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Epiphone3 不幸が棲まう家編

Epiphone3 不幸が棲まう家 (一軒目 待ち合わせ)

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自分には少し変わった友人がいる。
名前は幽子、もちろんあだ名だ。
彼女にはいくつかの特殊な能力があり、その中でも特に目を引くのが霊感というものだ。
幽子と一緒にいると、日常の中に潜む不思議な体験を次々と味わうことができる。

しかし、自分たちが一緒にいる時間が長くなると、周囲から「しんいちと幽子さんは付き合っているの?」とよく聞かれることが多い。
だが、自分と幽子は決してそんな関係ではない。実は、幽子には心を寄せる男性がいるのだ。
今回は、幽子とその男性との出会いのエピソードを語りたいと思う。

話は、学園祭が終わったある日の休日。
今、自分は星野さんと一緒にお茶をしている。
周囲から見れば、まるでデートのように映るが、星野さんには彼氏がいて、この状況もけしてデートではなかった。
今は、幽子を待っているところだ。


数日前、星野さんから「小林さんの誕生日プレゼントを買うのに付き合ってほしい」と頼まれた。彼女は、小林さんの体型が自分に似ていると言い、男性へのプレゼントを選ぶのは初めてだと不安を漏らしていた。
もちろん、可愛い女の子の頼みを断る理由はない。
自分は「OK!」と快く承諾した。

その話を聞いていた幽子は、「星野さんを君みたいなヤツと二人っきりにするわけにはいかない」と言い放ち、幽子も一緒に行くと言い出したのだ。

少しトゲのある言い方に気を取られたが、考えてみれば、彼氏がいる女の子と二人で出かけるのは周囲から誤解を招く可能性がある。
そう思い、幽子がついてくることを了承した。星野さんもその提案に喜んでいた。

そして今から1時間前に程遡る。

自分は幽子を誘って星野さんとの待ち合わせ場所に向かうため、幽子の家の前に立っていた。
呼び鈴を鳴らし、「お邪魔しま~す」と声をかけて玄関に入ると、月静おばちゃんが顔を覗かせた。

「あら!しんいち君、今日はどうしたの?」と、優しい声で尋ねてくる。
自分は、今日は三人で出かけることになっていて、幽子を迎えに来たことを伝えた。
すると、月静さんは驚いた様子で「えっ!そうなの?あの子、まだ寝てるんじゃないのかなぁ。」

その言葉に驚き、自分は思わず「おばちゃん、上がるね!」と叫び、階段を駆け上がった。
幽子の部屋の前にたどり着くと、ドアを叩きながら「幽子、起きてる?」と声をかけた。しかし、反応はない。

さらにドアを叩き、「お~い!幽子ーぉ」と叫ぶと、部屋の中から「バタバタ」と激しい音が聞こえた。
驚いた表情の幽子が、パジャマ姿でドアを開けた。
髪の毛はバサバサで、所々寝癖がピンピンに跳ねている。
まさに「寝起きです」と言わんばかりの姿だった。

「しんいち、今何時だ?」と慌てた様子で尋ねる彼女を見て、待ち合わせの時間には到底間に合わないことが一目で分かった。
今の時間を告げると、幽子は「ゴメン、寝坊した。直ぐに仕度して行くから、しんいちは先に行って星野さんに謝っておいてくれ」と言い、急いで仕度を始めた。
しかし、彼女の混乱した様子を見て、「これは時間がかかるな……」と思った自分は、1人で星野さんの待ち合わせ場所に向かうことにした。

待ち合わせ場所に着くと、星野さんが待っていて、「あれ幽子ちゃんは?」と聞いてくる彼女に、先ほどの幽子の慌てた様子を話し幽子が遅れる事を告げた。

そして今……。

自分と星野さんは、幽子が来るのを近くのファーストフード店で待っていた。
店内は賑やかで、フライドポテトの香ばしい匂いが漂っている。
星野さんと二人きりでお喋りするのはおそらく初めてのことだ。

以前、小林さんの件で電話で話したことはあったが、その時は要件を伝えるための堅苦しい会話だったので、幽子がいない二人っきりで話すこの状況はとても新鮮に感じられた。

星野さんはとても明るく、彼女の太陽のような笑顔が周囲を照らしている。
彼女の話し方は軽やかで、まるで春の風のように心地よかった。
会話が弾むにつれて、彼女の魅力に引き込まれていく。
そんな彼女が、独占欲が強くて彼氏に生き霊を飛ばしてしまったという過去の出来事は、今ではすっかり忘れてしまっていた。

「幽子、寝坊してくれてありがとう、もう来なくて良いかな!」なんて不穏な考えが頭をよぎったその瞬間、星野さんが口を開いた。

「幽子ちゃんが寝坊するなんて珍しいね?」彼女の言葉は、まるで自分の心の中を見透かすようで「いかん!いかん!」と冷静に戻る。

幽子の名誉のために言っておくが、彼女が寝坊するなんて本当に珍しい。
彼女はどちらかと言えば、時間に厳しく、待ち合わせには必ず10分前には到着するタイプだ。
そんな星野さんの言葉に同意するように頷きながら、「本当だね、ずっと幽子と一緒にいるけど、遅刻したことなんて無かったよなぁ?」と考えていた。

そんな時、星野さんが不意打ちのように尋ねてきた。「ねぇねぇ!しんいち君、しんいち君って幽子ちゃんのことどう思ってるの?好きなの?」

その言葉に、思わず目を見開いてしまった。
驚きと意外な質問に困惑する中、星野さんは続けた。「だって、いつもしんいち君と幽子ちゃん一緒にいるでしょ?幽子ちゃん綺麗だし、二人を見てるととても楽しそうだから、最初見た時は付き合っているのかと思ってたよぉ。」

その言葉に、自分は思わず苦笑いを浮かべた。「違う!違う!」と反射的に声を上げる。
星野さんの目が疑惑に満ち、「えっ!違うの?」と問い返してくる。

「本当に違うんだよ、良く言われるんだけどね」と、自分は「またかぁ」と少しうんざりした気持ちで否定をした。

星野さんが言った「幽子と付き合っている」という言葉は、まるで耳障りなメロディのように、何度も何度も繰り返されてきた。
ミス研究のメンバーからも、そして小学生の頃には友人たちからからかわれることもあった。
まるで、幽子との関係が周囲の人々にとっての一種の娯楽であるかのように。

確かに、幽子は美人だ。
幽子は星野さんとはまたタイプが違う美少女で、彼女の黒髪はまるで夜空のように深く、長く流れるその髪は、アニメの主人公が持つような美しさを秘めている。
凛とした表情は、彼女の内に秘めた強さを感じさせ、何とも言えないミステリアスな雰囲気が周囲を魅了する。
もちろん普通にしていればだが…。

しかし、そんな彼女に対して、恋愛感情を抱いたことは一度もなかった。

小学生の頃からの友人としての絆は、まるで兄妹の関係に似ているだろう。
道場で共に汗を流し、時には彼女の家に泊まり、自分の親が幽子をキャンプに誘って行った際は一緒に寝ることもあった。
そんな幽子と過ごした時間は、恋愛とは異なる特別な感情を育んでいたと思う。
そして今の自分たちの関係は、まるでホームズとワトソンのように、不可思議な事件を共に解決するパートナーや相棒的な関係に似ていると感じている。

そんな思いを星野さんに説明していると、ふと幽子に対して恋愛感情が湧かない理由が明確に浮かび上がった。

「実は…、自分は好きな人がいるし、幽子にも好きな人がいるんだよ」

その言葉が空気を震わせた瞬間、星野さんの目が大きく見開かれ、「えーーぇ!」という彼女の声は、まるで周囲の険相を破るように響き渡った。

星野さんは慌てて手で口を塞ぎ、周囲の視線を気にしている。
彼女の動作は、まるで自分の驚きの悲鳴が思わぬ波紋を呼んでしまったことを理解したかのようだった。
周囲の目線が少し落ち着いた頃、星野さんは目を輝かせながら、「えっ!誰それ?始めて聞いたよ」と興味津々で尋ねてきた。

「あっ!やべっ……」

と、思わず口を滑らせてしまった自分に焦りが募った。
幽子から口止めされていたことを、否定する勢いでつい話してしまったのだ。

「あーぁ、いや~ぁ…、幽子に口止めされててぇ……」

と、言い訳をしようとするが、星野さんは「えーーぇ!教えてーぇ」と、ますます圧を強めてくる。
彼女のその可愛らしいお願いに、心が揺れ動く。何とか星野さんの圧をかわす方法を探しながら、自分は幽子が想いを寄せている人物の顔を思い浮かべていた。

その人物のことは自分もよく知っているし、幽子とその人物との出会いのエピソードも頭に浮かぶ。

なかなか上手い言い訳が思いつかなくて、しどろもどろしている自分に。星野さんはさらに迫ってきて、「本当にお願い!幽子ちゃんには内緒にするから」と、可愛く手を合わせて頼んできた。

「か、かわいい……」

心の中で呟く。
こんな可愛い彼女に頼まれたら、どんな尋問よりも効果がある。
自分は思わず、「本当に内緒にしてよ、幽子怒るから」と言ってしまった。もう自白寸前だ。

そして……。

「一応幽子は、彼との関係は否定してるんだけど……」と、幽子とその人物とのエピソードを星野さんに話し始めてしまった。
言葉が次々と口からこぼれ出る。星野さんの目は、期待に満ちて輝いている。
自分は数年前に起こった奇怪な事件と、その事件で出会った幽子とその人物のエピソードを星野さんに語り始めた。

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