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<第一巻:冷酷無慈悲の奴隷商人>
閑話8:女同士のマッサージ
しおりを挟むニートが思いつきで始めた筋トレ二日目が終わった夜、奴隷たちはそれぞれの部屋で愚痴をこぼしていた。
「痛ててて……あぁ、腹と足がパンパンやっ!」
「私も、痛くて痛くて」
マリレーネは、ベッドに座ると太ももをさすった。いくら筋肉量が多い獅子人族とはいえ、奴隷生活が長くほとんど体を動かすことがなかったのだから、普段使わない筋肉を使った筋トレは体に堪えた。
「アーヴィアも? どれどれ」
つんつんとアーヴィアの腹を突くと、悲鳴をあげ悶絶してベッドに転がる。
「あははは、ウチでも痛いんだから、そりゃそうか。でも、ウチだけアーヴィアたちの倍の回数をやらされたのは腑に落ちねえ。アルノルトの野郎、覚えてろよっ!」
「くぅー、お尻もすごく痛いんです……座るのもきつくて……」
ベッドにうつ伏せになったアーヴィアは両手で尻をさする。もともと、丸みのないペタンコな尻のアーヴィアにはスクワットはかなりの苦行だったみたい。
マリレーネは、さすっているアーヴィアの手をどかせ、尻をやさしくさする。
「あんっ! そ、そんな……自分でさすりますからぁ~」
「いいの、いいの。こうやって、やさしく撫でると痛みが和らいでくるやろ?」
「うん……」
この部屋には五人の奴隷がいる。他の三人もそれぞれヘトヘトになってベッドに横になっていた。むしろ、マリレーネがアーヴィアにちょっかいを出せることのほうが、他の娘には驚きだった。
「いいなぁ、マリレーネは。獅子人族ってそんなに体が丈夫なんだなぁ。羨ましい」
「おいっ、全然よくないねぇわ。ウチだけみんなの回数の倍だよ、もう手足がパンパンだよ」
「それで、そんなに元気なんだから、やっぱりうらやましいわ」
猫人族のアズラナは、奴隷としてここに来たのはマリレーネと同じ頃だった。
同じ十五歳ということもあって、アーヴィアと同じくらい仲良くしている。
「なんでニート様は急にこんな仕打ちをするようになったのかしら」
「そりゃ、さっさと仕事しなかったからだろ。ニート様に尋ねられたぞ。なぜみんな力がないのかって」
「えっ、そうなの……アーヴィアちゃんは、なんでこんなことするようになったか知ってる?」
うつ伏せになり、マリレーネに尻を好きに撫で回されていたアーヴィアは、顔だけ横に向けると知らないと言った。
「そういえば、ニート様が私の腕を触って、力を入れてみろって言っていたような……私てっきり、私の腕がプニプニしてるから触りたいだけだろうって思って、エッチな人だなって思ってたんだけど……何か関係あるのかな?」
「そりゃあるだろう! アズラナもアーヴィアも、重いものが持てないだろ。それをニート様は気にされていたんや」
「そうなんだ……」
アーヴィアがポツリと一言漏らす。
「私たちが憎いのかなぁ? お怒りになって、こんな折檻をしてるのかなあ」
「それは違うと思うな。だって、ニート様が言ってたやん。筋肉が痛むのは運動して筋肉が傷つくからだって。それが修復されると太く丈夫になって力が出るようになるんだって」
「そうか……私たちに力が出るように鍛えてくださってるんだ……」
全員が大きなため息をついて、そして納得した。
「なぁ、交代で痛いところをさすってみようぜ。お互いにさすったほうがきっと治りも早いよ」
マリレーネは有無を言わさない勢いで、アーヴィアの横にアズラナをうつ伏せに寝かせた。もう一つのベッドには残りの二人が真似をして銀髪の奴隷を寝かせるともう一人が尻をほぐしはじめた。
「おい、アーヴィア。パンツを脱がすぞ。これがあるとどうもさすりにくい」
「えぇっ! ちょっと……それはダメん……いやんっ!」」
うつ伏せになったアーヴィアからパンツを剥ぎ取ると、こじんまりした尻が現れた。ふさふさした狐の尻尾が尻の割れ目を隠すようにしているので、尻尾をどかせる。
「きゃっ、尻尾触ったらだめぇ」
「いいから、いいから。遠慮するな。ほれ、アズラナもパンツを脱がせるぞ」
「わー、そんな恥ずかしいですよー」
「何言ってんの! 今までパンツなんてはいてなかったのに、どうしちゃったんだよ」
下着を買ってもらってから、奴隷たちは下着を着用することが当たり前になってしまっていた。
お尻が見えたら恥ずかしいという気持ちも、いつの間にか湧いている。
さらに近頃は、尻の形を他の女の子と比べて大きいだの、小さいだの、形が悪いだのと自分の尻に劣等感を持つ物も増えていた。
女同士だと、どうしても自分の方が可愛い、自分の方が可愛くない、そうやって他人と比べてしまう。
パンツを着用することで、裸を見られることに抵抗感が出て来ていたのだ。
「マリちゃんはおっぱいも大きいし、お尻もキュッと締まってお肉が盛って綺麗なお尻だけど、私はぺっちゃんこだから、見られたら恥ずかしいよ」
「私も、マリちゃんほど体に自信が持てないわ」
「そんな、褒めるなよぉ……確かに、お尻には自信はあるけど……」
マリレーネは、左手でアーヴィアの尻、右手でアズラナの尻をさする。どちらもすべすべで、滑らかに掌が動く。
「マリちゃんの手が温かくて気持ちいいよ」
「そうか? 二人とも、鞭で打たれなくなってから肌がきれいになったな。アズラナのお尻なんてツルツルしてて気持ちいい」
「いやんっ、そんな……でも、鞭で打たれたのってもうずいぶんないね」
「うん、ないね……」
ふくらはぎから、太もももさすってやると、二人は目を閉じてじっとマリレーネの手のぬくもりと優しいタッチに癒された。
「どう? 少しは楽になったか?」
「うん。まだ痛いけど、最初の頃よりはマシになったよ。じゃぁ、交代しよ」
アズラナとアーヴィアは、マリレーネをうつ伏せにすると二人がかりで足から尻、背中とさすっていった。
「ははは、脇はやめてくれよ。そこは大丈夫だから……きゃはは、脇はいいから、もういいから……」
面白がって、アーヴィアとアズラナは脇の下をさすると、マリレーネは身をよじった。
「マリちゃん、おっぱいのお肉がはみだしてるよ」
「おっおう。うつ伏せになったら、そりゃはみ出すよ。まあアーヴィアはおっぱいがないから、ならないか」
「ひっどーいっ! 気にしてるのに……」
ごめんごめんとマリレーネが謝ると、すねたような顔でアーヴィアははみだした乳房に手を差し込み、鷲掴みにした。
「おおいっ! 何してんだよ。そこはいいから。おっぱいはやめろ……ああんっ……ちょっと、先っぽつまむんじゃないっ!」
アズラナも、右手を手をベッドと乳房の間に潜り込ませると乳首を指でこねくり回す。
「はあんっ……ちょっと、なんか変な気持ちになるからやめろって……ああんっ」
「そういいながら、少し体を浮かせて触りやすくしてるの、なんでだろうねぇー」
アズラナはいたずらっぽく言う。
それから、しばらくマリのおっぱいは二人のおもちゃにされ、いつの間にかアーヴィアやアズラナの乳首もお互いに触りあって、夜中まで笑いあった。
◆
「ニート様って、前と違ってないか? ずいぶん雰囲気が変わったよな」
マリレーネは、ベッドに横になると他の奴隷たちに言った。大きなおっぱいが重力に逆らわずベッドの方へと流れているが、それは見て見ぬ振りをするアーヴィアたち。
「うん。前はすぐに怒って叩いて来たけど、最近は怖い時は怖いけど、叩かれたりしないね。優しく気遣ってくれるときもあるし。時々、エッチな目で見てくるけど、前みたいに無理やり襲って来たりもしないし」
「だよな。ウチもトイレで小便してるときに覗きに来てたから慌てたけど、昔なら奴隷の分際が小便などするなとか言って水を何日も飲ましてもらえなかったもんなぁ」
うんうんと同室の奴隷たちは頷きあう。銀髪の子だけは、新入りで昔のニートを知らないので、話についていけていなかったがとりあえず同じように首を縦に振っている。
「水浴びをさせてくれて、この部屋も使わせてくれて、トイレも作ってくれてさ。ウチなんて街の買い物にも連れて行ってもらったりしてさ。まるっきり別人になったみたいなんだよなぁ」
「うん……それ、私も思った」
「パンツも買ってくれたし……」
アーヴィアは、パンツを握りしめて言う。たしかに、奴隷全員に下着を買ってくれることなど、昔は想像さえできなかった。
「そういえば、夜のご奉仕の時に気になったんだけど……」
アーヴィアがそう口に出すと、みんなが一斉にアーヴィアの方を見る。
「あっ、マリちゃんも気づいてると思うけど、近頃のニート様って私たちをお求めにならないよね。前はよく尻を突きだせって壁に手を付かせて、後ろからアレを打ち付けて来てたのに」
「あっ、そういえば……あれはあれで気持ちよかったんだけどなあ」
マリレーネは、天井を仰ぎ見て思い出すように目を閉じた。両手で頬を押さえている、きっと思い出してうっとりしているのだろう。アーヴィアは、そんなマリレーネに尋ねた。
「えっ? マリちゃん、気持ちよかったの? 私は痛いばかりで嫌だったなぁ」
「そりゃ、いきなりだと痛いだろう。ああいう時は、手に唾を吐いて、あそこに唾を擦っておくの。そうすると、唾が潤滑油になって痛くないから」
「そ、そんな技があったなんて……」
「技というほどじゃないよ。みんなもやってるんじゃないの?」
マリレーネの問いに、全員が首を振る。マジか! と驚いて目を丸くするマリレーネ。
「最近、ニート様に入れてもらった人っている?」
みんな首を振っている。誰もいないのか……
「じゃぁ、今夜もしお呼ばれしたら入れてもらおうぜ!」
「えっ、嫌だよ、今日は全身が痛いのにぃー!」
情けねえな! マリレーネはそういうとみんなで笑った。
「今夜お呼ばれしないかな」
誰にも聞こえなかったが、マリレーネはぽつりとつぶやいていた。
ニート様にお呼ばれすることに、ちょっと期待したのだった。
以前はあれほど嫌だった夜のご奉仕が、今は楽しみになっていた。
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