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第二章~国持ち大名~

焦りと発展4

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刹那は伊勢と志摩を拝領してから仮の本拠地を霧山御所とした。掛川城にいた家臣、妻子を全部霧山御所に呼び寄せた。
また、与力として与えられていた服部半蔵はそのまま直臣にと家康の配慮と半蔵からの願いで神威家に仕えることとなった。
そのほかにも与力を遣わすと家康の申し出があったが、刹那はそれを断った。
疑問に思った家康であったが、「殿のそばを手薄にしては元もこうもない。」と刹那が言うとそれ以上はなにも言わなかった。

「殿、この度は国持ち大名へのご昇進おめでとうございます。」

「「「おめでとうございます。」」」

「皆、ありがとう。これよりは一層皆も忙しくなると思うが共に頑張ろう。」

「殿、我らは殿に付き従うと決めた時からそのような覚悟は出来ておりますぞ。」

それから刹那は領土仕置を行い、鳥羽城を神威水軍の新しい拠点とするべく九鬼嘉隆に与えた。
左近には松ヶ島城を、半蔵には長野城を与え、他国の監視をさせることにした。
長安には城を任せるのではなく、本人希望の茶器を堺から取り寄せそれを褒美としいた。

「仕置も終わったからここからはこれからの統治についてだが、そこは掛川の時と同じように行う。まずは領民の心を掴むことこそが寛容だ。資金は殿から頂いておる。金に糸目をつけずに領民のために行動せよ。」

こうして刹那の伊勢、志摩の統治が始まり、その治世はすぐに領民に受け入れられた。
領民からは「北畠の殿様の時よりも神威様のほうが暮らしが豊かになった。」と刹那を称える声が広がった。
刹那は領民の心を掴むと次に交通の便をよくするために道の拡張や宿場町の作成、領内での関所撤廃を実施した。
当初は家康に許可をもらうための書状を送っていたが、「伊勢と志摩に関しては刹那に任せているからやりたいようにやれ。」と言われたため、その動きはより素早くなった。

刹那は本国との連絡をを強固なものにするために嘉隆に三河、遠江、駿河との間に連絡船を作らせた。そのため、その地域に出ていた海賊の姿は消えていった。

刹那の統治が落ち着いてきた頃、信長はようやく美濃の斎藤家を滅ぼし尾張と美濃を領地とすることに成功した。

「やっと念願であった美濃を手に入れることが出来たが、時間をかけすぎたな。我らが美濃で手一杯になっている間に家康が伊勢を手に入れ地盤を磐石なものにしおったとか。伊勢を統治しているのは誰かわかったのか。」

信長がそう問いかけると側近の堀秀政が答えた。

「はっ、調べましたところ、神威刹那殿が北畠の旧領すべてを与えられ治世を行っているようにございます。」

「神威刹那。あの同盟の時に内容を確認してきたやつか。して統治はどのような具合だ。まだ徳川が北畠を倒してから半年くらいか。まだ揺らぎはあるだろう。」

信長の問いに秀政の顔が曇る。

「それが、領民どもは神威殿のことをいたく支持しているようで反乱などはなかったとのことでございます。伊勢は既に北畠の時よりも豊かで平和であるとか。」

「なんだとっ。それは誠のことか。半年あまりで領民を手なずけただとっ。」

秀政からの予想だにしない返答に信長の顔を歪んだ。

「このままでは我らが美濃の反乱を抑えた頃にはどうなっているか想像もつかん。領地が対等なうちはまだ良い。しかし、あまりにも差がつけば我の上洛が叶わなくなるやもしれん。」

信長は同盟国である徳川が織田よりも大きくなり上洛を果たされるのを防ぐために味方となるものを増やすため、北近江を有している浅井家当主の浅井長政に同盟を申し込むことにした。

長政からの返答を待つ間にも美濃の領民を味方にするためにその年の年貢を免除するなど工夫を凝らすことにした。

美濃の分の年貢が一年徴収出来ないのは大きな痛手であったが、徳川の予想だにしない発展のためにそうせざるおえなかった。

長政から返答には婚姻関係のある同盟であるならば受けると書かれていたため、信長は溺愛している妹のお市の方を長政の妻として小谷城に送ることを決めた。

これにより織田と浅井は同盟関係が結ばれることになった。

「市、すまぬな。」

「いえ、兄上のお役にたてるなら市はこの婚礼も嬉しく思います。どうか兄上は兄上の夢である天下布武を成し遂げて下さいませ。市は浅井長政の妻として兄上の力になってみせます。」
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