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<第三巻:闇商人 vs 奴隷商人>
第十一話:事前に漏れる手の内②
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俺はアルノルトとともに、俺の部屋へと戻った。
「魔道具を見つけました」
アルノルトは、机の上に布で包まれた丸い羊皮紙を広げた。
「これが魔道具? 羊皮紙じゃないか」
「ただの羊皮紙に見えますが、この裏に小さな魔法陣が書いてありますよね」
「ああ、たしかに、魔法陣だが……これってやばいものか?」
「実は、ダバオの神官に鑑定してもらったんですが、転送魔法が書かれた魔道具だそうです」
神官? って、もしかしてあの無礼でオッパイばかりでかい女神官か。
あいつ、時々この屋敷に出入りしていたようだが、少しも顔を見せないよな。
「神官って、あの子供みたいな女か」
「そうです。以前、ライラ様が看板に頭をぶつけて気絶した時に回復をかけてくださった」
「あいつ、今、何してるんだ?」
「旦那様がマーティの街に行っている間に、防御魔法やらトラップをいくつか作ってもらっていました」
手回しがいいな、さすがアルノルト。
だが、あの神官ってそんな技が使えるのか。
「この転送魔法の羊皮紙があったら、何がどうなるだ?」
「こんな小さな紙でも、人が転送されるとのこと。既に、使われた形跡があるらしく……」
「ということは、既に敷地内に誰かが潜り込んでいる可能性が?」
アルノルトは、はいと答えると神妙な顔つきをした。
「そいつら、どこに潜んでいる?」
「わかりませんが、神官様が探してくれています。あの神官様は見た目はあんなんですが、腕は立つようで」
その時、ドアがバーンと開くと女神官が走りこんで来た。
「誰が、見た目があんなんだって? 私のことかしら!」
久しぶりに見たが、口うるさそうな小娘だ。
「お前のことだ。残念神官!」
「だ、誰が残念よっ! どこが? 私のどこが残念なわけ?」
「全部。全て、オール残念!」
「ちょ、ちょっと黙って聞いていたら好き放題いいやがっ」
「黙ってないから残念神官なんだ。お前は喋るな。うるさい」
初めて会った時から、この女神官は何かと小うるさいのだ。
「あのね。もう協力しないわよ。いいの? 大変なことになるよ」
「どう、大変なことになるのだ?」
「もう、三人も敵が潜んでいるわよ。それも暗殺者だよ」
暗殺者? ……ってことは俺が狙いか。
「ふん、もう何も教えてあげないからね。謝りなさいよ」
「謝る道理がない。それに、暗殺者がどこにいるのかもわからないんじゃ意味がない」
「知ってるわよ。馬小屋にいるわよ、あんな臭いところによく隠れているわね」
馬小屋か……。そんなところで何をしているんだ?
暗殺者ならこの屋敷に忍び込んで、この部屋にでも隠れていれば俺を狙えるだろうに。
「隠れていた場所がわかっても目的がわからないんじゃ意味がない。わからないなら帰れ」
「わかりますぅー! ちゃんと私が聞きだしているわよ。これでも、聖属性の魔法ならこの国で十本の指に入るんだからね」
「ふーん、お前の上に九人はいるわけだ」
「なぬっ、なんで私が一番下っ端と思うわけ?」
「せめて三本の指に入ってから自慢するがいい」
アルノルトが、俺と女神官の間に割って入る。
「お二人は仲がよろしいのはいいのですが、もう少し落ち着いて話をされませんと」
「「どこが仲が良いって!?」」
女神官がハモると、フンっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「で、目的とはなんだったんです?」
「それだけどさ。どうやら、今夜闇商人が襲撃してくるらしいよ」
そんなことまでわかるのか。意外とこの女はすごいやつかもしれない。
聞くと、魔法で眠らせて、催眠状態にして質問すると全て教えてくれたのだそうだ。
とんでもない力を持っている。
この女を怒らせないほうがいいな。俺のエロい本音が漏れてしまうとやばい。
神官の話から、今夜ジルダたちが襲撃してくることがわかった。
この転送魔法を使って入ってくることがわかっているのなら、やり方はいろいろある。
問題は、一人ずつ転送されてくるらしいのでジルダの一団が一斉に襲って来るにしては、この魔道具は貧相だ。
これは、囮の可能性もある。
ジルダたちは、おそらく正面突破してくるだろう。
俺は、アルノルトに指示を出し、女奴隷たちは屋敷にこもっているようにと指示を出した。
それと神官にはヴィヴィを一度見て欲しいとお願いしておいた。
何もなければ安心だし、何かあっても神官ならどうにかしてくれるだろう。
「魔道具を見つけました」
アルノルトは、机の上に布で包まれた丸い羊皮紙を広げた。
「これが魔道具? 羊皮紙じゃないか」
「ただの羊皮紙に見えますが、この裏に小さな魔法陣が書いてありますよね」
「ああ、たしかに、魔法陣だが……これってやばいものか?」
「実は、ダバオの神官に鑑定してもらったんですが、転送魔法が書かれた魔道具だそうです」
神官? って、もしかしてあの無礼でオッパイばかりでかい女神官か。
あいつ、時々この屋敷に出入りしていたようだが、少しも顔を見せないよな。
「神官って、あの子供みたいな女か」
「そうです。以前、ライラ様が看板に頭をぶつけて気絶した時に回復をかけてくださった」
「あいつ、今、何してるんだ?」
「旦那様がマーティの街に行っている間に、防御魔法やらトラップをいくつか作ってもらっていました」
手回しがいいな、さすがアルノルト。
だが、あの神官ってそんな技が使えるのか。
「この転送魔法の羊皮紙があったら、何がどうなるだ?」
「こんな小さな紙でも、人が転送されるとのこと。既に、使われた形跡があるらしく……」
「ということは、既に敷地内に誰かが潜り込んでいる可能性が?」
アルノルトは、はいと答えると神妙な顔つきをした。
「そいつら、どこに潜んでいる?」
「わかりませんが、神官様が探してくれています。あの神官様は見た目はあんなんですが、腕は立つようで」
その時、ドアがバーンと開くと女神官が走りこんで来た。
「誰が、見た目があんなんだって? 私のことかしら!」
久しぶりに見たが、口うるさそうな小娘だ。
「お前のことだ。残念神官!」
「だ、誰が残念よっ! どこが? 私のどこが残念なわけ?」
「全部。全て、オール残念!」
「ちょ、ちょっと黙って聞いていたら好き放題いいやがっ」
「黙ってないから残念神官なんだ。お前は喋るな。うるさい」
初めて会った時から、この女神官は何かと小うるさいのだ。
「あのね。もう協力しないわよ。いいの? 大変なことになるよ」
「どう、大変なことになるのだ?」
「もう、三人も敵が潜んでいるわよ。それも暗殺者だよ」
暗殺者? ……ってことは俺が狙いか。
「ふん、もう何も教えてあげないからね。謝りなさいよ」
「謝る道理がない。それに、暗殺者がどこにいるのかもわからないんじゃ意味がない」
「知ってるわよ。馬小屋にいるわよ、あんな臭いところによく隠れているわね」
馬小屋か……。そんなところで何をしているんだ?
暗殺者ならこの屋敷に忍び込んで、この部屋にでも隠れていれば俺を狙えるだろうに。
「隠れていた場所がわかっても目的がわからないんじゃ意味がない。わからないなら帰れ」
「わかりますぅー! ちゃんと私が聞きだしているわよ。これでも、聖属性の魔法ならこの国で十本の指に入るんだからね」
「ふーん、お前の上に九人はいるわけだ」
「なぬっ、なんで私が一番下っ端と思うわけ?」
「せめて三本の指に入ってから自慢するがいい」
アルノルトが、俺と女神官の間に割って入る。
「お二人は仲がよろしいのはいいのですが、もう少し落ち着いて話をされませんと」
「「どこが仲が良いって!?」」
女神官がハモると、フンっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「で、目的とはなんだったんです?」
「それだけどさ。どうやら、今夜闇商人が襲撃してくるらしいよ」
そんなことまでわかるのか。意外とこの女はすごいやつかもしれない。
聞くと、魔法で眠らせて、催眠状態にして質問すると全て教えてくれたのだそうだ。
とんでもない力を持っている。
この女を怒らせないほうがいいな。俺のエロい本音が漏れてしまうとやばい。
神官の話から、今夜ジルダたちが襲撃してくることがわかった。
この転送魔法を使って入ってくることがわかっているのなら、やり方はいろいろある。
問題は、一人ずつ転送されてくるらしいのでジルダの一団が一斉に襲って来るにしては、この魔道具は貧相だ。
これは、囮の可能性もある。
ジルダたちは、おそらく正面突破してくるだろう。
俺は、アルノルトに指示を出し、女奴隷たちは屋敷にこもっているようにと指示を出した。
それと神官にはヴィヴィを一度見て欲しいとお願いしておいた。
何もなければ安心だし、何かあっても神官ならどうにかしてくれるだろう。
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