幽子さんの謎解きレポート～しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー～

Epiphone1 黒い影の生き霊編

Epiphone1 黒い影の生き霊8 (その後…)

「ところで、幽子にもう一つだけ質問があるんだけど……」と、最後の疑問を口にした。自分の心の中で渦巻く思いを、ついに言葉にする時が来たのだ。

幽子は驚いたように目を大きく見開き、「まだ何かあるのか～ぁ？」と、少し困惑した様子で問い返してきた。
その反応に、少しだけ心が躍る。彼女の意外な反応を楽しみながら、思い切って言葉を続けた。

「結果的に、幽子は何にもしてないよね？」と、真剣な眼差しで彼女を見つめた。
すると、幽子は驚愕の表情を浮かべ、

「はぁ！！君は何を言っているんだ！」

と、まるで自分が攻撃されたかのように詰め寄ってきた。
その瞬間、彼女の反応が面白くてたまらなかった。自分の心の中で、勝ち誇ったような気持ちが芽生える。

「だって、お祓いもしてないし、お守りも幽子のおばあちゃんが作ってくれたんでしょ？何もしてないじゃん。それで報酬を貰うのはどうかなぁと俺は思うんだけど」と、言葉を続けた。

幽子の顔は一瞬、驚きと困惑が交錯し、次第に怒りに変わっていく。
彼女の目が鋭くなり、まるで自分を責め立てるような視線を向けてくる。

だが、自分の心の中では、彼女の反応がますます興味を引き、言葉を続ける勇気を与えてくれた。果たして、幽子はこの問いにどう応えるのだろうか、とても気になる。

幽子はその攻撃に切れぎみに反応し、「君は馬鹿なのか？何を見ていたんだ！」と声を荒げた。
彼女の目は怒りに満ち、まるで火花が散るようだった。

「私も大変だったんだぞ！星野さんを霊視して、いろいろ準備したり、今日だって小林さんの話を聞いてあげたり、まるで女優のようにお祓いの演技をして……本当に大変だったんだから！結果的に解決したではないか！」と、焦りと怒りが交錯した表情で巻き立ててくる。

その様子を見て、自分は思わず笑いながら、「ウソ！ウソ！良くやった！良くやった！」と諌めた。

しかし、一度点いた幽子の怒りの炎は、まるで消えない焰のように燃え広がっていく。「そもそも君はなぁ……」と、彼女の言葉はさらに激しさを増し、まるで嵐のように自分を包み込んだ。

「まぁ！まぁ！」と、自分は幽子の怒りの炎に水をかけるように、必死に鎮めようと試みた。
しかし、その努力は焼け石に水で、幽子の怒りはますます勢いを増していく。
彼女の言葉は止まらず、まるで止めどなく流れ出るマグマのようだった。

結局、幽子の怒りが鎮火したのは、帰路の途中にあった鯛焼きを彼女に食べさせるまで続いた。
甘い香りが漂う鯛焼きを前に、幽子の表情は少しずつ和らいでいく。
彼女が一口頬張ると、怒りの炎は徐々に消え、代わりにほのかな笑みが浮かんだ。
自分はその瞬間、彼女の心が少しでも穏やかになったことを感じ、安堵の息をついた。

これが高校に入ってから起こった最初の事件である。

あの日の出来事は、まるで夢の中のように鮮明に思い出される。小林さんと星野さんのその後について語ると、特に小林さんの変化は目を見張るものがあった。

彼は、あの黒い人影が見えなくなったと語った。以前は夜になると、まるで影のように彼の周りをうろついていたその存在が、今ではすっかり姿を消してしまったのだ。

金縛りも少しずつ減ってきているという。
彼は、最初はお守りを渡されたとき、ただの気休め程度にしか思っていなかった。
しかし、幽子に会った後からというもの、彼の周囲で起こる不思議な現象が次々と変わっていった。

「お守りのおかげかもしれない」と小林さんは言った。彼の声には、少しの驚きとともに、確かな信頼が宿っていた。
人影が見えなくなり、金縛りの頻度がみるみる減っていく様子を実感する中で、彼はそのお守りを大切にするようになっそうだ。
部活やお風呂に入っているとき以外は、肌身離さず持っているという事だ。

小林さんの手のひらには、いつもそのお守りが握られている。彼はそれを見つめるたびに、心の奥底にあった不安が少しずつ和らいでいくのを感じていた。

まるで、あの小さな守りが彼を守ってくれているかのように。彼の表情には、以前のような怯えはなく、むしろ自信に満ちた輝きが宿っていた。

そして、星野さんの方だが、今、まさに自分の目の前にいる。

彼女は、幽子と楽しそうに話し込んでいるのだ。小林さんのお祓いの後から、星野さんはちょくちょく幽子のところにおしゃべりをしに来るようになった。
まるで、彼女たちの間に新たな友情の絆が芽生えたかのようだった。

星野さんは、実はおとなしいわけではなかった。単に人見知りなだけだったのだ。

今では、すっかり慣れてしまったのか、幽子と軽快な女子トークを繰り広げている。
幽子の方も、まんざらでもない様子で、星野さんと楽しそうに会話を交わしている。人間嫌いな幽子を知っている自分にとっては、なんとも珍しい光景だった。

小林さんの件があったばかりの自分は、少し心配になり、幽子に「星野さん、大丈夫なの？」とか「怖くないの？」と尋ねたことがある。

その時、幽子は少し眉をひそめて言った。「しんいち、変なことを言うのはやめたまえ。高校に入って初めてできた友人なんだぞ。それに、彼女から報酬ももらったんだから、ちゃんとケアしてあげないとな」と、まるで自分を叱るかのように言った。

変わった者同士、何かが通じ合うのだろうか。星野さんと幽子の間には、特別な理解が生まれているように見えた。

さらにその時、幽子は真剣な表情で言った。「それから、しんいちに言っておくが、小林さんの時の話は決して星野さんに言ってはダメだぞ。彼女が傷つくからな！」と、念押しされて口止めされた。
もちろん、星野さんにも小林さんにも、そのことを言うつもりはなかった。流石にそれくらいの空気は読めるつもりだ。

最後に、幽子は少し不気味な笑みを浮かべながら言ってきた。

「そうそう、しんいち。もちろん分かっていると思うが、星野さんは独占欲や嫉妬深い人だからな。君がまた私に変な頼み事をしてきて、私を長く拘束すると、独占欲の強い彼女のことだ、今度は私のところに彼女の生き霊が飛んで来る可能性がある。
でも幸い、私はその生き霊を君のところに飛ばす能力がある。今後、私に変な頼み事をする時は気をつけたまえ！」と、恐ろしいことを吐き捨てた。

「それだけはマジでやめて」と、思わず幽子に懇願した。彼女の言葉には、冗談のような響きがあったが、どこか本気のようにも感じられた。

これは、幽子が高校生になって初めてできた友人の話である。星野さんとの関係が、どのように進展していくのか、少し不安でありながらも、興味深く思っていた。