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Epiphone1 黒い影の生き霊編

Epiphone1 黒い影の生き霊4 (お祓い)

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質問が続いていくなか、幽子が一呼吸おいて言った。
「では、最後の質問というか、少しテストをしたいのだが、大丈夫だろうか?」

その言葉に、幽子以外の全員が驚きの表情を浮かべた。「えっ!テスト?」と心の中で思ったのだ。小林さんは、困惑した様子で「あぁ……、はい……。」と、何かを理解できないまま返事をした。

「ありがとう。」と微笑む幽子は、バッグの中をごそごそと探り始めた。しばらくして、彼女は封筒を取り出し、その中から一枚の写真を見せてきた。


一見すると、それは家族で撮った集合写真のように見えた。
しかし、自分の心の中には、何か不気味なものが潜んでいるような気がした。
全員がその写真をじっと見つめる中、幽子は突然、衝撃的な一言を放った。
「気づいた者もいるかもしれないが、これは祖母から借りてきた心霊写真だ。」

その瞬間、教室の空気が一変した。「えっ!」と、幽子以外の全員が驚き、思わずたじろいだ。

その反応を見て、幽子は慌てた様子で「あっ、言い忘れた……」と口を開いた。
「もちろんお祓いはしてあるから、触っても、見ても大丈夫だから安心したまえ。」

彼女のフォローに少し緊張が和らぎ、幽子は続けた。

「これは一種の霊感テストみたいなものだ。この写真には、実は何体も幽霊が写っているのだが、小林さんには何体見えるのか答えて欲しい。もちろん、しんいちや星野さんにも見てもらって、答えて欲しい。ただし、答えは後の人に先入観を植え付けたくないので、その場では答えないでもらいたい。」

その言葉を受け、まずは小林さんが写真をじっと見つめた。
彼の視線が真剣になるのを見て、他のメンバーも息を呑んだ。

次に、自分がその写真を手に取り、じっくりと観察を始めた。最初は一目で分かる部分に目が行ったが、さらに注意深く見ると、もう一ヶ所はっきりと写っている箇所があった。
「ここと……、ここもそうかなぁ?」と心の中でつぶやきながら、さらに探し続けた。自分的には、合計で四ヶ所は見つけたように思えた。

次に、星野さんに写真を渡した。星野さんもまた、自分と同様にじっくりと観察を続けた。しばらくの沈黙の後、彼女は「決まりました。」と静かに答え、写真を幽子に返した。
その瞬間、自分達の周りには言い知れない緊張感が漂っている。

幽子は微笑みながら言った。「じゃあ、結果を教えて欲しいのだが、そうだな……、先ずはしんいちから聞かせてもらおう。」

自分は少し考え込み、「そうだなぁ……、先ずはこのハッキリ写ってるここと、ここでしょ。あと、ちょっとハッキリしないけどこれと、多分これもそうだと思う。だから自分は一応、4体くらいだと思う。」と答えた。

その答えに対して、幽子は少しにやりと笑いながら、「まぁ!しんいちの能力ではそんなもんだな。」と、まるで軽い冗談のように地味に攻撃してくる。
彼女の言葉には、どこか挑戦的な響きがあった。

自分はその言葉に少しムッとしながらも、満面の笑顔を浮かべて心の中で彼女の頭にきつい突っ込みを入れ、反撃の機会をうかがった。

「次に星野さんの結果を教えてくれたまえ。」と幽子が言うと、星野さんは「私ですか……」と少し戸惑いながらも、自分よりも1体多い5体と答えた。

「ほう!しんいちよりも優秀だ。なぁ?」と、星野さんを見て言ってくる。幽子の追撃に、さらに笑顔で応えつつ、心の中で彼女の頬っぺたを思い切り引っ張って平常心を保った。

「さて、小林さん。小林さんは何体見えたのかなぁ?結果を教えてくれ。」と幽子が小林さんに向かって尋ねた。

小林さんは「自分は2人よりも多い7体見えました。」と自信を持って答える。
自分は驚き、「7体もですか?」と声を上げ、幽子の前に置かれた写真をもう一度取り、小林さんに詳しい場所を聞いた。

小林さんは指を指しながら、「ここと、こことぉ、あとここもそうだと思うですよねぇ?」と説明を始めた。
彼女が指し示した場所は、3人とも共通しているハッキリと写っている2体で、他の2体は自分か星野さんのどちらかが指し示した場所だった。
そして、残りの3体はギリギリ見えるか、正直分からないくらいのものまであった。

その結果を聞いた幽子は「ありがとう。だいたい分かったよ」と小林さんに告げた。
そして、「君は霊感と言うか感受性が強い人なんだなぁ!」と呟いたあと、「ではさっそくお祓いを始めよう。手のひらを上に向けて両手を出してくれたまえ。」と小林さんに促した。

小林さんは幽子の指示に従い、手のひらを上に向けて両手を差し出した。
「こうですか?」と、少し不安そうに確認をとる。幽子はその様子を見て、にっこりと微笑みながら「大丈夫だ!」と力強く言った。
彼女は小林さんの手の上に自分の手を軽くのせ、まるで温もりを分け与えるかのように優しく触れた。

「では始める、緊張しないで楽にしててかまわない。しばらくそのままでいてくれたまえ。」幽子はそう告げると、目をつぶった。彼女の表情は真剣そのもので、まるで別の世界に意識を集中させているかのようだった。

幽子がお祓いをする時は、いつもこのような儀式的な事をする。
彼女の動作は、まるで古の伝承を受け継ぐ巫女のように神聖で、周囲の空気を一変させた。

以前、彼女にその意味を尋ねた時、幽子は静かに微笑みながらこう答えた。
「手を合わせることで、お祓いを受ける者との絆を深め、憑いているものとの接触を容易にするのだ」と。その言葉には、神秘的な響きがあり、まるで彼女自身がその力を体現しているかのようだった。

彼女は続けて、必要であれば手から霊力を送り込むことができると言った。その力は、まるで目に見えないエネルギーの流れのように、彼女の手から相手へと伝わる。強制的に憑いているものを排除することもできるのだと。
幽子曰く、「無線でも出来るのだが、有線での方が邪魔が入り難く、確実なんだ。」との事である。

小林さんは、幽子の手の温もりを感じながら、彼女の言葉を思い出していた。
彼女の力強さと優しさが、今この瞬間にどれほどの意味を持つのか、少しずつ理解し始めていた。静寂の中、二人の間に流れる緊張感が、まるで見えない糸で結ばれているかのように感じられた。


目をつぶった幽子は、まるで神秘的な儀式に没頭するかのように、聞こえないほどの小声で呪文のような真言を唱え始めた。
その瞬間、静かな水面のような空気が流れ、周囲の世界が一瞬、静止したかのように感じられた。彼女は静かに黙り込み、その姿はまるで神聖な存在そのものだった。


自分は何度も幽子のお祓いを見てきたが、毎回その瞬間には緊張が走る。
特に今日は、異様な緊張感が彼を包み込んでいた。
周りの騒音や喋り声は消え、自分の心臓の「ドク!ドク!ドク!」という鼓動だけが耳に響く。小林さんの隣にいる星野さんも、心配した様子で同じように緊張しており、二人の心は一つの糸で結ばれているかのようだった。

幽子が黙ってから1分、さらに2分、3分と時間が過ぎていく。
小林さんは緊張からか、喉の奥にたまった生唾を静かに飲み込んだ。
周囲の静寂が彼の心をさらに不安にさせる。
そんな中、幽子の目がゆっくりと開かれ、「お祓いは終了した。」と告げた。その瞬間、緊張の糸が一気に切れ、自分は大きく息を吐いた。

小林さんや星野さんも、緊張が解けた瞬間、軽い運動をしたかのように深い呼吸をしていた。
周りの状況を気にすることなく、幽子は静かに言った。

「お祓いはこれで終わりだが、どうも君はこの手の事に影響を受けやすい感じがするので、念の為にこれを渡しておく。」そう言いながら、彼女は再びバッグをごそごそと探り始めた。

やがて、幽子は二つのお守り袋を取り出した。
その袋は、彼女の手の中で微かに光を放ち、まるで彼女の霊力を宿しているかのようだった。

幽子は二つのお守りの内、青いお守りを小林さんに手渡してこう告げた。
「このお守りには、私が頼んで祖母に書いてもらったお札が入っているの。生き霊というのは、亡くなった人の霊とは違って、また来る可能性があるんだ。だから、これを持っていれば、もしまた来たとしても君には近付けないだろう」と、彼女は静かに語りかけた。

「しばらくは肌身離さず持っていてほしい。特に寝るときには、必ず側に置いておいてほしいんだ。寝ているときが一番無防備だからね」と、幽子は続けた。
その言葉には、彼女の強い思いが、小林さんに念を押しているように聞こえた。

「ちなみに、私の祖母はこの辺りでは有名な拝み屋、つまり霊能力者だから、効果の方は保証するよ」と、幽子は小林さんに微笑みかけた。

その後、幽子は星野さんに赤いお守りを手渡し、
「君にもお守りを渡しておく」と言った。

星野さんは驚いた様子で「えっ!私ですか?」と問い返す。

幽子は「そうだよ!」と明るく答え、「小林さんに行くはずの生き霊が、行き場を失っていつも側にいる君のところに行く可能性がある。まぁ、大丈夫だとは思うけれど、一応念のためだ。気にせず受け取ってほしい」と説明した。

さらに幽子は続けた。

「生き霊というものは、飛ばそうと思って飛んで行くわけではなく、ほとんどは無意識で飛んでしまうものだから、君に告白した女性とまた会っても、怖がったり責めたりしないでほしい」と、小林さんに向かって真剣な眼差しを向けた。
小林さんはその言葉を受けて「分かりました」と頷いた。

その返事を聞いて、幽子は「ありがとう」と答えたあと、今までの緊張感が台無しになる発言をしてきたのだ。

「そうそう、星野さんから聞いていると思うが、報酬の件についてだが、すでに報酬は星野さんから頂いている。ただ、力を使って少しお腹が空いてしまった。申し訳ないが、これもご馳走してもらえると助かる」と言いながら、メニュー表の中から別の限定ハンバーガーを指差した。

「まだ食べるのか?」と、思わず口から漏れた言葉に、幽子は鋭い視線を向けてきた。
その瞬間、小林さんと星野さんは思わず笑い声を上げ、「分かりました!良いですよ」と、幽子の要求に応じてくれた。

その後、二人と雑談を交わしながら、幽子が追加で頼んだハンバーガーを美味しそうに頬張る姿を見て、「本当に良く食べる女だなぁ」と、あきれた気持ちを抱きつつも、どこか微笑ましく思っていた。

「ごちそうさまでした」と、幽子が満足そうに言った後、二人から改めて「今日はありがとうございました」と丁寧な挨拶を受けて、店の外に出た。

小林さんと星野さんが「また!」と手を振る姿を見送りながら、彼らの仲良く歩く姿に心が温かくなり、自分たちも帰路についた。
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