」
刹那のこれまでにない焦り様にただ事ではないと悟った丹波は普段のひょうひょうとした雰囲気から一転して配下と共にその場を離れた。
「刹那、どうした。異様な慌てぶり皆驚いておるぞ。説明致せ。」
「はっ。殿は佐竹義重と言う武将をご存知でしょうか。」
「佐竹の当主であったか。」
「はい。私の中では北条氏康よりも気を付けなければならない人物であると考えております。」
「なぜだ。北条に押されている佐竹に何をそこまで焦る必要があるのだ。」
「関東に大きな領地を持つ北条を相手にここ数年領土の拡大をしているのが佐竹でございます。しかも、当主が義重に変わってからのこと。あの者にこれ以上の力を与えては我らとて油断出来なくなりかねません。」
「それほどの者ということか。わかった。神威刹那、自軍を率いて下総に駆けつけ佐竹義重を討伐して参れ。北条は我らで攻略を進めておく。」
「はっ。殿、真田昌幸をこちらに置いて参ります。武田との調整役、また策の立案を任せられます。困った時はお使いくだされ。」
「うむ。では頼むぞ。」
刹那はその場を離れると左近達の待つ陣へと戻った。
「皆、これより我らは兵をまとめ下総へと入る。」
「ついに出てきましたか。佐竹義重。」
「あぁ、皆には小田原攻めの時に話していると思うが、ここが北条攻めが成功するか失敗となるかの境目だ。心して挑むように。そして昌幸、お前にはここに残ってもらい殿の補佐を任せる。私の代わりを務めよ。」
「とっ、殿、お待ちください。私に殿の代わりなど務まりませぬ。」
「昌幸、お前にはいずれ虎千代の代のまとめ役をやってもらうつもりでいる。そのためにもここがお前の成長の起点だ。それに海津城で左近の振る舞いを見たはずだ。優秀なお前なら任せることができる。やってくれるな?」
刹那がそう言うと昌幸は「お任せください。」と一言発した。
「半蔵、城内の様子はどうでしたか。落とせそうな人物は。」
「はっ。綱成の元統制が取れており、城内でのいざこざを起こすことはまず無理かと存じます。」
それを聞いた刹那は心の中で微笑んだ。
「そうですか。引き続き城内の様子を知らせてください。」
刹那はそう言うと玉縄城の方をぼーっと見た。
「この状況で城兵を乱れることなく統率できる能力を持っているとはやはり地黄八幡の名で知られる北条綱成だ。」
「殿、左近殿が海津城付近に現れた上杉軍を追い払いこちらに向かっているとの知らせが参りました。」
「そうか。半蔵、城内にわざと情報を流してほしい。上野を平らげた武田が忍城方面へと軍を進めたと。」
「承知致しました。」
それから数日後、玉縄城は空城となっていた。
もぬけの殻という言葉がピッタリ当てはまるように。
「よし、皆、玉縄城に入るぞっ。」
三崎城の攻略が一足先に終わり援軍として出されていた忠勝はその光景に驚いていた。
「師匠。これはどうゆうことでございますかっ。北条の兵が誰もおりませぬ。」
「それはな、敵が北条綱成だったからだよ。」
刹那の答えに要領を得なかった忠勝は首をかしげた。
「北条綱成は本来北条家の一門に入れる家名ではないんだよ。元は今川家の家臣の福島氏だった。しかし、その武勇や忠義を認められて北条氏綱の娘を嫁にもらい一門になると同時に北条姓をもらっているんだ。」
「それと今回の策になんの関係が。」
「北条綱成は北条家への恩義を強く感じている義に厚い武将だ。その武将がお家の一大事である状況を見逃せると思うか?」
「いえ、思いませぬ。私も殿に何かあれば直ちに向かいます。」
「そう。その綱成が北から武田が岩付や忍城に迫っていると知ったらどうだろうかっ。」
そこまで刹那が説明すると忠勝も気付いたようで納得した表情を浮かべた。
「ここで我らを抑えることも大切ですがそれよりもまず自らが氏康の元に向かうことを優先させたと。」
「そのために撤退した夜だけ包囲に隙を与えた。この日を逃すわけにはいかないと思わせるためにね。」
「さすがは師匠、兵を失うことなく城を取るとは。しかし、これでは北条の兵は減りません。後々厄介なことにならないでしょう?」
「それももちろん計算に入れているよ。」
それから刹那の元には左近達と家康の本隊が集まり全軍で江戸城と国府台城を陥落させ大きな拠点は岩付城と忍城だけとなった。
江戸城で兵に休息を与えていた家康の元に1つの伝令が届いた。
【佐竹義重、下総に現る。】
この知らせを聞いた刹那は急いで丹波を呼び寄せた。
「殿、いかがなされたかな。」
「丹波、至急里見義堯を保護しろ。里見家の家臣達も全てだ。良いなっ。残ろうとした場合は私と殿の名前を出して必ず久留里城へと引かせよ。そして手に入れた領地よりも安房の防衛を優先させよ。」
「承知。」
刹那のこれまでにない焦り様にただ事ではないと悟った丹波は普段のひょうひょうとした雰囲気から一転して配下と共にその場を離れた。
「刹那、どうした。異様な慌てぶり皆驚いておるぞ。説明致せ。」
「はっ。殿は佐竹義重と言う武将をご存知でしょうか。」
「佐竹の当主であったか。」
「はい。私の中では北条氏康よりも気を付けなければならない人物であると考えております。」
「なぜだ。北条に押されている佐竹に何をそこまで焦る必要があるのだ。」
「関東に大きな領地を持つ北条を相手にここ数年領土の拡大をしているのが佐竹でございます。しかも、当主が義重に変わってからのこと。あの者にこれ以上の力を与えては我らとて油断出来なくなりかねません。」
「それほどの者ということか。わかった。神威刹那、自軍を率いて下総に駆けつけ佐竹義重を討伐して参れ。北条は我らで攻略を進めておく。」
「はっ。殿、真田昌幸をこちらに置いて参ります。武田との調整役、また策の立案を任せられます。困った時はお使いくだされ。」
「うむ。では頼むぞ。」
刹那はその場を離れると左近達の待つ陣へと戻った。
「皆、これより我らは兵をまとめ下総へと入る。」
「ついに出てきましたか。佐竹義重。」
「あぁ、皆には小田原攻めの時に話していると思うが、ここが北条攻めが成功するか失敗となるかの境目だ。心して挑むように。そして昌幸、お前にはここに残ってもらい殿の補佐を任せる。私の代わりを務めよ。」
「とっ、殿、お待ちください。私に殿の代わりなど務まりませぬ。」
「昌幸、お前にはいずれ虎千代の代のまとめ役をやってもらうつもりでいる。そのためにもここがお前の成長の起点だ。それに海津城で左近の振る舞いを見たはずだ。優秀なお前なら任せることができる。やってくれるな?」
刹那がそう言うと昌幸は「お任せください。」と一言発した。
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