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Epiphone2 学園祭編

Epiphone2 学園祭 (第八幕 異形のモノ)

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2人を連れて旧校舎に入ると、何人かの部員が控え室の外に出ているのが見えてきた。
窓から中を覗いている人、何か相談するように話している人が、いるのが分かる。
自分が帰ってきた事に気づいてない先輩達に「先輩ーぃ!」と言って手を上げて注意をひいて、帰ってきた事を知らせた。

その声を聞いた先輩達が自分達を見つけると「オーォ」と言う感じで手を上げて「幽子さん見つかった?」と聞いてきた。
そんな先輩の言葉に「見つかった」と言う合図を送って幽子と星野さんを連れて、先輩達のところに足早に近づいていった。

「みんな何で外にいるんですか?」とさっそく先輩達に質問をすると、先輩達は「中を見てみろ。」と言うように視線を控え室の窓の方に向けてきた。
自分はそれに促されるように控え室の中を覗いて見る。

控え室の中では、部屋の中央付近で木村さんがボーと立っており、そして1人の先輩が入り口付近で木村さんの様子を伺っている。
さらに、控え室の中はかなり物が散乱していて、直ぐにただならぬ事が起きたのか分かる有り様である。

その様子を見た自分は再度「いったい何が起きたんですか?」と外にいる先輩達に訪ねた。
先輩達の話では、あまりに具合が悪そうに机で突っ伏していた木村さんを見かねて、保健室に連れて行こうと両脇を抱えた途端、急に木村さんが奇声を上げて暴れ出したとの事だ。

その際に木村さんは「出せ!出せ!」とか「喰わせろ!」とか奇声に混ざって叫んでいたそうで、今は何とか落ち着いているみたいなのだが、危険なので1人だけ残して全員外に避難したとの事だ。

そんな話を聞かされた自分はもう一度中を覗いて木村さんをジッと観察してみる。
木村さんは怪談会に備えて仮装をしているのだが、その仮装と言うのが木村さんが話す予定だったこの旧校舎にまつわる幽霊の姿で、背広に白衣を着た一見、医者か研究員のような服装で、顔は青白く塗っていて唇の辺りに血のりをつけている。
いかにも幽霊って感じのコスプレなのだが、ただ1ヵ所おかしなところがある。

それは……、目である。

少し離れたところからでも分かるくらいに、目がつり上がっていて、普段の穏やかな木村さんの目とは明らかに違う。

さらに怖いのは白い部分がまるでなく、赤黒くなっていて、黒目はと言うと、腫れ上がっているかの様に赤くなっていて鈍く光っているようにも見える。
まるで悪魔の目とはこう言う物だと言わんばかりのゾクッとする瞳をしていた。

なんだあれ……?

と、あまりの恐怖に動きが止まって、生唾を飲み込んでいる自分の横から幽子が控え室の様子を伺ってきた。
「はーぁ!」と一言ため息をついた幽子は「行くかぁ……。」と諦めの一言を呟いた。
その呟きを聞いた自分は「じゃあ幽子、あとは頼むよ。」と言って後ろに下がろうとした瞬間、幽子は自分の手をものすごい力で掴んできた。

「しんいちーぃ!もしかして私を1人で中に行かせるつもりではないよなぁ?
ま、さ、か、か弱い女性をこんな危険な場所に1人で行かせるなんてしないよなぁ?
男として友人としてそれはどうかなあ~と思うぞ~ぉ。」と、幽子は回りにいる部員達に聞こえるように言って、そして言い終わった瞬間、幽子の唇がニヤリとほそく笑むのが見えた。

み、道連れにするつもりだ……。

「いや!遠慮するよ……。」と言う言葉が喉まで出掛かった時に自分は、回りにいる部員の刺すような視線に気が付いた。
明らかに逃げようとしている自分に対して疑惑の視線を向けている。
それと同時に、「しんいち逃げないよねぇ?」、「えっ!幽子さん1人で行かせるつもりなの最低……。」と言う様々な心の声が聞こえてくる。

万が一ここで逃げようものなら、この噂はアッと言う間に拡がって、明日からの自分の学園生活は卑怯者、臆病者と言うレッテルを付けられて最悪な日々へと変わっていくだろう。

「あの放送の仕返しかぁ……。」

と、自分は心の中で唇を噛んだのだが、そんな感情は表には出さずにニッコリと笑顔を作り、「幽子、何を言っているんだい?
俺がそんな事をする訳ないだろう。
だって俺達友達じゃないかーぁ!」とみんなに聞こえるように爽やかに答えてやった。
そんな言葉を聞いたミス研の先輩達は「流石はしんいちだな!」と言う称賛の眼差しへと変わっていくのだが、星野さんだけはクスクスと笑っていた。

そんな自分の事を「フン!」と鼻で笑った幽子が自分を控え室に引きずって行きドアを開けて入ろとした途端、いきなり開けたドアを閉めた。

自分が「えっ!どうした?」と幽子に聞くと、幽子はビックリした顔をして「なんだ!この部屋の臭いは、何が起こっている?」と聞いてきた。
そんな幽子に「さっきから言ってるじゃん、何を聞いてたのさぁ?」と呆れ顔で答える。
幽子は、一瞬ムッとした表情に変わったが直ぐにニッコリ笑い、「ここは男性の君に先頭を譲ろう。」と言って自分を盾にするように後ろに下がった。

自分は心の中で「チッ!」舌打ちをしたのだが、部員達の視線を気にした自分は「分かった!自分が先に行くよ。」と言って控え室のドアをゆっくり開け、木村さんを刺激しないように幽子を連れてソッと中に入って行った。

自分は、控え室中で木村さんの様子を伺っていた先輩に「お疲れさまです。」と小声でちょっと場違いな挨拶をしてしまった。
ただ、自分達の事を見た先輩は、安心した感じで「オーォ!しんいちと幽子さんかぁ」と答えてきた。

冷気が漂って寒いくらいの部屋にいたのにも関わらず、先輩の額には汗が滲んでいてかなりの緊張状態だった事が分かった。
そんな先輩の様子を見て、「あとは自分達が代わります。」と言って先輩を部屋の外に出して上げる。

そして控え室の中は自分と幽子、木村さんだけとなった。

ここからは本当に幽子に任せるしかない。
自分達は、木村さんを刺激しないように出来るだけ入り口近くで遠巻きに木村さんの様子を伺っている。
そして幽子に「これからどうする?」と小声で聞いた。

その質問に幽子は、「そうだな、取りあえずここで霊視をして何が憑いてるのか確認してみないとどうしようもないな。」と答え、静かに深呼吸を数回している。

いつもの自分なら「早く茶々と見てよ。」と言うところだが、霊感が無い自分でもこれだけ感じるヤツだ、とんでもないヤツがいる可能性がある。
おそらく幽子もそれが分かってて、見るのを躊躇しているのだろう。
ここは焦らずに幽子のタイミングを待つしかない。
そして幽子が「いくぞ!」と一言呟いて、目をつぶっりもう一度深く深呼吸をした。

たぶんこの瞬間に霊感のスイッチを入れたのであろう。
そして目を開けた幽子の動きがピタッと止まっる。

「んっ、どうした?」と言う感じで横にいる幽子の様子を横目で見ていた瞬間、いきなり幽子が入り口のドアノブに手をかけて逃げようとしたのだ。
「ちょ!ちょっと待って。」と言って幽子を止めたのだが幽子の様子がおかしい。
小刻みに首を降って「無理!無理!無理!」と、言葉にならない声で呟いている。

「これはヤバい……。」

と感じた自分は、明らかに怯えて、顔色が変わっている幽子の手を引いて一旦控え室から逃げだした。

急に外に出てきた自分達を見て「どうした?」と言う感じで部員達は見ているが、それよりも幽子の方が心配になり「大丈夫?」、「何が見えたの?」と聞くが、幽子は若干取り乱した様子で「ゼっッッタイあんなの無理!」、「私、帰る!」と言ってきている。
そんな状態の幽子を心配した星野さんも手伝ってくれて、一旦幽子を落ち着かせ、再度「何が見えたの?」と自分は幽子に聞いた。

その質問に幽子は一言「分からない……」と答えた。

その答えに「何、分からないって?」とさらに質問を幽子にぶつけてみると幽子は、「分からないよ……、何だあれは?
蜘蛛やムカデや蛇とかの気持ちの悪い生き物や、犬や猫、さらには人間までごちゃごちゃに混ざりあったモノがあの男の後ろに見えるんだよ。
悪霊でも、幽霊でもないあんなもの不気味なモノ祓える訳ないじゃないかぁ!」と言ってきた。

吐き気がする……。

「何なんだここは?何でそんなモノがこの場所に住み憑いているんだよ?」と考えている最中にも幽子はこの場から逃げようとしているが、自分が何とか取り押さえている。

ただ、幽子の気持ちも分からなくはない、逆の立場なら走って逃げているところだ。
でも、この状態を何とか出来るのは、幽子しかいないのだが……。
さらに悪いことに、幽子の言葉を聞いた部員達も顔色が変わっていて、いつ逃げ出してもおかしくない状態に陥っているのが分かる。
まさに絵に描いたような八方塞がりの状態だ。

これは早く何か良いアイディアを探さないと、と考えていたとき、1人の女性の顔が目に浮かんだ。
そして……、

月静つきしずおばちゃんなら何とかならない?」


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