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第一章~家臣~
清洲同盟と逆転4
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虎千代を存分に可愛がった家康は虎千代を瀬名とおとわに預け、刹那、忠次、忠勝を連れて改築の状況を把握するために城を回った。
「曳馬城を本拠地とするために城の規模を倍にすることにしました。また、各要所には矢倉を設け、敵の襲来を察知しやすいようにしてあります。また塀の間には小さな鉄砲穴を数多く作り、守りに強い作りにしてあります。そして、外には空堀を作り、深さは10尺(3m)にございます。」
「ほう、刹那殿は築城にも知識が豊富なのですな。」
「さすがは師匠。」
「刹那に任せて正解だったな。」
「お褒めの言葉光栄にございます。改築に関しましては後1ヶ月ほどあれば全て完了し、いつでも殿が入城できるように手筈が整うかと存じます。」
「そうか、では1ヶ月後を目処に本拠地を岡崎からこの曳馬に移すとしよう。」
「殿、ご入城に際して、一つご提案がございます。」
「なんだ?」
「この曳馬城と言う名を変えてはいかがでしょうか。曳馬と言う名は本拠地に使うにはあまりよろしくない名かと思いますが。」
「そうだな。では刹那が改築したこの城の名はかつてこの地にあった荘園から因んで浜松城とする。」
「浜松城。良い名でございますな。これならば、皆、なんの相違もございらんでしょうな。刹那殿、いかがでござろう?」
「はい、良い名と思います。」
こうして、曳馬城は浜松城へと名を変えて、刹那の手によって浜松城は難攻不落の城へと生まれ変わりを果たしたのである。
家康は予定通り、1ヶ月後に浜松城へと入城し、岡崎城は竹千代が元服したら竹千代を城主とすることになり、それまでは石川数正が城代を務めることとなった。
家康が浜松城に入るとすぐに評定を行った。
もちろん刹那は家康の一の側近の立場として出席していた。
「皆、浜松への引っ越しご苦労であった。慣れるまでは不自由をかけるかもしれんが許せ。」
「殿、刹那殿が万事整えてくれておったので、皆岡崎よりも快適だと申しておりますぞ。」
忠次が家臣を代表してそう言うと皆頷く。
「だそうだぞ、刹那。」
「それはようございました。これでやっと不安が解消されました。」
「では、本題に入る。刹那。」
「はっ。遠江の仕置きがすべて終わり、反乱分子はもうおりません。そこで、今川との戦いに終止符を討とうかと思います。」
刹那がそう提案する。
すると今川に苦汁を飲まされ続けてきた家臣達が賛同する。
「して、策は?」
数正が刹那に問いかけた。
「こたびは正攻法で行こうと思います。」
「つまり、力で押し切ると。」
「はい、今回は徳川の兵がどれほどの力の者達なのかを内外に知らしめようと思います。これまでも三河武士は敵に回すと厄介だと思われてはおりますが、それを今回の駿河侵攻で敵に回してはいけない。そう思わせるのです。」
「刹那殿、それが可能なのか?いくら鍛えたとはいえ、まだまだ戦力が少なすぎる。武田や北条が加勢してきたらとても勝目はないぞ。」
「酒井殿の申されることはごもっともでございます。しかし、北条はもちろん、武田も動かないと私は読んでおります。」
「それはなぜだ?」
「武田は上杉と川中島において壮絶な戦いを行い、まだその傷が癒えておりません。そして北条も、今、おおきな戦力を駿河に送るほどの余裕はありません。関東に専念しておかなければいつ里見家や佐竹家が動き出してくるかもわかりませんから。」
「しかしなぁ。」
「皆様の不安を拭うために一つ、策を用いたいのですが、殿、よろしいでしょうか。」
刹那はそう言うと家康のほうを向いた。
「申してみよ。」
「武田が動かぬように、正確には武田が中立を保つよう、武田に不可侵同盟を申込みます。」
「しかし師匠、今川と武田は同盟関係にあります。こちらの同盟を飲むとは思えませぬ。」
「その同盟関係、既に武田に利はもうない状態にあるんだよ。」
「武田に利がないとはどうゆうことだ?」
「義元公がご顕在の間は武田にとっても今川を敵にするのは得策ではありませんでした。しかし、武田は海に面する領土が欲しい。そのわけは塩や海産物による利益にあります。今の今川当主、氏真殿は暗君ゆえ、同盟を続けるよりもむしろ駿河を手中に収めたいと思うほどでしょう。しかし、現実には上杉が背後にいるため、駿河に侵攻できない。そこで、友人である真田幸隆殿に仲介を頼み、こちらから同盟を申し込みます。その中身に同盟がなった暁にはいつでも塩や海産物の交易をほかのところよりも安値で行うとするのです。そうすれば、侵攻は出来ずとも塩や海産物を得ることができるので武田にとっても今川と同盟を続けるよりもこちらと同盟を結んだほうが得策。」
刹那の説明を聞いた家康は頷くと、
「刹那、その同盟、お主に任せる故、成功させてみよ。ほかの者も異存はないな?」
その家康の一声で刹那の策は実行されることになった。
「曳馬城を本拠地とするために城の規模を倍にすることにしました。また、各要所には矢倉を設け、敵の襲来を察知しやすいようにしてあります。また塀の間には小さな鉄砲穴を数多く作り、守りに強い作りにしてあります。そして、外には空堀を作り、深さは10尺(3m)にございます。」
「ほう、刹那殿は築城にも知識が豊富なのですな。」
「さすがは師匠。」
「刹那に任せて正解だったな。」
「お褒めの言葉光栄にございます。改築に関しましては後1ヶ月ほどあれば全て完了し、いつでも殿が入城できるように手筈が整うかと存じます。」
「そうか、では1ヶ月後を目処に本拠地を岡崎からこの曳馬に移すとしよう。」
「殿、ご入城に際して、一つご提案がございます。」
「なんだ?」
「この曳馬城と言う名を変えてはいかがでしょうか。曳馬と言う名は本拠地に使うにはあまりよろしくない名かと思いますが。」
「そうだな。では刹那が改築したこの城の名はかつてこの地にあった荘園から因んで浜松城とする。」
「浜松城。良い名でございますな。これならば、皆、なんの相違もございらんでしょうな。刹那殿、いかがでござろう?」
「はい、良い名と思います。」
こうして、曳馬城は浜松城へと名を変えて、刹那の手によって浜松城は難攻不落の城へと生まれ変わりを果たしたのである。
家康は予定通り、1ヶ月後に浜松城へと入城し、岡崎城は竹千代が元服したら竹千代を城主とすることになり、それまでは石川数正が城代を務めることとなった。
家康が浜松城に入るとすぐに評定を行った。
もちろん刹那は家康の一の側近の立場として出席していた。
「皆、浜松への引っ越しご苦労であった。慣れるまでは不自由をかけるかもしれんが許せ。」
「殿、刹那殿が万事整えてくれておったので、皆岡崎よりも快適だと申しておりますぞ。」
忠次が家臣を代表してそう言うと皆頷く。
「だそうだぞ、刹那。」
「それはようございました。これでやっと不安が解消されました。」
「では、本題に入る。刹那。」
「はっ。遠江の仕置きがすべて終わり、反乱分子はもうおりません。そこで、今川との戦いに終止符を討とうかと思います。」
刹那がそう提案する。
すると今川に苦汁を飲まされ続けてきた家臣達が賛同する。
「して、策は?」
数正が刹那に問いかけた。
「こたびは正攻法で行こうと思います。」
「つまり、力で押し切ると。」
「はい、今回は徳川の兵がどれほどの力の者達なのかを内外に知らしめようと思います。これまでも三河武士は敵に回すと厄介だと思われてはおりますが、それを今回の駿河侵攻で敵に回してはいけない。そう思わせるのです。」
「刹那殿、それが可能なのか?いくら鍛えたとはいえ、まだまだ戦力が少なすぎる。武田や北条が加勢してきたらとても勝目はないぞ。」
「酒井殿の申されることはごもっともでございます。しかし、北条はもちろん、武田も動かないと私は読んでおります。」
「それはなぜだ?」
「武田は上杉と川中島において壮絶な戦いを行い、まだその傷が癒えておりません。そして北条も、今、おおきな戦力を駿河に送るほどの余裕はありません。関東に専念しておかなければいつ里見家や佐竹家が動き出してくるかもわかりませんから。」
「しかしなぁ。」
「皆様の不安を拭うために一つ、策を用いたいのですが、殿、よろしいでしょうか。」
刹那はそう言うと家康のほうを向いた。
「申してみよ。」
「武田が動かぬように、正確には武田が中立を保つよう、武田に不可侵同盟を申込みます。」
「しかし師匠、今川と武田は同盟関係にあります。こちらの同盟を飲むとは思えませぬ。」
「その同盟関係、既に武田に利はもうない状態にあるんだよ。」
「武田に利がないとはどうゆうことだ?」
「義元公がご顕在の間は武田にとっても今川を敵にするのは得策ではありませんでした。しかし、武田は海に面する領土が欲しい。そのわけは塩や海産物による利益にあります。今の今川当主、氏真殿は暗君ゆえ、同盟を続けるよりもむしろ駿河を手中に収めたいと思うほどでしょう。しかし、現実には上杉が背後にいるため、駿河に侵攻できない。そこで、友人である真田幸隆殿に仲介を頼み、こちらから同盟を申し込みます。その中身に同盟がなった暁にはいつでも塩や海産物の交易をほかのところよりも安値で行うとするのです。そうすれば、侵攻は出来ずとも塩や海産物を得ることができるので武田にとっても今川と同盟を続けるよりもこちらと同盟を結んだほうが得策。」
刹那の説明を聞いた家康は頷くと、
「刹那、その同盟、お主に任せる故、成功させてみよ。ほかの者も異存はないな?」
その家康の一声で刹那の策は実行されることになった。
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